APECワークショップに参加しました
バイオテクノロジーのリスクコミュニケーション構築というワークショップ(HLPDAB 01 2021S)が、2021年6月9-10日(Webinar I)、22-23日(Webinar II)に、APEC(環太平洋経済機構)によりオンラインで開催されました。キイワードはゲノム編集技術とデジタルコミュニケーションンでした。くらしとバイプラザ21は、Webinar Iの2日目に、私たちが開発したワークショップ手法である「ステークホルダー会議」について発表しました。
ステークホルダー会議 参考サイト
2020年5月 ロールプレイをとりいれたワークショップ手法の提案 (life-bio.or.jp)
ワークショップの運営と参加メンバー
本ワークショップ(以下 WS)は、コーネル大学 Alliance for science(以下 科学同盟)グローバルポリシーリーダー、パブロ・イヴァン・オロスコ氏が中心になって運営されました。17のAPEC加盟メンバー(エコノミーと呼びます)(カナダ、日本、パブアニューギニア、メキシコ、ペルー、ホンコン、マレーシア、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、アメリカ合衆国、チリ、台湾、ベトナム、中国、アルゼンチン)から44名が参加しました。
目的と進め方
開催の目的は、「参加者が、ゲノム編集技術に対する効果的・戦略的なコミュニケーションを行うためには、どのように目的を設定し、役割を整理すればよいかを習得する」ことです。プログラムは、情報提供と、オンラインのブレイクアウトセッションという機能を利用したグループワークを交互に行う構成になっていて、各日ともに3時間ずつ実施されました。最終日までに、各参加者は、ゲノム編集について幅広いステークホルダーたちの参加を得て、ネットワークを形成し、関係性を構築したりできるような知識や技術について学習し、全員が想定した特定のステークホルダーに対して効果的なリスクコミュニケーションを行うための計画を作成し発表しました。
特に、グループワークでは、コーネル大学 科学同盟のメンバーが、各ブレイクアウトルームでファシテーターを務め、ディスカッションが進められました。
Webinar I プログラム
第1日は、ゲノム編集をめぐるコミュニケーションの問題や計画の立て方について学習し、情報共有を行いました。
第2日は3人のケーススタディ報告の後、どのような媒体を使って、どのようなキイメッセージをだしたらよいか、グループワークで話し合われました。ケーススタディでは、「アルゼンチンにおけるゲノム編集をめぐるコミュニケーション」(アルゼンチン農務省技術専門官 ゴベルナ氏)、「コロンビアにおける、専門家が関わったゲノム編集をめぐるコミュニケーション」(コロンビア農業研究所 ロセロ博士)、「日本におけるゲノム編集をめぐるステークホルダー・アウトリーチ」(筆者)の発表がありました。同時に行われた科学同盟からのデジタル媒体の種類と特徴の解説も、参加者にとっては有益なものでした。
まとめ
登壇するにあたり、加盟メンバーからやってくる参加者は、各国政府のゲノム編集技術に関連する規制当局の担当者であることから、NPOであるくらしとバイオプラザ21の活動や実践的な研究の中のどのようなトピックスに参加者は関心を持つのか不安でした。そこで、米国大使館農務部の皆さん、オロスコ氏に助言を仰ぎ、何度か意見交換も行いました。その結果、ゲノム編集に関連する50回以上のサイエンスカフェから得られた実践的な知見に関心が寄せられていることがわかり、コミュニケーション手法であるステークホルダー会議について報告することにいたしました。
ステークホルダー会議の報告の後には、多くの参加者から質問や意見が述べられ、ゲノム編集技術の社会実装にむけたリスクコミュニケーションでは、情報提供と同じ位、情報を提供したり共有したりする具体的な手法が求められていることを感じました。
私たちは、ステークホルダー会議、田の字法など、いくつかのワークショップ手法を開発したり、実施したりしてきました。これらの手法の評価や新たな手法開発にむけて、心理学者、メディア、教育関係者らの力も借りながら、活動をしていきたいと思います。
田の字法 参考サイト
2018年11月 バイオカフェ「最新ゲノム編集のお話とワークショップ」 (life-bio.or.jp)
プレゼンテーション作成、ワークショップ参加にあたり、コーネル大学科学同盟 パブロ・オレスコ氏、在京アメリカ大使館農務部 ジーク・スピアーズ氏、佐藤卓博士に、ご助言・ご指導を頂きましたことを感謝いたします。