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  • コンシューマーズカフェ「『食品添加物表示制度に関する検討会』の取りまとめ結果とその後の対応について」

    2021年7月26日、第34回コンシューマーズカフェ「『食品添加物表示制度に関する検討会』の取りまとめ結果とその後の対応について」をくらしとバイオプラザ21事務所よりオンライン配信しました。消費者庁食品表示規格課 宇野真麻課長補佐、村松裕文調査表示係長に事務所までお越しいただきました。

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    事務所からの配信

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    宇野課長補佐のお話

    主な内容

    1.食品添加物表示制度に関する検討会報告書の概要について

    食品添加物表示制度に関する検討会(以下表示制度検討会)は、消費者、事業者、学識経験者11名で構成され、平成31年4月から令和2年2月まで9回開催された。報告書の主な4つの論点について以下に説明する。

    (1)

    一括名、簡略名・類別名表示/用途名の表示
    食品添加物は、原材料に占める重量の割合の多いものから順に並んでおり、原材料の表示のスラッシュ以下に表示されている。なお、表示に当たっては、原則として物質名で表示することになっている。
    物質名による原則的な表示方法のほか、「一括名」や「用途名併記」といった方法もあるが、消費者からの要望として、物質名のみではどういった用途でその添加物が使用されているか分からないため、物質名に加え、用途も付した表示を求める声もあった。
    消費者意向調査(N=1万人)より

    • 物質名の表示を求める消費者の声もあるが、すべて物質名で表示された例と、一括名表示、簡略名・類別名を用いた表示を比較したところ、後者の方が分かりやすいという意見が多かった。また、用途も記載されている方がいいという人は3割だが、用途名について気にしていない人は4割だった。

    各国の添加物の表示について調べたところ(コーデックス、米国、カナダ、豪州、中国、フランス)、物質名で表示することを原則としている点は、おおむね同じであった。ただし、細かい部分、表示方法、用途名併記などに違いがある。欧州のように添加物の物質名表示に代えてE番号といった記号を用いて表示を行っているところもある。
    現行制度とコーデックスの基準に沿った表示例を作成し、比較検討を行ったところ、一括名表示、簡略名・類別名の表示については、文字数の大幅な増加による表示可能面積と見やすさ・分かりやすさのバランスを考慮する必要があること、番号に置き換えることが可能なものとそうではないものが存在すること、番号による表示は消費者になじみがないこと等から、添加物の規制そのものが異なる中で表示制度だけを変更することは現時点では困難とされた。

    (結論)
    現状維持が適当とされた。
    (2)

    「無添加」・「不使用」の表示の在り方について
    食品表示基準上、添加物が不使用である旨の表示に関する特段の規定はなく、食品表示基準Q&Aの加工-90(※)に関連記載があるところであるが、この解釈が不明確。現状では、食品関連事業者が任意で「無添加」、「不使用」等の表示を行っている。その結果、ミスリードが生じており、国が食品添加物の安全性評価をしていること、事業者は目的をもって食品添加物を使用していることが理解されていない。
    検討の中では、食品表示基準第9条では表示すべき事項と矛盾する用語や内容物を誤認させるような文字等を禁止してはいるものの、その解釈を示す食品表示基準Q&Aが網羅的ではないこと、「無添加」等の表示方法を示す食品表示基準Q&Aが曖昧であることが指摘された。
    検討会としては、食品表示基準第9条の規定により、消費者を誤認させる表示や、表示すべき事項の内容と矛盾する表示等は禁止されていることから、この禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるガイドラインを新たに策定することを提案された。

    令和2年(2020年)度消費者意向調査報告書より
    「不使用」、「無添加」の方を選んで買う人は半分以上で、その理由はより安全と感じたり健康に良さそうと思ったりしている。「無添加」を選んでいても一括表示を見ている人は約半分。誤認につながっていることが多い。

    また、公正競争規約をみると、業界によって不使用表示の扱い方が異なっている。

    (結論)
    食品表示基準第9条の規定により、消費者を誤認させる表示や、表示すべき事項の内容と矛盾する表示等は禁止されていることから、この禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるガイドラインを新たに策定することを提案された。また、食品表示基準上の「人工」及び「合成」の用語も削除することになった。
    (3)

