くらしとバイオプラザ21ロゴ
  • くらしとバイオニュース
  • 一般農場と遺伝子組換え作物隔離圃場比較見学会開かれる

     2015年7月29日、一般農場と遺伝子組換え作物隔離ほ場比較見学会として、つくば市内にある農林団地と筑波大学へバスで見学に行きました。毎年この時期に開催しているつくばへのバス見学会ですが、今年は13回目を迎えて、初めてジーンバンクも見学しました。
     つくばから東京へ戻る帰りのバスの中では、遺伝子組換え作物が栽培されている様子を実際に見ることができた、ジーンバンクの活動や種子保存の様子が興味深かったなどの感想が参加者から聞かれ、大変好評でした。


    農業環境技術研究所(農環研) 隔離ほ場

    農業環境技術研究所の隔離ほ場(ほ場とは作物を栽培する田畑など)では、農環研 生物多様性研究領域の芝池博幸主任研究員より施設の説明をお聞きした後、実際に隔離ほ場の中に入り、実験栽培されている遺伝子組換え作物を見学しました。
    隔離ほ場は周囲を防風林で囲むことで栽培する作物の花粉飛散を抑えていること、ほ場内での作業後、ほ場外部に組換え体を出さないように専用の長靴に履き替えたり、植物体をほ場内で焼却処分できるように焼却炉を設置したりするなどの管理をしていることなどの説明がありました。私たちは見学の際に、不織布製の靴カバーを着けてから隔離ほ場に入り、ほ場から出る前に靴カバーを脱ぐなどの対策も行いました。
    ほ場では農業生物資源研究所(生物研)の研究者が遺伝子組換えイネと遺伝子組換えタバコの栽培実験を行っています。それぞれの作物について、生物研 遺伝子組換え研究推進室の山崎宗郎室長が説明をしてくださいました。
    見学した遺伝子組換えイネは、開花をプラントアクチベーターという農薬(散布するとイネの免疫反応がすばやく起こるように“アイドリング”状態になることで病気になるのを防ぐ薬剤)でコントロールできるものでした。将来的には、この開花コントロールのしくみを他のイネ科植物に応用し、開花を遅くすることで葉や茎を伸長する植物の特性を利用してバイオマスを増やすことを目標としているとのことでした。
    遺伝子組換えタバコについては、葉緑体に組換え遺伝子を組み込み、タンパク質を大量に作らせる、いわば植物を物質生産工場として利用する研究をしているとのことでした。実際には今まで工業的には製造が難しかったタンパク質農薬の成分を大量にタバコに作らせて、農薬成分を取り出し、製品化を目指したいそうです。


    写真
    芝池さんによる隔離ほ場の説明
    写真
    山崎さんによる遺伝子組換えイネの説明

    農業生物資源研究所(生物研) ジーンバンク

    ジーンバンクは農林水産省が行っている事業の一環で、農業利用する植物、動物、微生物を資源として管理、保管して、多くの研究者や育種家などが利活用し、農業に活かそうという取組みです。生物研はその中心的役割を果たしており、今回は永年保存用種子や配布用種子が保管されている施設などを見学しました。
    まず、ジーンバンクの活動全体を生物研 広報室の井濃内順氏から説明があり、その後、種子保存庫などを見学しました。保存用種子はステンレス製の缶に入れられて-18℃、相対湿度30%の保存庫に、配布用は専用のペットボトルに入れられて-1℃、相対湿度30%の保存庫にそれぞれ保存されていました。
    配布用種子については約22万5千品種ほど保管されており、生物研 遺伝子資源センターの宮下進さんが5年に一度の発芽試験を行うことで品質を管理していることなどを説明してくださり、特別に実際の発芽試験の方法など直接見せてくださいました。


    写真
    配布用種子の倉庫
    写真
    発芽試験の説明をする宮下さん

    筑波大学

    筑波大学では遺伝子実験センターの小野道之准教授が遺伝子組換え植物の栽培施設や実験室などを案内し、講義をしてくださいました。
    屋外では、遺伝子組換えトマトや遺伝子組換えユーカリが試験栽培されている温室(特定網室)、遺伝子組換えユーカリが屋外試験栽培されている模擬的環境試験ほ場(隔離ほ場)などを見学しました。センターの建物内では、遺伝子組換え実験を行っているP2実験室や、小野先生の研究室で研究している遺伝子組換えアサガオを栽培しているP1P栽培室などを特別に見学させてくださいました。

    写真
    温室の見学
    写真
    実験室見学の様子

    講義

    講義では、遺伝子組換え技術と社会との関連性について、植物の利用を中心にお話がありました。遺伝子組換え実験や遺伝子組換え作物、食品に関する法律のお話、世界や日本での遺伝子組換え作物の利用状況や、青いカーネーションや青いバラが青くなる分子レベルでのしくみなどを丁寧に、分かりやすくお話してくださいました。最後には遺伝子組換えに関する学校教育に対する取組みとして教員向けの研修会や出前授業などの活動も紹介してくださいました。

    写真
    講義の様子
    写真
    集合写真

    なお、過去5回のバス見学会の様子は下記にレポートを掲載しています。
    2014年(第12回) 筑波大学・筑波農場見学会開かれる
    2013年(第11回) 筑波大学・農林団地バス見学会開かれる
    2012年(第10回) 筑波大学・農林中央団地・遺伝子組換え作物ほ場見学会開かれる
    2011年(第9回) 第9回一般農場と遺伝子組換え作物隔離圃場比較見学会開かれる
    2010年(第8回) つくば農場比較見学会開かれる

    © 2002 Life & Bio plaza 21