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  • コンシューマーズカフェレポート「機能性食品を評価して」

     2016年7月22日、第19回コンシューマーズカフェを開きました。一般社団法人 消費者市民社会を創る会(ASCON)代表理事 阿南久さんをお招きしました。2015年4月から走り出した機能性表示食品制度により届け出が行われた食品に対して、ASCON科学者委員会が評価を行ったことが紹介されました。


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    阿南久さん
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    会場風景

    主なお話の内容

    はじめに
     2015年4月、『食品表示法』が施行され、機能性表示食品制度もスタートした。『食品表示法』は、私が長官に任命されて最初の大きな仕事となったが、消費者の食品選択の役に立つ、適切な情報提供ができるような制度にしようと思って努力した。
     機能性表示食品制度については、制度の健全な発展を願い、ASCON内に科学者委員会を設置し、届け出られた製品の評価活動に取り組んでいる。
     特定保健用食品(トクホ)は安全性や機能について国が“お墨付き”を与えるという制度だが、この機能性食品表示制度は企業の責任で科学的根拠が説明されており、これは意味があることだと思う。消費者は、企業の示した根拠に基づいて、判断して購入する。企業はこの趣旨を理解して科学的根拠を正しく消費者に示し、消費者の選択する権利を保障するという重要な責任を担う。
     
    ASCON設立
     消費者が自律的に活動するための「消費者力」、地域コミュニティーを形成する「消費者市民力」、企業には、消費者視点で事業を推進する「消費者志向経営力」をつけ、向上させていくための対話と学びあいの“場”としてASCONを設立した。
    活動は、食品表示制度に関する勉強会からスタートし、「機能性表示食品を突っ込む会」などを開催してきた。
     科学者委員会は、消費者庁の指針をもとに、企業は指針にかなった方法で届けているか、科学的根拠はどうかを検証し、5月1日、結果を公表した。正直にいうと、疑義をはさむと裁判になるのではないかという大きい不安もあり、評価情報公開の方法については時間をかけて議論した。
    実際には企業の理解と協力を得て、企業とのやり取り(対話・意見交換)を公表するという方法をとった。質問した企業全部が回答をだしてくれた。現在、80番目までの評価を終了。
    いま、170番目までの評価作業をしている。
     根拠となる論文を全部みるのは膨大な作業で、今回、とても大変だった。171番目以降は企業に根拠となる論文の情報をだしてもらおうと思っている。
     
    評価は、「A」「B」「C」と「見解不一致」の独自基準に沿って行った。
    Aは「十分な科学的根拠あり。RCT論文やシステマティックレビューで有効の判定がある論文が5つ以上ある」とし、16製品がこれに該当した。
    Bは「有効性についてかなりの科学的根拠あり。RCT論文2つ以上。最終製品でのRCT論文が1つ」とし、40製品が該当。
    Cは「有効性についてある程度の科学的根拠あり。RCT論文が1つ。2つ以上あるが、有効と無効が拮抗」とし、15製品が該当。
    8製品については「見解不一致」とし、それぞれの言い分についてプロセスを公表した。
    総括すると、71製品は委員会の評価基準に適合していたが、8製品の届け出は評価基準に適合しておらず、何回か意見交換したが合意に至らなかったという結果になった。
     
    見解不一致となった理由
    製品で見解不一致になった理由は主に以下の4つのどれか、またはその組み合わせ。
    ・BMI(Body Mass Index 肥満度を表す)30以上の人が被験者に含まれていることについてどう考えるか。
    ・摂取試験で用いた用量と設定された用量が異なっている。意見交換をしたが、統計的有意差が認められなかった。
    ・4成分の有効性と安全性の根拠が使用者の効果実感では科学的根拠とは認められない。
    ・民法による成人は20歳以上だが、18歳以上の被験者が含まれている。
     
    この制度の意味を振り返る
    2015年4月より、食品表示法施行。
    理念は、消費者基本法に基づいてた消費者の権利の尊重と自律支援と小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響等に配慮の2本柱となっている。
     
