2015年2月1日、神奈川工科大学エクステンションセンター(本厚木)にで、トマトバイオカフェを開きました（主催:NPO法人くらしとバイオプラザ21　協力:神奈川工科大学バイオ科学科）。お話は、「トマトの力〜トマトがもたらす健康への効果」で、スピーカーは、カゴメ株式会社　研究開発本部　自然健康研究部　課長　砂堀 諭さんでした。参加者は生食用のトマトを試食しながら、お話をうかがいました。

栗原　神奈川工科大学バイオ科学科長による開会	砂堀諭さんのお話

1.トマトの特徴
トマトは食材、調味料、飲料として使える珍しい野菜である。その酸味や香りは脂っぽさを消す役割を担い、赤色は食卓の彩りを与える。栄養バランスも良く、ヘルシー、旨味だしとしても愛用されている。加工や保存がしやすく、加熱して搾汁するとジュースになり、それを濃縮するとピューレー、ペーストに、乾燥させるとトマトパウダーになる。また、剥皮するとホールトマトやカットトマト、更にあらごしトマト（パサータ）にすることもできる。
野菜の中では遊離アミノ酸がダントツで多く、うまみの調味料にもなりうる。世界で最も愛されている野菜で生産量も多い（1億4600万トン/2010年）、万能な野菜。
世界で最も多くトマトを食べているのはエジプトの96.8Kg/年、ギリシャの94.7Kg /年で、朝昼晩と中玉を一つずつ食べているイメージ。日本はその10分の１。
カゴメは、品種改良から食品の製造・販売まで全部をしている世界でも珍しい会社。品種改良のための遺伝子資源の収集・管理も、栽培技術の開発、栽培の指導、生産技術の開発、商品開発、品質保証も行っている。
　
2.健康への効果
呼吸で体内に酸素を取り込むと、その一部から活性酸素が発生する。活性酸素はがんや老化、動脈硬化の原因となるが、人の体には生来それを消去する抗酸化能が備わっている。しかし抗酸化能は20-30歳をピークに低下してくる。トマトには活性酸素を消去する力を持つ、リコピン等のカロテノイド、ビタミンＣ等の抗酸化物質が含まれている。
トマトのメタボリックシンドロームへの効果については、血圧の上昇抑制効果（動物）の他に、食後血糖値の上昇抑制効果（ヒト）が期待される。
さらに血糖値については、トマトを含む野菜飲料を食事前（特に30分前）に飲むと、血糖値の上昇抑制効果が高いことが、ヒトの試験で分かってきた。
また、加齢により骨、筋肉、関節等の機能が低下し、要介護や 寝たきりになる危険が高い状態のことをロコモティブシンドロームという。予備軍を含めた該当者は40歳以上を中心に4700万人いる。トマトに含まれるリコピンも骨の健康に役立つことが期待できることがわかってきた。
　
3.トマトの上手な食べ方
トマトを購入する際は、栄養価の高い旬のトマトを購入すると良い。（トマトの旬は夏である。）また加工品はリコピンの含有量が高い品種を使っており、ケチャップやカットトマト、トマトジュースの利用がおすすめである。またトマトは油と一緒に摂取したり、加熱することでリコピンの吸収が高まるため、生鮮のトマトも油で炒めたり、加熱したり、調理すると良い。生クリームと一緒にしたデザートでも、吸収がよくなる効果が期待できる。
そしてリコピンは、継続的に摂取することで体内に蓄積される。そのためトマトは継続的に摂取するとよい。

会場風景	試食用トマト

• 植物工場でのトマトの生産はどのくらい行われているか。
  → 日光がないと赤くならないので、実用レベルで人工照明だけで育てられたトマトはないと認識している。
• ケチャップのリコピンは置いておくと減ってしまうのか。 → 期限中は減らない。大人には、糖と塩の低めのケチャップがおすすめである。
• 体に最もいい野菜はなにか。 → 野菜は薬ではないので　長く食べて効果が出てくる。バランスが大事なので野菜飲料を継続して飲むことがおすすめである。
• 試験圃場での連作障害にはどう対処するのか。→ 圃場を交換して連作障害を防止している。品種改良では完璧にはとめられないので、圃場を回すのが一番効果的ある。
• トマトときゅうりの食べ合わせがよくないと聞いたが実際はどうなのか。 → トマトときゅうりの食べ合わせが悪いというデータはないので心配はない。私の知る限り、トマトには食べ合わせの悪いものはない。
• イタリアなどヨーロッパでは国民が1日にトマト3個は食べるというが、食べすぎではないか。 → トマトを食べすぎて、健康に悪影響を及ぼしたという報告は聞いたことが無い。トマトを多く食べる国では、加熱したりして調味料がわりで食べていると考えられ、無理なく食べられていると思う。但し、皆様がトマトを3個食べることで他のものが食べられなくなり、食事のバランスが崩れては意味がないので、３個にこだわる必要はない。