「食品添加物をめぐる消費者の誤解と対策」
2025年12月16日、食の信頼向上をめざす会主催、オンライン意見交換会が開かれました。お話は日本食品添加物協会 専務理事 松村雅彦さんによる「食品添加物をめぐる消費者の誤解と対策」でした。
松村雅彦さん
主なお話の内容
1.食品添加物とは
農耕が始まり、作物を加工・保存する必要が生じ、燻蒸、乾燥、塩漬けなどいろいろな方法が考え出された。食品添加物もその一つで、指定添加物(476品目)、既存添加物(327品目)、いわゆる天然添加物である天然香料と一般飲食物添加物がある。
外国と日本では添加物の定義が異なっており、日本は添加物の対象範囲が広いので、食品添加物の数を比較するのは余り意味がない。
食品添加物は有効性と安全性が実証確認されて使用が許されるもので、食品衛生法第6条(腐敗、有毒、病原微生物汚染、不潔、異物混入は食品と食品添加物においては許されない)に定められている。
新しい添加物は、消費者に利点があり、すでに指定されているものと比べて同等かそれ以上の効果があるものが認められる。
2.食品添加物の役割
食品添加物には次の4つの役割がある。
(1) 製造加工に必要
形を与える、食感を与える、混在物を除く(ろ過助剤)。
使用されている食品の例:豆腐、ガム、こんにゃく
(2)品質の保持
食品は時が経つと劣化するので、それを防止する。保存料、殺菌料、日持ち向上剤、酸化防止剤、防カビ剤があたる。
(3)嗜好性向上
味、香り、食感を与える。香料、着色料など五感にアピールする。食品において感じるおいしさは視覚で87%アップすることがわかっている。
しかし、これを「コスメティックアディティブ」と批判している海外の団体もある。
(4)栄養価の補填強化
栄養ドリンクなどをさす。例えば、乳と母乳は組成が異なるので添加物で補い、フォローアップミルクが作られている。
この他にも、品質保持の期間の延長、SDGsへの貢献、食塩摂取抑制、生産性を向上させてエネルギー削減、環境負荷削減に貢献している。ことに、災害時における加工食品の役割は大きく、被災地での品質保持には添加物が貢献していると言えるだろう。
メタボ対策の甘味料、介護食のとろみ剤など、昔は無かった添加物も登場している。
3.リスク分析
リスクはハザード×暴露量という確率で表される。リスクゼロの食品はない。安全性は量の問題で、これはADIの考え方に従っている。
リスク分析はリスクを定量的に評価してリスク削減を図るために行い、評価、管理、コミュニケーションの3要素からなる。
リスク管理の中で行われる食品添加物の一日摂取量調査は日本食品添加物協会が受託している。使用実績のある天然添加物についても調査が行われている。既存添加物をいつまでも例外措置としておくわけにはいかないので、使用実績調査をもとに見直しが始まっている。
指定添加物は安全性、有効性を確認してポジティブ表に載せ、公定書に記載する。
4.食品添加物をめぐる問題点~安全と安心の隔たり
- 食品安全委員会が毎年食品安全モニターアンケートを行っている。人々は生活の中でいろいろなことに不安を感じているが、食品に不安を感じている人は最も少ない。
- マイボイス N-9367という調査では、食に不安を感じている人は1割で、そのうち、食品添加物に不安を感じているのは6割。高齢女性に多い。
- 農学部の学生へのアンケートでは8割が不安を感じていない。
3つの調査の違いは何か。専門家と非専門家の差、安全と安心の区別が曖昧だからだと思う。危険情報が印象に残り、よく伝わるという動物の自己防衛本能の結果でもあるのだろう。
過去に事故があったから不安だという理由があるが、過去の明らかな事件というと、1955年のヒ素ミルク中毒で、最近、事故はほとんど起こっていない。1957年に食品衛生法ができ、平成以降、食品添加物の事故はない。
食品添加物の中には削除されたものもあるが、発がんの可能性があったのはアカネ色素だけで、削除されたものの中には、最近のデータから問題が認められなかった食品添加物もある。
その背景には、誤認させるような情報、メディアの表面的な報道、両論併記の弊害、食品表示において原材料を食品添加物と区別して表示して悪い印象を与える、無添加・不使用表示による消費者への不安の想起があるのではないか。
学校給食衛生管理基準の「有害または不必要な食品添加物が含まれる食品を使用しないこと」という表現もいかがなものか。家庭科の教科書を見ると、減って来ているが不適切な記載が見られる。載せるなら食品添加物を正しく記述してほしい。
科学的と思えない政党や政治家の発言にも問題がある。
こうして不安をあおって得する人がいるのだろうか?
5.今後の課題
本能は理性に勝ってしまうので、科学的情報を出し続けるしかない。どうしても嫌いな人はリスクコミュニケーションの対象外とし、他から影響を受けやすい人達を対象にしていくのがいいと思う。
誤解を与える情報には反論し、消費者にはリテラシー向上を期待したい。
日本食品添加物協会では、消費者に対して、「量に言及しているか」「似非科学ではないか」「発信者は自称専門家ではないか」「出典は大丈夫か」などをチェックしてもらいたいとお願いしている。
行政・食品業界には、専門的になりすぎない説明をしてほしい。食品添加物には役割があり、リスクのトレードオフとゼロリスクはないことを伝えてほしい。
事業者も自らのブランドを毀損しないようにしてほしい。
間違った情報にはファクトチェックをしたり、事業者も声を上げたりしよう。ネットで誹謗愁傷を行った個人に対する日産化学の訴訟などの例もある。
日本食品添加物協会では、誤認させるフィクションに対しては、わかりやすいノンフィクションで説明し、キーメッセージを決めて、物語を作成し、漫画・動画・パンフで伝えていきたい。
質疑応答
(〇は質問者、は講師や参加者の発言)
- 消費者が本当にどのくらい不安かはどうやって調べるのか
本当の不安度を測る方法は協会でもわからない。アンケートの設問をみて影響される人もいるのではないか。
アンケートは誰が質問するかも影響する。
サイレントマジョリティに出会うのは難しい。 - 添加物が腸内細菌をめちゃくちゃにすると言う専門家がいて、多糖類は悪影響と言っているが、本当ですか
添加物と腸内細菌については調査中。WHOはこの主張に対してデータに一貫性がなく結論は出ていないと言っている。
善玉菌と悪玉菌という名付け方も誤解を生んだ。食品添加物で善玉菌が死ぬとイメージされているが、多種類の菌が関係しあっている複雑系において、一部の細菌での相関関係は因果関係ではない。腸内細菌が重要だが、ADIをはるかに下回る食品添加物がどれほど影響を与えるというのだろうか。
