バイオカフェレポート「加工食品って食べごろがあるの」
2017年10月20日、日本橋洋菓子店「門」でバイオカフェを開きました。食品化学新聞社 川本浩二さんによる「加工食品って食べごろがあるの」でした。川本さんが春から買い置きして用意してくださった、消味期限の異なる(数か月から1年)レトルトカレー、ソース、缶詰の食べ比べも行いました。初めに北政扶美子さんによるハープの演奏がありました。
北政扶美子さんのハープ演奏
川本浩二さん
試食の準備
試食準備完了
主なお話
はじめに
今日は食品メーカーの技術者として体験したことや食品業界で一般的にいわれていることを伝えます。試食もしていただき、体験型のバイオカフェとして楽しんでください。
食品化学新聞社では、週1回の食品化学新聞、月刊フードケミカルを担当している。
ifia JAPAN(国際食品素材/添加物展・会議)という展示会企画・運営にも関わっている。
その前は、増粘剤や安定剤(ジャムのペクチンなど)のセールスエンジニア(技術営業)をしたり、常温流通食品(ドライグロサリー)委託工場管理、スーパーマーケットのPB(プライベートブランド)商品の開発・品質管理をしたりしていた。工場生産立ち合い、工場監査、クレーム回答文書作成などの経験もある。
PB商品の開発
PBのコンセプトは、カテゴリーのナンバー1の商品と同じものを安く販売すること。今では違ったコンセプトのものもたくさんある。
委託されたメーカーは加工食品の試作品をつくり、レシピもつくる。マーチャンダイザー、PB開発者は試食して評価する(舌で評価するので、業界では「ベロメーター」という)。
クレームや問合せ、要望の窓口をスーパーマーケットに設置すると、声がよく寄せられる。これがPB商品開発のヒントになることもある。メーカーに窓口を置くと、消費者にとって敷居が高いらしく、PBの方がクレームや問い合わせの件数が増える傾向にあった。
PBはシンプルなパッケージにして、一括納品でコストを下げる。製造もナンバー1メーカーでなくカテゴリー2位以下のメーカーで製造し、これもコストにつなげる。
小規模メーカーにチャンスができたり、衛生・品質管理が向上したりすることもある。
美味しさとは何か
味、香り、食感、色など五感で感じて脳でおいしいと判断する。
人によりおいしさの感じ方、好みが異なる。その日の体調や食べ合わせ、気温、気分、食べているときの人数も影響する。五味は味の要素でうま味が強いからといっておいしいとは限らない。バランスが大事。今は第6番目の要素を決めたらどうかという動きがある。それはこく。こくは口の中の滞留時間などと関係がありそう。
加工食品の特徴
加工食品は一定の保存期間が考慮され作られる。容器包装の形態、適した保存条件が決められている。メーカーが想定している食べ方もある。想定外の食べ方をする人がいると、お申し出がくることがある。
お申し出いろいろ
クレーム以外で寄せられる声は「お申し出」という。
・「ゆであずきの缶詰を買ったら、イージーオープンがなくて開けられない」 → 缶切りの使い方を知らない人もいる。
・「オリーブオイルをのんだら辛かった」 → オリーブオイルは産地によって味が違う。スペイン産はスパイシー、イタリア産はマイルドなど。オリーブオイルは直接飲むことを想定していない。スパイシーなものだと辛く感じることはあるかもしれない。
・クコの実を1袋食べると、含有している成分のADI(一日摂取許容量)をこえる → クコの実は1-2粒、杏仁豆腐などに添えたりして使うもので、1袋食べたりしないことを想定している。ちなみに1袋摂取して致死量を超える食品は食塩。
容器包装の違い
加工食品にはそれぞれ保存時間が決まっている。
お弁当、生菓子などは数時間。乳製品は数日。味噌・醤油は数か月。缶詰は数年など。
保存期間は内容物や包装の方法、保管方法、殺菌方法などで変わってくる。
殺菌
〇 殺菌方法
・充填前に加熱殺菌する:牛乳などは殺菌してから無菌充填する。
・レトルト殺菌:缶詰やレトルトパックは充填してから殺菌する。
・湯殺菌:酸性のゼリー・ジャム。たらこパスタソースは熱が入って白くならないように殺菌する
・ホットパック:調理した中身の温度で容器内も殺菌できる。酸性の果汁飲料
〇 殺菌料:次亜塩素酸ナトリウムの表面殺菌、最近は次亜臭素酸水、過酢酸製剤などが認可されて新しい選択肢になった。
カット野菜、鶏肉は表面殺菌をする。
〇 フィルターによる除菌:ミネラルウォーター
〇 食品照射:放射線による殺菌
〇 加熱殺菌が調理工程を兼ねているものもある。
例)レトルトカレー
120度60分くらいで加熱する。
試食風景
今日のケーキセット
試食
〇 プレーンヨーグルト 今日が賞味期限の物と製造して直ぐのものを比較
乳酸菌が生きているので、酸味が強くなる。賞味期限までに味は変化する。ヨーグルトは健康志向で消費が上向き。発酵が進んで酸性になりタンパク質が等電点に達するとくっつくようになる。容器の中で発酵が進む。ハードヨーグルトはこの状態。
でき上がったヨーグルトを崩して、果物を混ぜたのはソフトヨーグルト。
〇 桃の缶詰
缶詰の賞味期限は製造日の3年後。1年の違いがあるものを試食。桃の食感が柔らかくなる。できたての方は「梨の缶詰のようだ」という参加者もいた。
〇 ゆであずきの缶詰
製造日の3か月の違い。メイラード反応が進み、明らかに色が濃くなっている。
〇 やきとり缶詰
本当に炭火で焼いて充填してから殺菌。日が経っている方がおいしい。
〇 魚の缶詰
サンマ、サバ、イワシは新鮮なものをきれいに手でつめて、調味液を入れて加熱する。調理と殺菌が同時にできる。水煮と味噌煮を試食。6か月くらいたった方が、味がなじんでおいしい。
〇 カレー
生の材料にカレールウを入れて封入して高温で加熱殺菌。レトルト臭といわれる加熱臭(硫黄臭も含まれる)が感じられることもある。フレーバー、調味料、甘味料などのマスキング剤を加えてレトルト臭を感じないようにしたりすることもできる。3か月の違いで色が明らかに違った。
〇 ソース 3か月の違い 味がなじんでおいしい。
まとめ
災害対策の保存食として加工食品を備蓄し、1年たっておいしくなったころに備蓄入れ替えをして、食べてほしい。魚の缶詰をいれてご飯を炊くと味付けしないで炊き込みご飯にしたりできる。いろいろ工夫して使ってほしい。魚の缶詰は新鮮なものをつかって調理しているので、本当に旬が食べられる。
また、おいしいと感じるものが年齢で変化するので、苦手な食べ物にもいろいろチャレンジしてください。
話し合い
- 辛味は五味に入らないのか → 辛味は味でなく、刺激。
- 出来立てがいい加工食品は → 油であげたおせんべい、豆腐。ビールは新しいのがいい。
- 乾麺の食べごろは → そうめん、うどんの乾麺は時間が経った方がおいしい。乾麺の賞味期限2-3年だが、保存状態が良ければもっと置いておいてもおいしいものもある。パスタもそうです。
- 試食してみて、味や色がこんなに違うものかと思って驚いた。