ifia2024機能性表示食品開発セッション「機能性表示食品制度の現状と今後について」
2024年5月22日、ifia2024(国際食品素材/添加物展・会議)で、機能性表示食品開発セッション「機能性表示食品制度の現状と今後について」を企画・実施しました。お話は消費者庁食品表示課保健表示室 食品表示調査官 田中健さんでした。
お話される田中調査官
機能性表示食品開発セッション会場風景
お話の概要
1.健康食品に係る制度の歴史
「食品は医薬品以外のもの」と定義されている。いわゆる健康食品には、保健機能食品(特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品)と「その他のいわゆる健康食品」がある。
1971年 | (46通知) 健康食品の医薬品まがいの売り方が問題になり、検討された。その結果、錠剤、カプセル等の形状のものは医薬品に該当すると判断されていた。 |
1989年 | 機能性食品懇話会が当時の厚生省で始まる。 |
1991年 | 特定保健用食品の制度ができる。 |
2001年 | 錠剤、カプセル剤等食品が食薬区分通知の改正で見直され、規制が見直された。食品衛生法施行規則の改正により、栄養機能食品と特定保健用食品(個別評価型)が策定された。 |
2002年 | 健康被害発生の未然防止のための体制整備及び健康被害発生時の被害拡大防止ための対応手順を定めた対応要領(いわゆる「14年通知」)が策定された。 |
2003年 | 食品安全基本法ができ、食品安全委員会がスタート。 |
2005年 | 濃縮された形状の食品に係る事業者の自主的な製造・品質管理(成分の均質化等)のため、GMP通知(いわゆる17年通知)策定 |
2009年 | 消費者庁創設。 |
2013年 | 規制改革実施計画の中で機能性表示の検討会スタート(2014年とりまとめ)。 |
2015年 | 機能性表示食品制度創設 |
2018年 | 指定成分制度創設 |
2024年 | いわゆる14年通知といわゆる17年通知の改正。食品表示行政が消費者庁へ移管された。 |
2.栄養や保健機能に関する食品表示制度
加工食品には原則として栄養成分が表示されている。特別用途食品には、特定保健用食品(トクホ)のほかに病者、妊産婦、乳児用として審査される食品もある。
保健機能食品の中にはトクホのほかに、栄養機能食品、機能性表示食品がある。
- トクホ:
- 国が審査し消費者庁が許可する。マークがつけられる。疾病リスク低減表示もできる。ヒト試験が必須。令和6年3月31日時点で1,054件が許可されている。
- 機能性表示食品:
- 国は審査をしない。科学的根拠を消費者庁長官に届け出る。合理性の挙証責任は届出者。機能性の科学的根拠としてシステマティックレビューを使うことも可能。令和6年3月31日時点で6,752件が届け出られている。
- 栄養機能食品:
- 事業者の判断で表示できる。食品表示基準内に基準が定められている。食品表示基準を改正するときは消費者委員会へ諮問しなければならない。機能性については、国が定めた栄養目標と厚労省の健康政策をもとに規格基準を策定。
3.機能性表示食品
法的位置としては、まず、食品表示法第5条に基づき、食品表示基準に従った表示がされていない食品は販売できないことになっている。
また、食品表示基準第2条において機能性表示食品の定義が定められており、この中で、食品関連事業者に関する基本情報、安全性、機能性の根拠、生産・製造品質管理、健康被害情報収集体制などを消費者庁長官に販売60日前までに届け出なければならないこととなっている。
機能性表示食品は第3条には機能性表示食品の義務表示事項が書かれている。栄養成分で推定値ではいけない。摂取の目安量、連絡先、体調が悪くなった時の対応など、記載項目は多い。第9条は表示してはいけないことが定められ、消費者に誤認させないようにしている。
また、保健機能食品以外の食品は保健機能食品と紛らわしい名称等を表示することはできない。
4.届出の流れ
販売の60日前までに届出情報を提出しなければならない。
消費者庁においては形式的確認を行う。つまり審査ではない。安全性や機能性の根拠の論文の質の評価はしない。
例えば50代の人だけの試験なのに、全年齢に効果があるように書かれていたりしたら確認する。確認のやりとりが終わったら届出番号を付与し、消費者庁HPで情報を公開する。
届出後もちゃんとチェックを続けてもらう。
5.いわゆる健康食品の安全性確保に関する取組
いわゆる健康食品については、旧14、17年通知に基づいて原材料、製造工程の安全確保が推奨されている。また、指定成分等含有食品についてはGMPが義務化されている(食品衛生法第8条)。
食品の健康被害情報収集体制としては、医療機関には食品衛生法第63条に基づく届出義務、営業者には情報提供の努力義務が課せられている。提出された情報は、自治体から厚生労働省に報告される。
消費者庁では、国民生活センター(PIO―NET)から情報を得ている他、例えば今般の小林製薬の事案のように消費者庁への直接の報告もあり得る。
6.大きな改革
2023年9月29日から、原則としてシステマティックレビューの作成は国際指針であるPRISMA声明(2020年)に準拠することになった。そのためのチェックリストも作成している。
その他、届出内容に責任の確認欄を追加し、挙証責任の再確認も行うようにした。
PRISMA声明(2020年)に準拠する施行期日は経過期間をおいて令和7年4月1日以降。
7.機能性表示食品を巡る検討会
小林製薬の紅麹原料を含む機能性表示食品に関連して2024年4月19日から「機能性表示食品をめぐる検討会」を5回開いた。明日の検討会でとりまとめ案を提示する予定。
紅麹原料を含む機能性表示食品のことを踏まえ、ヒヤリングと議論を重ねた。議論は多様で、消費者への情報提供の在り方、生産管理、品質管理に及び、機能性表示食品の今後の在り方を検討した。
明日は17時からyou tube配信するので、是非、聴いてほしい。
8.普及啓発
消費者基本計画(令和2年3月31日閣議決定)に基づき、消費者庁では食品表示に関する消費者意向調査を毎年行っているが保健機能食品の認知度は16.7%と低い。摂取の経験がある人、今も摂取している人は2~3割。
認知度の推移をみると、トクホは25%くらいの人が知っているが、機能性表示食品はもっと低い。リーフレットや動画を掲載しているので是非、見ていただきたい。
特にトクホとの違いを説明した動画は、2024年5月17日夜に公開したばかり。特別用途食品(経口補水液)の動画は今年5月初めに公開。栄養成分表示、栄養強調表示のルールに関する動画は一昨日掲載したので、是非、いろいろ見ていただきたい。
テープカット
開会のあいさつをされる田中調査官