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筑波大学・筑波農場見学会開かれる

 2014年7月29日、つくば農業見学会を開きました。午前中に筑波大学遺伝子実験センター、午後は農林中央団地を訪ねました。暑い日でしたが、小学生からシニアまで実り多いバスの旅となりました。


筑波大学遺伝子実験センター

初めに小野道之准教授より、遺伝子組換え植物の研究の仕方、実験計画の申請と審査の仕組みについてお話をうかがいました。その後、実験室や試料の保存室、特定網室を見学しました。

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遺伝子組換え技術のあらましのお話 「バイオの実験ではこんな道具を使います」
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パーティクルガン(遺伝子組換えを行う装置) 室内で育てられる遺伝子組換えアサガオ
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試料がマイナス80度で保存されている。これらの多くは、
3.11の停電で失われてしまった
ユーカリの温室の前で


食と農の科学館・資源作物見本園・雑草園の見学

作物研究所企画管理室専門員 土屋一成氏のご案内で資源作物見本園や雑草園などの見学をしました。


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食と農の科学館 「くらしとバイオ」の見学会の掲示
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土屋一成氏の説明 資源作物見本園


農業生物資源研究所遺伝子組換え試験ほ場(生物資源研究所地区)と農業環境技術研究所隔離ほ場の見学

遺伝子組換え除草剤耐性ダイズ・害虫抵抗性トウモロコシの試験栽培がおこなわれている農業生物資源研究所の試験ほ場を、広報室 都島美行氏のご案内で見学しました。また、農業環境技術研究所の隔離ほ場では、ほ場の仕組みを芝池博幸氏より、試験栽培している遺伝子組換えタバコを農業生物資源研究所の田部井豊室長よりそれぞれ説明していただきました。


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都島美行氏の説明
 
元気に生えてきた雑草に埋もれるダイズ(これから除草剤
をかけると雑草だけ枯れるはず)
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非組換えトウモロコシの中からでてきた幼虫 隔離ほ場について芝池博幸氏の説明
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組換えタバコについて田部井豊氏より説明 隔離圃場内では靴カバーを着用し、外に種や土を
持ち出さないようにする


講演1「遺伝子組換え作物・食品に関する講演」     筑波大学 小野 道之 准教授

はじめに
日本は3100万トンの穀物を輸入しており、これはお米の生産量の4倍量にあたる。アルゼンチン・ブラジルの遺伝子組換えダイズの生産量は、この20年で5倍になった。日本の米の生産量は増えていないことを考えると、遺伝子組換え作物の利用は、食糧増産の鍵の一つとして大変有望である。
 
除草剤耐性
その中で多くつくられる形質は除草剤抵抗性。手作業で除草できないときに有効な品種で、全部が枯れる除草剤(非選択性)が利用されている。グリホサートという化学物質は簡単な構造のタンパク質で、土壌ですぐに分解される。この除草剤は糖からアミノ酸をつくるシキミ酸経路(動物にはない)を阻害するので動物には無害。具体的には、シキミ酸経路の中にある酵素であるEPSPSに除草剤グリホサートが結合し、この経路が働かなくなる。植物は必須アミノ酸がつくれず枯れる。植物に土壌微生物由来のCP4EPSPSの遺伝子を導入しておくと、グリホサートをかけてもシキミ酸経路が働き、枯れなくなる。多くのメリットがあるが、不耕起栽培といって、畑を耕さない栽培方法ができるようになり、世界的に問題になっている表土の流失を防ぐ切り札の一つである。
 
遺伝子組換え作物
アメリカのダイズの97%、ナタネの24%が遺伝子組換え。栽培コストが削減され、二酸化炭素削減にも貢献し、栽培が楽になるというメリットがある。消費者にとっても価格低下のメリットがあるはず。
親から子ではない遺伝子のやりとりを「水平伝搬」とよび、親から子へは「垂直伝搬」という。水平伝搬で移動した遺伝子には、使われずに消えてしまう遺伝子も多いが、その遺伝子を獲得して生き残る種もある。
一例として、カイコは水平伝搬でバクテリアからもらった遺伝子があるため、桑の葉を食べられることが知られている。桑には動物のショ糖分解酵素を阻害する物質が含まれるため、普通の昆虫は食べることができない。しかし、カイコはショ糖を分解する別種の酵素を持っているため、桑を食べられることがわかった。研究によりこの酵素が、カイコとバクテリアと同じ分子系統樹だったことがわかった。カイコは太古にバクテリアの遺伝子を水平伝搬により獲得したものと考えられる。GMダイズがCP4EPSPSを持ち、グリホサートに耐性があるようになったことと、どこか似ていて興味深い。

