「どらねこカフェ ―管理栄養士パパの親子の食育BOOK~番外編―」
2016年6月25日、茅場町のくらしとバイオプラザ21の事務所にて、管理栄養士の成田崇信さんをスピーカーに迎え、「どらねこカフェ ―管理栄養士パパの親子の食育BOOK~番外編―」が開催されました。今回は司会をされたナカイサヤカさんを中心としたグループ「えるかふぇ」と共催で行いました。
成田さんは栄養学をもとに食事に関する話題についてご自分のブログほか、ウェブサイトで情報発信をされたり、本を書かれたりしています。この日は、2015年に発刊した「乳幼児から高校生まで! 管理栄養士パパの 親子の食育BOOK (専門医ママの本・番外編)」の内容を基に、お話を進めていきました。
ウェブサイト
管理栄養士 成田崇信(個人)
刊行本
「乳幼児から高校生まで! 管理栄養士パパの 親子の食育BOOK (専門医ママの本・番外編) 」 (メタモル出版)
「各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと」(共著)(メタモル出版)
会のナカイさん(左)と成田さん(右)
会場の様子
成田さんのお話し
「管理栄養士パパの親子の食育BOOK」発刊について
ある時、食に関する様々な情報を調べてみたら、科学的に根拠がないような、栄養学の内容からかけ離れたものが多く、それらの情報を信じて子どもに食事を与えている人も少なくない様子だった。しかし、どこがどのように間違っているのか、書かれている本を見つけることができなかった。
また、フードファディズム(food faddisim)という言葉がある。ファッド(fad)というのが一時的な流行という意味で、メディアなどで流行るとそればかりになってしまう、という現象。あるTV番組で○○が良い、といえば次の日スーパーからその物がなくなるようなこと。今は水素水が話題になっているが、これも同様で、流行ってるから私もやっていよう、とすぐに飛びついてしまう。その時に流行りだったので飛びついてしまうが、何が悪かったのか、多くの人が理解する前に次の新しいものが出てきて、またそれに飛びついてしまう。この繰り返し。これについて話をする人がすくなかった。何が悪かったか、みんなが理解する前に次のものがでてきてしまい、またそれに飛びついてしまうの繰り返し。このことについて、きちんと話をする人が少なく、考える機会がなかった。
そして、食育には人間の成長に伴うサイクルがあると思う。子どもが生まれて、大きくなって、その子が大人になって子どもが産まれる。産まれた子どもが大人になった時に、彼らが自身の子どもを育てる際に役立つような本が必要とも思った。
これらの理由から、自分で食育の本を書こうと考えた。
子どもたちが健康に成長するための食育を
学校でも食育基本法が施行されてからもう何年も経つので、今日の参加者の中でも学校教育で食育を経験した人もいると思う。
食育が始まった頃は、食育で何を教えれば良いのか具体的な基本的内容が決まっておらず、食育と名の付く本が多く出版された。しかし内容はバラバラで、各学校で違うことを教えているような状況だった。今でも、教える先生の個人的な食の考えが影響されていることが見受けられる。
そもそも、食育の定義も人によって異なる。今日は子どものための食が話題なので、その視点で言えば、食育は子どもたちが健康に成長するためのものと、私は考えている。
食育では「早寝早起き朝ごはん」「地域の食文化」「食料自給率」「米消費の推進」「和食」「母親の手作り」などのキーワードがよく見受けられる。子どもにとって朝ごはんを食べることは大事だし、地域の食文化の歴史などを学ぶことも意義があるが、子どもの健康的な成長にそれらがどのくらい繋がるだろうか。
例えば、食料自給率の向上は政策の一つであり、子どもの健康には直接つながらない。お米の消費の推進、和食の良さをアピールする、野菜を食べるための栄養素を学ぶ、食事はお母さんの手作りがいいなど、これらはあくまでも「手段」であって、子どもが健康に成長することが食育の「目的」、これが大事だと考えている。この「目的」を忘れてはいけない。和食や野菜以外のものも食べて良いし、母親が食事を手作りすることもできれば、あるいはやりたければやれば良い。仕事を持つお母さんも最近は多いので、お母さんの帰りを待って子どもの夕食が遅くなると寝る時間も遅くなる。その結果として子どもが次の日の朝に起きられなくなることもある。このようなことも考えると、「食事は母親が和食をつくるべき」という固定観念を持ってしまうのは決して良いことではない。
また、これら食育で良く見かけられるキーワードを推進している人々は善意で活動しており、自分たちの活動が結果的に「押しつけ」になってしまっていることに気付かないことも見受けられる。善意での活動に意見することは難しいが、自分たちのしていることが過度な「押しつけ」になってしまっていることに気付ける機会があると良いと思う。
Q1. 赤ちゃんに与えるのが母乳だけでいいのは、いつまでですか?
