シンポジウム「臨床研究法の改正とCRBの認定」開かれる
2022年2月5日 第13回臨床研究学会学術集会総会でシンポジウム「臨床研究法の改正とCRBの認定」が開かれました。
臨床研究とは、医薬品・医療機器等の開発・実用化のために行われる研究のことです。臨床研究法は、2018年に臨床研究の実施の手続や、認定臨床研究審査委員会(CRB)の適切な運営を通じて、臨床研究に関する情報を公表し、臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図り、臨床研究を実施し、保健衛生を向上させるために策定されました。現在は、施行時から予定されていた5年後の臨床研究法の見直しに向けた調査・検討が行われているところです。4つの話題提供と総合討論が行われました。パネリストとして筆者は参加したので、報告します。
話題提供
(1)「臨床研究法の見直しについて」厚生労働省 吉岡恭子氏
臨床研究法は、施行五年以内に運用の状況を鑑みて見直しをすることが定められており、厚生科学審議会臨床研究部会で、令和3年1月から検討を開始した。2021年12月には、中間とりまとめを発表した。
中間とりまとめの主なポイントは、届出変更手続きのオンライン化などの審査の効率化、CRBの認定の更新に向けた認定条件の見直し、研究の信頼性確保を目指した透明性とCRBの質の確保と向上である。
(2)「倫理審査の集約化と質保証」
東京医科歯科大学 生命倫理研究センター 遺伝子診療科 吉田雅幸氏
医学研究には科学的合理性と倫理的妥当性が必要。
2018年4月、臨床研究法が施行され、CRBが49か所認定され、現在の認定機関数は96。2018年に認定された認定機関は、2021年3月に認定更新時期を向かえることになる。調査したところ、各年11回以上の会議開催という認定要件を満たさない機関が約半分あった。現在、走っている約300件の臨床試験が滞りなく終了できるようにするため、更新要件の変更も含め方策が検討され、そのための支援が重要である。
(3)「CRB事務局のベストプラクティスを目指して」
国立がんセンター東病院 尾崎雅彦氏
国立がんセンターで行っている、CRB、治験審査、研究倫理審査の運営に関わる事務局業務の改善を行ってきた。その方法を紹介する。
事務局では、資料の充足性、研究計画や説明同意文書(IC)の確認を、チェックリストを使って確認している。
委員会開催前に、委員からの事前コメント(書面)を集め、委員長との打合せを事前に行う。会議後は、議事録はテープ起こしをしてまとめる。CRB承認後は病院長の許可の手続きを行う。議論のテープ起こしは事務局の財産だと考えている。
臨床研究支援部門と連携し、CRB委員の意見を活かして、説明同意文書作成の手引きも作成した。
中間とりまとめをみて、CRBの質向上のためのピアレビューは重要だと考え、委員会の事前、当日、事後に分けてチェックできるようにピアレビューのためのチェックリストを作成した。ピアレビューの後のディスカッションも重要だと考えている。
(4)「倫理審査委員会に一般市民の立場として参加して」
くらしとバイオプラザ21 佐々義子
大学、病院、企業の治験審査、倫理審査に一般市民の立場で参加してきた。その中で気づいたこと、考えたことについてお話したい。
審査資料の作成や、審査委員会への出席は研究者にとって負担であると想像しているが、被験者を保護しながら適切な臨床研究を行うためには、被験者、家族、倫理審査委員に研究の意義がよく理解・信頼されることが重要であり、それが透明性につながると考えている。
くすりの開発では、患者中心ではなく、患者、医師、看護師、薬剤師などの関係者が対等に手をつないで輪になって病気と向かい合う関係を「コンコーダンス」と呼ぶと言う。倫理審査委員会の中も、被検者、家族、医療従事者、倫理審査委員会メンバーが対等に手をつなぐ「コンコーダンス」の関係が成り立つのではないか。倫理審査委員会は、信頼にたる議論を行い、記録を残すことで、被検者・ご家族だけでなく、医療従事者も守る役目を担っていると思う。