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個人遺伝情報保護の検討が3省合同で行われました

8月20日(金)、ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝子情報の取り扱いなどに関する小委員会(文部科学省)、医学研究における個人情報の取り扱いのあり方に関する専門委員会(厚生労働省)、個人遺伝情報保護小委員会(経済産業省)が合同で開かれました。総勢20数名の法律関係または遺伝学関係の方々がそれぞれ専門的な発言をされるので、委員同士でも細部までは理解が難しい状況も見られました。筆者は、くらしとバイオプラザ21での皆様との活動を通じて認識している、「守られたいプライバシー」はどんなこと、を整理しながら議論を聞いていました。今回はついに、教育に関して1回発言しました。ご感想などお寄せいただけると幸いです。

前回(6月25日)のレポート
前回の配布資料
第2回委員会の概要


松谷審議官(厚生労働省)より開会の挨拶

個人情報の取り扱いについては、個人情報保護法及びユネスコ国際宣言に沿って検討していく。国民の協力が不可欠な研究分野であり、3省で各々に委員会を設置して検討してきたが、ここに3省指針が既に定められていることを踏まえ、3つの委員会の合同委員会を開催することになった。ヒトゲノム配列解読は完了したが、これからの研究には、研究に協力してくれる市民の個人遺伝情報が必要なので、個人情報保護のあり方を見直し、現行指針で対応しきれるのかを議論していただきたい。


3省の委員会の今まで議論の経過報告


文部科学省:ヒト遺伝情報の取り扱いに関する専門的事項に関わる調査を行い、検討。

厚生労働省:個人情報保護と学問の進歩のバランスを重視しながら、来年4月を目処に決めるべき不足部分があるかを検討。試料の越境(一定の地域内を越えて運ぶこと)に関して考慮すべきこと、研究と診療の境界をどう考えるかを検討。

経済産業省:個人遺伝情報の収集、管理について研究に限定せずに議論した。化粧品会社、遺伝子検査、臨床検査、親子鑑定などいろいろな事業所が対象になるので、広い議論が必要。

事務局からは、各委員会の設置の背景は異なるが、合同会議では以下に着眼して検討してほしい旨、説明がありました。

  • 倫理指針の規定事項の点検と必要な見直し
  • 国際状況を踏まえた対応
  • 研究の進展を踏まえた点検と必要な見直し
  • 法制上の措置の必要性について
  • 合同委員会でカバーできないものは各省の委員会で対応すること

主な討論は次のとおりです。

保護すべき情報とはどんなものか
○遺伝によって受け継がれる(ヘリタブル)情報が重要であるので、その意味をしっかり定義すべき。
○法学関係者にはこのあたり(ヘリタブルかどうかの考え方)、解釈は難しいので、事務局に整理してもらいたい。
○保護すべき情報かどうかは個人を特定できるかどうかで決まる。
○プロテオーム(個人のタンパク質に付随する情報)も個人情報保護の対象にするか

集団に対して、試料提供に関する同意をとるときにはどうするのか
○今、行われているバイオバンク、データバンク作りでは、国民への説明の手続きを定めることが必要
○大規模な集団の意見を聞く手続きについて考えなくてはいけない
○個人の同意が得られれば、それが重なって、集団になるのではないか
○同意の取り方には試料提供者の同意、集団の同意の二段階があるのではないか
○研究目的について何に使ってもよいという包括同意を取ることには限界があるので、試料の管理の仕方について決められた条件を満たせれば、研究の目的を限定しなくてもよいという「コンディションドユース」を念頭においた検討も必要ではないか
○診療情報は過去のものだが、提供された試料からは新しい情報が出てくる可能性も考慮すべき
○遺伝情報を使った差別を禁止する法律を作った方が、研究が進むのではないか

国際共同研究について
○相手国の状況を理解する必要があり、日本の考え方を押し付けるのはいかがなものか
○各国での一定の手続きに沿ったものであれば認めるといった対応が望ましい
○他国の人たちの遺伝情報を搾取してはならないということが原則。

