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コンシューマーズカフェ「『食品添加物不使用ガイドライン』猶予期限切れを前にして」

2024年2月27日、今年度最後のオンラインコンシューマーズカフェは「『食品添加物不使用ガイドライン』猶予期限切れを前にして」(講師 消費者庁食品表示企画課 課長補佐 宇野真麻氏)でした。このガイドライン(以下 GL)ができて2年間、周知活動をされてきた宇野さんの猶予期限切れ前の最後のお話となりました。GL策定時に宇野さんが自分で決めたルール「同じ資料を使って同じトーンでお話しし、聞いている方が混乱しないようする」に従って、わかりやすいGLの解説と、GL公開後の事業者などとのコミュニケーションについて話してくださいした。

お話の主な内容

1.義務表示事項としての添加物表示

食品添加物については、事業者には使った食品添加物を表示する義務があり、使っていないものを表示するルールはない。表示の中に消費者に誤認させるものがあるということで、誤認させないことを目的につくったのが本GL。本GLにより、食品添加物の義務表示をやめるのではないかという誤認が広がったが、使用している食品添加物の表示ルールは本GLによって変わらない。使っていない食品添加物の表示の仕方が変わる。
現在、食品添加物は定義に則って1,000を超えるものが認められており、厚労大臣の指定制度がある。実際には要請者が厚労大臣に申請し、食品安全委員会でリスクを評価し、その結果を厚労省審議会で審議し、用量用法を議論し、省令告示で伝える。
消費者庁は指定添加物の表示のところで関わっている。2024年4月から厚労省の基準審査課が消費者庁に移管されるが、食品添加物に国の指定が必要なことはかわらない。
食品添加物の義務表示ルールも、本GLができても変わらない。

2.食品添加物表示制度に関する検討会について

添加物の表示制度検討会の報告書が2020年3月に出され、その中で次のことが提言された。

  • 食品添加物の表示は現行制度を維持
  • 無添加・不使用の表示
  • 栄養強化目的で使用した添加物の表示(2024年度に食品表示基準の改定予定)
  • 普及啓発・消費者教育を行う

3.食品添加物の不使用表示に関するガイドライン

消費者を誤認させるという意味で、無添加・不使用の表示がそれに該当するかもしれない。例えば人工、合成も無添加表示とセットで使われていて、誤認を招いているようだ。そこで、不使用表示のガイドラインを作ることになった。
人工、合成の表示は任意表示で「人工〇〇無添加」のように用いられることが多い。検討結果を受けて、人工と合成は、食品表示基準から2020年7月に削除された。
不使用表示に関するガイドライン検討会は、前の検討会委員や事業者、弁護士も加わってスタートし(2021年度)、2022年3月にGLを公表。
添加物の使用目的や国が安全性を調べて認めていることを知らない人は減ってはいるが、半分以上は知らないこともアンケートで明らかになっている。
不適切な表示すべてを示すことはできないので、沢山の食品の表示をみて、誤認を起こさせそうな10個の類型をあげることにした。どういう表示がいいのかと問われることが多いが、字面だけで誤認するかどうかを判断するのは難しい。字面だけでは判断しない旨もGLに書き込んだ。

10の類型は次のとおり

類型1: 単なる「無添加」の表示
ジュースの「無添加」が「食塩無添加」に変わったという話を聞いた。類型1を意識してもらえたかもしれない。
類型2: 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
化学調味料、合成着色料、人工甘味料等、人工、合成、化学、天然が該当する。
類型3: 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例えば、マヨネーズには調味料、酸味料、香辛料抽出物以外の添加物は使えないことが定義されている。
類型4: 同一機能、類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
調味料不使用と書いて酵母エキス(うまみを凝縮したもの)を使っている
類型5: 同一機能、類似機能を持つ添加物を使用した食品への表示
日持ち向上効果をねらってグリシンをつかったのに保存料無添加と書く
類型6: 健康、安全と関連付ける表示 着色料不使用だから体に優しいなど
類型7: 健康、安全以外と関連付ける表示
  着色料不使用だからおいしいなど。
類型8: 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
ミネラルウォーターに着色料不使用
類型9: 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている、または使用されていないことが確認できない食品への表示
トレースできないまま「自社の工程では食品添加物を使用していない」など
類型10: 過度に強調された表示

4.普及啓発

消費者に誤認させそうな表示はやめるか、やめるように意識してほしい。
表示の見直し期間は2024年3月末まで。罰則を伴わないケースなので、経過措置期間不要と当初は考えていたが、表示修正の時間が必要だというパブリック・コメントにおける事業者からの意見を受けて、猶予期間を置くことにした。