周りの子が卒乳したり、子どもが母乳以外のものを食べたがったりすると、お母さんは自分の子どもをいつ離乳食に切り替えれば良いのか、迷うことがある。離乳食を使い始めるは生後5~6か月後が目安で、母乳だけでいいのはこの時期まで。栄養学的には、それ以降になると離乳食などを食べないと栄養が足りなくなってしまう。
生後5~6か月後までという根拠は、それ以上子どもが大きくなると母乳に含まれる鉄分では足りなくなってしまうため。特に低出生体重児で産まれた子どもは元々貯蔵している鉄分が少ないので、母乳だけだと6か月前に鉄分が不足して貧血を起こしてしまうこともある。低出生体重児で産まれた子ども以外でも7か月まで母乳だけでは貧血になる。鉄分がないとヘモグロビンが作れない。子どもはよく動くので酸素不足になる可能性がある。
もし、他のお母さんに母乳だけの期間が長いほうが良いと勧められて、低出生体重児で産まれた子どものお母さんが6か月まで完全母乳にしてしまうと、子どもが貧血になってしまう。これでは、良いと思ってしたことが、実際には子どものためにはならなくなる。私たちは、自分が良い経験をするとついそれを他人に進めたくなってしまうが、他人は自分と状況が違っていることもあるのでちょっと立ち止まり、考えてから行動を起こす必要がある。
また、母乳が良いことを強調したいために粉ミルクは良くないように言われてしまうことが、それも少し違っている。例えば粉ミルクのデメリットとして鉄の吸収が良くないといわれるが、現在の粉ミルクはその分を考慮した量の鉄分が含まれている。ちなみに、お母さんが鉄分をたくさんとっても母乳の鉄分が増えるわけではない。粉ミルクは消化に良くないともいわれてきた。確かにそういう傾向はあるが、消化の良さも改良されており、子どもの個人差もある。もし合わないようであれば他の製品に変えてみる、それでもだめなら母乳にすれば良い。
逆に母乳のデメリットは母親しかあげることができないこと。例えば、お母さんの体調が悪くて入院しなくてはいけなくなり母乳があげられないということもある。そうでなくてもいつでもきちんと母乳が出るわけでわないし、夜中に起きなくてはいけないなど、お母さんの負担は大きい。粉ミルクはきちんと計量して溶かさないといけないというデメリットはあるが、それでもお父さんでもあげることができる。
そういうことを考えれば、粉ミルクを上手に使えば良いと思う。このような知識があれば、選択肢が増えて、お母さんの負担も軽くなる。
子どもに必要な栄養素のビタミンDについて。ビタミンDは人間が日光に当たることで作られる。自分の住んでいる青森は高緯度で、冬は雪が多いため日光に当たって十分に合成できない。したがって、母乳のビタミンDの量は季節で変わる。ビタミンDの合成量の少ない時期に母乳だけあげていると、ビタミンD不足となり、くる病になる可能性がある。実際に北海道でそのような報告がある。そのような場合には魚のすり身などを少し上げるといい。その時、すり身に油分を残さないと、脂溶性であるビタミンDは摂取できない。
ちなみに、実は母乳の成分で、水分以外で一番多いのが脂肪分。子どもは油分が少ないほうが良いと言われるが、実際は断乳の時に急に油分が減ってしまわないように離乳食には適度な油分があるほうが良い。常温でサラダ油のような常温で液体のものは子どもでも食べやすい。一方で動物性油脂のような常温で固体のものは子どもにとって、いままでと違う食感のものが口に入ってくるので食べにくかったり、消化が悪かったりするので、乳化させると食べやすくなる。卵を使って乳化する、火を通した魚と牛乳などを合わせてとろみをつけるなどする方法もある。
Q2. 離乳食を終えたら、大人と同じ食事でも良いですか?
