くらしとバイオプラザ21

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バイオバンク・ジャパン夏休み体験学習会2025

2025年8月9日、東京大学医科学研究所2号館大講義室で、バイオバンク・ジャパン夏休み体験学習会2025が開催されました。200名弱の応募から抽選で選ばれた小学5 年生から中学3年生の13名が参加しました。初めに「遺伝とバイオバンクについてのお話」があり、「施設見学」、くらしとバイオプラザ21で企画させて頂いた「DNAを取り出す実験教室」が行われました。

森崎先生のお話を聞く参加者

森崎先生のお話を聞く参加者

1.「遺伝とバイオバンクについてのお話」
バイオバンク・ジャパン事務局長 森崎 隆幸 氏

(1)遺伝

人には、身体の特徴、病気のなりやすさ、性格、好み、それぞれ違っているいろいろな特徴がある。これらの特徴は、両親、兄弟ととても似ていたり、少し似ていたりする。これは、両親、祖父母、先祖から受け継いでいる。受け継ぐことを遺伝という。
人体は多様な部品からできていて、小さい部品である細胞は37兆個ある。両親から受け継いだ一つの細胞から多様な37兆個の細胞ができる。37兆個の細胞の持つ設計図は一つ。設計図は全細胞で共通で、23対46本の染色体として核に収められている。父親と母親から23本ずつ受け継いでいる。このDNAによって私たちは毎日、生きることができる。
染色体・DNA
細胞の核の中に染色体という構造があり、染色体にはDNAが折りたたまれて入っている。23番目の対の染色体が2本とも同じ形だと女性。一方が小さいと男性になる。
設計図は一つだが、父の精子から1枚の設計図を、母の卵子から1枚の設計図をもらい、その人の特徴ができあがる。設計図としてのDNAは全細胞で共通。 DNAは水によく溶けるが、アルコールに溶けにくいので取り出して見ることができる。
DNAは生命の設計図
設計図は4文字で表された情報で、DNAの鎖は折りたたまれて核に収められている。DNAを調べると、動物、植物、細菌でDNAは共通で、並び方の違いによる生物の特徴がわかる。私たち一人一人の30億のDNAの並びをみるとほとんど同じで、個人差は0.1%の並びの違い。ヒトとチンパンジーでは98.7%が同じ、ヒトとバナナは60%、ネズミとは97%、犬とは94%、ヒトとショウジョウバエとは60%。

(2)バイオバンクについて

病気のなりやすさと遺伝子の違いには関係があるのではないか。その人の遺伝子の違いを知って、よい治療ができるのではないか。
バイオバンクは生物の部品や情報を預かる銀行のようなもので、約30年前からバイオバンクという言葉が普及してきた。
バイオバンク・ジャパン
薬の効きやすさ、病気のなりやすさは一人一人の体質で異なる。すなわち、DNAの並びと関係がありそう。
東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパンでは、2003年から日本の27万人の病気の人の血液や情報を集めさせてもらっている。北海道から沖縄までの60以上の病院の患者さんの血液や、子どもの血液も保管している。
血液をもらうときには、子どもにも大人にも研究協力してもいいかを尋ねる(説明同意=Informed Consent:IC)。
血糖値が高い糖尿病の人、コレステロール値が高い人などありふれた病気の患者さんの協力を得て、協力医療機関にかかっていて同意の取れた27万人、51種類の疾患の人の血液を保管庫で長期間預かっている。試料は、4℃で冷蔵したり、液体窒素で-150℃に保たれた気体の中に入れたりして保存している。
研究により、一人一人の特徴を表すDNAの違いを明らかにできる。すべての病気が遺伝子に関係しているわけではないが、病気に関係するのはどのDNAの場所か。例えば、糖尿病のなりやすさと太りやすい遺伝子の変化との関係を調べる。
DNAバンクは4℃で200万本のチューブを保管することができ、80万本保管していて、二次元バーコードを機械が読んで仕分けしてくれる。
血清バンクでは、-150℃の液体窒素の蒸気の中に170万本のチューブが二次元バーコードで管理されて保管されていて、最大334万本まで保管できる。

2.施設見学

(1)東京大学医科学研究所 シークエンス技術開発分野研究室の見学
(2)バイオバンク・ジャパンの試料保管施設の見学
DNA保管庫を空調設備故障のため外からのみ見学しました。DNA保管庫ではチューブ単位で試料が4℃で冷蔵保管されています。血清保管庫ではチューブ単位で試料が-150℃で冷凍保管されています。保管庫に中は、バイオバンク・ジャパンWEBサイトによると、こんな風になっているようです。

DNA保管庫

DNA保管庫

血清保管庫

血清保管庫

DNA保管庫の前で説明する森崎事務局長

DNA保管庫の前で説明する森崎事務局長

血清保管庫の見学

血清保管庫の見学

シークエンス技術開発分野の研究室の見学

シークエンス技術開発分野の研究室の見学

3.DNAを取り出す実験

最初にピペッターの使い方を練習しました。2人一組になって、植物細胞としてバナナ、ブロッコリー、トウモロコシから、動物細胞として鶏むねひき肉からDNAなどをとりだしました。乳鉢やすりおろし器を使って細胞をこわし、台所洗剤を使って核膜や細胞膜をこわしてろ過しました。ろ過液にエタノールをゆっくり静かに加えて重曹すると、DNAなどが白く浮き上がってくる様子が観察できました。

はじめの説明

はじめの説明

実験道具

DNAをとりだす実験 1

DNAをとりだす実験 1

DNAをとりだす実験 2

DNAをとりだす実験 2

写真提供 東京大学医科学研究所 バイオバンク・ジャパン