    機能性表示食品制度は『食品表示法』の中に位置づけられている。加工食品と農林水産物について企業の責任のもとに科学的根拠に基づき食品に表示できるようになった。アメリカのダイエタリーサプリメントを参考にしている。
    新制度の基本は、
    ・事後チェック制度(届出制による事業者把握、事故情報収集、買上げ調査・収去試験)。これによりASCONの科学委員会だけでなく個人でも企業でも事後チェックができる。みんなでチェックしてこの制度を育てていこう!
    ・システマティックレビューも認める(ヒト試験はしなくてもよい)。
    ・表示ルール(医薬品と誤認されないように、国が評価していないことがわかるように)を定めた。
    ・生鮮食品も対象になる。
    ・トクホとは事前個別許可制度で、ヒト試験が必要で、生鮮食品の実績がないところが異なっている。
     消費者からは、くすりとの相性、アレルギー、こどもの利用、成分の安全性などへの不安の声があり、消費者は選ぶときに迷っても当然だと思う。消費者の誤認を招かず、合理的な商品選択に資する表示であることが大事。一生懸命につくった制度なので参加される企業にはまじめにやってほしい。実際にはこの制度を知らない消費者は多い。消費者の誤認をうけるような宣伝は問題である。イメージ先行の商品があるが、機能性表示食品制度を正しく利用しで頑張ってやっていきたいと思う。
     
    まとめ
    ○事業者に求められること:情報収集、安全な原材料の確保、製造・生産における品質管理体制、消費者への情報提供(パンフ、HP)
    例えば、ドラッグストアでの情報提供で十分か、ドラッグストアの相談員の配置、薬剤師の活躍も期待。消費者の誤認を招かないように、届け出どおりに正確に伝えてほしい。
    ○消費者に求められること:
    消費者教育への参加。パッケージの表示を見る。
    消費者庁パンフでは、機能性表示食品は病気でない人が対象であることを伝えている。
    基本はバランスのとれた食生活で、機能性表示食品は補助的に使ってほしい。
    ○消費者教育の推進
     アメリカで消費者の4つの権利(安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利)が明記されたのは1962年。
     日本では1968年に制定された『消費者保護基本法』が2004年に改正されて『消費者基本法』となり、消費者の権利もこの時に明記された。そして事業者の責務とともに消費者の役割も明記された。『消費者教育推進法』もでき、消費者の“消費者力”を高め、自主的かつ合理的に行動するという役割はますます重要になっている。
     そのためにも、地域における消費者・消費者団体や事業者・事業者団体、自治体の連携・
    協働が必要である。
     ASCON科学者委員会の評価公表について、消費者からの感想が寄せられたが、“対話の公表”に対して「企業姿勢もわかってよい」というものがあった。まさに目指していた“姿”である。次に生かしていきたいと思う。
     
    課題
    1.診断、治癒、予防を目的としたといってはいけないことになっているが、国民はそういうものを求めている。予防というとこれを食べていると予防できると信じてしまい、本当に病気になったときに危ない。誤認をあおっていると思う。


    話し合い

  • は参加者、 → はスピーカーの発言

    • 健康食品の問題をよく交通整理をするためにできた制度だが、よくない健康食品はなくならないし、結局わけが分からなくなってきている気がする。
    • 健康食品には機能性を表示してはならないが、玉石混交の状態。評価の目的は → 玉石の中の玉を認め、石を排除すること。
    • 消費者が制度を理解して選択に活かせればいい
    • いかがわしいものの排除の取り締まりは強化されている。適格消費者団体による摘発は可能。消費者活動が進むと市場は正常化されると思う。
    • だまされない消費者にならなければならない
    • ASCONの報告書をみた。消費者庁 HPのデータベースへのアクセスが少ないのはよくない。
    • 被害がでるような健康食品は困る。ASCONの評価がマークになると安心して選べる目安になるのではないか。
    • 安倍総理大臣の肝いりの政策に機能性表示食品制度は含まれていますね → 閣議決定には従わなければならないので、少しでも消費者の役立つものにしようと思い、それが大変だった。
    • 農作物の成分は栽培条件で変化するし、個体差もある。機能性表示食品という分類になじむのか → 農研機構はある程度の糖度やβ-クリプトキサンチンは担保できるといっている。
    • ABCの評価は対話の中で差し替えが行われたか → はい。チェック機能が大事。
    • 機能性表示食品は成分で試験をした論文があるだけで製品の形態でのチェックはしていないがどう判断するのか → 対象となっている成分が規定量含まれていればいい。
    • 飲料だとそんなに飲めないので過剰摂取の心配がない → サプリは大量摂取が可能だが、食品は大量といっても食べられる限度がある。
    • 企業責任で出している製品なので、何かあったら全部企業の責任になる。
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