離乳食を終えた子どもには薄味で必要な栄養素の多い食材を使ったものが良い。子ども用と大人用の食事を別々に準備することが大変ならば、大人が子どもに合わせることもできる。
例えば2歳ぐらいの子どもが必要なエネルギー量は大人の半分。体重は大人に比べて半分以下で軽いが、必要なエネルギー量は多い。しかし、大人と同じ食事の半量を2歳の子に出しても量が多すぎて食べられない。そこでおやつが必要になる。足りない栄養分はおやつで補充する。
とくにカルシウムは体が大きくなるために必要な栄養素だが、大人でも不足しがちな成分であるのに大人と同じ食事では子どもはもっと足りなくなってしまう。それを補うために子ども向けおやつを利用する。ベビーフードをうまく使うという選択肢もある。子どもによって個人差があるので、他の子どもと比べずに、その子の体に合わせた食事を考えれば良い。
Q3. こどもの食事は毎食手作りが良いの?
大事なことはこどもが必要な栄養を十分に取れること。無理しない程度に手作りすればいい。今は夫婦共働きが増えていることを考えると、加工品などを上手に活用するのがいいと思う。空いた時間で子どもと遊んであげたほうが、子どもは喜ぶのではないだろうか。いつも頑張りすぎる必要はない。周囲に頑張っているお母さんがいたとしても、無理する必要はない。ただし、加工品の独特な味や風味があるため、それが好きではないという人もいるので、そのようなときは無理に加工品を使わないほうが良い。
加工品については添加物を気にする人がいるが、気にする必要はない。コーラなどの炭酸飲料が子どもに良くない理由は、炭酸で子どもの小さな胃が膨れて食事が食べられなくなり、結果的に栄養を摂取する貴重な機会を奪ってしまうため。毒が含まれるからではない。
Q4. 朝はご飯を食べないと頭が活性化しないというのは本当?
朝食について、大事なことは生活リズムのメリハリではないか。栄養面も大事だけれど、子ども時代には生活リズムを整えるのに朝食は大事なもの。また、子どもにとっては一食あたりにとる栄養が重要になるので、そのような意味でも朝食は食べたほうが良い。手間をかける必要は無くて、今は美味しいシリアルも増えてきているし、そういったものでも十分。朝食をとると頭が良くなるという証拠は無いし、パン食は子どもがキレるということもない。もしそうなら、海外の子どもたちはみんなキレてしまうことになる。
ちなみに20代の朝食欠食率について。最近は大学生の朝ごはん抜きがニュースになっている。データを見ると20代になると急に増える。朝は食欲がないということもあるが、それ以外におそらく通勤時間が影響しているのだと思う。朝は時間的な余裕がなかったり、前日の帰宅が遅いために朝の食欲がなくなったりする悪循環が起こっているのではないか。女性の欠食率が比較的低いのは、食事の重要性を男性よりも理解しているからと思う。男性も食事の重要性をより理解すれば、20代以降の男性の欠食率の低さが改善されるのではないかと考えていて、そのための取り組みも食育の1つだと思う。時間の使い方は社会的問題だが、あとは教育で補える部分があると思う。
発展途上国のようにそもそもの栄養レベルの悪い国では、学校で朝ごはんを食べることで子どもの栄養レベルが良くなることがある。それは家庭では十分に朝食を食べられないため。しかし、日本のようにそもそもの栄養レベルが良い国では、朝食を食べなくても健康に大きな影響が出にくいために、朝食の重要性が理解されにくいのかもしれない。
○食事を3回に分けて取ったほうが良いのは、血糖値の問題があると聞いた。3回に分けたほうが効率よくエネルギーが回るのか? →おそらく健康な人にとっては、食事を抜いたことで生活リズムが崩れ、それが原因で体調不良になることがあるので、血糖値よりもそちらの影響があるのではないか。胃腸も生活リズムがある。しかし、子どもは必要な栄養が取れるように食事の回数が増えてもいいが、大人は体調などもあり個人差が大きいので一概にいえない。
カフェ終了後も質問が続きました
Q5. 和食が良いと言われるのはどうして?
食育では和食が推奨されることが多いが、実際には和食にこだわる必要はない。一般に、和食は塩分が多くなる傾向があり、洋食は不飽和脂肪酸が多くなる傾向がある。日本の昔ながらの献立として「一汁三菜」といわれるが、これが可能になったのは最近のこと。昔は家庭に冷蔵庫や冷凍庫がなくて食品の保存が難しく、食中毒も多かった。そのため、普段は塩漬けしたものをかじりながら主食である穀物をたくさん食べるような、貧素な食生活だった。ある程度、おかずがそろったのはお祝い事などの「ハレの日」だけだったが、この「ハレの日」のメニューばかりが紹介されてしまったために、「一汁三菜」が日本の昔からの伝統的な食事だったという誤解が生まれたのだと思う。
このように本当に伝統的な和食は健康に良くない。近年は交通事情が良くなり、流通システムが発達して一汁三菜が可能になった。また、米を食べる量が減ったと懸念されているが、運動量が減ったので穀物の消費量が減るのは当たり前のこと。産業構造が変わり、炭水化物を取る量が減った。「昔ながら」に騙されてはいけない。今の食事はとても良いものと思う。
Q6. 子どもに不向きな食品がありますか?
