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第5回談話会「日本の農業の現状について」報告

 10月27日(月)、第5回談話会を開催しました。今回は「日本の農業の現状について」、角田誠二さん(北海道北見 角田農園代表取締役)をスピーカーにお迎えしました。お話の後は角田さんを交えて、19名の参加者でディスカッションしました。
 私達は遺伝子組換え大豆試験栽培見学以来、「私達は自分たちの食物についてもっと知るべきではないか」という立場で取材、ニュース配信、企画を行ってきましたが、今回の談話会は、今まで生産現場に感じていた疑問の多くに答えていただいた談話会でもありました。
 角田さんのお話が分かりやすく具体的で「角田さんの向こうに北海道の農地が見える」ような気持ちがしました。

 大豆試験栽培見学記
 筑波農場見学会報告
 セミナー「なぜ米国生産者はバイオ作物を生産するのか」

角田さんのお話

(有)角田農園と(有)ハッピーファームのこと

お話をされる角田さん
お話をされる角田さん

 (有)角田農園は60haで、小麦、ビート、ジャガイモの畑作経営。(有)ハッピーファームは20haで、小麦、ビート、ジャガイモの畑作経営と、農作業の請負、農機具のレンタル、ガーデニングの土の製造販売、ビート育苗ポットの土詰め播種、その他。ハッピーファームは近所6人の農家のかたにも出資をしていただき、農機具の稼動率の向上、新しい技術の導入、今までに無い事業の導入などを目指しています。

遺伝子組換え大豆の試験栽培

 2001年の秋に北大の富田先生からラウンドアップレディ大豆の試験栽培の話があり、日本モンサント(株)と栽培条件について11月に確認をしたところ、大豆の発芽後、雑草が生えそろった時点で、ラウンドアップを散布、雑草が枯れたのを確認後、大豆の開花前にすきこむという条件を聞き、試験栽培を決めました。北海道網走支庁、北見市、農協に、その旨通知。
 日本のように雨の多い気侯での農業では、雑草の被害から作物を守ることは大変であり、昔から「精農は、草を見ずして、草をとる」立派な農家は雑草対策をきっちりやっているといわれています。除草剤の発達した現在でも、雑草対策は重要な作業です。
 2002年の5月20日に1haの畑にラウンドアップレディ大豆を播種6月上旬発芽、その後大豆は順調に生育、6月下旬になると雑草が目立ち始め、7月中旬には一部では雑草で大豆が見えなくなるほどになりました。ラウンドアップ散布、一部で規定の2.5倍の量を散布、3日目ごろから雑草の元気が無くなり、大豆はまったく影響なく元気。2.5倍区も生育状況は変わらず、2週間で雑草はほとんど全部枯れてしまいました。大豆はその間も順調に生育し、多くの農業関係者、農家の方に見てもらうと、皆一様にその効果に感心されていました。
 現在多くの作物で除草剤が使われていますが、大事な作物の生育に影響がでたり、雑草を充分に抑えられなかったりします。またコストの面でもラウンドアップでは、10a500〜600円に対し、他のものを用いると2倍〜4倍農薬代がかかります。土壌、その他、環境に対してもラウンドアップは、負荷の少ない除草剤といわれています。
 安全に対する消費者の理解が得られるようになり、このような新しいバイオテクノロジーを使った農業が1日も早くできることを願っています。
 遺伝子組換え作物に反対している有識者といわれている方の中に、間違った知識による反対意見が、新聞、雑誌などでよく見られますが、消費者に正しい知識を持っていただけるように努力したり、考えていく必要があると思います。
 安全性を確保しながら、機能性のある、天候の変動に強い、環境負荷の少ない、生産性を高める農業技術として、遺伝子組み換えによる、品種改良をもっとスピードアップしなければならないと思っています。

日本農業の現状について

 戦後の農政の中で「生産費所得補償方式」による価格政策が続いたこと、農地法や農協法などの「競争よりも協調に重きをおいた政策」、山が多くて狭溢な土地条件など多くのマイナス条件により、外国農産物に対し価格面で著しく競争力がなくなっています。自然条件は別として、農機具で1.5〜2倍、農薬で2倍、肥料も2倍近く、生産資材の面でも欧米に比べ大きなハンデを負っています。

 農地法
 食料・農業・農村基本法(平成11年制定、15年最終改定)

 農産物の価格比較では、小麦ではアメリカは60kg約1,500円、国産小麦は9,000円、北見の代表的な農産物であるたまねぎでは、北見産20kg1ケース市場価格1,500円が採算ラインといわれていますが、中国産は800円位で入ってきます。
 穀物のように大規模、機械化の進んだ農産物では、アメリカ、カナダ、オーストラリア等には、価格、品質両面でかないません。野菜類では労賃の安い中国をはじめ、東南アジアの国々等に価格の面でかないません。
 品質面で優位であった物も最近は、韓国産の追い上げを受けています。

農業は環境負荷産業である

 開拓とは自然破壊であり、農業は色々な面で環境に悪い影響を与えています。家畜の糞尿の問題、化学肥料、農薬による土壌、地下水汚染、河川の汚染、耕地化よる表土の流亡、海の汚染。世界の過去の文明の発展を考えてみても、それぞれの地域での食料生産がその文明を支えていましたが、種々の生産活動による環境の悪化、農業による環境の変化、地力の低下、食料生産力の低下、それらが文明の崩壊に与えた影響大きかった例が多いと思います。
 畑作農業には地力の問題はいつも重要です、雨と、風による表土の流亡が続いています。開拓がはじまった時から、問題は始まっているといえるのではないでしょうか。