    栄養強化目的で使用された添加物の表示について
    食品表示基準第3条に、栄養強化目的で使用した添加物は表示を要さないとされている。ただし、乳児用調製粉乳などの特別用途食品、機能性表示食品は例外。食品表示基準別表第4に規定される食品(農産物漬物、ハム類、ジャム類、調理冷凍食品、乾燥スープなどが記載されている)

    (結論)
    表示義務がある食品とない食品が存在し、消費者にとって分かりにくい状況であることから、栄養強化目的で使用した食品添加物を知りたいという消費者ニーズも念頭に「表示を要しない」という規定を見直し、原則全ての加工食品に栄養強化目的で使用した食品添加物を表示させる方向で検討することが適当であるとされた。国際的にも栄養強化目的で加えられた添加物は表示すべきとして、検討されている。
    ただし、その検討に当たっては、現在の表示状況、消費者の意向、事業者への影響について実態調査を実施するとともに、表示の事項間の優先順位、表示可能面積の問題等に関する消費者委員会食品表示部会における「表示の全体像」に関する議論も踏まえ、最終的な結論を得ることが適当であるとされた。
    (4)

    普及、啓発、消費者教育
    平成30年(2018年)から食品表示セミナーを消費者団体の会員などの消費者に向けて行っている。食品添加物への不安がセミナーで緩和する人は約4割。しかし、消費者庁ホームページを情報源と回答した人が8%から14%に、国のHPは3%から9%に、食品会社のHPは12%から19%と増えており、行政と企業の情報発信の効果が上がっていると考えている。皆で頑張ることに意味がある!
    食品表示の内容を正しく理解するための“食品添加物表示に関するマメ知識”」も公開している。

    令和2年度消費者意向調査報告書より
    食品添加物は安全性が評価され、長期に利用してきたことを国が認めたものであることを知っている人は、平成29年度から毎年、行われているが、4割を超えない。

    (結論)
    行政、消費者、事業者が連携し、世代に応じた普及啓発を行う。

    2.食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会について

    (1)
    検討会
    令和3年(2021年)3月スタート。消費者団体、事業者団体、流通関係者、及び法律専門家2名を構成メンバーに入っていただいている。
    先週(7月21日)に開催された第3回検討会では流通系委員の意見を聞いた。第2回では消費者、事業者のヒアリングを実施した。4回目以降はガイドライン案作成にむけて検討を進めていく。
    検討会の開催目的は、ガイドライン案の策定、関連する食品表示基準Q&Aの改正に向けた整理。
    (2)
    ガイドラインの検討の進め方
    容器包装上の表示を対象とし、類別して表示で誤認につながるおそれのあるものとないものに分ける。誤認につながらない表示方法、経過措置について検討を進めていく。
    広告、カタログ、既存の公正競争規約そのものを対象とするものではないが、波及効果を期待。

    質疑応答/ご意見(〇は参加者、→は講師の発言)

