オンラインセミナー「始末よく暮らす・心地よく生きる~食品ロス削減にむけて私たちにできること」
2024年7月5日、消費者市民社会をつくる会(ASCON)主催オンラインセミナー「始末よく暮らす・心地よく生きる~食品ロス削減にむけて私たちにできること」が開かれました。
「はじめに」 阿南久代表理事
食品ロスは減っていて、事業系では2030年目標(2000年度のロス量の半分にする)をすでに達成し、家庭系も8万トン減ってきている。また、『食料・農業・農村基本法』が改正され、食料安全保障の考え方が位置づけられた。もともと2015年に国連が提案した「SDGs」の目標1と2の「貧困をなくす」「飢餓をなくす」にもとづいたものであり、食品ロスの削減については、目標12「作る責任。使う責任」として具体的に表現されている。しかし、現状では、コロナ、戦争、気候変動の影響で世界中で頓挫か退行しているような状況である。
世界は富、権力、食が局在化しており、フェアとはいえないし、残念なことに飢餓は日本のこどもたちにも拡がっている。本日はこうした状況を共有し、私たちにできることを交流したい。
はじめのことばを述べる阿南久さん
基調講演 「食品ロス削減に向けた施策パッケージ」
消費者庁 食品ロス削減室長 田中誠さん
進む食品ロス削減
食品ロスは社会問題でもある。2030年までに食品ロスを半分にする目標をたて、事業系では2022年に達成し、家庭系も減ってはいるが、まだ届いていない。農林水産省が2022年度の食品ロス推計値を公表したところ、22年度の食品ロス量は472万トンで、食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は236万トンで、2030年までに半分にするという目標を達成していて、家庭から発生する家庭系食品ロス量は236万トン(前年度比▲8万トン)で目標には届かないものの減量は進んでいることがわかった。
事業系の場合、コロナで外食の機会が減ったことも食品ロスが減った要因だが、小売り、製造業の努力、物流や人材不足で計画生産が推進された影響があるようだ。目標達成で終わりでなく、経済回復によるリバウンドも想定して努力を続ける。
家庭系では、食べ残しが100万トン、賞味期限切れなどによる直接廃棄が102万トン。食料自給率が4割の日本で、3200万トン輸入してその6分の1を捨てているのは問題!また国内には、貧困家庭、飢餓がある。
フードバンクから夕食のない子どもに届けたい!
食品ロス削減に向けた施策は消費者庁、農水省、環境省、こども家庭庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省と幅広く、多岐にわたっている。これらを「施策パッケージ」としてとりまとめ、いろいろなプレーヤーがそれぞれ何をするかわかりやすくして進めていく。
経済損失
食品ロスを経済損失としてみると、4兆円の価値ある食品を食べずに捨てていることになる。同時に生産、製造、流通で合わせて1034万トンの二酸化炭素を出しており、食品ロスはカーボンニュートラルにおいても問題がある。半減目標を達成しても終わりではない。
SDGs目標12番の「つくる責任」では、生産段階で472万トン(規格外で売られなかった野菜など)のロスが出ている。畑にすきこまれたりしている野菜もロスになる。
コロナで制限が多く外食産業における食品ロスは減った。しかし、今は外食もリバウンドは心配だが、活気を取り戻した。一方、欠品をふせぐための余剰生産から、計画生産による食品ロス削減の努力は続けられていて、事業系の食品ロスを減らせている。
食品寄付と食べ残しの持ち帰り促進
賞味期限切れ前に廃棄されている食品が14万トン。
外食産業での食べ残しの中で、火が通っているからあげ、フライドポテトなど持ち帰れるものが20万トンあり、持ち帰りを促進してはどうか。
消費期限切れで手つかずの食品のロスは14万トン。これを食品寄付にできないか。
持ち帰り促進で外食のリサイクル率もあがるかもしれない。
食品寄付の海外調査
海外でも食品ロス削減のための様々な取り組みがある。アメリカやフランスでは食品寄付をした企業への税制優遇制度を設けたりしている。日本にはない。
善意で行った食品寄付などにより事故が起こった時の責任を問わない免責には、よく言われる「よきサマリア人の法」が多くの国で適応されている。これまで、実際に民事、刑事で適用例はないが、寄付する人や企業は免責制度があると心配せずに寄付できるだろう。
フランスには、製造、小売りにおいて食物を捨ててはいけないという「廃棄規制」がある。販売期限がきたら、すぐに食品寄付へという強い法律もある。
日本でも免責制度について検討している。食品企業はフードバンクからの横流しに不安を持っている。適切に保存保管して渡してくれないと、食中毒は製造元の責任になる。
「食品期限表示の設定のためのガイドライン見直し検討会」
消費者庁 食品表示課 宇野真麻さん
平成17年、厚労省・農林水産省が「食品期限表示の設定のためのガイドライン」を策定し、事業者は、ガイドラインを参考に食品ごとに理化学試験、官能検査などをおこない、それらを根拠にして安全係数をかけて期限を決めることになった。 2024年5月より、「食品期限表示のためのガイドライン見直し検討会」がスタートした。期限表示の実態調査、事業者ヒヤリング、食品表示基準QA改正を、産業界、理化学試験や食品ロスの専門家、消費者団体で構成されるメンバーで進めている。2025年3月に改正ガイドラインを発表する予定。 食品ロス削減を実現しつつ安全の確保し、国際的観点も取り入れる。「まだ食べられる食品」はどう考えればいいのか。期限表示の設定の仕方がロスを生んでいるのではないか。
実践例の紹介
株式会社Mizkan
製造日から賞味期限の3分の1を過ぎたら、納品できないという商慣習がある。それならば、納品期限、販売期限がすぎたら積極的に寄付に回したいと思う。
公益社団法人フードバンクかながわ
寄付者への免責制度は必要だが、免責されるなら傷んだものをフードバンクに押し付けるモラルハザードが生まれる恐れもある。信頼できるフードバンクを国が認定し、フードバンク保険に加入してもらって、衛生管理のガイドラインをつくり、食品寄付ガイドラインを検討してもらいたい。
株式会社セブン&アイ・フードシステムズ
持ち帰れるもののガイドラインを厚労省が中心に作るという。持ち帰りの説明とその責任がはっきりするといいと思う。 かわいい「MOTTECO」バッグを使った持ち帰りの推奨も進めており、ライバル会社とも協力して持ち帰りを進めている。持ち帰った後のアンケートにより、持ち帰った食物の99%が食べきられたことも確認できている。