バイオカフェ「栄養豊富なアマニと機能性素材の一般食品への応用」
2019年6月1日、多摩六都科学館でバイオカフェを開きました。お話は日本製粉株式会社 イノベーションセンター 山内優輝さんによる「栄養豊富なアマニと機能性素材の一般食品への応用」でした。お米と違い、私たちは小麦の種類や用途について知らないことが多く、アマニについてはもっと知らないことだらけで、参加者からはたくさんの質問や感想が語られました。
お話の主な内容
- はじめに
日本製粉株式会社は創業100年を超える。製粉をコアとしてパスタ、冷凍食品、総菜、中食、ヘルスケアなどの多角的な事業展開している。私は、機能性素材の研究を担当している。今日は小麦とアマニを取り上げる。 - 小麦をとりまく背景
朝食を食べていない人が1割いて、20-59歳では、パン食がご飯より優勢という調査結果がある。小麦は米、トウモロコシとともに、世界三大穀物のひとつ。これらの穀物は世界で年間6-8億トン生産されている。なかでも、小麦は世界中で栽培されている。分類学上は、小麦もトウモロコシも、米とともにイネ科。日本の現状国民ひとりあたりの小麦の年間消費量は33キロ。主にパンや菓子で消費される。小麦のほとんどは輸入で、日本は世界で第6位の輸入量。最も多く輸入しているのはエジプト、2位はインドネシア、3位はアルジェリアと続く。
小麦を多く栽培しているのは、北米、オーストラリア、インド、中国。日本にはアメリカ、カナダ、オーストラリアから輸入している。アメリカから来る小麦は主にパンや菓子用、オーストラリアは麺用というように、国別でおおよその用途が決まっている。アメリカでは、2000haもあるような大規模農家が小麦を生産している。
日本の小麦作付け面積合計はほぼ一定なので、収穫はその年の気候などで増減している。北海道、九州が多い。北海道はグルテンが多い「ゆめちから」などのパン用。九州、関東はうどんに向いている。日本の生産者数は減少傾向だが、法人は増加中。しかし、小麦に限らず農業従事者全体は減っていっている。
(質問)小麦の消費量をみると2013年に急に増えているが→2011年から増加中だった。震災後、小麦を使った備蓄食が増えたのではないか。 - 小麦の種類
小麦は、タンパク質の含量によって以下のように4つ種類があり、用途も決まってくる。- 硬質小麦 カナダ、アメリカで生産。パン用。タンパク質含量13%。赤小麦
- 中間質小麦 日本、オーストラリアで生産。うどん用。白小麦
- 軟質小麦 アメリカで生産。菓子用。タンパク質含量10% 白小麦
- デュラム小麦 カナダ、アメリカで生産。パスタ用。黄色っぽいが胚乳は白い。赤小麦
日本の小麦小麦は、日本では米の裏作が多い。日本の小麦は農協経由で買うので、その土地ならではの小麦が売られている。例えば、「きたほなみ」北海道で栽培されて、麺用。「ゆめちから」北海道で栽培されてパン用、「農林61号」本州で栽培されて、麺や菓子用。 - 製粉と小麦
小麦と米の違い米は胚芽と皮を精米で除去する。小麦は外殻が硬くて、胚乳が柔らかいので分離しにくい。加水して殻をはがし、砕いて白い部分を粉にする。
原料が海外から届くと、精選という工程で異物を除去する。
製粉工程では、ロールで挽き砕いては、ふるい分けることを繰り返す。初めの粗いロールでひき、だんだん目が細かいロールでひきわる。ひいてはふるうという作業を、目立ての細かいロールに変えていきながら、何度も繰り返す。できた小麦粉を検査・包装・出荷する。業務用の小麦粉は1袋が通常25キロ。
(質問)製粉する過程でどのくらい減るのか→殻の部分、約20%は飼料になる。食品になるのは60-70%くらい。高級スーパーでは、海外製の歩留りを絞った小麦粉も売られている。 - アマニ
アマニ(亜麻仁)は、青い花が咲く亜麻という植物の実。亜麻は繊維をとるために栽培されてきた。寒冷地で多く生産されている。
わが社はアマニをローストして粉末にしたり、油を搾って販売したりしている。アマニは粒のままではあまり出回っていない。
アマニは世界で年間、230万トンくらい生産されていて、北米、ヨーロッパではかなり消費されている。アマニ入りのシリアル、クッキーがある。カナダでは、アマニは体によいといって、雑穀やパンとして用いられており、種類も多く、スーパーマーケットでも大きいスペースをとっていた。
