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  • サイエンスカフェ「ヤバすぎ!身近な有毒植物のヒミツ」

    2022年3月24日、サイエンスカフェみたか「ヤバすぎ!身近な有毒植物のヒミツ」がオンラインで開かれました(三鷹ネットワーク大学より配信)。講師はこれまでタンポポのお話をしてくださってきた植物学者で文筆家の保谷彰彦さんです。身近にこんなにたくさんの有毒植物があることを知って、多くの様々な質問が飛び出し、にぎやかな「サイエンスカフェみたか」となりました。

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    保谷彰彦さん

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    色鮮やかな植物の写真がたくさん紹介されました。

    主なお話の内容

    1. 有毒植物とは

    有毒植物というと、青い花が美しいオクトリカブトが有名。これは日本の三大有毒植物のひとつ。一方、トリカブトは有毒だが根の部分を生薬として使っている。毒だからただ遠ざけようでなく、そういう植物のことや薬として正しい利用の仕方も知ってほしい。

    植物の主な有毒成分

    (1)
    アルカロイド 植物毒で最も種類が多い。共通の特徴として化合物に窒素原子を含む。
    例)
    タバコのニコチン、ヒガンバナのリコニン、トリカブトのアコニチン、ジャガイモのソラニン
    (2)
    配糖体 化合物に糖が結合した構造をしている
    例)
    ウメの青酸配糖体、スズランの強心配糖体
    (3)
    タンパク質 リシンのように生物兵器などに使われるものもある。
    例)
    トウアズキのアブリン

    野菜や山菜とまちがえやすい有毒植物

    野菜や山菜は観賞用の植物とは分けて植える。葉をちぎり手に液がつかないようにして匂いを確認。

    (1)
    ニラと似ている有毒植物
    例)
    スイセン(ちぎるとかぶれるかも)、スノーフレーク、ヒガンバナ、ナツズイセン
    (2)
    ギョウジャニンニクと似ている有毒植物
    例)
    スズラン、イヌサフラン
    (3)
    フキノトウと似ている有毒植物
    例)
    フクジュソウ 心臓の毒。フクジュソウは成長するとフキとの違いがわかるが、芽が出てきたときに注意。

    植物はなぜ毒をつくるのか

    植物が作り出す化合物には、生きる上で必須の化合物(呼吸や光合成に関与)と、身を守るために役立つ化合物がある。例えば、植物を食べる動物や病原菌、競争相手の植物から身を護る毒。これが人に中毒を起こすことが多い。繁殖に役立つための化合物もある。虫をよぶ香りなど。

    2.いろいろな有毒植物

    心臓の毒 心臓のリズムを乱す成分
    • アルカドイド
      例)
      トリカブトのアコニチンが心臓のリズムをつかさどる神経をおさえる。具体的には、細胞のナトリウムイオンチャンネル(タンパク質)をアコニチンが活性化する。
      これとは逆で、フグ毒のテトロドトキシンはイオンチャンネルの働きを抑える。そこで、拮抗作用がある二つを組み合わせることで、効果の現れる時間を変化させたりできる。
      トリカブトの花をみればいいが、葉だけをみるとニリンソウとそっくり。ニリンソウは山菜として食べることがあるが、ニリンソウは花が咲いているときだけ食べるのがよい。
    • 強心配糖体 例)スズランのコンバラトキシン
      気持ちが悪くなり、頭痛、心不全が起こる。海外には、こどもがスズランをさしたコップの水を飲んだ死亡例がある。ギョウジャニンニクと葉が似ている。
    • 強心配糖体 例)クリスマスローズのヘレブリン
      クリスマスローズの花に見える部分はがく。花弁が退化してみつせんになり、おしべがたくさんある。根を心臓の薬で使っていたことがあるが、毒性が強くて使われなくなった。誤食すると、おう吐、下痢、けいれんが起こる。かぶれることもある。

    神経毒 中枢神経(脳やせき髄)に働くもの

    誤食すると、呼吸困難、けいれんが起こる。

    例)
    ドクウツギのツチン。日本の三大有毒植物のひとつ
    全草に毒成分があるが、実に特に多い。実は特殊な形で花弁が残っている。生の葉24gで致死量。30分で症状がでて3時間でけいれんが起こり、こん睡状態になり死亡することがある。
    ドクウツギの甘露をハチが持って帰り、はちみつからドクウツギの毒成分が見つかったという報告もある。
    例)
    カロライナジャスミンのゲルセミジン(アルカロイド)
    根をリュウマチの民間薬として欧州で使っていたこともある。誤食すると、運動失調、嚥下困難、死亡することもある。
    カロライナジャスミンをジャスミン茶として飲んだ中毒事故はある。ジャスミン茶に使うのはモクセイ科のマツリカで、花は似ていない。
    例)
    ドクゼリのシクトキシン。日本の三大有毒植物
    葉がセリに似ていて、根がワサビに似ているので、誤食されることがある。誤食するとめまい、呼吸困難、死に至ることがある。

    腎臓・肝臓の毒になるもの

    (1)
    肝臓

    肝臓は解毒する役割を担う臓器で、血液凝固のタンパク質を作ったり、飢餓ではグリコーゲンからカロリーを得たりする。
    腎臓は老廃物をこしとる役目を担う。カルシウムを調整する。

