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遺伝子組換えジャガイモ栽培試験について説明会開催される

〜くらしとバイオプラザ21スタッフレポート〜

 3月18日(独)生物資源研究所で「トウモロコシ・スクロースリン酸合成酵素(SPS)遺伝子を導入した遺伝子組換えジャガイモの隔離圃場における収量性等に関する試験」についての説明会が15名の一般参加者を得て同研究所第2本館大会議室で開かれました。

説明会の主旨と隔離圃場の説明
企画調整部遺伝子組換え研究推進室 室長 田部井豊氏

隔離圃場の正門は普段は施錠され、人の出入りが管理されていました。(昨年7月28日に行われたくらしとバイオプラザ21主催つくば農場見学会において撮影)
隔離圃場の正門は普段は施錠され、人の出入りが管理されていました。
(昨年7月28日に行われたくらしとバイオプラザ21主催つくば農場見学会において撮影)

 遺伝子組換え生物の使用による生物多様性への悪影響を防止することを目的とした「生物多様性条約カルタヘナ議定書」が2000年1月に採択されました。日本国内では環境、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業省の6省で「カルタヘナ法」が作られ、今年2月19日より施行されています。
 遺伝子組換え生物の生物多様性への影響では、生態系に侵入する場合、近縁野生種との交雑、有害物質の産生などが考えられています。今回のジャガイモは、従来の指針に基づく隔離圃場での試験期間中であり、カルタヘナ法に基づき経過措置期間中は第一種使用等に係る承認がされたものと見なされるものです。
 さらに2月24日に農林水産省から示された「第一種使用規程承認組換え作物栽培実験指針」に従って、組換えジャガイモは、交雑防止措置をとり各種の情報提供が行われます。この説明会も同指針に基づき「安全性の確認とは別に、組換え作物に懸念を示す消費者に応え、組換え農作物を栽培したい者の権利を守るため」に開催されています。
 また3月4日に公表された「茨城県の遺伝子組換え農作物の栽培に係る方針」に対応し、茨城県庁、つくば市にも、今回の栽培については事前に情報提供を行いました。
 同ジャガイモが栽培される隔離圃場ではフェンスで囲むことで、人の出入り、焼却場と洗い場を設置することで組換え植物体や水の出入りが管理されており、この中にある面積3アールの畑圃場で栽培されます。
 随時見学申込みも受け、ホームページでも情報提供を行う予定です。

 農業生物資源研究所ホームページ 組換えジャガイモ

組換えジャガイモの栽培実験の概要
生理機能研究グループ物質代謝研究チーム 主任研究官 石丸健氏

 今回栽培されるジャガイモはトウモロコシ・スクロースリン酸合成酵素(SPS)遺伝子を導入した組換えジャガイモです。ジャガイモの成分の85%は炭水化物ですが、ショ糖の含量が高くなるとジャガイモは甘くおいしくなります。SPS遺伝子を導入すると、ショ糖の合成が進み甘くなることが期待されます。実際に「栗じゃがいも」ともよばれる「キタアカリ」というジャガイモはショ糖が多く含まれ、おいしいことで今人気の品種です。
 今回は今まで研究で扱ってきた「メークイン」にトウモロコシのSPS遺伝子を導入し、収量や品質を決定する仕組みの研究を行い、どのくらい甘くなり収量が増えるかを調べ、優れた品種の作出に役立てたいと考えています。14年度の栽培実験では遺伝子を導入していないメークインの2.5倍のショ糖が遺伝子組換えジャガイモが含まれることがわかっています。しかし、収量は気候の影響を受けるので、複数年にわたる栽培試験の実施が必要です。今年、再度試験栽培して収量性を確認しますが、この組換えジャガイモがそのまま実用化される予定はありません。
 懸念される花粉飛散については、メークインでは正常な花粉がほとんどできず、実がならないとされていますが、さらに慎重を期して花を開花前(5月初めごろ)に花のついた茎ごと刈り取る予定です。栽培終了後の土壌に小芋が残ることも考えられるので、畑に大量の水を入れて芋が残っていても腐らせてしまいます(冠水)。
 今回の栽培結果が大変優れており、高品質・高収量のジャガイモの開発にSPS遺伝子が有効であると判断され、実用化の方向で研究を進める場合には、組換え体の選抜に使う抗生物質耐性マーカー遺伝子を使わないなどの手法を利用して、改めて開発を行うとのことです。


質問に応える田部井先生
質問に応える田部井先生

 説明が終わってから、田部井氏の司会により参加者との質疑応答が行われました。説明はわかりやすく丁寧に行われたので会場はとても穏やかでした。開催に当たり肥後健一理事が挨拶されましたが、研究者が忘れがちな「一般の方にわかりやすい説明」を心掛けられたようで、専門用語の使用がほとんどなく、わかりやすい言葉で、見やすい発表資料が用いられ、参加する市民の立場を考慮した説明会であったと思います。現在のところ、このジャガイモを実用化する予定はないということでしたが、おいしいジャガイモで収量も増加するのであれば、安く買い求めることができるようになると思われますので、この研究成果が将来活かされるようになることを期待します。
 4月8日(木)の組換えジャガイモ植え付けの見学も受け付けるそうです。
 なお同研究所では4月18日(日)に、組換えイネなど、今年栽培される予定の遺伝子組換え農作物についての第2回目の説明会を予定しています。


主な質問は次のとおりです。
  • Q:平成14年度に栽培されたジャガイモの後処理はどのように行われましたか。
    A:冠水により芋を腐らせ、翌年に残らないようにしました。

  • Q:昨年から保存されているジャガイモがウィルスにおかされているかは、植え付け前に調べるのですか
    A:調べます。

  • Q:昨年、北海道で遺伝子組換えイネが栽培されていたときのように生育状況を市民に知らせていくのですか。
    (北海道農業研究センターにおける遺伝子組換えイネ試験栽培についての説明会と収穫に関するくらしとバイオスタッフレポート)
    https://www.life-bio.or.jp/topics/topics41.html
    https://www.life-bio.or.jp/topics/topics60.html
    A:新しい生育状況の写真を毎日、ホームページで更新することはできませんが、1〜2週間間隔くらいで生育状況の新しい写真を載せたいと思います。見学を受け付けたり、説明会も開催していきます。






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