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コンシューマーズカフェ「機能性表示食品の今後について」

2025年1月31日、第45回オンラインコンシューマーズカフェを開きました。お話は消費者庁食品表示課 保健表示室長 今川正紀さんによる「機能性表示食品の今後について」でした。当日は初めの説明を食品表示調査官 杉山彰啓さんが、質疑応答は今川正紀さんが担当されました。

右から今川正紀室長、杉山彰啓調査官

右から今川正紀室長、杉山彰啓調査官

主な内容

健康食品とは

「いわゆる健康食品(広義)」の中に「保健機能食品」と「その他のいわゆる健康食品」があり、前者には「栄養機能食品」「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」がある。それぞれの科学的根拠の扱いや表示の仕方は異なる。
この中でヒト試験が課せられているのはトクホだけで、健康増進法に基づきマークを付けることができる。機能性表示食品は届出者の責任で届け出るもので、機能性に関する科学的根拠は、最終製品を用いたヒト試験か、最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビューにおいて説明が求められる。栄養機能食品は自己認証制により特定の栄養成分の機能を示すことができ、届出等の義務はない。
機能性表示食品では、疾病に罹患している者・未成年者・妊産婦・授乳婦を対象としていないことなどを表示することになっている。
機能性表示食品については、届出者から提出された資料の確認を消費者庁食品表示課が行い、届出番号を付与して情報の公表を行う流れになっている。紅麹関連製品による健康被害を受けて機能性表示食品制度の見直しが行われ、2024年9月1日に食品表示基準が一部改正された。パッケージの表示事項に係る改正に関しては、2年間の経過措置期間が設けられており、2026年9月1日以降に製造される食品に適用される。他にも、新規の機能性関与成分の届出や、機能性関与成分の組み合わせがこれまでされたことのない届出について専門家の意見を聴く仕組みが追加された。届出の確認期間が、消費者庁長官が認める場合は60営業日から120営業日になる可能性が有る。
2015年度から2023年度までの届出数をみると、機能性表示食品は1年に1000件ずつくらい増えている。令和5年度の公表件数の内分けをみると、錠剤・カプセル形状のもの(サプリ)が55%、そのほかの加工食品が42%、残りは生鮮食品となっている。

紅麹関連製品による健康被害を踏まえた対応

2024年3月29日に紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合が開催され、官房長官より消費者庁、厚労省などに今後の対応について指示があった。消費者庁では機能性表示食品を巡る検討会を立ち上げ、5月27日に検討会報告書のとりまとめを公表した。5月31日に第二回の関係閣僚会合が開催され、機能性表示食品制度に関する今後の対応について取りまとめられた。

(1)当面の対応として行ったこと
回収すべき製品は3つ。健康被害の原因究明を行い、5月の終わりには、健康被害が多く報告されている製品の原料ロットにプベルル酸とモナコリンKに基本骨格が類似した2種類の化合物が含まれることが分かった。その他の取組として、日本腎臓学会も医師へのアンケート調査を行い発表した。

(2)今後の対応として検討したこと

  • 健康被害情報提供の義務化(営業者としての評価結果を待たず、医師の診断を受けた健康被害と疑われる情報を把握した場合は、因果関係が不明であっても速やかに消費者庁長官及び都道府県知事等に情報提供する)。食品表示法に基づき遵守しない場合は機能性表示を行わないよう行政措置(指示・命令)が可能。
  • 健康被害情報は引き続き厚労省に集約し結果を公表する。
  • 適正製造規範(GMP)の要件化(機能性表示を行うサプリについて、GMPに基づく品質管理を届出者の遵守事項とする。)
  • 消費者庁における届出時の確認をより慎重に行う手続きを食品表示基準に規定。(新規の機能性関与成分に係る機能性表示の裏付けとなる安全性・機能性の課題について専門家の意見を聞く仕組みを導入。)
  • 届出後の定期的な自己評価・公表などの要件化。
  • 情報提供のDX化(事業者と消費者にとって分かりやすくなるよう届出データベースの更改を行う)。
  • 消費者教育の強化。国の役割分担・都道府県との連携など。

(3)これからの検討課題

  • 原因究明と発生防止にむけた食品衛生法上の規格基準策定と衛生管理措置の徹底。
  • トクホについても、健康被害の情報収集とGMPの要件化について同様に検討する。
  • 届出者による表示の適正化等の自主的な取組を促進する。
  • サプリ全般への規制の在り方検討。