5.この2年間に文章でいただいた事前質問について

これまで、猶予期間の2年に、講演会などの度に事前にいただいた302の質問を17グループに分類した。類型5と4、類型9、類型1に関する質問が多かった。

類型1:単なる「無添加」の表示
「食品添加物は使用していません」「添加物を使用せずに原材料だけでつくった」はOK
類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
「化学調味料不使用」に関する質問が多かった。何を言いたいのかという逆質問に対する答えはほとんどなく、代替案も示されなかった。天然水使用はGL対象外。
類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
一括名の中に一つでも法令で認められていないものが含まれていたら、表示するのはよろしくない。
類型4:同一機能、類似機能を持つ添加物を使用した食品への表示
同一機能、類似機能の組み合わせをリストアップしてほしいという要望が多かったが、商品設計は事業者が決めること。同一機能、類似機能の組み合わせでないかという問い合わせに回答できるようにしていただければよい。 
別用途で使用するときは問題ない。
類型5:同一機能、類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
原材料をどこまで加工したら当該食品との科学的な同一性が失われているとみなされるのか。どこまで抽出、精製したらいけないという線引きはない。いわゆる食品の状態ではなくなるほど高度な加工をしていたら類型5に当たる。
類型6:健康、安全と関連付ける表示
安心はGLに入っていないが、安全に近いところにある語句であると考える。
類型7: 健康、安全以外と関連付ける表示
「美味しい」の根拠は何人のアンケートならいいというものではないが、不使用だからおいしいといえる根拠は整えていただきたい。保存料不使用用だから早く食べてくださいは、期限表示(食品基準第3条)と矛盾する。
期限表示は開封前の設定であることがどこまで理解されているか。開封後は早く食べてほしいはOK
類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
使用が予想されているかどうかの基準を示してほしいといわれたが、これを決めるのは難しい。食品添加物に関する表示をするときは根拠をもって判断してください。
類型9:食品加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている、または使用されていないことが確認できない食品への表示
不使用の照明をどこまで整えればよいか。すべてさかのぼってください。
キャリーオーバーとなる添加物は最終製品で効果を発揮しないからといって、食品添加物不使用をしては事実に反している。
類型10:過度に強調された表示
一括表示を見る妨げになるような目立つ表示は該当する。

10類型以外の質問は以下の通り。

  • 行政の監視:4月1日以降の執行について関心が高い。GLだけによる監視はないと思われる。表示の監視は保健所や自治体の表示の監視に組みこまれる。指導の段階では公表されないだろう。
  • 見直し期間:資材が残っているからいいといっていない。消費者を誤認させる表示は速やかに切り替えてください。
  • GLの範囲:ポップ、HPなどは対象外だが、気を付けてほしい。
  • チラシ:令和4年5月に消費者庁で作成したが、不使用表示を推奨しているようにみえるという意見もいただいた。検討していく。
  • 罰則:責任の所在について。販売店舗も食品表示法では処罰の対象になる。一般的には店舗よりも表示責任者が対象になっていた。
  • 消費者教育:添加物嫌いの人はいるので、情報発信をしてほしい。
  • 普及啓発:基準審査課が消費者庁にやってくるので、スムーズに実施できることを期待。
  • 製品全体で判断:ケースバイケースで検討するというのはわかりにくいと思う。書いてはいけないことを書かないでほしい。こども相手か、大人相手かなどのケースが出てくるので、そういうときはケースバイケースになるだろう。
  • その他:複数の類型に当てはまらないかに気を付けてほしい。
    本ガイドラインの位置づけはQAの別添。
    書いてもよい食品添加物不使用ガイドライン」という形で示してほしい。
  •  

質疑応答

(〇は事前質問と、参加者からの質問。はスピーカーの発言

  • カタログ販売のカタログはGLの対象か。 
    カタログは容器包装でないので対象外。景表法でHPやカタログを監視している。
  • 本GLに賛成しているが、酵母エキスを使っておいしくできた食品を作る人の声も聴いてほしい。
    酵母エキスを使った商品の開発を本GLでは否定していない。食品添加物を使っていないという表示が消費者を誤認させるかが問題だと思う。
  • 類型7の「保存料無添加だから早く食べほしい」は科学的にまちがっていない。消費者教育ができていないことが前提になって、このGLがつくられているように思う。科学的知識のない人に丁寧な情報提供が大事。
  • 類型9。砂糖はつくるときに添加物を使うのが、それは最終製品には残っていない。
    製造工程をすべてさかのぼって下さい。最終製品になるまでに使った食品添加物はすべて対象です。
  • 食品添加物を悪者にするのはやめようと思うが、バイヤーが添加物を使わずに作ったものを選んできたときはどうしたらいいだろうか。
    添加物を使っていないと書かずに、違う表現、例えばわが社のうまみはこうして創り出しましたなどと、書いていただけたらと思う。
  • 該当しそうなものについて消費者庁に連絡をしたらアクションしてもらえますか
    4月以降、権限の委任により保健所が現場に出向くことになる。消費者庁にご連絡いただいたときは、自治体に動いてもらい、消費者庁は現場に赴くことはほぼない。現場では指示、命令、罰則の段階を踏むことになると思う。
  • 事業者に「なぜ不使用表示をしたいのですか」というアンケートができたらと思う。3月末までは無添加で売りきろうという事業者がいるようにみえる。
    消費者意向調査は消費者庁ではやりやすいが、広く事業者の意見は聞くことが少ない。この2年間、事業者に不使用表示で売り上げがあがるのかどうか、機会があるたびに尋ねてきたが、明確な答えはなかった。他社がやっているから、突然やめられないからと答えられる。無添加表示は誤認を招くことがあると自覚してもらえたらと思う。