くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

ホーム
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは


シンポジウムレポート「遺伝子検査が街にやってきた」

2007年11月23日(金)〜25日(日)、国際研究交流大学村(東京国際交流館、日本科学未来館、産業技術総合研究所臨海副都心センター)(東京・お台場)においてサイエンスアゴラ2007が開催されました。サイエンスアゴラとは、(独)科学技術振興機構(JST)が主催する日本最大級のサイエンスコミュニケーションイベントで、昨年に続き今年で2回目。11月24日(土)には、標記シンポジウムが、科学技術振興調整費「遺伝子診断の脱医療・市場化が来す倫理社会的課題」研究(研究代表: 高田史男(北里大学大学院))の一環として行われました。

参考サイト http://www.idenshi.jp/


第一部 社会に広がるさまざまな遺伝子検査

 渡部麻衣子さん(北里大学大学院特別研究員)から、遺伝子検査が私たちのくらしのすぐそばまでに来ており、誰もがこの検査を受ける可能性が高まっていること、病院以外でも遺伝子検査にであうかもしれない状況にあることが説明されました。



第二部 遺伝性疾患の遺伝カウンセリングの紹介

 田村智英子さん(お茶の水女子大学大学院 准教授 (遺伝カウンセリングコース))により、乳がんを例にとって、遺伝カウンセリングがどのようなものかが、患者役の大畑尚子さん(北里大学大学院 研究員)とのロールプレイを通じて示されました。

参考サイト 当サイトのニュース



第三部 遺伝子検査との賢いつきあい方

武藤香織さん(東京大学医科学研究所 准教授 (公共政策研究分野))のコーディネートによりパネリストから、簡単な自己紹介が行われ、その後会場を交えた話し合いが行われました。田村さんもパネリストとして加わりました。

島田和典さん G&Gサイエンス(株) 事業担当グループ グループリーダー部長
B型肝炎ウイルスやHLA(骨髄バンクの登録の時に用いられる)の遺伝子検査試薬を開発した後、ジェノマーカーの開発に成功し、受託検査を開始している。ジェノマーカーとは生活習慣病に関連する遺伝子検査で、心筋梗塞、高血圧、脂質代謝異常などに関係する遺伝子を調べるもの。G&Gでは衛生検査所として登録し、臨床検査業も行っている。検査を実施する会社には、いろいろな目的、様々な経営形態があり、一括りで見られるのはいかがなものかという気持ちがしている。

山縣然太朗さん 山梨大学大学院 教授(社会医学講座)
公衆衛生学が専門。医学の世界では、市民と関わるものは学問としてレベルが低いような偏った見方もあるように感じることがある。今はゲノムや生殖医療などの先端科学と社会との接点についても研究している。研究というものは住民、地域と結びついていると考えている。

青野由利さん 毎日新聞 論説室論説委員(科学環境部兼務)
遺伝子検査だけでなく、生命科学、宇宙科学、環境、地震、火山などを科学記者として担当してきた。科学と社会に関心を持っている。



質疑応答
  • は参加者、→はパネリストの発言
    • 検査の精度をどう説明するのか
      →検査の精度というと検査の正しさだと思う人がいるが、「陽性的中率」は精度が同じでもその地域での有病率によって変わる。
    • どうやって確率を説明するのか
      →新聞のように一般の人たちが読むものでは、遺伝子検査とは何かを説明するのがやっとで、確率まではなかなか説明できる段階ではない。
      →心理学的にいって、確率の説明をクライアントがどのように受け取るかは、ケースバイケースで、とても複雑で、難しい。同じ確率でも事柄によって人の受け取り方も異なるので、カウンセリングにおける情報提供は容易ではない。しかし、きちんと適切な情報提供を行えば、多くの人々はそれを的確に理解し利用していく能力をもっていることを、カウンセリングをしながら感じている。
    • 米国の状況はどのようになっているのか
      →米国では、病院が遠い人やプライバシーを気にして病院に行けない人に遺伝子検査を提供している企業も出てきており、様々なアクセスの道が開かれている。そして、そうした企業に遺伝カウンセラーが雇用されてホームページやメール、電話で遺伝カウンセリングサービスを提供するなど、遺伝カウンセラーも幅広い分野で活躍している。
    • 病院を介する遺伝子検査だけが許されるべきなのか
      →どのルートで検査をするかということより、いずれのルートでもきちんとした情報提供ができていることが大事ではないか。医療機関を介したからといって情報提供が十分とはいえないかもしれない。
    • 病院を介さない遺伝子検査は怪しいのか
      →病院を介すから怪しくない、介さないから怪しいというのではなく、いずれのルートで行われるとしてもそれぞれの遺伝子検査の持つ意味を考えて、臨床的に有用性がわかっているのかそれとも怪しい検査なのか判断すべき。実際多くの遺伝子検査の意義はわかっていない部分も多く、医師を介した遺伝子検査にも怪しい検査はあるかもしれない。
    • わかっていない部分も多いことを皆が知るべきだと思う。遺伝子を調べてすべてがわかるような風潮があるのではないか
    • 情報の信頼性について、エビデンスの意味するものは何か。
      →医学的にはエビデンスとしてはFDAの報告、審査を受けて学会誌に掲載されたものが、レベルが高い。しかし、社会一般や一部の医師や研究者の間ではインパクトファクターの高い学会誌に掲載されたかどうかにこだわる傾向がある。

    最後に一言「遺伝子検査と賢い付き合い方とは....」

     コーディネーターの武藤香織さんから「遺伝子検査との賢い付き合い方とは」という問いかけがあり、パネリスト全員がボードに書いて示しながら説明しました。
    「全体の中の自分の位置を考えられることが大事。」(山縣さん)
    それをサポートしたい。遺伝子検査に対しても、全体から客観的に見られれば、向き合い方が変わるはず
    「期待しつつ、期待しすぎない。」(島田さん)
    遺伝子検査の利用は期待できるものであるが、万能であるというような期待しすぎにならないことも大事
    「異なる思いを尊重しあいながら、自分らしい人生を生きていこう。」(田村さん)
    個人の考えや生き方を尊重し、その方らしい人生を送れるようにサポートするのが遺伝カウンセリングの役目。異なる多様な生き方を認め合える社会を目指すことが大事と思う。
    「多様な検査があり、その検査の性格を知ることが大事。」(青野さん)
    一口に遺伝子検査といってもいろいろあり、それぞれの意味が異なるので、まず、それらを知ることから始めないといけないのではないか。


    サイエンスアゴラとは

    (独)科学技術振興機構(JST)が主催する日本最大級のサイエンスコミュニケーションイベント。
    http://scienceportal.jp/scienceagora/
    シンポジウム、ワークショップなどが、研究者、学生、家族ずれなどを対象に行われ、全国の研究所や研究チームが研究成果を発表するポスター発表会を行っている。
    くらしとバイオプラザ21はポスター発表会に参加し、バイオカフェについて発表しました。バイオカフェの兄弟である筑波大学バイオeカフェ、1月にバイオカフェを共催した神戸サイエンスカフェ、札幌ビズカフェを応援してくださった北海道大学CoStepメンバーもポスター発表会に参加しており、久々の意見交換を行いました。



    copyright © 2006 Life Bio Plaza 21 all rights reserved.
    アンケート投票 ご意見・お問い合せ