研究者や研究機関の責務
○情報の漏洩、乱用による損害が出たときは、研究実施者だけでなく、研究機関の責務も問われるべきで、これを指針の中に定めるのがいい。

医療の現場の問題
○医療現場、特に小さい機関での個人遺伝情報の扱いや管理の現状は、指針と大きく乖離している
○個人情報保護法立案過程の議論では、実際の乖離は承知の上で、その乖離を埋めていく立場で法律を作った。
○各施設で指針があるなら、それを公表させるという方法がある。
○個人情報保護法は、扱う情報の数が5000件以下が適用除外になっているが、それより小さい機関にも保護の考え方の浸透をはかるのがよい。

情報漏えいの防止
○情報が漏れないようにする仕組みが大事、コンピューターのネットワークの問題ではない。
○どんな手段を使ってもアクセスできないことを第一義的に考える。
○情報の流通を制限するより、安全性確保が大事。

倫理委員会について
○小さい機関は審査ができないので、中央または合同倫理委員会がそれらの審査を代行してはどうか。
○まとめる立場にある機関が全体の審査をする。国の審査をいれるというのは複雑になるので、あまり進めないほうがいい。学会による審査の代行も指針に示されている。
○FDA(米国食品医薬品局)の指針にあるように、審査機関の取りまとめも必要。

受託機関の監督
○委託者が受託機関に対する監督をすべきである。
○委託する場合は、委託者側の倫理審査委員会で通過したことを文書で受託者に明示してほしい。正しい手続きが整っていないと受託する方も不安。

データバンクとそのための試料集めについてどう考えるか
○指針のカバーしていないデータバンクも基準の中でカバーすべき。
○データバンクの登録制度をつくりそれをコントロールできればいい。
○各国でデータバンクの取り組みが始まっているが、きちんと基盤整備はできていない。コンディションドユース(一定の条件のもとでの利用)の考え方が必要。
○米国ではエイズの伝播について事後的に研究を行った際に、データバンクが学問的に役に立っている。きちんと整理されていれば連結不可能でも役立つデータベースになる。データベース用の同意というものを決めれば、同意が得られたサンプルを収集し、将来使えるようになるのではないか。将来の医学に役立つという目的で協力してくれる人もかなりいるはず。

人材育成
○インフォームドコンセント(説明を受けた上での同意)の取り方が重要。誰がどうやって得るのかが明確になっていないので、教育プログラムづくりが必要。
○人材育成についてはマニュアルで示せば、指針に入れなくてもいいのではないか。

遺伝カウンセリングの進め方
○研究と診療の境界が難しくなってきているのが現実。遺伝カウンセリングは診療行為。遺伝学検査をするときには、カウンセリングが必要なのに、医師の考えで行われているのが現実。(厚生労働省では、医療機関における遺伝カウンセリングは別立てで行っている。米国に比べ、日本は遺伝カウンセラーは充実していないが、日本でも養成はしている)
○志の高い人が勉強を始めているので、それをサポートする仕組みや予算措置が必要。
○遺伝カウンセラーの養成はELSI(Ethical Legal Social Implications:倫理的、法的、社会的に関わりのることがら) のような形で予算をとるべき。

教育
○市民にとっては遺伝やDNAはわかりにくい分野なので、このような仕組み作りに平行して、理科教育を中心とした幅広い教育の見直しをお願いしたい
○教育の基盤整備が必要。遺伝子パークのような勉強できる施設の全国的な設置が必要。

その他
○製薬会社の扱うものは研究かどうか。研究の中に含めて考えてもらいたい
○法医学、民事、保険、ローンも重要な部分として考えなくてならない。カバーしきれないところをどうやってカバーしていくのかも関心を持って議論していく必要があるというのは、データ管理の方法を決めておくことです。そのかわりに、データ利用目的は幅広めでも同意をとれるということになります。





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