くらしとバイオプラザ21

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TTCバイオカフェ「食品のアレルギー表示について~みんなで食卓を囲めるようにするために」

本年度最後のTTCバイオカフェを、2月19日、東京テクニカルカレッジ実験室から配信しました(主催 くらしとバイオプラザ21、共催 東京テクニカルカレッジ)。お話は「食品のアレルギー表示について~みんなで食卓を囲めるようにするために」で、消費者庁食品表示課 課長補佐 宇野真麻さんにおいでいただきました。

配信中の宇野真麻さん

配信中の宇野真麻さん

主なお話

アレルギー表示とは

加工食品には、名称、原材料、添加物、内容量などの義務表示事項が決まっているが、中でもアレルギー表示(表示義務があるのは8品目)は、生命に関わる最も重要な表示。患者さんはこれをみて食品を選ぶので誤りが許されない表示でもある。
平成13年 厚労省が定めた食品衛生法でアレルギーの義務表示として5品目が決まった。時代と共に品目が増え、推奨表示の対象食品が増えたり、推奨表示が義務表示になったりしている。
平成27年 消費者庁ができて、食品表示法もできた。
令和5年 クルミが義務表示になった。義務表示までの2年間の猶予が終わるのは令和7年3月末。4月1日以降に製造されるクルミを含む食品にクルミの表示がないと罰せられる。令和7年3月末までに製造されたものは、その賞味期限が切れるまでは市場に出回っていても罰則にならない。令和7年4月以降に出回っている食品も3月31日までにできた製品はクルミ表示がないので気を付けてください。
マカダミアナッツが推奨品目に追加され、マツタケが削除された。削除は初めてのこと。消費者庁にとって削除はこわいことだが、過去4回の全国実態調査においてアレルギー発症報告がゼロであったこと、事業者に表示が過度の負担になっていないか、記載項目が過多で消費者が見にくくないかなどを鑑みて削除した。

アレルギーによる健康被害の報告より

3年おきに実施しているアレルギーによる健康被害の発生についての医師からの調査結果(即時型症例数)をみて品目の追加・削除を検討する。
「特定原材料」とは、義務表示。発症数が多く症状が厳しい8品目。
「特定原材料に準ずるもの」とは推奨表示。アーモンド、あわびなどの20品目。
令和6年度の調査が公表されたので、それについて説明する。
アレルギー専門医の協力で1年間の調査を行う。今回は報告が6562例で、有効な6033例を解析した。
年齢分布:0歳児が最多で中央値は3歳。経年変化をみるとグラフの山が年を追うごとに少しずつ右寄り(年齢が大きい)になり大人が増えてきている。
原因食物分布:6033件で最多は卵で、クルミ、牛乳、コムギ、落花生と続く。トップ3は過去からずっと鶏卵、乳、コムギだったが、令和3年から3位に木の実が入って来た。令和6年には2位になった。内訳はクルミ、カシュ―、マカダミアナッツの順。令和6年以降、類表示でなく、種類をばらして調査結果を説明している。0歳は卵、乳くらいしか食べられないと思うが、木の実が幼児に入ってきている。
初発分布:初めて診断されたときの原因食物をみると、0歳は卵、乳、コムギだが、2歳以降にクルミ、カシュ―が入っている。離乳食にナッツが使われているのか。ナッツは体によいと言われ保護者が摂取する傾向がみられ、乳幼児の皮膚に触れる機会が増えているのか。ナッツが乳幼児の年代の上位に入ってきた明確な理由はわからない。
ショック症例(重篤で意識不明、呼吸困難になるなど)分布:鶏卵、乳、クルミ、カシュ―が上位にある。
上位品目では木の実の増加が目立っている。クルミは顕著に増加したので義務表示にした。推奨品目のカシュ―も義務表示にすべしと消費者庁は考えている。

特定原材料や特定原材料に準ずるものの追加・削除

特定原材料に追加するときは、直近2回の全国実態調査結果で、即時型症例数で上位20品目に入っていること、または直近2回の調査でショック症例数の上位10品目に入っていて特に検討が必要と考えられることを目安にする。
削除するときは、直近4回の実態調査で上位20品目に入っていないこと、直近4回でショック症例数が極めて少ないことを目安にする。
直近2回分をみて、現在、ピスタチオを推奨品目にする方向で検討している。
削除については、今回は該当なし。ゼラチン、あわびは削除の対象になるかもしれないが、削除は怖い作業なので慎重に考える。マツタケ削除は過去の調査もみて考えた。
ピスタチオは即時型症例数の上位20品目に直近2回で入っていて、ショック症例数では令和3年は13位だが、令和6年は10位で目立ってきている。
そこに、症例数は増えているか。輸入量は増えているかと流通実態も加味して検討する。ピスタチオは輸入量が増えている。ペースト状が使われていることが多く、目視でわかりにくい。2021年からお菓子やパンが多い。原材料表示はされているが、症例数も増加。
カシュ―は推奨品目から義務品目に移行を考えている。
同時に公定検査法開発も行わなければならない。カシューナッツは公定検査法が令和7年度中に確立したら特定原材料にしたいと思っている。ピスタチオを推奨品目にするのも令和7年度中と考えている。

外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供

外食・中食では、加工品の表示ではないので、情報提供という。ファミレスでは取り組んでいるところが増えているが、昔ながらの食堂ではしていないところが多いので、情報提供をお願いしている。
メニューに書いていないのは、アレルゲンがないからではなく、アレルゲン表示をしていないだけ。昔ながらの店ではこのケースが多い。
できることからはじめてもらうように働きかけ、事業者に取り組みを勧めている。
経営者向け、患者向け、全体向けなど8本の動画を作った。従業員向けの本数が多い。

質疑応答

  • 日本のアレルギー表示の基準は海外に比べて非常に厳しいと思う。ビジネスの推進の立場から、これを緩和する動きはあるか。
    生命に関わることなので緩和する方向性はありません。
  • 基準が厳しいためにアレルギー表示に取り組めない企業もあると思う。
  • 子どもが食べるものがないくらいひどいアレルギーで、減感作療法でよくなったが、本当に苦労した。アレルギー表示によって、生命に関わることをわかってほしいと思う。
  • アレルギーの発症状況について、医師からの報告が紹介された。これは食物に気を付けてアレルギー症状が出ることを回避できた人は含まれないという理解でいいか。
    そうです。従って、食物アレルギー患者がどのくらいいるかなどはわからない。そういう視点での調査はしていません。