コンシューマズカフェ「知っていますかナノセルロース」
2019年11月8日、くすりの適正使用協議会会議室において、コンシューマーズカフェ「知っていますかナノセルロース」を開きました。講師は産業技術総合研究所 材料・化学領域 研究戦略部上席イノベーションコーディネータ 平田 悟史 さんでした。ナノというと、とても遠いことのように思っていましたが、具体的な応用事例が多く示されて、説明もわかりやすく、参加者は大満足でした。
主なお話の内容
セルロースは植物を構成する3成分の一つで、地球上に最も多く存在するポリマーでもあります、セルロースは繊維状をしており、植物から取り出したセルロース繊維は、古くから、紙、綿、繊維(衣料)として用いられてきました。このセルロース繊維の幅は、20~40μmといわれています。一方、本日お話しするナノセルロースというのは、このセルロース繊維をさらに細かくしたものです。セルロース繊維をほぐして、極限まで細かくしたものがセルロースミクロフィブリルで、その幅は3~4nmです。これは先ほど説明したセルロース繊維と比べると、幅が1万分の1です。これから説明するナノセルロースの最小単位が、このセルロースミクロフィブリルとなります。
ナノセルロースにはいろいろな種類がありますが、大きく分けると、1) 完全分散したセルロースナノファイバー、すなわちセルロースミクロフィブリル、2) 完全分散していないセルロースナノファイバー、すなわちセルロースミクロフィブリルの束、3) リグニンが表面に付着した完全分散していないセルロースナノファイバー、4) セルロース繊維を硫酸などで加水分解して得られる紡錘形のセルロースミクロフィブリルの束、5) グルコースを原料に酢酸菌が生合成したセルロースミクロフィブリルの束、の5種類があり、1) と2) はセルロースナノファイバー、3) はリグノセルロースナノファイバー、4) はセルロースナノクリスタル、5) はバクテリアナノセルロースと呼ばれています。
ナノセルロースでよく聞く特性として、鋼鉄の5倍の強度で5分の1の軽さ、というのがあります。これはセルロースミクロフィブリルの繊維1本1本についての話で、すべてのナノセルロースに当てはまるわけではありません。ましてや、ナノセルロースを加えた樹脂が鋼鉄より強い材料になるわけでもありません。ナノセルロースにはいろいろな特性がありますが、すべての性状のナノセルロースがその特性をもつわけではないので、注意が必要です。
日本では約20社がセルロースナノファイバーを製造し、商品・サンプルとして販売していますが、原料、製法が異なるため、全く別のものと考えたほうがよいと思います。またその性状を示す項目、測定方法が統一されていないため、A社とB社のセルロースナノファイバーはどこがどう違うのかを、数値として示すことかできません。もっと極端な話をすれば、この容器の中の物質がセルロースナノファイバーであることを示すための基準がないとも言えます。今後、セルロースナノファイバーの安全性を評価していく上で、その物質そのもののキャラクタリゼーションができないということは、大きな問題ではないかと思います。
日本ではセルロースナノファイバーを使った商品がすでに発売されています。セルロースナノファイバーを持つ特性をうまく活かしているものがある一方で、セルロースナノファイバーを使わなくてもよいと思える商品もあります。12月5日から7日に東京ビッグサイトで開催するナノセルロース展では、これらの商品を一堂に展示しますので、お時間があればぜひお越し下さい。
日本では、ナノセルロースというとセルロースナノファイバーがほとんどですが、海外ではセルロースナノクリスタル、バクテリアナノセルロースも研究開発の対象となっています。また日本ではセルロースナノファイバーを樹脂に混ぜて高強度・軽量複合材料を作る研究に注力していますが、海外では複合材料以外にさまざまなアプリケーション開発が進められています。特にバイオメディカル、エレクトロニクスなどの高付加価値製品の開発が盛んですが、まだ研究段階であり、今後の成果が期待されています。
展示会のご案内
第4回ナノセルロース展
日時:2019年12月5日(木)~7日(土) 10時~17時
場所:東京ビッグサイト西展示ホール(エコプロ2019会場内)
参加費:無料 どなたでもご参加いただけます
展示、セミナーの詳細については、下記のサイトをご覧ください。
https://unit.aist.go.jp/rpd-mc/ncf/event/ev_exhibition.html