5月29日、国立医薬品食品衛生研究所筑波薬用植物栽培試験場において標記観察会を日本科学未来館友の会との共催で行いました(30名参加)。恒例となった観察会も今年で3回目。午前中は講演会と研究室見学、楽しいお弁当をはさんで、午後は栽培試験圃場,標本園、温室、資源保存棟を見学しました。
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木内文之場長のお話「何故、薬用植物か」 |
昔は、薬はすべて自然界(特に植物)から得るものだった。植物は長い進化の過程で様々な化合物をつくる能力を獲得してきており、現在でも植物の作る化合物が薬として使われている。代表的なものとして、ケシが作るモルヒネやコデインをあげることができる。
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吉松嘉代先生のお話「これからの薬用植物−植物バイオテクノロジーの利用と活用」 |
@薬用植物トコン(生薬名:吐根 去痰薬、催吐剤、アメーバ赤痢治療薬)
アマゾンの熱帯雨林の減少とともに資源の枯渇が心配されているので、バイオテクノロジー技術による苗の大量増殖法を検討した結果、1茎頂からの茎頂培養で年間100本の苗ができる技術を、不定根を材料とする方法で可能にした。これを、種子島や筑波で栽培試験した結果、培養苗は薬用成分含量及び組成が均一であり薬用資源として有用であることが明らかとなった。トコンの栽培には温かい種子島のほうが有利であった。
Aその他の薬用植物
「ムラサキ」や「オタネニンジン」にアグロバクテリウムを感染させ、毛状根を誘導させ、実験室レベルで毛状根を培養することにより、薬用成分を生産させることができる。
B遺伝資源の保存
植物の種子は,保存後必ず発芽して育つとは限らず,保存方法が難しい重要植物がある。そこで,植物組織培養物を超低温(-150℃)下で保存する方法も検討している。
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木内場長 |
吉松先生 |
サンシュユのトンネルの木陰でお弁当 |
完成したての資源保存棟を見学しました。薬用植物の名前には、学名(正式名、ラテン語で書かれている)、和名(私達が使っている名前)、生薬名(薬用として使われるときの名前)があります。実物を使っていくつかの生薬を紹介していただき、かじったり、匂いをかいだりしました。
野外と温室で栽培されている薬用植物を見ながら、生薬としては植物のどの部位が使われ、どんな薬効があるかをうかがいました。
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生薬の説明をされる渕野先生 |
染料をつくるムラサキ |
ケシの花 |
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ケシ坊主の中は小さい部屋に分かれており、これに刃物で傷をつけて乳液を
とります(飯田先生) |
今回の参加者は21歳から82歳まで全世代にわたっていました。アンケートでは、参加理由として「実際に薬用植物を見てみたい」が70%強、「最新の植物バイオの知識を得たい」が57%であり、参加後「面白かった」が90%、「ためになった」が70%と好評であり、参加者が納得できた薬用植物観察会でありました。
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楽しい一日でした! |
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