アマニが健康によい理由アマニ油のα-リノレン酸(オメガ3)含有量は23%でタンパク質(20%)より多い。他にポリフェノールの一種のリグナンもある(1%)。リグナンはゴマのセサミンに当たるもの。
α-リノレン酸は分子構造からオメガ3といわれる脂肪酸のひとつ。ヒトはα-リノレン酸を体内で合成できないので、国内外でオメガ3への関心が高まっている。アメリカ食品医薬品局(FDA)はオメガ3脂肪酸の健康補助食品は心臓病のリスクを低減するといっている。日本の厚生労働省は、成人は毎日約2gを摂ることを推奨している。アマニのオメガ3含有量は、食材の中でもダントツに多い。
わが社では、アマニ油に加え、ローストアマニやその他加工食品にアマニを展開している。食品には、1次機能(栄養),2次機能(おいしさ),3次機能(生理活性)がある。アマニを活用して、3次機能を向上させたい。
話し合い
- は参加者の質問、 → はスピーカーの発言
- アマニは輸入ですか
→アマニは寒冷地でないと育てられないので、カナダ、ニュージーランドから輸入している。 - アマニは穀物に分類されるのか
→穀物の1種だが、食品としての国内の用途はほとんどは油になる。もともと、繊維や工業用油として使われてきた。種にはシアンがあるので食用ではローストする。 - 炒りアマニとローストアマニのことばは統一したほうがいいのではないか
→はい。食品成分表は7訂ではひらがなになっており、統一するために検討したい。 - アマニ油は加熱しないほうがいいのか
→酸化しやすいので、天ぷら油みたいに使い回すのはよくない。短時間でさっと炒めるだけなら問題ないだろうと思う。賞味期限以内に使ってください。 - 製粉するときの外皮はどうするか
→飼料にする。 - なぜ全粒粉にしないのか
→栄養面では皮ごとの利用がいいが、えぐみが出て、食感で好き嫌いがある。ふすまも食用で販売している。 - だまにならない小麦は何かが入っているのか
→何も入っていない。 - 小麦粉だけなのに、だまにならない性質が付与されるのか
→製粉工程では小麦を挽き砕く、ふるい分けるを何度も繰り返す。粒度調整を工夫して、だまになりにくい画分を製品にしている。 - 小麦粉の粒度の違いで別な食品もできるのか
→打ち粉などが一例としてある。 - アマニは体に良いので購入したが、においがきつかった
→圧搾したそのままの油から精製した油まで市販されている。わが社はにおいや保存性の観点から精製油を展開している。 - 私はスーパーフードが好きで、早くからアメリカの通販でアマニを取り寄せていた。生で食べていたが、大丈夫だろうか。ご飯に入れて炊き込んだり、パンに混ぜて焼いたり、利用している。加熱しないでドレッシング、和え物でも使っている。
- アマニは殻が硬くて栄養素がよく吸収されないのではないか
→わが社はアマニロースト粉末を販売している。酸化防止のために1回分ずつの個包装や500gの徳用袋もある。開封したら冷蔵庫にいれると酸化防止になる。小麦粉、ホットケーキミックス、たこ焼き粉も開封後は冷暗所での保存を推奨している。 - 「こんな小麦粉、ほしかった」というタイトルは誰が考えたのか
→名称は開発担当者のアイディアを中心につける。他社には名称を考える部隊がいると聞いている。 - 背の高いビルが目立っていた東久留米の製粉所がなくなったが
→製粉工場は工程上、背の高い建物の構造になっている。最上階に圧送された小麦粉は、空気圧をかけて4階建ての高さからふるい落としていくため。 - アマニにグレードはあるのか
→一定の基準を満たした商品に日本アマニ協会が認定を付与している。オメガ3の含有量や残留農薬検査結果などが基準としてみられる。 - 私はアマニのファンでいろいろ利用している。吸水力が有るので、白和えに入れると水っぽくならなくていいですよ。
- 新製品の提案をすることはあるのか
→私は健康機能の研究が担当。高齢者のロコモーティブ・シンドローム予防を考えている。研究開発の製品化のために、営業担当の声も聴いていく。 - 来年はオリンピック、パラリンピックだが、運動に向いている食品はあるか
→マラソンにはパスタがいい。アマニに含まれるオメガ3で体力を維持してください。