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ifia JAPAN2024リスコミセッション「食品表示懇談会について」

2024年5月22日、国際食品素材/添加物展・会議ifia JAPAN2024「食の安全・科学エリア」で、リスコミセッション「食品表示懇談会について」を開きました。お話は消費者庁食品表示企画課 課長補佐 宗 伸一郎さんでした。食品表示の見直しが一通り終わり、2023 年度後半から始まった食品表示全体を俯瞰する食品表示懇談会についてお話いただきました。

宗 伸一郎さん

宗 伸一郎さん

満席の会場

満席の会場

1. 経緯

食品表示一元化検討会(2011年9月から1年間)が行われ、栄養成分、製造所、アレルギーなどいろいろな項目について検討された。やがて、JAS法、健康増進法を合わせて食品表示法ができて、表示項目ごとの検討が始まった。
 2017年 原料原産地表示
 2019年 遺伝子組換えの表示 
 2020年 食品添加物の表示の議論から「食品添加物不使用表示ガイドライン」策定へ
アレルギー表示アドバイザー会議の取りまとめも2023年に終わった。
食品表示の見直しが一段落した昨年秋から、食品表示懇談会が始まった。

2.食品表示情報の提供へのテクノロジー

2023年5月に第47回コーデックス食品表示部会が開催された。

  • アレルゲン表示に関する一般規格が修正された。
  • 予防的アレルゲン表示ガイダンス案が示された。
  • eコマースに関するガイダンス案
  • 食品表示情報の提供へのテクノロジー使用に関するガイドライン案
  • 持続可能性強調表示にかかる討議文書案 などが議論された。

コーデックスの食品表示情報提供へのテクロジー使用に関する議論も行われた。消費者への義務表示の情報提供にはQRコードなどを利用していいが、ロット番号など個々の商品にひもづく情報についてはQRコードでは不十分。
QRコードはアクセスしやすいが、技術インフラが必要。本当にスマホは皆が持っていて、適切に使えているのだろうか。容器包装上の面積が小さいときや自動販売機などはQRコードがいいのではないか。

3.国内におけるデジタルツールの活用についての検討

2020年にアプリを使って実証調査事業を実施した。

消費者:
表示は狭いスペースで情報が増えて見にくいというが、もっと健康増進に役立つ情報や個人にあわせた情報もほしいという意見があった。テストアプリの食品表示が消費者の購買行動に影響を与えることがわかり、参加者の7割以上がアプリを継続したいといった。特に健康に問題がある人がアプリ利用を希望した。うまくバーコードがスキャンできないケースもあった。
事業者:
各社の食品表示のフォーマットがバラバラで、各社のデータ収集をしても利用できなさそうだった。食品表示データには商品パッケージ画像データが含まれていない。食品表示データの修正が必要。

2020,2021年度には実証事業を拡大し、技術的論点が次のように整理された。

  • 食品表示データのフォーマットの統一
  • 食品表示データの鮮度や正確性は担保されなくてはならない。
  • 食品表示データは主体が収集してまとめて再配布するのか、個別に公開するのか。
  • 食品表示データを効率的に公開・流通できる仕組みが必要。
  • 加工食品の識別方法の検討。バーコードは価格も含まるケースもある。
  • データ流通にむけた段階的なロードマップを示す。

4.食品衛生など関係行政の事業の共同強化

2024年4月、生活衛生などの関係行政の強化のために食品衛生基準行政は厚労大臣から内閣総理大臣に移管された。
薬事・食品衛生審議会(厚労省)から食品衛生基準審議会(内閣府消費者庁)に所管が変わるが、食品衛生監視行政は厚労省のまま。規格作りは消費者庁になる。

5.食品表示制度見直しに関する提言

食品表示の見直しについては消費者基本計画に盛り込まれている。

  • 国際食品表示基準とすり合わせながら、食品ロス削減を図る。
  • 消費者の食品表示の利活用の状況を調べて、その結果を踏まえて検討する。
  • コーデックスと合わせながら国際的な状況を鑑みた調整を行う。

6.食品表示懇談会

食品表示が目指す方向性について、中長期的な羅針盤になるような制度の大枠を、様々な立場の委員が議論する。
2024年3月、令和5年度食品表示懇談会取りまとめが発表された。諸外国の表示制度との整合性、消費者がわかりやすい個別品目ごとの表示ルール、QRコードなどのデジタルツールの活用について議論が行われた。

7.諸外国との表示制度の比較

コーデックスなど諸外国の食品表示ルールが優れていたら、それをとり入れる。例えば日本の表示は消費者の多様なニーズには対応しているが、諸外国の食品表示制度に比べて網羅的な情報量が少ない。
日本、コーデックス、EU、アメリカ、中国の表示制度を詳細に比較した。

8.個別品目ごとの表示ルール

1950年、戦後の混乱期にまがい物が横行し、JAS法(農林物資規格法)が制定され、何度か改正されてきた。
食品表示一元化の際に、個別品目の表示のあり方が十分に議論されていないのではないか。消費者の合理的な選択という考え方でいいのではないか。ただし、事業者の負担は大きくならないように。
横断的な表示ルールのほかに一部の品目に個別の表示ルールが優先されるようなやり方は複雑。

9.栄養強化目的で使用した添加物の表示

消費者基本計画(2015年閣議決定)では、原則としてすべての加工食品において栄養強化目的で使われた食品添加物を表示するように書かれている。
食品表示に関する消費者意向調査では約5割の人が栄養強化目的で使われる食品添加物の表示を希望。9割以上の事業者が表示することになれば対応可能と回答している。

10.食品表示懇談会の取りまとめと今後の進め方

令和5年度の中間報告では、業界ごとのヒヤリングを行い、消費者の要望を受け止めたことが取りまとめられた。
諸外国の表示制度とのすり合わせ、個別品目ごとの表示ルール、QRコードなどのデジタルツール活用について、施行時期や消費者への周知を含めて検討する。デジタルツールの活用と個別品目ごとのルールについては個別分科会を立ち上げ、その結果を踏まえて懇談会で2029年度の取りまとめを目指す。