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東洋大学サイエンスカフェ「種の中をのぞいてみよう」

2024年10月22日、東洋大学大学院「科学コミュニケーション特論」では外部講師としてケンタッキー大学 准教授 河島友和先生をお招きして、サイエンスカフェを開きました。

自己紹介

高校時代、オーストラリアに留学した時に、植物の形の奇想天外さに感動し、植物の勉強をしたい、生物の先生になりたいと思うようになり、筑波大学鎌田研究室で学部生活を過した。
そこで英語の必要性を感じ、英語を使わなくてはならない環境に自分をおくために海外の大学院へ行くことに。ボブ・ゴールドバーグ(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のもとで、植物の種子の研究をして、博士号を取得。
フレッド・バーガー氏に呼ばれてシンガポールでポスドク生活を4年送り、バーガー氏についてウィーンへ。種子の研究者を募集していたケンタッキー大学に2016年着任し、今に至る。研究テーマは「受精と種子形成を分子レベルで研究すること」です。

食糧としての種子

私たちは摂取カロリーの70%以上を種子から得ている。その中には飼料を介する場合も含まれる。それらは、コメ、コムギ、トウモロコシ(飼料が多い)、オオムギ、ダイズ、ソバなど。
日本の種子生産の上位4位は、コメ、コムギ、ダイズ、オオムギ。アメリカの上位5つは、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、コメ、ワタと種類も順位も異なる。コメの生産量を見ると、日本は世界で10数位だが、トウモロコシ、ダイズなど、食糧としての種子は輸入に頼っている。
地球温暖化、人口増加などの課題に対して、種子食糧の安定的な生産は農学、生物学が貢献できるだろうと考えている。私は種子の大きさと数を増やしたら増産できるはずで、種子の大きさが決まる仕組みを学ぶことで食糧生産向上に貢献したい。植物も計算して種子の大きさを決めているはずだから。

どうやって植物は種をつくっているのか

私が研究しているのはシロイヌナズナ。これは自家受粉する。
受粉すると助細胞が花粉管を誘導し、助細胞は破裂してふたつの精細胞が放出されひとつはひとつの卵細胞と受精。もうひとつの精細胞は中央細胞と受精する。これを重複受精(2回受精が起きる)という。卵細胞は胚になって種子の中の実生になり、受精した中央細胞は胚乳になる。
胚はひとつの細胞の中に遺伝情報をもつ核をひとつという通常の細胞分裂をしていくが、中央細胞は受精後核をいっぱいつくって多核の胚乳になる。核がいっぱいできるとひとつひとつ細胞化し通常の一核細胞になる。
多核の胚乳期が長いと種子は大きくなる。

発生を観察する

多核の胚乳を生きたまま見たい。シロイヌナズナの胚乳でGFPを発生させて観察した。
GFPは青色の光をあてると緑の蛍光を放つタンパク質で下村博士が発見し、2008年ノーベル化学賞が与えられた。それはGFPがあらゆる研究に貢献できるタンパク質だったから。いまでは多彩な色の蛍光タンパク質も見つかった。
GFPを多核のときに発現させたら、核の周りの星状のものが四方八方に広がっていた。これはアクチンにシアンの蛍光タンパク質を認識させて星状のものを光らせたもの。星状のアクチンの役割は核のポジションを決めて、その場所にとどめている。その働きは、アクチンをなくしたときに種は死ぬか、小さくなることからわかった。
アクチンを過剰発現させたら種は大きくなる。アクチンが活性化すると種皮をおし拡げる。
星状に広がる繊維状のものが種子形成の初期段階で種子の大きくなれる最大値を決めているようだ。
ヒストンは核に移動するタンパクなのでヒストンにマゼンタの蛍光タンパク質を融合させたら、それは核に移動して蛍光するようになる。
種子を大きくするには、複数の種子のひとつを選ぶ方法、栄養を与える方法などがあるが、私は多核期の種皮の柔らかな時期を利用する方法を考えていきたい。