サイエンスカフェみたか「野菜の病害虫対策」
2017年11月9日、三鷹ネットワーク大学においてサイエンスカフェみたかが開かれました。お話は住友化学園芸株式会社普及部部長 草間祐輔さんによる「野菜の病害虫対策~秋野菜に発生しやすい病気や害虫を上手に防ぐ方法」でした。
草間祐輔さん
野菜作り経験者が多くて質問もたくさん!
主なお話の内容
はじめに
野菜を病害虫の被害から守るには農薬もあるが、今日は、病害虫についてよく知り、できるだけ病害虫の被害に遭わないようにする方法、効果的な農薬の使い方を説明する。
農薬にはスプレー剤、希釈して噴霧器で用いる薬剤、ネキリムシの農薬のように餌で誘引して食べさせて殺虫する薬剤など、使い方も使う時期も異なり、そういう情報はホームセンターなどのパンフにも書かれている。しかし、病気や害虫で苦労している方は、何が原因かがわからないのと思うので、病気と害虫の被害の写真を3万枚ほど撮影しており、分類整理し、病気の始まりや虫の食われた葉の写真を通じて、皆様の力になりたいと思っている。写真を見て、原因になっている虫や病気を見つけてもらい、予防、初期の手当てをお伝えし、効果的で効き目がピシッと現れるような農薬に使い方をお話したい。
子どもの頃、ゴキブリが出てくると、台所洗剤や牛乳を害虫にかけた。これは界面活性剤が害虫の気門を覆ってしまって窒息死させるためで、速効性があった。牛乳を植物の病害虫にかけると、後からカビが生えたりした。今は、水あめ(食品)を有効成分として害虫の体を覆って窒息させる農薬もつくられている。水あめには、うどんこ病の菌糸を伸長させない効果もある。除虫菊(天然成分)を有効成分とした農薬もつくられている。
1.害虫駆除の原則
資材によって病気や害虫を予防しよう
銀色の線が入ったマルチはキラキラ光るのでアブラムシ、アザミウマ、ウリハムシが嫌う。マルチ(ビニールでもわらでも)は、雨が降ったとき、泥はねで土壌病原菌が広がるのを抑える。泥はねがなければ、葉裏の気孔からべと病、疫病の病原菌(鞭毛で水の中を動き回る)が入るのを防ぎ感染予防になる。
害虫の数を減らそう
秋にはキャベツの苗を植えるとアオムシ、ヨトウムシが来る。モンシロチョウはアブラナ科の野菜の匂いに敏感で、すぐに来て卵を産む。種をまいたり、苗を植えたりしたらその日のうちに、寒冷紗、防虫ネット、不織布を被せておくといい。ネットなどと土との隙間ができないように土でとめること。
5月に不織布を使うと空気が流通しにくく中の温度があがるので植物に害があるが、秋からなら不織布などをかけることは防寒対策にもなる。
雨を避けて病気を予防
病気の原因になる胞子は水分がないと発芽して菌糸をのばせない。温室やビニールトンネルには雨がかかりにくく、病気になりにくくする効果がある。トマトではビニールで株の上を屋根のように覆う人もいる。ビニールトンネルは、日中温度が上がる場合は裾をあげて風を通す。バラの黒星病も雨にあたると出やすい。温室で作られるバラの切り花に黒星病がでないのは、雨に当たらないことと関係している。
2.秋冬野菜の病害虫対策
ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ) → ダイコンなどアブラナ科につく
ダイコンの苗の葉が巻いているとき、中にダイコンシンクイムシがいる。生長点を食べられてしまうと成長しなくなる。巻き葉を見つけたら、すぐにとってつぶすと被害拡大を防げる。薬剤は巻いた葉の中にも浸透する。
キスジノミハムシ → コマツナなどアブラナ科につく
コマツナ、チンゲンサイなどのアブラナ科の葉に穴があいているときの原因害虫。甲虫の仲間で黄色の筋がある。雨が多い年にはあまり発生しない。
カブ、コマツナ、チンゲンサイなどの播種が終わったら、すぐに防虫ネットをかけること。この虫は周囲から成虫が飛んできて葉を食べ卵を産む。虫がたくさんついてしまったら、水溶剤が使える。
アオムシ(モンシロチョウの幼虫) → キャベツなどアブラナ科につく
葉の上の保護色の小さいアオムシを見落としても、糞で見つけられることもある。葉に穴があいて、葉の上にアオムシがいたら、犯人はモンシロチョウの幼虫。アオムシはチョウの仲間で葉裏に一粒ずつ、トックリ型の卵を産む。葉裏をみて、卵をみつけたらすぐにつぶすのは最も早くできる害虫駆除法である。
除虫菊のスプレー(パイベニカVスプレー)は天然成分を原料にしているが、速効性がある。天然成分や食品成分だと環境にやさしいが、きちんと害虫にかからないと効かないものが多い中、除虫菊の成分はよく効く。
ヨトウムシ(夜盗虫 夜行性) → ハクサイなどアブラナ科につく
昼間は落ち葉の下や株の元の土中に潜んでいる。葉の上にアオムシがいないのに、葉に穴があいているときの犯人はヨトウムシの可能性が高い。
