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リスコミセッション「食品表示の今後の動向~アレルギー表示、機能性表示食品、デジタル化等を中心に~」

2025年5月23日、ifia2025 にてリスコミセッション「食品表示の今後の動向~アレルギー表示、機能性表示食品、デジタル化等を中心に~」を開きました。講師はFood Communication Compass代表 森田満樹さんです。食品表示制度を巡る複雑な改定を俯瞰的に紹介していただきました。定員を大幅に上回るご参加をいただきました。

森田満樹さん

森田満樹さん

たくさんの立ち見参加者

たくさんの立ち見参加者

主なお話の内容

2024年度はいろいろなことがあった。大きい仕組みの変更はないが、今日は全体感を掴んでいただきたい。

1 食品表示を巡る様々な検討

多くの検討会が開かれている。取りまとめられたものも、継続しているものもある。
食品表示懇談会は2023年度に始まり、2025年度も継続している。
2023年度に分かりやすい栄養成分表示に関する検討会に続いて2024年7月から日本版包装前面栄養表示関する検討会が開催され今年度も継続している。2024年度には紅麹問題を受けて機能性表示を巡る検討会、また食品表示懇談会の下の個別品目ごとの表示ルール見直し分科会、2024年10月からは食品表示へのデジタルツール活用検討分科会が開催された。また、食品ロス削減の観点から2024年度に食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会が開催され、3月にガイドラインが公表された。
2025年1月に食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議が開催され、今後も継続する。これに伴い、食品表示法の基準改正なども行われた。

アレルギー表示の改正
アレルギー表示は実態調査に基づき3年ごと見直しが行われるが、このところ木の実の症例数報告がどんどん増えていて、今では「くるみ」3位になって、たまご、牛乳と並んでいる。
2023年3月、くるみが特定原材料も追加され、2024年3月にはマカダミアナッツが推奨表示に改正されたところ。2025年1月にカシュ―ナッツは特定原材料に、ピスタチオは推奨表示に追加される方向性が示されており、今年度中に検討が行われる。それを反映すると、トータルで29品目になりそうだ。

2 食品表示懇談会等の動向

食品表示懇談会
食品表示懇談会が2023年10月にスタートし、同年度内に4回開催。国際基準との整合性やデジタル化に対応した今後の食品表示の方向性を示した。この懇談会のもと、わかりやすいシンプルな表示を目指して個別品目の表示ルールは分科会で検討を進めている。デジタルツールの活用についても分科会で技術的な課題からまずは検討を進めているところ。

デジタルツール活用検討分科会
2024年度は技術的な課題についてヒヤリングを実施。諸外国の実態調査などを見ると、韓国で進んでいて、原材料名など一部義務表示をQRコードで示している。アレルギーのなど安全性の表示については容器包装に残している。食品表示で消費者はどの項目をどこまで知りたいか。場合によってはお問い合わせ対応でいい項目もあるだろう。
デジタルツールについては第5期消費者基本計画に書かれており、食品表示へのデジタルツール活用検討分科会の検討は継続中。

個別品目ごとの表示ルール
横断的な基準に合わせる方向で、個別の食品表示基準の別表の妥当性も確認しながら、「個別品目ごとの表示ルール」の見直しを行う。
まず、個別品目ごとにヒヤリングを行った。調理冷凍食品、チルドハンバーグ、チルドミートボール、チルド餃子類、炭酸飲料、即席めん、うにあえもの等の別表は廃止された。
たとえば餃子であれば、調理冷凍食品か、チルド餃子類か、それ以外の惣菜かで原材料の表示方法が異なる。今回、別表の廃止によって整合性がとられることになった。複雑な食品表示のルールによって起こる間違い表示による食品リコールなど、食品ロスが出ないようにすることも大事。

3 2024年度の主な食品表示基準改正

機能性表示食品制度改正
小林製薬の紅麹サプリメントの健康被害が2024年3月に明らかになり、当該製品が機能性表示食品だったことから同制度を見直すべく、9名の専門家による検討会が4月に立ち上がり、国をあげて迅速に進めることになった。具体的には、表示方法改正、健康被害情報の提供義務、GMP導入が決まり2024年9月に食品表示基準等が施行された。
消費者庁には立ち入り調査のためのGMPチームが設置され、施行時から2年間の経過措置がある。
表示方法については「機能性表示食品」と商品の前面に四角で囲んで書き、その下に届出番号を書くなど細かい書き方が定められている。また「医薬品でない」と書くことで消費者に誤解を生まないようにするなどの改正も行われた。

4 ガイドライン等の策定、見直し

日本版包装前面栄養表示
2023年11月から「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」が年度内に3回開かれた。続いて2024年度には「日本版包装前面栄養表示に関する検討会」が立ち上げられた。ガイドラインの方向性が示され、今年度にデザインが定まり、パプコメ募集が行われる予定。包装前面栄養表示について、コーデックス委員会では国や地域の食事ガイダンスや健康・栄養政策に沿ったもので政府や関係者が協働して開発すべきとしている。これを受けて、日本でも導入されるが任意表示であり、あくまでガイドラインの位置づけとなる。2025年1月に公開された日本版包装前面栄養表示ガイドライン原案では、日本版包装前面栄養表示の目的、範囲、定義、基本的な表示方法が示されている。

食品期限表示の設定のためのガイドライン見直し検討会
2023年末に食品ロス削減対策の国の方針が決まり、これまでの期限表示ガイドラインを見直すための検討会が2024年度に開催された。検討会では事業者の実態調査の公表やヒヤリングなどが行われ、それを受けて改正された「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が2025年3月に公表された。
見直しのポイントは

  • 賞味期限と消費期限は定義に従ってどちらかを表示する。それに従うと5日で振り分ける考え方はなく、周知が必要である。
  • 安全係数0.8以上としていたQAについて廃止し、できるだけ1に近づけることが望ましいとされるが、これまでどおり微生物が増殖する可能性や品質のばらつきの変動が大きいと考えられる食品にその特定に応じた安全係数を設定する。
  • 賞味期限が過ぎても食べられる食品はその特性に応じて情報提供を行う。

この2,3年間の食品表示の動向を駆け足で紹介した。国際整合性や食品ロスなど様々な方向で見直されつつあることに注視いただけると幸いである。