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  • バイオカフェ「日本のビールと世界のビール」

     2017年1月7日、今年初めてバイオカフェを開きました。お話は明治大学農学部教授 中島春紫さんによる「日本のビールと世界のビール」でした(於 くらしとバイオプラザ21事務所)。初めにお話をうかがい、日本の大手の四大ビールをあてるゲームや、ベルギービールを中心とした海外のビールの試飲を行いました。参加者全員大満足のバイオカフェとなり、バイオテクノロジーの代表である発酵食品が持つサイエンスコミュニケーションを円滑にする力を再確認しました。


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    中島春紫さん
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    会場風景

    主なお話

    糖化とアルコール発酵
     デンプンを糖化してアルコール発酵させてつくるのが酒類。東洋は湿気があるのでカビで、西洋は麦芽の酵素で穀類のデンプンを糖化させる。
     ワインはブドウの糖をそのまま発酵させる単純なお酒だから、原料をストレートに反映する。それでワインはブドウの出来に左右される。
     これを単発酵といい、デンプンから糖、糖からアルコールと二段階になる発酵を複発酵という。ビールは麦芽で糖化させた後、麦芽を除いてビール酵母を投入することで、二段階の発酵は別々に行われるので単行複発酵といい、日本酒のように麹と酵母が一緒に働くのを並行複発酵という。
     日本酒は最もアルコール度数が高いといわれる。化学反応の式をみると、分子量180のブドウ糖から分子量46のエタノールが2分子、分子量44の二酸化炭素が2分子できる反応であることがわかる。つまり、糖濃度の半分のエタノールができる。ワインではブドウの糖度が不足の時は糖を加えて(補糖)、アルコール度数を確保する。ビールは麦汁の糖濃度が10-12%だからビールの度数は5-6%となる。では、糖濃度を上げると濃いアルコールができるかというと、あまりに糖濃度が高いと浸透圧のため酵母は生きられない。その点、並行複発酵だとデンプンを分解して出来た糖がアルコールに変わっていくので浸透圧が高くならず、酵母は死なない。そこで酵母のアルコール耐性ぎりぎりいっぱいまで発酵を進めて20度前後の日本酒ができる。
     
    ビール製造工程
     ビールは5000年前から作られていて、9世紀には修道院で醸造されていた。
     アルコール発酵が起こる環境は糖濃度が高いので乳酸菌の混入により乳酸発酵が起こりやすい。乳酸菌の増殖速度は酵母より速いので、乳酸菌の方が勝ってしまう。だから、昔は乳酸菌のコントロールがうまくできずに酸っぱいビールが飲まれていたのだろうと想像する。ワインでは亜硫酸で樽の中の乳酸菌を殺菌する。もうひとつの乳酸菌に負けない方法は、最初から酵母を大量に投入して、乳酸菌を圧倒する方法で、ビールではこの方法が行われている。
     ビールを乳酸菌から助けたのはホップ。だから、今のようなビールが飲めるようになった歴史は100年くらいだろう。
     
    原料
    :二条大麦を使う。二条とは穂に二列に実がついていること。二条麦は粒が大きく、デンプン量が多いのでビールに適している。
    ホップ:メス株の未授精の毬花(まりばな)を用いる。ホップは煮沸したときにイソアルファ酸となり、これは苦み成分になる。この加熱でメイラード反応が起こり、いい色がでる。さらにホップには殺菌作用がある。それで乳酸菌の混入が起こらなくなり、透明なビールができるようになった。 
    麦芽:冷たい水に麦を浸し、4-5日かけて発芽させる。このときにできる酵素がでんぷんを糖化する。麦粒の大きさと同じ位の根がのびたら根を切り(除根)、熱風で乾燥させて粉砕する。80-85度で3時間くらい乾燥させるのが淡色麦芽、100-130度だとカラメル麦芽になり黒ビールの原料になる。焙煎の温度と時間がビールの色に関係する。
    麦汁:乾燥した麦芽を粉砕して、水とともに仕込み槽に入れてもろみ(マッシュ)にする。45-50度で糖化が進む。7時間くらいで麦汁になる。今では2-3時間でできるという。
    必要に応じて副原料としてコーンスターチ、お米などのデンプンを加える。
    ビール発酵:ホップを除いた麦汁にビール酵母を投入する。
    ドイツのようにビール純粋令(副原料を認めない)を守る場合、モルトビールは麦芽のみ。
     