窒息してしまう食べ物は危険。中でも、子どもにとってピーナッツは危険な食べ物。ピーナッツは表面がツルッとしていて、サイズ的にも子どもの喉の気管に詰まりやすいため。特に遊び食べはとても危険。遊びながら食べる(ピーナッツを上に放り投げて、上向きに開けた口でキャッチして食べるなど)と、気道がものを飲み込む準備ができていないのに、食べ物がはいり込んでしまうので、詰まりやすくなる。
食材の生食も危険。子どもの胃酸の働きや分泌が大人ほど強くないので、食中毒のリスクが高くなる。野菜も加熱して食べるべき。同じものを食べて大人では大丈夫でも、子どもは食中毒になってしまうことがある。個人差もあるので他の子が大丈夫でも、その子は食中毒を起こしてしまうこともある。
塩気の強いものも不向き。大人が食べていると塩気の強い味を覚えてしまうので、子どもと一緒に食事をするときは塩分に気を付けてほしい。
ひじきに含まれる無機ヒ素について。無機ヒ素は発がん性物質であり、日本では米にも含まれている。ひじきを食べすぎるとヒ素を摂りすぎるため、オーストラリアやニュージーランドでは摂取量を制限されている。ひじきは消化が良くないので子どもには向かない食品。鉄分だが、以前は鉄鍋で火を通しており、その鍋の鉄分がひじきに移動していたために、結果としてひじきに鉄分が多く含まれていたことがわかり、話題となった。現在はステンレスの鍋で加熱処理する際に鉄分を吸収することがなくなっため、ひじきの含まれる鉄分量が減った。ひじきを水で戻す際は2回ほど水を替え、湯でこぼすとヒ素はずいぶん取り除ける。ただし、鉄分も除かれてしまう。したがってひじきをたくさん食べても鉄分を補うことにはならないがカルシウムや食物繊維が含まれるので、嗜好品として食べれば良いと思う。
Q7. こどもの偏食、好き嫌いをなくすには?
そもそも偏食は悪いものなのか?子どもは、食べたことがないものは危険だと判断し、すぐには口にしないということがある。酸っぱいものは腐敗によりできやすいし、苦いものは毒性物質であることも多く、これらを子どもが食べたがらないのは、ある意味生き物としては正常な反応ともいえる。それでも、子どもがいろいろなものを食べないのは、親としてはやはり心配になることと思う。
偏食に対してどうれいば良いか、正解はないが、経験上、時間が解決すると考えている。子どもの偏食は成長すると変化して、食べなかったものも食べるようになるので、不安にならなくても良いと思う。しかし、本当に偏食になってしまう病気もある。例えば、自閉症の子どもは感覚が過敏になるので無理に食べさせるのは良くないし、偏ってしまうと良くないことがある。
経験的に子どもの偏食をなくすには食べ方を工夫すると良いと思う。自分で野菜や食事を作る体験をする、好きな物語に登場するお料理を出してみるなど。その他、食べないものを刻んで料理に入れる、テクスチャーを変える、というのも良いと思う。
また、嫌いにさせないため、初めて食べるものは美味しいものを選んであげると良い。最初に食べたときに 美味しくないと、子どもはそれを学習して美味しくないものは食べたくなくる。魚でもサバや青魚のような鮮度が落ちやすいものは避けて、カレイなどを使うと良い。干物は向いていない。サバも鮮度の良いもが手に入れば、つみれなどにして卵などをつかってふわっとさせると食べやすい。
食べる場所を変えるという方法もある。家では食べないのに、外食すると食べるようになることはある。学校の給食でその食品を食べているならば、家の食事で無理に食べさせる必要はなく、そのうちに家でも食べるようになると思う。
Q8. こどもがダイエットをしているのですが…
今は小学生でもダイエットしている。思春期の女性は成長期で身体がふっくらすることを太ったと勘違いしたり、身体に起こる変化を不安に思ってしまったりすることもあるかもしれない。けれど特に注意が必要。ダイエットしすぎると無排卵月経になってしまい、将来的に不妊や骨粗しょう症リスクもあがる。親が気を付けないといけないことでもあるし、性教育では思春期の子どもの身体の変化もきちんと伝える必要があるだろう。
Q9. 夏バテに良い食事とは?
