クリニックカフェ「健康の入口はお口から~歯周病予防」
9月21日、水道橋東口クリニックでクリニックカフェを開きました。お話は第一三共ヘルスケア(株) ブランドマネージャー西原良介さんによる「健康の入口はお口から~歯周病予防について」でした。悪天候にもかかわらず、定期的に歯科医に通っているという、関心の高いシニアが集まり、質疑応答も活発に行われました。
西原良介さんのお話
お話の主な内容
1.日本人の口腔環境
歯磨き粉のマーケットは年3%で伸びている。歯磨き回数が増えたこと、より高価ないい歯磨き粉が求められていること、家族共用から自分専用の歯磨き粉が使われていることが理由としてあげられる。
歯磨きの意識は高まり、昭和44年に比べると1日1回磨きする人は3分の1に減り、全体の20%弱。3回磨きが3割ほどになった。
永久歯は親知らずを含めて32本だが、今は親知らずが4本ともそろわない人も多い。「8020運動」では80歳で20本の自分の歯を残すことを呼び掛けているが、日本で20本が維持できているのは70歳までで、80歳の平均は10本位。アメリカの水準に追い付いてきたところ。先進国の中で、日本は口腔環境への意識が低い。
歯を残す意義は大きい。自分の歯や入歯で自分で食べている人には、自分で活動できる人が多い。
歯が抜ける一番の理由は歯周病42%、虫歯32%で、実は歯周病の方が深刻。
2.虫歯の基礎知識
虫歯とは酸で溶かされることで「う蝕」という。
虫歯の要因は、1)虫歯菌がいる、2)糖分がある、3)歯の質(体質でなりやすい人とそうでない人がいる)、4)唾液が酸性(体質)など。
歯の表面は「エナメル質」という硬い層で覆われていて、中に象牙質という弱い層がある。
虫歯の進行度は4段階で、C1-4で表される。
〇C1:エナメル質の範囲内の虫歯。軽症。歯磨きとフッ素で進行をとめられる。このくらいなら歯科医は積極的な治療をしないこともある。再石灰化による回復が期待できる
〇C2:中の象牙質に進行。痛み、しみを感じる。治療が必要。
〇C3:歯髄まで進行。かなり痛い。歯髄まで治療するので時間も費用もかかる。
〇C4:歯が溶けて残っていない。抜くしかない。口臭など全身症状が現れる。
虫歯にならないためには
1)脱灰:エナメル質の表面が酸でとけて歯は無防備になること。
2)再石灰化:唾液がカルシウムを集めて、歯に定着させて、脱灰からもとに戻してくれる。
だから、飲食をすると口内は酸性になり脱灰するが、しばらくすると再石灰化が起こる。虫歯にならないためには、脱灰時間が短く再石灰化の時間が長いのがいい。
それで体質的に唾液が酸性の人、唾液が出にくい人、唾液が少ない状況は、再石灰化が進みにくい。また間食が多いと口内が酸性になりやすい。寝る直前まで食べていると口内が酸性になったところで、眠って唾液が減るので、虫歯になりやすくなる。
フッ素は脱灰を妨げる働きがある。フッ素で歯が黒っぽくなるという説があるが、それは 高濃度のフッ素を長期に用いた場合で、歯磨き粉にそんなにフッ素は含まれていない。
虫歯予防
・間食・夜食を減らす
・食後30分経ってから歯磨きをする。食事の直後は脱灰状態なので歯磨きは歯を傷つける。
・甘い飲み物を減らす
・口寂しいときはキシリトール入りガムで再石灰化を促す。
・定期的に歯科検診を受ける。半年に1度以上。歯に自信がない人ほど行きにくくなり、悪循環に陥りやすい。
3.歯周病
歯周病は高齢者の病気だと思いやすいが、30歳過ぎから初期症状は現れる。この時期は自覚されにくい。40-50歳で自覚したときにはかなり進行していることもある。
症状は歯茎が炎症を起こし、歯茎が赤くはれ、歯がぐらぐらになり歯を支えられなくなる。1㎎の歯垢(プラーク)には1-10億個の細菌がいるといわれ、これは歯周病菌の塊。健康な歯茎はピンク色で、歯周ポケットが1-2㎜以下。
以下の歯周病のチェックリストにひとつでも該当したら要注意!やってみて下さい。
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_cleandental/check/
歯周病の進行度
- 1期
- 歯周ポケット3mm以内。軽い歯肉炎。ブラッシングで改善できる。