講演2「遺伝子組換え作物・食品」       農業生物資源研究所 田部井 豊 室長

実用化された遺伝子組換え農作物
日もち性を改良したトマト、除草剤耐性ダイズ、害虫抵抗性トウモロコシ、除草剤耐性ナタネ、害虫抵抗性綿、害虫抵抗性・ウイルス抵抗性ポテト、ウイルス抵抗性パパイヤ、除草剤耐性テンサイ、除草剤耐性アルファルファが実用化され、日本で安全性が確認されている。
日本で栽培されているのは色変りの青いバラだけ。
 
世界での栽培
世界で遺伝子組換え作物の栽培面積は、日本の国土の4.6倍にあたる1億7250万ha.。
日本には3050万トンの穀物が輸入されている。トウモロコシ、ダイズ、ナタネが大量に輸入され、輸入されるトウモロコシの9割、大豆の6割が遺伝子組換え。日本に輸入されるトウモロコシの4分の3は飼料用で、残りはコンスターチ。大豆の半分以上は製油用で残りはみそ、しょうゆ、食品に加工されている。
 
品種改良
私たちが食べている作物は原種から品種改良されたもの。原種やいろいろな作物の種はジーンバンクという施設に遺伝資源が保存されている。
品種改良として、病気に強くておいしくないトマトと、病気に弱いがおいしいトマトを繰り返し掛け合わせた例が紹介された。また、求める形質を作出するために放射線をあてて突然変異を誘導したり、細胞を融合したり、遺伝子組換え技術を使ったりして行っている。
遺伝子組換え技術を利用すると、全生物の遺伝子が利用できるという利点があるが、安全性評価に費用や時間がかかるという不利点もある。
 
遺伝子組換え技術の安全性評価
1972年に大腸菌での遺伝子組換えに成功した。1975年のアシロマ会議では、科学者自らが規制しながら、安全性を確かめながら研究・開発するやり方を決めて、今もそのやり方は踏襲されている。
カルタヘナ議定書の定義にのっとり、環境への影響が評価されながら、遺伝子組換え作物は開発される。具体的には、初めは閉鎖系温室で、次に特定網室、隔離ほ場、最後に一般ほ場、安全性を確認しながら栽培の場所を段階的に広げていく。
 
開発中の作物
開発中で期待されている作物には、ビタミンAが強化された米「ゴールデンライス」、ヒト用スギ花粉症治療米、血圧調整米、血糖値に応じてインスリン分泌を促す米などがある。
今年度行っている葉緑体形質転換タバコは新しい取り組みで、葉緑体の中のDNAを組み換えることで、有用たんぱく質を大量につくらせる「植物工場」を目指している。葉緑体形質転換タバコに遺伝子を導入すると花粉飛散による遺伝子拡散の問題がなく、産生されたタンパク質は葉緑体内にとじこめられる。ただし、葉緑体形質転換は新しいシステムなので、まだ利用できる作物種が限られている。今、栽培している葉緑体形質転換タバコは農薬の成分をつくるように組み換えている。
遺伝子組換えカイコは特殊な繊維をつくったり、有用成分をつくったりするのに利用されている。今年は隔離飼育区画で試験飼育が行われており、この環境影響評価が終わると一般農家も遺伝子組換えカイコを飼育する可能性も出てくる。
 
国民の遺伝子組換え作物に対する受容
食品安全委員会が毎年行っている安全モニターのアンケートをみると平成22年以降、「不安を感じない」「あまり不安を感じない」と回答した人は5割をわっている。COOPの売り上げをみると、遺伝子組換えナタネを材料にしたコーンマーガリンやキャノーラ油では低価格の不分別表示食品の方が売れている。私たちは正確な情報提供とサイエンスコミュニケーションで理解を深めたいと思っている。事実を知ってから組換えをどうするかを語り合えるようにしたい。


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講義会場風景 遺伝子組換えカイコの繭にブラックライトを当てると
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参加者のみなさん