蛹になって2週間たらずで蛾になる。蛾は卵を葉裏に100-200個、かためて産む。これを卵塊(らんかい)という。卵のついた葉を捨てるのは最も効率的な駆除。
ツバキやサクラに、アメリカシロヒトリの毛虫が沢山つくことがあるが、これも卵塊のうちに見つけて取り除くのが効果的。噴霧器で水和剤をかけると駆除できる。
ネキリムシ(カブラガ) → ダイコンなどにつく
植えたばかりの苗がかじられていたり、葉が落ちていて、地面に幅2cmくらいのモグラの潜ったような痕があるときは、ネキリムシを疑う。半径約20㎝以内2~3㎝位の深さをほってみると、ネキリムシ(蛾の幼虫)が見つかる。ネキリムシは地際の茎を食べて倒してしまう。これに対して、根を食べるのはコガネムシ(甲虫)の幼虫。ネキリムシの幼虫は体が灰色で、コガネムシは白い。
苗が1本倒れていて、掘って幼虫をみつけたら、すぐに処分してください。そのままにすると他の苗にも被害が広がっていきます。夕方、ぱらぱらペレット剤をまいておくと誘引されて食べて死んでしまいます。
カブラハバチ(ナノクロムシ) → ダイコンなどアブラナ科につく
ハチの仲間の幼虫。小さい黒いイモムシで葉から落ちやすいので、駆除するときはとりこぼしに注意。薬剤には弱いので、薬剤のよる駆除も効果的。
そうか病 → ジャガイモ
ジャガイモの表面があばた状になる病気。食べるには問題はないが、商品価値が落ちる。そうか病はアルカリ性の土で発生しやすいので、ジャガイモを植え付ける畑には石灰をまかないこと。水はけをよくするといいので、畝を高くして水をたまりにくくする。
そうか病の菌が増えやすくなるので、ジャガイモを連作しないこと。そうか病のほか、ジャガイモやナス、トマト、ピーマンなどのナス科の作物は連作すると同じ科で発生しやすい病気が出やすいので、連作は避けること。栽培が終わった場所には土壌病原菌が増えている可能性があるので、種イモを植え付ける前に土壌消毒剤を使うことを勧める。
白さび病 → ハクサイなどアブラナ科
葉裏に胞子がつき、表にぼやけた斑点が現れる。雨が多く風通しが悪いとでやすい。
対策は畝を高くする。土壌病原菌が増えるのでアブラナ科の連作をしない。ハクサイ → マメ科 → ナス科というように栽培していく。これを輪作という。
3.農薬の安全性
「食品だから安全、化学物質が危険」いう考え方は間違っている。例えば、水や食品は安全だといっても、多量の水を一気に飲んだり、しょう油を1リットルを一度に飲んだりしたら、体に多大な影響が出たり命にかかわる場合もある。
一方、風邪薬は異物だが、風邪を治すとともに有効成分は分解され、排泄される。農薬(天然成分、化学合成)も同じで、散布後は植物の上や土壌で分解してしまう。農薬は発がん性などの安全性については詳しく調べて、安全なものしか製造販売されていない。
野菜作りではラベルをみて、正しい用量、用法を守り、使用時期に注意して使ってほしい。使用時期でいう収穫前日とは、使用して24時間たったら収穫して食べてよいということ。7日前までとは、散布後7日経って収穫して食べてよいということ。また、噴霧にはコツがある。葉裏は病気の入り口だから、葉裏7、葉表3の割合でかけるとよい。葉にかけて滴り落ちてくるタイミングが、必要十分量です。
殺虫剤や土壌殺菌剤のお土産はジャンケンで
勝った人がいただきました
会場案内
話し合い
- 害虫を減らすなどの対処方法は農家も家庭菜園も同じか → 規模は違っても、原理原則は同じ。
- 卵塊をみつけたときに農薬をかけると効くのか → 卵に効く農薬はない。卵の殻が強く、農薬は効かない。
- ナスは連作しない方がいいということだが、トマトなどのナス科の作物も栽培しない方がいいのか → はい。ナス、トマト、ピーマンはナス科だから、連作しないほうがよい。ナス科の野菜の後にはマメ科、次に大根やニンジンなどの根菜類を作り、翌年にナス科に戻すのがいい。
- カビ、害虫の薬をまぜて噴霧していいか → 殺虫剤と殺菌剤を混ぜて使うことはできるが、混ぜても問題ないものの組み合わせがお配りした便利ガイドに示してある。それを見て使ってほしい。
- また、農薬には使用できる作物が決まっている。食用作物の場合、ラベルに書かれた作物にだけ、使用方法に従って使うことが決められているのでラベルに従ってください。
- 複数の薬剤を混ぜて使うときに濃度はどうするのか → A剤は1000倍、B剤は500倍というときは、1リットルの水にAを1ml、Bを2ml入れて混ぜる。溶かしやすい液体を先、粉末を後に混ぜる。展着剤といって、農薬を葉によく付着させる薬剤がある。これをはじめに入れて、液体、粉末の順に混ぜていくと、半日後雨が降っても薬剤が落ちにくい。