有機農業について

 畑の一部で化学肥料と化学農薬をほとんど使わない試験を20年余り続けてきましたが、有機栽培のものが安全であるとはいえないということと、コストがかかる割りには、高く売れない、エネルギー多消費型であるなどの理由で本格生産にはいたっていません。現在作られている品種は基本的に科学肥料を使い、農薬を使うことを前提に作られています。有機栽培をするには問題が多いと思います。最近のカボチャの品種は、味と収量は良くなりましたが、8月に入ると必ずウドンコ病がつきます。収量には余り影響がありませんが、味と品質には影響が大きいと思います。ウドンコ病は毒素を残しますが、ウドンコ病の農薬は毒性の低い農薬です。
 また最近のアスパラの品種は8月になると立ち枯れ病にかかりますがダコニールという低毒性の農薬を使うことにより防げます。そうすることで翌春太くておいしいアスパラが出てきます。
 化学肥料と、農薬に頼り切った栽培には問題がありますが、有機栽培が安全だとか、美味しいとはいえないのも現実です。

農業経営について

 生産性の向上をはかり、安全で美味しい食料を消費者に供給できるよう農家として努力を積み重ねることが今まで以上に必要であり、価格の面でも少しでも安くできるよう工夫が必要です、どうしても価格の面で外国産のものより高くなることについては、生産者から消費者に理解を求め、これ以上自給率が下がらないようにしなければならないと思います、これ以上自給率が低下すると農業の持つ色々な問題点を考えると将来に禍根を残すことになると思います。

角田さんを交えて討論

有機栽培とバイオの共存
  • 有機栽培は安全という思い込みが消費者にはある。組換え反対と有機賛成者が重なっているのは変だと思う。
  • 米国の農家の話と角田さんの話は重なる部分が多い。
  • 米国は感じ方が違うと思う。米国の研究者は農薬を減らすためなら組換えはOK。
  • オーガニック(有機栽培)の基準が厳しくなって、店頭にはオーガニックが増えないように思える。
  • フランスではreasonable(合理的な)農法とオーガニックを定義しており、こういう定義は好ましいと思う。
  • 有機は手がかかり、いいといっても買う人が少ない。有機を買い支えるだけの価格差がないし、組換え、非組換えもそんなに価格差はない。
流通のニーズ
  • 外食産業の消費の方が家庭より多いという現実があり、外食産業が望む野菜の品種改良、ブルームレスキュウリ(ツルツルで粉をふかない)、クーニャン(丈が15センチくらいのチンゲンサイ)などが進められている。消費者のいないところで生産が進んでいく気がする。
  • 給食では土のついた野菜を嫌うので溶液栽培がさかんに行われている。
北海道の農業
  • 専業農家があり、半分以上の産業が農業である北海道は限られた品目を上手に作って自給率を上げ、本州への「輸出」を大事にしたい。組換え、有機に関係ない。
環境負荷
  • 米国の農地荒廃の上に日本の豊かな食が成立していることを知るべき。環境負荷を価格に転嫁されたら、日本は大変。
  • 外来種が問題にされているが見かけない草花が根付きで園芸店の店頭にあるのはどういうことか。組換え植物も外来種のように国内に従来なかった植物として優先順位をつけて検討してほしい、と思う。
話し合いの重要性
  • 海外は討論がある。PAには話し合うことが大事。話し合いの場を作ることも大事。
  • 農家の話を聞くこと、話し合う機会を増やすことが大事。
  • 意見交換の場に出ることを拒む人達があるのは残念。
新品種について
  • 新品種の種は総じて高い。おいしいも大事だが、規格がそろうなど売りやすいことも品種改良のメリットとして大きい。
これからの消費者と生産者
  • 利益を消費者と生産者が共有してこそ生産性があがる。競争してもよくならない。
  • 農業に対する国民的な検討が必要になっている。農業は産業の中でお荷物になってきている。将来に続く農業を考えるならその選択肢の中にバイオがあるのだと思う。
  • 世の中は一晩で変わることもある。生産効率でない視点があるのかもしれない。
  • 農家は品種改良の意味をよく理解した上で、消費者に出向いて行きそのニーズを聞く努力が必要ではないか。
  • これからはアグリと消費者が新しいコミュニケーションターゲットだと言われている。購入とは社会的責任を伴う行為なのだから、消費者自身の価値観を問われている。

 現場の方のお話は、生き生きと伝わってきて、角田さんに遠路おいでいただき、実り多い討論ができました。生産者の方もコミュニケーションを求めておられることがわかり、私達も今後とも生産者の方を交えたコミュニケーションの場作りに関わらせていただきたいと思いました。
 角田さんが農業を始められて40年間で、一番ジャガイモに適した今年の夏(雨が少なく、涼しい)に作られたジャガイモが全員にお土産で配られました。ジャガイモはどれも丸いきれいな形でした。ストレスなく育った野菜は形もよいのだそうです。

今年収穫されたジャガイモとカボチャ 集合写真
今年収穫されたジャガイモとカボチャ 集合写真






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