    • ガイドラインの対象は文字だけか
      →食品表示基準第9条第13号の規定のとおり、一括表示枠内に記載された内容と矛盾するような文字のみならず、絵や写真といったものも対象にする。
    • 世代に応じたアプローチを検討しているということだが
      →食育を通じた取組、学生のみならず学生に教える立場の栄養教諭や栄養士等の専門職を対象とした取組の実施等、これまであまり対象にできていなかった若年層へのアプローチを考えている。社会人、主婦対象のセミナーは消費者庁主催で行ってきた。また、消費者セミナーで日本食品添加物協会公開パンフレットを配布したりしている。その他、令和2年度には、農林水産省の「消費者の部屋」で展示を実施。内容は今日の資料と添加物表示制度報告書とほぼ同じ。
    • 高齢者にはサッカリンはがんになるので危ないと思っている人が今もいる。このような方への記憶の書き換えはどうしたらいいか
      →高齢者の中には、過去の事案が記憶にあって、添加物に対して危険なものといった意識があると承知しているが、先に述べたように、正しい知識を持った栄養教諭による家庭科の授業を通じて、学生が祖父母に語り掛けるなどといったことも期待できる。
    • 生協の活動を通じて感じているのは、普及啓発活動により市民の理解はあがっていることで、このような成果を評価している。教育による効果に期待しているし、ガイドラインの動向をみながら生協も頑張っていきたい。
    • メディアを見ていて、安全性に関する記事は少ないと思うが、新聞を情報源とする人は新聞で安全性情報を受け取っているのだろうか。
      新聞から情報を得ていると回答した71%の人の何割かは電子新聞かもしれない。こういう人は情報源としてSNSを選ぶか、新聞を選ぶか、この調査ではわからないところ。
      →平成29年度、新聞と回答した人は76.3%。行政サイトへのアクセスは増えている。
    • 今回の検討会は画期的なことと評価している。今日の説明もわかりやすかった。
    • メディアとしては、安全性に関わる記事は少ないといわれても、記事はきっかけがないと書けない。何もないときに安全とは記事にしにくいが、何かが起こると記事にしやすい。今回、ガイドラインで「不使用表示が禁止」になれば書きやすいし多くのメディアが書くだろう。
    • 食品添加物は発がんリスクに関係しているという誤解をキッチリ解くべき。発がんリスクのリスコミが大事だと思う。
    • (食品添加物の安全性について)消費者庁、農水省、厚労省も常時、一斉発信をSNSで行ってはどうか。国がそうした情報発信をしていれば、それらをリツイートするなどして、広く正しい情報を広げていくことが可能と考えている。取組が広がらないので、誤った情報が跋扈してしまうのではないか。
      →検討材料に加えたいと思う。消費者セミナーの資料として、食品添加物のマメ知識という資料を作ったが、余り知られていない。
    • SNSから発信されたものはいろいろなところでリツイートできる。今日、参加しているメンバーもそれぞれ、発信ルートを持っているのだから、みんなで発信しましょう。教育を受けた孫から祖父母に伝えることも有効だと思う。
    • 7月21日の検討会の傍聴ができなかったのだが、ポイントを教えてほしい。
      →10年前、セブンイレブンは「不使用」を売りにしていたが、「無添加」、「不使用」表示を自主的に見直し方向転換をした。「家庭の味の再現」を目指し、「フレッシュフード」というブランド名で販売を始め、順次切り替えていくという報告があった。公正競争規約で認められているものは難しいかもしれないが、ガイドライン検討会にも前向きで、SNSでも発信しているそうだ。
      イオンは、わかりやすい食品表示をめざし、食品添加物についても伝わりやすい表示をめざすということで、検討会にも前向きに参加された。
    • 食品の包装の上面の表示もガイドラインの対象なるのか
      →箱の底の一括表示枠内が対象になる。
      ガイドライン策定は、パブコメも予定しているが、策定に当たっては、現在の消費者意識を踏まえつつ、事業者が活用しやすいよう実態に即したものとしていきたい。
    • 「無添加」表示は全面禁止にしたいが、わかりやすさは大事。今の加工90は解釈が曖昧になるので困る。
      →加工-90は基準第9条の解釈につながるので改正を検討したい。公正競争規約も関連することになるので、ガイドラインの策定を踏まえ、各界で見直しを検討してもらいたい。
    • ガイドラインができた後、広告についても優良誤認を取り締まり、表示対策課には頑張ってもらいたい。
      →モニタリングでは、店舗調査、原料原産地に加えて「不使用」表示もみていく。
    • 消費者もしっかり眼力を養いましょう。
    • 安全性以外の情報についても、知りたい消費者に知りたい情報が届くようにして欲しい。

    ※「食品表示基準Q&A」食品表示基準Q&A統合版 (caa.go.jp)  56ページより引用
    (加工-90)
    「添加物は一切使用していません」、「無添加」などと表示をすることはできますか。
    (回答)

    通常同種の製品が一般的に添加物が使用されているものであって、当該製品について添加物を使用していない場合に、添加物を使用していない旨の表示をしても差し支えないと考えます。 なお、加工助剤やキャリーオーバー等で表示が不要であっても添加物を使用している場合には、添加物を使用していない旨の表示をすることはできません。 また、「無添加」とだけ表示することは、何を加えていないかが不明確なので、 具体的に表示することが望ましいと考えます。
    さらに、同種の製品が、一般的に添加物が使用されることがないものである場合、 添加物を使用していない旨の表示をすることは適切ではありません。
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