    例)
    コンフリー(ヒレハリソウ)のピロリジジンアルカロイド
    昔は食べていた。1970年頃は健康食品として使われたが、腎臓・肝臓への毒性から2004年から食品としての販売は禁止。
    特徴は毛が生えていて、紫の花が咲く。
    コンフリーと間違えやすい植物にジギタリスがある。ジギタリスは強心剤として使わており、誤食は危険。
    ヒエハリソウは葉のふちがなめらかで、葉はごわごわしている。ジキタリスは手触りがなめらか。両方とも食べてはだめ。
    例)
    オナモミ(ひっつき虫)のカルボキシアトラクティロシド 
    細胞のエネルギー生産をブロックする。洪水でコメがとれないときにオナモミの仲間の実を食べて76人におう吐、肝障害が起き、死亡率25%だったという報告がある。15歳以下の子どもが多く死んだ。
    1. 胃腸の毒 下痢やおう吐。急な脱水で死に至ることもある。
    (2)
    胃腸

    下痢やおう吐。急な脱水で死に至ることもある。

    例)
    トウゴマのリシン(タンパク質) 生物兵器に使われる恐れがある。
    実や全草に毒があるが、特に実や種子に多い。おう吐、下痢、死に至ることもある。
    2013年 オバマ大統領への手紙にリシンが含まれていて話題になった。トウゴマ種子からとるヒマシ油にはリシンは含まれない。せっけんづくりに使われている。油の搾りかすの方にはリシンがある。株の上に雌花、その下に雄花がある。
    例)
    イヌサフランのコルヒチン(アルカロイド)
    コルヒチンはタネナシスイカを作るときに使われる。細胞分裂を止める働きがありがんの薬が作られている。
    健康な人が食べると、おう吐、下痢、消化器官の細胞分裂がとまり細胞が死んでいく。
    葉がギョウジャニンニクに似ているので注意すること。

    細胞の毒になるもの

    細胞へのダメージがあり、身体へのダメージになる。

    例)
    ソテツのサイカシン
    ソテツの実はデンプンがあり食用にすることがあるが、毒性物質があるので、十分にあく抜きをしなくてはならない。不十分だと毒になる。
    サイカシンは体内で分解されるとホルムアルデヒドと発がん物質、神経毒になる。
    めまい、呼吸困難が起こる。ヒトの死亡例はないが、家畜では死亡例がある
    例)
    ウメのアミグダリン
    未熟な実の果肉に青酸配糖体のアミグダリンがある。青酸(シアン化水素)は細胞のエネルギーであるATP合成のプロセスをとめる。長く食べ続けたり、一度に大量にとったりすると危険。梅干し、梅酒、燻製にして薬に使われる。

    皮膚の毒になるもの

    例)
    ツタウルシのウルシオール
    皮膚に激しい炎症を起こす。葉に近づくだけで炎症を起こすこともある。葉が小さいときは、ツタに似ているので注意。特徴は葉が3枚セットで出てくること。
    例)
    ヤマウルシのウルシオール
    触れると数か月続くかぶれ。花は美しく、雄株と雌株がある。芽をタラの芽と間違えて食べて顔がひどくはれたという報告がある。
    例)
    イラクサのヒスタミン
    草や茎のとげ(毛)がささると体内にヒスタミンなどの有毒成分が入り炎症が長く続く。

    3.薬になる有毒植物

    植物がつくる毒には役に立つ毒もある。

    例)
    ケシのモルヒネ(アルカロイド)
    アヘン法で厳しく管理されている。花の中で育ったケシ坊主に傷をつけると乳液が出てくる。乳液にアヘンが含まれる。アヘンにはコデイン、デバイン、モルヒネがあり鎮咳作用、鎮痛作用があり、医療で使われている。依存性があり、毎年、多くの人が麻薬中毒で死亡している。
    ヒナゲシなど、栽培してよいケシの特徴は毛があること。栽培禁止のケシは、葉が茎を抱く形で、大きく、葉や茎は毛がなくてツルツル。
    例)
    ニチニチソウのビンクリスチン(アルカロイド、がん抑制作用あり)
    ニチニチソウには100種類のアルカロイドが含まれる。
    例)
    ジギタリスのジゴキシン(強心配糖体)
    心臓のくすり。誤食すると、嘔吐、下痢、不整脈、死に至ることもある。
    例)
    タバコのニコチン(アルカロイド)
    嗜好品だが、殺虫役としても使われている。ニコチンは神経に作用する猛毒。生で葉を食べると、すぐにおう吐してしまうのでそんなに重篤な症状にはならない。
    タバコはおう吐成分がなくなっているので、誤食可能で、子どもは2-3本で死に至る。

    4.誤食の注意

    • 有毒植物には共通性がないので、ひとつひとつ調べて覚える必要がある。
    • 誤食防止には、鑑賞用の有毒植物には札をつけ、野菜と分けて植える。
    • 山菜の特徴を覚える。自信のないものはとらない・食べない・(人に)あげないこと。
    • 調理前に匂いを確認する。ニラやニンニクには特有の匂いがある。手触りにも注意する。

    お話が終わると、チャットは参加者からの質問でいっぱいになりました。スズランの花束を贈るときの注意は?毒の名前には「○○シン」が多いのはなぜ?こういう植物の勉強をしたいと思ったら、大学のどんな学部にいいの?など、時間を少し延長する位、多くの質問が出ました。

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