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薬用植物シンポジウム・観察会に参加して (くらしとバイオプラザ21スタッフレポート) |
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〜生薬研究者による市民とのコミュニケーションの取り組み〜
去る9月7日、広島大学医学部において薬用植物園における観察会とシンポジウム、9月8日には吉和村(広島県)において薬用植物観察会が行われました。これらの活動が継続して心ある薬用植物の研究者たち(グループの名前は「薬用植物を知ろうネットワーク」)の手作りで行われていると聞き、参加させていただきました。
指導者は、南は種子島から、北は北海道小樽から集まられた先生方約20名、長年の活動を通じて和気あいあい。参加者にはリピーターも多く和やかな楽しい企画となりました。
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1.漢方薬とバイオ |
現在、日本で使われている漢方薬の原料生薬は約80-90%を輸入に依存しています。その多くは野生植物の採取に頼っているので、絶滅が心配されたり、採取が制限されている植物もあります。このような状況では、均一な品質と安定供給を望むのは困難なので、栽培による生薬の供給が期待されています。同一形質をもつクローン植物の増殖、栽培方法の工夫、薬用成分の研究などバイオテクノロジーの応用が期待されています。そのためには、まず一般市民の漢方薬・生薬への認知を高め、理解を進めるためのひとつとして今回のような取り組みが行われているのです。 |
2.薬用植物観察会 (9月7日10:30〜) |
広島大学医学部薬用植物園に約40名の参加者が集まり、園内で指導者に名前や薬効を質問したり、草花の見分け方を教えていただきました。 |
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3.第8回薬用植物シンポジウム (9月7日13:00〜) |
広島大学医学部大第5会議室においてシンポジウムが開かれ、ほぼ200名の参加者で階段教室はいっぱいになりました。
(1)伊吹山の植物の山麓・春日村での薬草教室
元岐阜薬科大学長 水野 瑞夫
伊吹山の歴史や多様性に富む植物の紹介の他に薬草教室(10回/年)の活動の紹介:薬膳、こんにゃく作り、ハーブなどの作業を含む勉強会や野外観察会の模様が伝えられました。
(2)幻の植物を求めて〜植村佐平次から現代の植物ハンター〜
薬剤師研修センター 佐竹 元吉
江戸時代を代表する採集家植村佐平次と最近の採集家特に吉和村にゆかりのある泉昌氏を紹介。標本採集や標本作りの苦労話など貴重なお話でした。
(3)徐福が不老長寿を願って捜し求めた幻の薬草
烏犀圓 社長 野中源一郎
徐福は秦始皇帝の命令で不老長寿の妙薬を求めて日本に渡り、各地に地名などが残っているものの結局は見つけられなかったといわれています。現在の不老長寿の妙薬のひとつにタンニン酸が考えられないかというテーマのもと、化学的な構造、植物の進化におけるタンニン酸の役割、私たちの食生活における役割が面白く語られ、眠くなる受講者はいませんでした。
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4.第7回薬用植物観察会 (9月8日9:30〜) |
翌日には吉和村主催で植物観察会が開かれました。
吉和村は、中国山地第5位の標高を誇る冠山(1,339m)の麓の自然と人間が共存している村で、西中国山地国定公園に指定されており、広島市内から車で2時間弱、さわやかな高原です。ここでの観察会は7回目です。
9時30分吉和村魅惑の里駐車場に105名の参加者が集まり、開校式。観察場所にマイクロバスで移動した後、5班に分かれて(班毎に指導者3名以上)観察会開始。今年は渓流沿いのなだらかな坂道で説明を聞きながら上る、お年寄りでも大丈夫なコースでした。
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5.スタッフの感想 |
「薬用植物を知ろうネットワーク」の誠実な地道な活動を初めて知って驚きました。各地の先生方が計画案作成を担当、そこに講師を含めたスタッフが集まると設営から受付まで何でも分担する、本当に「手作りの企画」です。年内は10月13-14日熊本大学大学院薬学研究科矢原正治先生ご担当のサプリメントに関する講演会と観察会(バイオイベントカレンダー参照)が開かれます。来年は、八ヶ岳、佐賀・長崎、京都、広島、つくば、山形または仙台で開催されるそうです。「くらしとバイオプラザ21」のホームページでもご案内させていただきたいと考えています。
10月19日「バイオ&薬用植物観察会」(於筑波薬用植物栽培試験場)を行います。ふるってご参加ください。 |
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