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  • ifiaJapan2023 食の安全・科学セッション「食品表示の最新動向」開かれる

    2023年5月17日 ifiaJapan2023 食の安全・科学セッションで、Food Communication compass代表 森田満樹さんに「食品表示の最新動向」というタイトルでお話をしていただきました。70席の会場は満席、立ち見で聴いてくださる方もあり、150部の配布資料は売り切れました。

    写真

    森田満樹さん

    主なお話の内容

    1.食品表示の現在地

    食品表示は、消費者にとって安全、品質、栄養に関する情報源である。事業者にとっては商品の内容を伝え、何か問題が起きた時の原因究明や対策としても重要。表示には真正性が求められ、項目によって分析による科学的検証、社会的検証の両輪で支えられる。
    また、消費者を誤認させないために、食品表示基準第9条「表示禁止事項」の中で優良誤認表示を禁止している。一方、景品表示法では容器包装に限らず、広告、店頭のポップなど広範囲で優良誤認表示を禁止している。
    食品表示法は2013年にJAS法、食品衛生法、健康増進法が一元化されて告示された法律で、義務表示を規定している。また、任意表示については、景品表示法、健康増進法、薬機法、計量法、不正競争防止法も関係しており、関連法律は複雑である。

    2.食品表示制度施行後の見直し

    2013年4月、食品表示法が告示され、2015年に施行された。その後も原料原産地表示、遺伝子組換え食品表示の改正が相次ぎ、2022年3月には食品添加物不使用表示ガイドラインも公表されている。2023年6月には消費者基本計画工程表が改定され、その中で食品表示のグローバル化が盛り込まれており、今後検討が行われることになるだろう。

    (1) 原料原産地表示
    全ての加工食品の重量順1位の原材料に原産地表示を義務付ける新制度が2017年にスタート、様々な例外表示を盛り込んだ基準改正が行われ、2022年4月完全施行となった。店頭を見ると製造地表示が半分以上で、多くの消費者は国内製造を国産だと誤解しているのではないか。完全施行後の2年間でこの表示の調査が行われ、それ以降に見直すことを求めるなど、制度がスタートする際に付帯条件がたくさんついた。それだけ複雑な制度と言えるだろう。消費者庁が消費者意向調査を行っているが、原料原産地表示を理解している人は1割程度に留まっており、普及啓発が課題となっている。

    (2) 遺伝子組換え食品表示
    これまで義務表示は「遺伝子組換え」「不分別」、任意表示は「遺伝子組換えでない」という3区分の制度だったが、2019年より「遺伝子組換えでない」表示の「意図せざる混入率」が5%以下から不検出に引き下げられる改正が行われた。これによって「分別生産流通管理済み」などで表示される新区分が加わった。
    「遺伝子組換えでない」という任意表示ができるのは「不検出」のときのみとなったこともあり、こうした表示が少なくなっている。そのかわりに一括表示の原料に「分別生産流通管理済み」と表示したり、枠外に「原料の○○は、遺伝子組換え原料と分けて管理しています」等の表示が増えている。また、分別管理されている原料はもともと任意表示であるため、この改正を機に無表示にしている商品も増えている。
    る。分析法にはリアルタイムPCR法が使われ、感度が高い。このため国産大豆100%の豆腐でも、他のラインからの混入を懸念して「分別生産流通管理済」と書いている豆腐もみられる。

    (3)食品添加物の不使用表示表示に関するガイドライン
    2019年度に食品添加物表示制度に関する検討会が開催された。現行の食品添加物表示制度で、用途名併記、一括名ルールなどが定められているが、検討会では現行制度を維持することとなった。一方、見直しが必要となったのが任意表示の「無添加」「不使用」表示で、この中には消費者を誤認させるものもあり、ガイドラインの制定を求められた。
    その後、ガイドラインを制定するための検討会が開催され、2022年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(以下 GL)が公表された。背景、趣旨、適用範囲とともに、誤認を招きやすい表示の10の類型が示され、普及・啓発の必要性についてもまとめられている。このGLによって任意表示の「無添加」「不使用」表示の検討が始まり、これを機に無添加表示をやめた事業者は多い。チラシやポップは対象外だが、景品表示法で優良誤認表示は禁止されており、かつて措置命令になった案件もある。
    なお、2019年度にまとめられた報告書には、文科省が定めた学校給食に関する規範の中で「有害な食品添加物」という用語があることを指摘している点も注目したい。食品の表示と安全性は表裏一体で、リスクコミュニケーションが重要であるという点も指摘している。食品表示だけでなく、安全性もあわせて伝えていくことが重要である。

    (4)アレルギー表示
    2023年3月、くるみが特定原材料に加わり8品目となった。今後はカシューナッツの義務化も予定されている。最近は木の実類の症例が増えており、制度の見直しが続くだろう。

    3.わかりやすい食品表示の検討

    2019年8月に消費者委員会食品表示部会で、「食品表示の全体像に関する報告書」が公表された。これは、食品表示制度が複雑になっていくなかで、わかりやすい食品表示について考え方をまとめたものである。ここで示された「食品表示の全体像」が第4期消費者基本計画(2020年度~)に盛り込まれた。
    食品表示を取り巻く現状などについて整理しつつ、消費者ニーズに留意し、食品表示の全体像について検討するために調査が行われることになり、「空間的情報量に関する調査」「食品表示のデジタル化実証事業」「インターネット販売における情報提供」が行われている。3つめの事業について、事業者、消費者対象の調査に基づき、コーデックスの国際的なルールも踏まえて2022年6月に「インターネット販売における食品表示情報提供に関するガイドブック」が作成されている。

    4.おわりに

    2022年12月、「食品表示のグローバル化対応」が消費者委員会食品表示部会で議論された。輸出拡大のためにコーデックス規格との整合性を踏まえることとする方針が示された。こちらは今後、検討が行われることになるだろうが、諸外国と日本の表示が大きく異なる事項の1つに食品添加物がある。
    食品添加物表示を見直す際には、表示制度でだけでなく、食品衛生法による規格基準が大きく関わっていることに留意しなければならない。この食品表示基準行政については、2022年9月に消費者庁に移管することが決められ、2023年5月に関連法律が告示され、2024年4月より移管が行われる。今後は消費者庁のもとで、食品基準行政と食品表示行政が行われることになる。いずれも科学的根拠に基づく見直しがが行われるように注視したい。

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