健康被害情報の収集

届出者は、健康被害の発生、拡大の恐れがある旨の情報を得たときは速やかに都道府県知事等、消費者庁へ健康被害情報を提供する。因果関係が不明であっても速やかに情報提供を行うこと。

適正製造規範(GMP)

原材料の受け入れ・製造管理・品質管理・出荷可否の全工程において、「適正な製造管理と品質管理」を求めるもの。原材料の製造工程はGMPの対象ではないが、食品衛生法に基づきHACCPに沿った衛生管理は引き続き必要。原材料を受け入れるサプリの製造所がGMP管理対象施設でなくてはならなくなる。
サプリを手で小分け包装する施設についても、GMP管理対象施設になる。

表示の変更点

  • 主要面の上部に機能性表示食品の文字を枠で囲んで表示し、枠のそばに届出番号を書くこと。
  • パッケージに機能性表示の内容を記載する場合には、機能性関与成分の名称を記載し、機能性関与成分が有する機能性であることを、科学的根拠に基づいて書くこと。
  • トクホと異なり国による評価を受けていないこと、届出の情報は消費者庁ウェブサイトで見られることを示す。
  • 医薬品や他の機能性関与成分との相互作用、過剰摂取などに関する注意喚起を機能性関与成分の安全性に関する科学的根拠を踏まえて具体的に表示する。
  • 医薬品ではないことを明記する。
  • 疾病に罹患している人は医師に、医薬品を服用している人は医師や薬剤師に相談する。
  • 7,000件の機能性表示食品のうち9割は論文を根拠にしており、届出商品そのもので臨床試験を行っているケースは1割弱。どのような機能性が報告されているかを文言で適切にパッケージ上に表示する。

タイムスケジュール

2024年9月から施行されたのは、健康被害情報の収集体制整備、医師の診断を得た健康被害の発生又はおそれがある情報を速やかに報告すること。ただし、サプリのGMP導入、表示改訂には経過措置が2年ある。
新規成分の届け出を60営業日から120営業日にする改正は2025年4月から施行。

機能性表示食品として届け出られない食品における変更点

アルコールを含有する「飲料」から「アルコールを含む食品」に改正したが、実質的な変更はない。
届出以降に科学的知見が得られ、特定の保健の目的が期待できる旨の表示が適切でなくなっていると消費者庁長官が認める食品は、届け出られない。

自己点検・評価と結果の報告

届出に係る機能性関与成分の安全性と機能性について、新たな知見が得られた時は消費者庁長官に遅滞なく報告する。
錠剤、カプセル剤等食品は内閣総理大臣が定める基準(GMP)に従って製造・加工する。
健康被害が生じたときは情報を収集し、拡大のおそれがあるときは都道府県知事等、消費者庁長官に報告する。
届け出後も1年ごとに自己点検と評価の結果を報告する。

