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  • 第30回コンシューマーズカフェ「食品表示の現状とこれから」開催

    2020年2月12日、くすりの適正使用協議会会議室において、第30回コンシューマーズカフェを開きました。講師はFood Communication Compass 代表の森田満樹さん。「食品表示の現状とこれから―食品表示法・食品添加物表示を中心に―」をテーマに、近年目まぐるしく変わっている食品表示制度について解説していただきました。表示には義務表示と任意表示があること、といった基本的なことから制度改正による具体的な表示方法、話題になっているゲノム編集食品やアレルギー表示まで、短い時間で盛りだくさんの情報が提供されました。また、森田さんは現在開催されている消費者庁の「食品添加物表示制度に関する検討会」の委員も務めているため、添加物表示の今後についても触れました。

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    森田満樹さん

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    会場風景

    お話の主な内容

    1. 食品表示が変わる

      食品表示制度は現在、消費者庁のもとで2015年に施行された「食品表示法」という法律で定められている。食品表示法のもとの食品表示基準には、表示項目別にルールが規定されており、新たに栄養成分表示の義務化などが盛り込まれて、5年間の経過期間を経て2020年4月より完全義務化となる。食品表示制度は、これまでは厚労省と農水省が所管していたが、2009年に発足した消費者庁に移管されて大きく変わったことになる。
      ところで、加工食品のパッケージには一括表示や栄養表示のほかにも、リサイクルマーク、JASマークなど、多彩な情報が表示されている。食品表示には義務表示(安全・商品選択のための情報)と任意表示(使い方や宣伝のための情報)がある。JASマークなどは任意表示にあたり、国が品質の規格を定め、それがつけられている。
      また、任意表示に関わる法律は、不当景品類及び不当表示防止法、健康増進法、薬機法、計量法、不正競争防止法などがあり、消費者を誤認させる表示などを禁止している。
      食品表示の義務表示は食品表示法で規定され、義務表示の中では安全にかかるもの、商品選択にかかるものに大別される。安全にかかわる項目はアレルゲン、消費期限、保存方法等となる。また、商品選択にかかわる項目は原材料、原産地、遺伝子組換えなどの情報であり、それぞれのルールが食品表示基準で定められている。加工食品は、品名、原材料名、内容量、賞味期限(消費期限)、保存方法、製造者、製造所の項目が規定されている。なお、製造所固有記号の新制度では記号の前に「+」が必要となり、複数の製造所で製造されていることが条件となった。

      食品表示法による加工食品の表示の変更点

      • 加工食品と生鮮食品の区分統一
      • 原材料と添加物を「/(スラッシュ)」で区分など表示レイアウトの改善
      • アレルギー表示は特定加工食品及びその拡大表記を廃止。
      • アレルギー表示の一括表示は含まれるアレルゲンを省略せずに記載
      • 原材料原産地表示(2022年4月より義務化)
      • 栄養成分表示が義務化。ナトリウムから食塩相当量に。(飽和脂肪酸、食物繊維は推奨表示)
      • 栄養強調表示ルールの変更
      • 製造所、製造所固有記号のルール変更(同じ容器包装のものを2か所上で製造する場合は固有記号での表示が可能)
      • 機能性表示食品の新設

      以上のように食品表示法施行にともない身近な食品表示は変更されているが、新しい食品表示制度の認知度は低く、活用している人もまだまだ少ないのが現状だ(消費者庁・平成30年度調査)。栄養成分表示についても表示されていることは認識しているが、内容についての認知度が低いことも調査では明らかになっている。
      アレルギー表示については、表示義務7品目(特定原材料)はこれまで通りである。表示方法は、原材料ごとに表記する個別表示が原則で、一括表示は例外となったが、表示スペースの問題などで実際は一括表示の方が多いようだ。表示方法も変わり、複数のアレルゲンが含まれる場合は、“中黒「・」”でつなぐ。また、マヨネーズ(卵を含む)などの特定加工食品は廃止された。
      また、2019年9月の表示基準改正で、アーモンドが特定原材料に準ずるもの追加されて全部で28品目(義務7+推奨21)となった。義務表示の落花生は「ピーナッツ」の表示も可能となった。くるみはアレルギーの症例数が多く重篤になるケースもあることから、今後検査法が確立されてから特定原材料となる方向性である。近年の素焼きミックスナッツなどの消費量が増加したため、喫食機会が増えて症例が増えた。
      原料原産地は、原則は国別重量準表示。例外として「又は表示」「大括り表示」「大括り表示+又は表示」ができる。わかりにくいという声が多く、きちんと理解してもらうための課題が多い。一次加工品などを原材料とする場合は「●●製造」と表示するが、本来の原料産地が分からなくなるという課題がある。新しい原料原産地表示制度の認知度は、消費者庁調査によれば約10%と低い。
      遺伝子組換え表示の見直しも検討が行われ、義務表示は変更ないが「遺伝子組換えでない」の表示が厳格化され、検査で「不検出」の場合のみ表示が可能となる。2023年4月までの施行であるゲノム編集食品については義務表示ではないが、情報提供を行うことが望ましいとされた。

