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メディア意見交換会「アメリカの種苗事情」

2024年2月15日、ゲノム編集技術で作った種苗を扱う、今アメリカで活躍している事業者らとのメディア意見交換会が開かれました(主催:ゲノム編集育種を考えるネットワーク、共催:日本種苗協会、バイオインダストリー協会、バイテク情報普及会)。
訪日したのは、米国種苗協会、DGM社(アルゼンチン)、ペアワイズ社(アメリカ)、シムプロット社(アメリカ)。このメンバーは、前日の2月14日、アメリカ種苗協会と日本種苗協会によって行われたセミナーのために来日しました。

来日した方々(向かって左から)Pairwise’s Dan Jenkins,  J.R. Simplot Company’s Gary Rudgers, ASTA’s Fan-Li Chou,  GDM’s Agustin Herrera Vegas and Tomas Tresca (写真提供 アメリカ種苗協会)

来日した方々(向かって左から)
Pairwise’s Dan Jenkins,  J.R. Simplot Company’s Gary Rudgers, ASTA’s Fan-Li Chou, GDM’s Agustin Herrera Vegas and Tomas Tresca (写真提供 アメリカ種苗協会)

自己紹介

初めに参加者からの自己紹介が行われました。

  • アメリカ種苗協会副会長 Fan-Li Chou
    700社以上の会員がいる。会員の扱っている作物はトウモロコシ、ダイズ、ワタ、テンサイ、果実、葉物野菜などで、利用している技術も有機栽培、慣行栽培、遺伝子組換え、ゲノム編集と多様。
  • DGM社 国際担当役員 Agustin Herera Vegas、
    プロジェクトマネージャー Tomas Tresca,Strategy

    1982年に設立。家族経営の企業から始まった。ダイズ、トウモロコシを扱う。ゲノム編集では消化性を高めたダイズ(ラフィノース及びスタキオースを減少)および乾燥ストレス耐性ダイズを研究・開発中。
  • ペアワイズ社 副社長 ダン・ジェンキンス氏
    2017年に設立。ゲノム編集技術を使って、作物の持つ遺伝子をノックアウトしてつくった野菜や果実を研究。開発中。
  • シンプロット社 申請担当役員 Gary Rudgers博士
    1929年設立。業務用冷凍フライドポテトメーカー。ゲノム編集技術や遺伝子組換え技術を使ってジャガイモを開発中。ゲノム編集で作ったのは子芋で用いるタイプで、冷凍で販売され家庭での調理に利用されている。
会場風景

会場風景

意見交換会

参加したメディアによる質疑応答が行われました。

  • 質問1「新しい技術についてどうやって生産者に伝えるのか。教育プログラムがあるのか」
    (DGM)まだ商品化できていないが価値を伝えるためのコミュニケーションプログラムは必要だと思う。
    (シンプロット)契約農家に栽培してもらうためにコミュニケーションを大切にしている。生産者は消費者に売るのでなくシムプロット社で生産物はすべて買い上げている。最大限の収穫をしてシンプロットに納品してもらうためには、共に働くこともある。
    (ペアワイズ)高品質のカラシナを契約農家が栽培している。高い技術を持った農家が高品質のカラシナを作ってくれており、コミュニケーションは欠かせない。
  • 質問2「米国種子協会の会員には有機農業、慣行農業、バイオテクが共存しているとのこと。例えば日本だと農薬だけを売る企業と、農薬と遺伝子組換え種子をセットで扱う企業は相いれない印象がある」
    アメリカでは、同じ生産者が有機農業も慣行農業もバイオテクも行っていたりする。特に栽培方法によって、事業者の間に線引きがあるのではない。どんなダイズか、どんなトウモロコシかを生産者は選ぶ。技術で選んではいない。当然のこととして、私たちの種苗協会の中でも技術によって分断されたりしていない。今回来日した3社もスタートアップ企業、中規模の企業と様々で、扱っている種苗も油糧穀物、野菜、ベリー、果物と多様。来日グループも私たちの協会の「多様性と共存」を表すメンバーになるように編成した。
  • 質問3「シムプロット社はアクリルアミドができないジャガイモを遺伝子組換えでつくっていたと思う。アクリルアミドができにくいことは消費者にメリットが見えやすい遺伝子組換え作物として注目してきた。その後どうなったか」
    遺伝子組換えジャガイモはフライドポテト用、ゆでて用いるポテトサラダ用として、今も研究を続けている。ゲノム編集も遺伝子組換えもそれぞれによい点がある。 遺伝子組換えで作ったアクリルアミド削減ポテトは続けている。アクリルアミドの60-70%の削減は可能だが、需要が高くない。
  • 質問4「ゲノム編集作物は生産者が自家採種できるか」
    ゲノム編集で付与された形質は子孫に受け継がれる。種苗会社としては、毎年、種子を購入してもらうことで知財を守りたいのは確かだが、一般的に生産者は品質の高い作物が得られるように種子を毎年購入している。F1種子からできた作物から種をとっても、品質が落ちることは知られている。
  • 質問5「監督官庁が環境、生物多様性に関して気にしていることは何か」
    (アメリカ)ゲノム編集は組換えでなくて自然の交配をまねているもので、規制の対象にならない。また、遺伝子組換えも今まで問題は起きていない。
    (アルゼンチン)政府管理当局にゲノム編集食品は届け出る。環境影響についても政府は議論する。従来の品種改良とおなじだとわかれば、遺伝子組換えの規制対象外象外となる。それは事前相談をして商品化前に届ける。組換えでないことが発表され、その回答を文書でうけとる。
  • 質問6「果樹の育種は時間がかかるが、ゲノム編集したものを接ぎ木するのか」
    接ぎ木などは果樹で普通に行われていたことだから、ゲノム編集も接ぎ木もだんだんに組み合わせて使われていくだろう。ゲノム編集は「普通の技術」だということだと思う。