質疑応答等

  • GMPの導入について
    錠剤・カプセル剤等食品である機能性表示食品のGMP導入は事業者と消費者庁とが共に勉強しながら進める。すぐに全てはできないと思うので、それぞれの事業者がそれぞれのレベルから向上していってほしい。医薬品のGMP、食品のHACCPの専門家はいても、サプリのGMPは新しい領域なので、消費者庁も予算要求をしているが、専門的知見を有した専門家に消費者庁に来ていただいたり、職員も事業者もサプリのGMPについて勉強しながら高めあっていくことが必要。
  • トクホや機能性表示食品で、効果があると思わせるコマーシャルがとても多いので、制度が厳しくなっても消費者の受け止め方は変わらないのではないかと感じる。トクホでなくて機能性表示食品であることがあまり強調されると機能性表示食品の方がいいと思うかもしれない。そもそもサプリは必要なのか。
    いわゆる健康食品について、機能性表示食品やトクホなどの制度があることをまず消費者に知っていただかなくてはならず、それが難しい。効果はご本人に感じていただくものでバランスの良い食事が前提。改善すべきことは改善し、よりよい制度にしていくことが大事だと思う。
  • 健康被害情報を保健所に届けることになる。医者が因果関係を認めたケースということだが、高齢者特有の症状も出てしまうことがある。届出の線引きは?
    消費者ご自身としては、自分の身体にあわないときは止めるのが基本。そして医師に相談する。様子をみながら利用していただく、などが大切。
  • 企業からこの事例は届け出るべきかと保健所に問い合わせがくる。
    厚労省から届出が必要な事例について(軽症か重症か、届出までの日数)は通知を出している。企業には届出を迷ったら保健所に相談してほしい。
  • DX化により消費者や利用者にとってどのように便利なシステムが作られるのか。
    4月1日から利用できるようにシステム改善中。見やすくする観点ではスマホでより見やすく見られるようにする。概要をわかりやすくし、特に知りたい人が深く入って行けるようにする。PRISMA2020への準拠の状況が最初の検索で見られるようにするなども検討している。
  • 医薬品の用量を超えてはいけないというが、今も多い用量が認められている例があるのではないか。
    医薬品より多い用量が認められているものはない。昭和46年の「46通知」にあるが、医薬品のリストに載っているという理由のみで、食品に使ってはいけないわけではない。また、EPA、DHAは医薬品にもトクホにも使われている。量は医薬品を超えていない。
  • 届出に関して、3月までに提出する表示見本は古い様式でよいのか。
    2年の経過措置期間があるので3月までは古い書式でよいが、差し戻しがあるかもしれないし、ラベルは何年分か作ると思う。これから出すなら新しい様式で進めていただくのが法令の考え方だと思う。
  • 紅麹関連食品の健康被害から、今回、機能性表示食品制度の「たが」をはめなおしたと理解している。成分が有効であるとする根拠には怪しげな論文もあると思うが、PRISMA2020ならば保証できるのか。
    PRISMA2020になって劇的に変わるということはない。根拠論文によって透明性確保をめざす。今回の紅麹関連食品から出てきた課題に対する対応は、機能性表示食品の中身を論じるものではなかった。この制度も10年経ったので、根拠論文は1本でいいのか、論文の根拠の強弱の見直しをするのかなど、制度の中身も見直ししなくてはならない時期だろうと思う。しかし、論文の審査をするつもりはない。
  • 紅麹関連食品の健康被害発生時、生協では不安になる組合員さんもいて、出向いて説明するのは大変だった。機能性表示食品そのものへの心配を感じる人も多くいたと思う。情報は多く出されたが、それらが消費者に伝わる前に「麹」とついただけで買わないと言う人もいて説明しに回ることになった。
    最前線の方たちが説明にご苦労されたことはあちこちから聞いており、あらためて敬意を表し、感謝している。GMPを導入したとしても事故はゼロにならない。消費者庁もよりよい制度にするように努力していく。事業者の方には、毎日、衛生的な管理を継続していただきたい。
  • 健康被害対応のためのサンプル保管方法については事業者が決めていいのか
    それぞれの製品の特性によって様々であり、どんな事態の発生が想定されるか、追試のためにどのくらいの量のサンプルが必要か、賞味期限はどのくらいかを考えて適切に事業者に保管してもらいたい。
  • 生鮮食品へもGMP導入はあるのか。
    加工食品は製造工程管理による製品の品質を確保する観点から、GMPやそれに準じたものの導入を考えていただければと思う。生鮮食品については、機能性関与成分を添加しているわけではないので、加工食品と同程度の製造工程管理を求めることまでは考えていない。引き続き、食品衛生法に基づく一般的な衛生管理等を行っていただきたい。
  • 食品用のGMPは明文化されるのだろうか。
    平成17年に厚労省が出したGMPの通知が既にあって、それを2024年3月に改正した「311通知」でGMPは導入できる状況だった。民間2機関が認証した施設が既に200件くらいになっている。法令上の義務としての導入は今回が初めて。サプリを作る事業者みんなに導入を目指してもらいたい。
  • 原料をつくる工場へのGMPは望ましいというが、要件化されるのか。
    311通知で原料を作る工場におけるGMPについては「望ましい」となっているので、すぐに義務化とすることは困難だろう。しかし、できるだけ導入したり、民間認証を取ったりしてもらいたい。サプリ製造工場で原料の受け入れの確認をするので、原料の会社にもGMPのことを理解してもらいたい。サプリ製造工場の整備が整ったときに、そのときの状況に応じて原料への導入も検討が必要かもしれない。横断的なサプリの見直しも関係閣僚会合で求められている。
  • 自己評価はどのように行えばいいのか。
    有効成分が表示どおりに含まれているかが重要だから、少なくとも1年に1回は自社か民間機関による試験をしてもらいたい。1年に1回だけでよいか、という点は、製造量や製造管理状況から考えてほしい。
  • トクホはあまり増えず、機能性表示食品の方が著しく増加している。トクホはなくなっていくのか。
    トクホには疾病リスク低減を表示できるという利点がある。それぞれの利点を活かして利用されるのがいいと思う。