    2. 食品添加物はどう表示される?

      「食品添加物表示制度に関する検討会」が2019年4月よりスタートした。

      検討会の主な論点

      • 一括名表示、簡略名・類別名表示および用途名表示の在り方
      • 無添加、不使用表示の在り方
      • 栄養強化目的で使用した食品添加物の表示
      • 食品添加物表示の普及、啓発、消費者教育について

      検討会は1月末までに8回が終了した。第2、3回はヒアリングでは、消費者団体・事業者団体から様々な意見が出たが、その双方から「無添加」「不使用」表示は規制すべきという認識で一致した。平成29年度の消費者庁調査では、無添加の表示がある食品を選ぶ人は「安全で健康に良さそう」との回答が多い。食品添加物は国が安全性を確認したもの、長年の食経験から使用してよい品目を定めている。無添加・不使用表示は実態として「優良誤認を招く」「食の安全の誤解を招く」という問題を抱えている。「無添加」のルールが曖昧で、加工助剤を使用していても無添加としている商品があったり、同じような機能を持つほかの添加物や代替原材料の使われていたり、「合成」「人工」「化学」などの用語の氾濫などが散見されている。消費者の中には、「天然・自然は安全」「化学合成された添加物は危険」という誤解がある。第6回検討会において、無添加等に関するガイドラインを策定すること、食品表示基準から合成保存料、人工甘味料の「合成」「人工」の用語を削除することが適当と記述された。
      また、一括名表示、用途名表示、簡略名・類別名表示については、現行制度を維持するが、事業者からの情報提供(HPやお客様相談窓口)は推進していく。
      栄養強化剤については、現状表示が免除されているが、多くは表示されている実態がある。ほかの添加物と同様に表示義務とする方向での検討が適当だが、当面は調査を基にした消費者委員会表示部会の議論を踏まえて結論を出すことで先送りされた。

    3. これからの食品表示のポイント
      • わかりやすさと「知る権利」のバランスをどうとっていくかが重要
      • 容器包装への記載だけでなく、今後は問い合わせ対応やウェブサイト、QRコードの利用など新しい情報提供のあり方の可能性が検討される。
      • 表示が義務化されると情報が得られるというメリットがある反面、表示に要するコスト増(履歴の記録、包材の切り替えなど)のデメリットが生じる。ここでもバランスが重要となる。
      • 消費者の意向、実行可能性、検証可能性、国際整合性を勘案してバランスの取れた食品表示制度が求められる。

    全体の話し合い

    講演後の話し合いでは、食物アレルギーをもつ子供のためにも、分かりやすく正しい表示を求める意見がありました。また、給食などで使われる「だし」を例に挙げて、複数の魚介類を使う天然嗜好よりも、アレルギー患者にとってはうま味調味料(グルタミン酸Naなど)の方が安全でありがたいという事例も紹介されました。価格やおいしさのほかにも、添加物を使って正しく表示することのメリットがあることが提示されました。
    製造所固有記号については、実際に取り締まることが難しいため、実際は1カ所でしか製造しないものを記号表示する事業者が出てくるのではないかと懸念する意見が出ました。一方でコンプライアンスを重視する大手メーカーなどはきちんと表示する(現在もしている)と考えられます。
    消費者と事業者をつなぐコミュニケーションツールである食品表示についての関心は高く、活発な質疑と意見交換が行われました。森田さんは東京ビッグサイト青海展示棟で開催されるifia Japan2020の「リスクコミュニケーション セッション」(2020年4月24日)でも、食品表示についての講演を予定しています。

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