- 2期
- 歯周ポケット3-5㎜。軽度歯周炎。歯茎がピンクから赤になる。歯石があり、歯茎から出血したりする。歯石を除去しブラッシング指導を受けてブラッシングすることで改善が期待できる。
- 3期
- 歯周ポケット5-7㎜。中程度の歯周炎。出血したり、膿が出て、口臭もある。手術が必要な場合もある。
- 4期
- 歯周ポケット7㎜以上。重度歯周炎。歯がぐらぐらして抜歯が必要。手術が歯茎を切開して、内部を消毒して縫合する。治療に時間がかかる。
歯周病は全身疾患につながる
糖尿病と歯周病は、両方治さないとだめ。
心疾患では、歯周病の菌が心臓に悪影響を及ぼすと言われている。
妊婦さんは早産や低体重児出産につながるので、妊活中の歯周病ケアの重要性が言われるようになった。
歯周病は男性に多いと思われているが、女性の方が歯周病のリスクは高い。女性ホルモンが出ると歯周病菌が増えるので、女性ホルモンが出る思春期と妊娠出産期はリスクが高い。更年期はドライマウスになりやすいので、歯周病になりやすい。妊娠・出産期はたばこ、アルコールと同じ位、歯周病に気を付けてほしい。
歯周病予防
・よく睡眠をとること
・よくブラッシングすること
・よく噛む(唾液がよくでる)
・禁煙(タバコは歯茎の血行を悪くする)
・定期的に歯科医に行く
4.歯周病予防歯磨き
私達が販売している「クリーンデンタル」の紹介をします。今日のお土産を使ってみて下さい。1985年発売し、歴史は長い。認知度は高くないが、ファンが増加中。特徴は3種類の殺菌剤が入っていることで、口内細菌、虫歯菌、歯周ポケット内の歯周菌に効く。さらに抗炎症成分配合で消炎効果がある。今、臨床研究を行っていて、歯周ポケットを浅くさせる効果があるかを調べている。
利用者のリピート率が高く、塩味と清涼感を気に入って続けてくださる方が多い。
知覚過敏
歯周病が進行して歯茎がむき出しになるとしみてしまう。しみる症状を改善するより、歯周病を治すほうが大事。口臭も口臭を消すよりも、原因の歯周病を治すことが根本治療になる。
話し合い
- は参加者、 → はスピーカーの発言
- 歯周病用の歯磨き粉はどこで買えるのか
→ドラッグストアにおいている。 - しみなくて、口臭ケア、歯のくすみの全部が解決する歯磨き粉はないのか
→研究中です。 - 1回の適量はどのくらいか
→歯ブラシの長さの3分の1くらい。 - 歯磨き粉の量は少ない方がいいと思っていたが、歯磨き粉をたくさんつけて少ない水でうがいするのがいいといわれた
→ゆすぐ水を減らした方がフッ素成分が残るという説もあるが、2-3回ゆすいでください。歯磨き粉をつけないでいいというのは泡で満足してしっかり磨かないことがあるから。 - 電動ブラシはいいのか
→ゆっくり時間をかけて手磨きをするのが良いと言われているが、時間が無い時は電動歯ブラシを使用するのもオススメです。 - 研磨剤がよくないというので、歯磨き粉を使わないでリンスをしていた
→薬用リンスはうがいしてから磨く。今の研磨剤は歯を傷つけないものが使われている。歯磨き粉の研磨剤はソフトになった。 - 研磨剤なしの歯磨き粉の見つけ方
→研磨剤は粘土調整剤、清掃剤と表示されている場合がある。 - 歯磨き時間はどのくらいか
→1本について30往復するのがいいといわれており、これで計算すると10分かかる。お風呂の中などの時間があるときに、じっくりみがくのもよいと思います。 - 傷つかないように磨く方法は
→鉛筆のように歯ブラシをもって磨くといい。 - アメリカの方が高齢者の歯の残存数が多い理由は
→海外は歯の意識が高い。歯が白く、口臭がないことがビジネスでも重要視される。日本は歯医者さんの数は多く、定期的に歯科に行かれる環境にあるのに、意識が低いのは残念。 - 下がった歯茎は治せるのか
→ブラッシングで維持するだけで、元には戻らない。 - かつて、歯周病の手術を受けたが、時間がかかって、長く歯科医に通って大変だった。
- 電動ハブラシはなぜいいのか
→短時間である程度落とせる。すみずみまできれいにするのは手磨きや歯間ブラシなどで丁寧に磨くのが良い。 - キシリトールはなぜいいのか
→砂糖でない甘味料が入っている - 歯槽膿漏とは
→歯槽膿漏、歯肉炎は歯周病に含まれる。