    発酵のときに使うシリンドコニカルタンクは底が円錐形になっている円筒形で酵母が回収しやすい。このタンクは日本で発明された。
     
    酵母の凝集性
     ビール酵母を回収した後、味を劣化させるアセト乳酸ができないように低温で熟成を行う。
     発酵させるときは、グルコースがある間は酵母が浮遊してグルコースをより分解してアルコールになり、グルコースがなくなったら凝集して沈むと、菌体が回収しやすい。
     酵母の表層にあるマンノプロテインにくっつくFLO1というタンパク質に凝集させる働きがある。パン酵母のFLO1はグルコースがあると沈殿するが、ビール酵母由来FLO1遺伝子を持つ酵母はグルコースが残っているうち沈殿せずに糖分を消費し尽くすと他の酵母菌体表層のマンノースに結合するため菌体が凝集して、菌体の回収に都合がよくなる。
     
    ビールの泡吹き(ガッシング)

     ビールをあけたときに泡が噴き出すこと(ガッシング)がある。容器を乱暴に扱うためと考えられていたが、静かに扱ってもガッシングが起こることがある。
     写真のようにカビのコロニーの上に水滴がのっていられるのは、菌糸が水をはじくハイドロフォービンという何種類かのタンパク質で覆われているからで、ハイドロフォービンは両親媒性で、疎水性の部分を外側に向けていて、撥水性を発揮する。空中に立っている菌糸を包むハイドロフォービンと胞子の部分にあるハイドロフォービンは種類が異なる。ハイドロフォービンの遺伝子は アミノ酸が30-50個つながった構造をしている。
     麹のハイドロフォービンには泡を立て、保持する力がある。私たちは泡が保持されることを実験で確かめたうえで、30分後に試飲した。海外で3日間、泡を保持したという報告があった。3時間で飲んでしまって残念であったと思う。
     こうしてハイドロフォービンが泡立ち、泡の保持、ガッシングに関係があることがわかった。逆にカビに汚染された麦でつくると、静かにあけてもガッシングすることがある。
     
    ビール酵母
     ビールにはラガービールとエールビールがある。
    上面発酵ビール:エールビールは気泡とともに酵母が水面に上昇する上面発酵でつくる。
    欧州の硬水は色の濃いビールにむいている。18-25度の常温で発酵する。これは室温でゆっくり少しずつ飲むタイプ。
    ビールというとドイツといわれるが、私はベルギーだと思う。ベルギーは人口1000万人の小さい国だが、125の醸造所、1000種類のビールがあり、9%〜14%のアルコール度の高いものもある。
    欧州でブドウが栽培できるところはワインをつくる。ブドウができないと穀類を使ってビールや蒸留酒をつくる。
    今日、試飲するビール「クリーク」はサクランボウを漬けこんだ10%のビール。これを飲むとビールの認識が変わると思うので、ぜひ、試してください。
    下面発酵ビール:発酵が始まると対流が起こり、糖を食べつくすと酵母が凝集して下に沈む下面発酵で、ラガービールという。下面発酵の用いる酵母は胞子ができず低温で発酵する。
    日本の軟水は色が淡いビールにむいている。低温で発酵する。ぐいぐい飲める。
    6-15度の低温で発酵させる。
    チェコのピルスナー地方はヨーロッパでは珍しく軟水で淡色のビールができる。
     
    ビールと酒税
    ビールや発泡酒の酒税は麦芽の量で決められている。
    ビールは麦芽が50%以上で、350mlの缶あたりの税金は77円。
    発泡酒(麦芽25-50%)で1缶の税金は62円。麦芽25%未満の発泡酒の税金は46円。
    第三のビールは麦芽を含まない(ダイズ、エンドウ、トウモロコシなど)ビール風飲料の税金は28円。
    ノンアルコールビールはアルコール含量が1%以下で清涼飲料と分類される。ビール工場のラインでつくられている。
    ノンアルコールでカロリー、糖質ともにゼロのビールもあり、本当に企業努力を感じる。
     
    注ぎ方
     ビール:泡が7:3になるように注ぐ。ビールはのど越しが大事なので、口に含んだりせずに飲む。
     ビールの泡は泡タンパク質、炭水化物、ポリフェノール、イソフムロン(ホップの苦味成分)から成り、泡そのものは苦い。液面が空気にふれると味が落ちるので、泡が乗っているうちに飲むことが大事。また、冷やしすぎは泡が立ちにくいので、よくない。



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       ビール当てクイズ
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    海外のビール

    ビールあてクイズと試飲
    日本の大手4大ビール缶にマスクをつけてあてるクイズをしました。たったひとりの全問正解者はビールの研究者でした。 いろいろな種類のベルギービールも試飲しました。常温でゆっくり少しずついただくような、アルコール度数も高いものが多くありました。

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