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サイエンスカフェみたか「海藻の不思議」

2026年1月22日、サイエンスカフェみたかが開かれました(主催 三鷹ネットワーク大学)。お話は、田中次郎さんによる「海藻の不思議」でした。生物としてはヒトよりずっと前から地球に生育している海藻のこと、知らないこと満載でした。

参考図書

参考図書

お話の主な内容

海藻って不思議な生き物です

科学って不思議だと思うことです。その過程で真理や真実が見えてきます。
海藻の3大グループは「緑藻」「褐藻」「紅藻」です。これらは体色や外形その他の特徴が大きく異なり、全く違った生物群です。動物でいうと、それぞれ魚、貝、サンゴ以上の違いがあります。
藻類(そうるい)の「藻」という漢字をみると、くさかんむりが植物を、さんずいが水生を表し、つくりの部分は、「木」の上で3羽のひなが口をあけて餌を待っている騒々しい様子が表されています。
海藻はseaweed、海草(うみくさ)はseagrassの訳ですが。grassとは細長い葉を持つイネ科の単子葉植物を、weedは雑草全体を表します。水草はwater grassで、種子植物のマツモ、カナダモ、藻類のシャジクモ、水生のコケやシダはこの仲間です。

そもそも、生物とは?

生物の3つの条件とは、①細胞に囲いがあること、②DNAやRNAで自分を複製できること、③細胞の中身を作り出せる(代謝できる)こと。ウイルスはバクテリアなどの他の細胞に寄生し自分のDNAやRNAを注入し、宿主細胞内でしか自分を複製できません。このようにウイルスは①と②は満たしますが、③の代謝ができないので、生物とはいえません。
1990年のウッズ博士の3ドメイン説では、生物は始原生物からスタートし、真正細菌(大腸菌、コレラ菌など)、古細菌(メタン細菌)、真核生物(核が膜で包まれている)に3つに分かれています。ウイルスの起源は分かっていません。
真核生物は「モノコンタ」と「バイコンタ」に大きく2分されます。動物と菌類は、後ろに鞭毛が1本あるモノコンタに属します。人とマツタケは親戚です。植物や藻類は、前に鞭毛が2本あるバイコンタで、植物と緑藻、紅藻は親族で、褐藻だけは赤の他人です。

褐藻の体の特徴

カジメの海中林を見ると、根、茎、葉があるように見えますが、陸上植物のような機能はなく体全体で光合成をします。機能が違うので術語も変えて付着根、茎状部、葉状部といいます。でも、話の中では根、茎、葉としておきます。非同化器官(光合成しない根、茎、幹、枝など)を持たないので陸上植物の数倍の生産効率をもちます。
褐藻ホンダワラやワカメの体内には物質移動の器官があり、海中で大型になれました。緑藻と紅藻には物質移動の器官がないので、小型のままでした。

藻場って何?

「磯焼け」とは、「藻場」や「海中林」をつくる大型の褐藻が枯れて落ちてしまうことをいいます。太平洋中南部沿岸ではアラメもカジメの海中林も減ってしまいました。褐藻ホンダワラの海中林を「ガラモ場」といいます。ガラモ場は特に日本海側には多く、魚の宝庫です。でも人が潜水して入ると出られなくなるのでとても危険です。
コンブは自力では立ち上がれませんが、千島列島に生育するワカメの親戚であるオニワカメは、「中肋」という体の中央の筋に空気が入っているので、自力で立ち上がることができます。昔はオニワカメの生育場にはラッコが多くいましたが、毛皮目的の乱獲でいなくなってしまいました。オニワカメを食べるウニをラッコが好んで食べていて、「食う食われる」のバランスがとれていたのに、今はラッコもオニワカメもウニもいなくなってしまいました。

海藻と光

藻類は深くても水深10メートル位までにしか生えません。中でもカサノリなどの緑藻(アオサ、アオノリ、ヒトエグサ)は浅いところに生えていて、褐藻(コンブ、ワカメ、ホンダワラ)などは少し深いところに、紅藻(トサカノリ、ユカリ、アヤニシキ)は深いところに生えます。なぜでしょう?
紅藻は赤い色素をもちます。赤い光は、水深の深いところに届く前に海水に吸収されてしまいます。でも赤い色素は、水深が深くても届いている補色である緑と青の光を吸収できます。褐藻も黄色の色素で緑や青の光を吸収できます。緑藻や陸上の植物は緑だから緑色の光を反射しますが、その他の色の光全部を利用する仕組みを持っています。
緑藻や紅藻が生まれたのは動物が生まれるはるか昔の約10億年前。褐藻は動物よりも新しく、約2億年前に誕生されたと思われます。

海藻の一生

褐藻ワカメは、春になると茎の付け根に「めかぶ」ができます。めかぶには「フコイダン」という、身体に良いとされるねばねば物質があります。めかぶから、2本の鞭毛をもつ雄と雌の遊走子がたくさん放出されます。これらの遊走子が海底で発芽して、数十細胞しかない小さな雄と雌の配偶体ができます。雄の配偶体にできた精子が、雌の配偶体にできた卵に向かって泳ぎだします。最初に卵に触れた一匹だけが受精できます。受精卵は発芽し、大型の胞子体であるワカメとなります。夏から秋は小型の配偶体が海底に生育し、秋から冬には大きな胞子体になるという生活環をもちます。
紅藻テングサ類のマクサには、雄と雌の別々の配偶体があります。雌の枝の先端にある卵に、雄にできた精子が流されてきて受精します。受精後に雌の枝がふくらみ、果胞子ができてきます。これが海底に落ちて発芽し、生長すると配偶体とは異なる四分胞子体になります。配偶体と胞子体は見た目は同形同大で区別は困難です。四分胞子体が成熟すると小枝に4つの四分胞子ができ、そのうちの二つの四分胞子が雄の配偶体に、二つの四分胞子が雌の配偶体になります。天然では雄雌の配偶体と四分胞子体が1年中生育しています。
このように海藻の生活環は胞子体と配偶体の二つからなることが多く、動物や陸上植物と違い複雑です。動物は普通、胞子体しかありません。種子植物は動物と同様、胞子体だけと思われていますが、小さな胚珠と花粉という配偶体を花の中に隠し持っています。胞子体しかない緑藻ミルや褐藻ヒジキなどは動物と同じ生活環を持っていますが、これも不思議ですね。
海藻は一般に春に最も繁茂し、夏に減り、秋冬はもっと減ります。海藻採りはせいぜい6月までとなります。陸上の植物よりひと季節ずれていますね。

寒天

テングサ類から保存食物の寒天が作られます。寒天はアガロースという物質からできています。分子構造はガラクトースが長くつながっていて、食物繊維が主成分です。溶ける温度が高く、室温で固まるので、形がくずれず料理に重宝されています。
諏訪地方は海のそばではありませんが寒天の産地です。不思議ですね。ここでテングサ原藻を煮出した液を固めておくと、真冬の極寒の中で乾燥して(凍結乾燥)寒天ができます。それで諏訪が産地になりました。
寒天はテングサ類以外の紅藻オゴノリ、エゴノリからも作られます。紅藻のツノマタからとれるカラギーナンは、増粘剤、ゲル化剤としてアイスクリームなどに使われています。カラギーナンは寒天とは似た物質ですが、硫酸基があるので他の物質と結合しやすく、体内の代謝に効果的と言われています。