しっかりと火を通した消化の良い食べ物を食べるべき。生ものは消化酵素で分解されにくいために消化が悪い。さらに夏は消化酵素の分泌が悪くなる。そうめんなども子どもの消化管には負担がかかる。冷たい水のほうが、腸に送られる前に身体の中で温まるまで時間がかかる。そのために胃にとどまる時間が長いため、水を取りすぎると胃酸が薄まってしまう。そうめんなどは冷たくしすぎずに、香味野菜や香辛料などをうまく使って清涼感を出すほうが体には良い。これは大人も同じで、刺身にビールは夏バテには良くない組み合わせ。
アレルギーと栄養問題
子どもにアレルギーが出てしまったら、子どもの食事からその食品を除去することが基本的な対策。ただし、子どもが成長のために必要な栄養素は確保することが大事。
・アレルギーと母親の食事・離乳食開始の関係
一人目の子どもにアレルギーがあると、二人目の子どもを妊娠した時、またアレルギーになってしまうのではないかと気になると思う。しかし、妊婦さんが妊娠中や授乳中に特定の食品を除去した食事をとっても、産まれてくる子供がその食品のアレルギーにならない、ということはない。それよりも妊婦さんの栄養バランスを優先したほうが良い。また、アレルギー予防のために離乳食を大幅に遅らせることが良いという人もいるが、これには根拠はなく、むしろ悪いことがある。
食べ物に含まれているタンパク質が異物として認識されてアレルギーが出ないように腸管免疫を働かせるシステムを人間は持っている。これを経口免疫寛容という。これが起こるまえにアレルゲンが入ってくるとアレルギーが起こることがある。どういうことかというと、食べ物を始めて口にするより先に皮膚に触れてしまうと、その食品を食べた時にアレルギーを起こしてしまう。特に皮膚の保湿機能が不十分でバリア機能が弱い子どもは、皮膚にアレルゲンが付くと体内に入ってしまい、食べていないのに食物アレルギーになってしまうことがある。おにいちゃんやおねえちゃんが汚れたままの手で触ったり、お母さんがだっこしたままた食事をしたりすることは、その子がアレルギーになるリスクとなる。だからと言って必要以上に神経質にならなくていい。例えば、手を洗ってから赤ちゃんには触ってね、と大きな子どもたちと約束すればいい。また、子どもの皮膚の保湿にはワセリンが良い。お風呂から出てすぐ、まだ皮膚が濡れているときに、体全体に広げるように塗ると水分の蒸発が抑えられ、乾燥を防ぐことができる。
アレルギーの原因になりそうな食品を除去したり、食べる時期を遅らせたりすることは、逆にアレルギーになるリスクが高くなる可能性がある。心配であれば少ない量から食べさせると良い。大事なことは本当に心配になったら、専門医に聞くこと。ただし、清潔と保湿はどのような子どもに対しても、誰でもできることと思う。
話し合い
- 昔は母乳だけの期間が長いほうが良いと医者から言われて実践するお母さんが多かったが、体が辛くなってお母さんが倒れたり、子どもの栄養が足りないと別の医者から怒られたりした時期もあった。 → 産科や小児科の先生にも栄養学的な知識が充分でない医者も少なくないので“運”が悪いとそういうこともあるかもしれない。
- 薄味の基準が難しい。家庭によっても違う。 → 味覚形成は薄味で慣らしていくのが良い。塩分濃度は0.3~0.4%ぐらいが目安。出汁や風味で補うと良い。洋食だと牛乳を上手に使う、麺類はしょっぱくなりやすい。卵料理は甘く味付けする。煮物はしょうゆなどで味を付けた後に味が染みさせると塩分が高くなるので、出汁を染みさせる。表面に塩を軽く振ることで塩味はつくが全体の塩分を抑えることができる、なども工夫も。
- カフェインはどうして子どもに悪いの? → カフェインなら大人の摂取量を元に体重あたりで換算した量なら問題はない。カフェインの一番の作用は利尿作用だが、睡眠抑制の作用もあるので、それが子どもには良くないのではないかと思う。
- ピーナッツやさしみは何歳まで上げないほうが良い? → 個人差が多いので、一概に言えない。さしみなら少ない量をたまに上げるとか、他の食事の様子を見ながら判断してあげたらいいのだと思う。ピーナッツは食べる時の姿勢にも注意する。上を向いたまま食べようとすると喉に詰まってしまうので、遊び食べはさせてはいけない。