「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」開かれる
2021年5月7日、生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議(第1回)が開かれました。この合同会議は文部科学省、厚生労働省、経済産業省にある個人情報等に 関わる委員会の委員で構成されています。主な話し合いは以下の通りです。
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(※)
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下、生命・医学系指針という)は2021年3月23日に、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(医学系指針と呼ばれていました)と「人ゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(ゲノム指針と呼ばれていました)が廃止・統合されたものです。また、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」は医学研究を対象とする指針と疫学研究を対象とする指針のふたつがひとつにまとめられたものです。ゲノム指針は、人の遺伝情報を使う研究に関する基礎的な考え方を示したもので、私たちが関わっているゲノムリテラシー醸成に関わるサイエンスコミュニケーションもこのゲノム指針をお手本にしています。
今回は、令和2年6月12日に公布された「個人情報の保護に関する法律」(以下、個人情報保護法という)の改正事項と、令和3年5月19日に公布された令和3年改正案をみながら、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」について検討し、年度内のとりまとめを目指しています。
※「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を制定しました (METI/経済産業省)
具体的な検討項目
(1) 仮名加工情報
被検者の情報は、本人がわからないようにID番号を付けたり、一部の情報を削除するなどして加工されます。仮名加工情報は、対応表があれば個人を特定できるような加工を施すもので、個人情報保護法において定義されます。今回は、仮名加工情報の使い方、研究活動への影響などを検討します。
(2) 個人関連情報
個人関連情報は提供元では個人を特定できませんが、提供先では個人情報になりえるものを指します。そこで、第三者に提供するケースなど、個人関連情報の研究活動への影響などを検討します。
(3) 個人情報取扱事業者の義務
個人情報を扱う研究者、グループの代表などは、すべて「個人情報取扱事業者」として、義務を果たさなくてはなりません。それでも不適正な利用をしてしまった場合、どのように対応するか、法律で規定される事項を指針に加えるか、もしくはガイダンスで解説するかなどを検討します。
また、情報漏洩などがあったときの措置について、法律に規定された事項について指針に規定を設けるか、ガイダンスで解説するのか。そのようなことが起こったときに、個人情報保護委員会への報告義務に加えて、大臣報告もしなければならないかの検討をします。
(4) 越境移転
外国にある第三者にデータを提供する場合で、学術例外に該当するとき、法律ではカバーできなくなります。そのようなケースへの対応をどのようにすべきかを検討します。
(5) オプトアウト
既に得られている試料や情報を特定の目的のために使用するときに、使用することをWEBサイトなどで知らせ、試料・情報提供者に使用を拒否する機会を確保するやり方です。オプトアウト規定の対象になるケースに対して法律の規制が強化されますが、学術例外に該当するときの対応等について、現行の生命・医学系指針の規定で十分であるかどうかを検討します。
(6) 本人からの開示・利用停止請求について
個人情報保護法では死者は対象外ですが、死者を含む個人情報の開示などの規定は、生命・医学系研究指針で十分であるかどうかを検討します。
これらの7項目の他に、インフォームド・コンセントについてよく議論したいという意見もでました。筆者は、生命・医学系研究に関わるかどうかに関係なく、自分のゲノム情報に対する国民の理解を深めるような機会が創出されるような仕組みづくりを提案できたらと思いながら、合同会議に参加していきたいと思います。
参考サイト