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  • バイオカフェ「海外旅行を楽しくするために」

    2019年12月6日、バイオカフェ「海外旅行を楽しくするために」を開きました(於 日本橋洋菓子店 門)。講師は東京大学医科学研究所付属病院 助教 古賀道子さんでした。
    初めに石川寛子さんによるヴァイオリン演奏があり、「ツゴイネルワイゼン」を演奏しながら石川さんが客席を回ったときには、参加者はまじかな演奏に酔いしれました。

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    石川寛子さん

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    古賀道子さん

    お話の内容

    海外旅行の現状

    海外に日本から出かける人は約2000万人弱。海外から来日する人は3000万人。日本は来日者の多い国の中で11位。英語圏以外の方も多い。私たちは来日する人の医療も考えなくてならないと思っているが、今日は日本から出かける人たちについて話す。日本から行く場所ではハワイ、グアム(アメリカ)が多く、アジアの亜熱帯や熱帯に行く人も多い。

    最近のトピックス

    アメリカのCDC(感染症予防情報センター)では、アメリカ人に対して感染症予防のための情報提供を行っている。例えば、こんな情報が掲載されている。

    (1)
    日本は風疹がはやっていてレベル2だと勧告している。
    (2)
    10月に国内でデング熱の感染症報告があった。京都奈良の修学旅行の後に生徒が2名かかった。
    (3)
    アジア、特にフィリピン マレーシアなどでポリオが大流行している。

    ポリオについていえば、日本の赤ちゃんは全員ワクチンを接種している。10年くらいで効果が切れるので、渡航するときは大人も接種したほうがいい。
    海外でかかる感染症は、国内では珍しい症例もあり、日本で発見が遅れることもあるので注意が必要。

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    会場風景

    マラリア

    日本人がマラリアに罹った場合、診断が遅れたり、適切な薬剤が投与されないと死ぬこともある。夜間にでるハマダラカが媒介。ナイトツアー、夜のサファリツアーでは防蚊対策が必要。昼間の会議の時だけ外に出るなら大丈夫。海外旅行の目的や内容を踏まえた予防接種が有効。
    日本で承認されている予防薬は2種類。行く先のマラリアの蔓延の程度で薬を選ぶとよい。欧州の人はアフリカに行くときにマラリアの治療薬をもっていくか(スタンバイ治療)、発症予防薬をのむか(1週間前に1度飲むがめまいがするもの。2-3日前から毎日帰国後ものむもの)のいずれか。予防薬は保険適用外。熱が出ている間に血液を調べないと診断できない。
    マラリアには4つの型がある。

    • 熱帯熱型 重症化すると死亡。再発しない
    • 三日熱型 肝臓の中に潜んでいる。再発する。
    • 卵形型
    • 四日熱型

    日本では1年に40-50件、届け出られている。製薬企業からの薬の販売の情報をあわせると100件以下だろう。
    マラリアの症状は、発熱(39度位)、ふるえがきて、悪寒があり、頭痛。風邪に似ているが、喉が痛くなく、鼻水がでない。風邪だと思っていると発見が遅れる。
    重症マラリアでは、意識障害。急性腎不全。黄疸。潜伏期間は無症状で、3か月後、忘れたころに熱が出る。帰国して発熱したら、医師に海外で蚊に刺されたことを必ず告げることが大事!

    デング熱

    アフリカ、南米に住むネッタイシマカが媒介する。潜伏期間は1週間。帰国後1週間までは注意すること。
    現地の人は何度も罹っていて、重症にならないが、旅行者にはつらい病気。インフエンザくらい苦しくて、出血斑がでる。
    防蚊が重要!日本の虫よけ、蚊帳は性能がいい。蚊は明け方と夕方にでる。

    日本脳炎

    不顕性感染が多い。日本脳炎というが、日本よりもアジアの病気。大人になって海外に行くときには接種が必要。

    黄熱病

    流行地域はアフリカ・南米で、ワクチンを接種しないと入国できない国もある。黄熱ワクチンは免許のある施設、例えば検疫所でしか受けられない。生ワクチンなので接種後4週間は他のワクチンがうてない。複数の予防接種をするひとは、かなり前から計画をたてましょう。
    長袖長ズボンを着用すること。パジャマも長袖長ズボンを着ること。日本からの建築会社、建築下請けの作業者、研究者で、アフリカや南米に行く人は注意しましょう。

    A型 肝炎

    海外の子どもたちがかかっている。経口感染で、飲食物から感染する。現地の人は子どものときにかかって免疫をもっている。劇症化したら死んでしまうので、現地の人は劇症化しなかった人ということになる。

    アジア、アフリカ、南米にいくときは非常に優秀なワクチン(5年、必ず効く 抗体価が必ずつく 3回うつ)で防げるので、短期間の滞在でもぜひ受けてください。

    腸チフス

    下痢だけ、熱だけのこともある。

    破傷風

    傷口に菌が入って感染する。日本では子どものときに予防接種しているが、大人になって免疫が落ちている可能性があるので出国前には予防接種を受けたほうがいい。

    狂犬病

    野生の犬、猫、サル、コウモリに噛まれて感染する。かかれば致死率100%。インド、インドネシア、中国で流行。世界的な病気でもある。
    犬の狂犬病の末期(やせてよろよろしている)、 唾液腺に狂犬病ウイルスが集まってきていて、ガブッとかまれてヒトの血液に入り感染する。渡航前に3回予防接種をして、もしかまれた後には4-6回追加でうたなくてはならない。罹ったときには、免疫グロブリンが有効だが、日本にはない。
    野生の動物には手を出さないこと。

    まとめ

    ワクチンがあるものは、出国前に予防接種を受けた方がいい。
    日本では、FORTH(厚生労働省検疫所)が担当している。

    薬剤耐性菌

    日本では、MRSAが院内感染として有名。海外は抗生剤をドラッグストアで買えるので、薬剤耐性菌の問題はアジアから世界にひろがっている。海外の病院では、病院食や治療の中で耐性菌をもらってしまうケースもある。耐性菌の輸入が世界的な問題になっていて、WHO(世界保健機構)は、抗生剤の利用を減らす運動をしている。
    例えば、小児科、耳鼻科、泌尿器科で抗生剤を出さないようにしましょう。必要なときだけにしましょうという運動が起こっている。

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