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  • 東京農業大学「食品安全研究センター」開設

    2022年5月9日、東京農業大学で「食品安全研究センター開設記念講演会が開かれました。学校法人東京農業大学は、創立から131年、情報学と看護学部のある東京情報大学、第一~三高等学校、中学校、稲花小学校とともに、農学研究のみならず、食の安全と健康に関わる食育も視野に入れた研究・教育を行ってきました。食品安全研究センター(以下FSRC)は、同法人のもと、総合農学の場として、食の安全の構築と安心の啓発に取り組んでいくために設立されました。

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    特別講演・教育講演講師を囲んで

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    講演会 会場風景

    「食品安全研究センター設置の経緯と概要」

    食品安全研究センター長 五十君靜信氏

    食品安全研究センターは次の6つの課題を掲げていく。
    (1)安全な食品とは何か。
    食品の安全性は医薬品のような評価はせず、長期にわたる安全利用の経験から判断されてきた。食材は製造、加工工程で安全性が担保され、安定的に供給されるべきもの。食品だけでなく、農場と周囲の環境の安全、アレルゲンのようなリスクについても取り組んでいく。
    (2)危害要因
    有害物質が入ってくると食品の安全は失われ食中毒が起こるが、安全性は食品衛生法で担保されている。食品衛生法改正でHACCP管理が導入され、製造者責任の範囲は広がり、リスクとは常に対峙せねばならない。
    (3)新たな高機能食品
    新しいバイオ技術や自然界から分離した菌を利用して新規食品(新機能付与も含む)が誕生している。ここでも安全性確認は重要。
    (4)産官学連携
    センターを法人直下においたのは、産官学との連携を重要視したため。科学的実証を産官学で連携して進めていく。
    (5)食の安全
    食の選択はその安全が確保された後、個人の判断に委ねられる。人文科学の研究も取り入れて、啓発・教育を実施する。
    (6)研究と教育・啓発
    関連組織、東京農大、法人傘下の組織と連携して「食の安全」に取り組み、特にリスクコミュニケーションに注力する。一般消費者への情報発信、食品関連事業に対する啓発を行う。

    特別講演「我が国知の食の安全への取り組み」

    食品安全委員会委員長 山本茂貴氏

    2003年に内閣府食品安全委員会が設立された。私たちは以下の基本姿勢のもと、ゼロにはならない食のリスクをいかに減らしていくかに取り組んでいる。
    (1)リスク評価
    リスク評価は、ハザードの特定、ハザードの特性評価、ばく露評価、リスクの判定に基づいて行う。日本の現状にあったばく露量を考慮し、中立公正な立場で評価を行う。
    (2)リスク管理者との関係
    日本ではリスクの管理は農林水産省、厚生労働省が担当。評価者(食品安全委員会)と管理者の独立の関係を保ちつつ、共に未然防止を目指している。
    (3)リスクコミュニケーション
    フードチェーンの各段階に関わるすべてのステークホルダーと科学的情報を共有し、どのような管理が重要であるかを追求するため、意見交換を行う。
    (4)国際協調
    食品安全委員会では国際的リスク評価の専門家会議屋リスク評価機関から出される情報を考慮し、海外機関と意見交換を行う。さらに、国際的な食のリスク評価に貢献する。
    (5)緊急時対応
    食品安全委員会は緊急時には保有している科学的情報を提供し、ステークホルダーが適正に対処できるように支援する。
    FSRCとは、リスク管理者との関係、リスクコミュニケーション、国際協調などで連携していけると思うので、期待している。ことに、農場から食卓までの評価では、FSRCが多くのデータを出して頂けると思う。また、食品安全委員会が出しているFOOD SAFTYという雑誌に、成果を投稿したり、研究調査に応募したりしてほしい。

    教育講演会「食や農業を通して命と向き合う教育」

    尾木直樹(尾木ママ)氏

    子どもたちには未来があり、彼らは未来志向で生きていく。しかし、コロナで今の子どもたちの心身はボロボロ。
    2021年7月の健康調査をみると肥満が増えている。休校になったり、外で遊べなかったり、オンライン授業の影響だろう。一方、栄養失調の子どもも7人にひとり。ユニセフはコロナ初期に給食を続けるようにと指針を示している。日本で学校給食を続けたのは大阪だけだった。食事の足りていない子どもには学校給食だけでなく、全国の子ども食堂(全国で6000以上)も重要な働きをしている。
    楽しいはずのゴールデンウィークも、ヤングケアラー、学校給食がないための栄養不足で、GWに痩せてしまう子どもいる。メンタルでも問題は多く、学習意欲低下、うつ、自殺者が増えている。
    ところが、農業アクション大賞の審査委員長をやっていると、農業高校の生徒の目はいつも輝いている。農業高校は卒業生の就職先もバラエティに富み、活き活きしている。農作業や作物を育てることが生徒に良い影響を与えていることは明らか。普通高校でも10時間くらい、農業高校のカリキュラムをとりいれられたらいいと思う。
    1970~80年、中学校が荒れた時期がある。このときに埼玉の学校が農家と連携したところ、荒れた状態を改善できたという報告がある。いろいろな学校で農業をとりいれた取り組みがある。生徒がブドウをひとり1本ずつ世話をする、クラスごとに農家と1年間連携して活動(大阪)、田植え実習(岩手)、生徒のグループが牛の世話して酪農コンクールで優勝したなど、成功事例も多い。また、農業高校は被災地の避難所に出向いていち早く食事を提供したり、青いパパイア栽培で地域おこしに貢献したりするなど対外的な活動も盛ん。
    このような効果が表れる背景には、農業高校で体験すること(土を触る、火を起こす、暗闇体験、草を触るする、木登り)と原体験(※)がつながっているからではないか。
    今、教育分野ではSTEM(science technology engineering mathematics)教育にArtが加わってSTEAMが重視され、IQ( Intelligence Quotient 知能指数)はHQ(Human Quotient人間性指数)となり、人間性、体験が注目されてきている。
    原体験をしている子は優しく、社会性があり、我慢強い。この傾向は農業高校にみられるコロナ禍の中で「子ども参加」を中心にする。子ども家庭庁もできる。大人も子どもの発想を取り入れる柔軟性をもっていきたいと思う。

    ※原体験(原体験研究会ホームページより)
    自然物を対象として触,臭,味の基本感覚を中心とした五感による直接体験。狭義には、触った,嗅いだ,味わったという体験をさし、広義には、視覚や聴覚を複合させ,自然物でモノをつくったり,遊んだり,探したり,採集,飼育,栽培という生活の基礎基本も含めた体験をさす。原体験の対象となる自然物は,火,石,土,水,木,草、動物。

    施設見学会

    研究センター棟のツアーが行われました。実験室は学科とは分かれており、BSL2の設備も整っています。ラボツアーを引率された美谷島克宏教授は「企業と共同のテーマを持って研究をしたり、企業の方が来て一緒に研究したり、使い方も皆さんと模索しながら創り出していくことになる」と、センターの可能性を語っておられました。

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    SFRCのコンセプト

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    実験室内

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