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秋の植物園・筑波宇宙開発センターを訪ねるバスの旅

 2014年11月15日、国立科学博物館筑波植物実験園、筑波宇宙センター(JAXA)を訪ねました。6歳から89歳までが、世界初の青い菊を見たり、タンポポのロゼット葉を観察したり、ロケット発射音響体験をしたり、楽しい見学会となりました。
初めにタンポポ工房代表 保谷彰彦さんのお話をうかがい、ご一緒に植物園を散策し、JAXAのロケットツアーという見学コースに参加しました。


お話「身近な草花の魅力」     タンポポ工房代表 保谷彰彦さん

世界一の植物探し
○ 世界一高い木:115.5m(講談社のビルくらいの高さ)、ニックネームは「ハイペリオン」。北米レッドウッド国立公園。セコイヤの1種でヒノキの仲間。高さは人が登ってはかったそうだ。 幹は4.8m
○ 世界一長生きの木:5062年(メソポタミヤ時代から生きていたことになる)。イガゴヨウマツ。北米ホワイトマウンテン公園。日本の縄文杉は3000年くらい。
種子も長生き。オオガハスは3000年の地層からでてきて発芽した。
○ 世界一大きな花:直径 90cm。ラフレシア・アルノルディ。葉や茎はなくブドウ科の植物に寄生している。光合成しない。花が咲くときだけ土からでてくる。生臭い匂いに誘われてハエの仲間がくる。雄花と雌花があり、東南アジアの熱帯の森では、主に日本の初夏の時期に1週間くらい開花するらしい。
○ 世界一小さい花:ミジンコウキクサ 0.4mm×0.3mmの葉状体でおしべとめしべだけから成る。

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保谷彰彦さんのおはなし 会場風景

身近な草花のヒミツ
世界で名前がついていて花を咲かせる植物は27,000種。日本には5,000種プラス外来種1,300種。分類・記録が難しい。
花の構造は、外側から、「がく」「花弁」「おしべ」「めしべ」から成る。花は種をつくるために咲く。他の花から花粉を受け取って種をつくる(例 イチゴ)種類の植物は、自分の花粉では花粉管が伸びず、種ができないような仕組みになっている。
○ヤマホトトギス
蜜の入った壺のようなものが花の下部にある。おしべが6本あり、先が2つに分かれためしべが3本ある。
蜜壺に蜂が頭をつっこむと蜂の体に花粉がつくが、その時点ではめしべは持ち上がっているので、そこには自分の花粉はつかない。しばらくするとめしべが下がり、花粉をつけてやってきた蜂の花粉を受け取るようになる。めしべの角度で開花からの時間がわかる。
○ヤツデ
花の集まったものを「花序」という。はじめは花盤(蜜がでる場所)の周りにおしべだけがある。おしべが落ちるとめしべがでてくる。めしべは5つに先端が分かれている。つまり、ヤツデの花には、オスの時とメスの時がある。花序がメスのときは木全体もメスになり、オスの時は木ごとオスとなる。花は11月の寒い時期に咲くので、競合相手がいない。暖かい昼間だけ蜂は活動できる
○他の花から花粉をもらわずに自分だけで種をつくれる草花もある。以下に紹介。
○キキョウソウは花粉をもらって授粉するが、閉鎖花といって、開花しない花も持っている。閉鎖花では花弁みたいなものが3枚ある。他の花からの花粉を受けずに、自分の花粉をうけて花粉管が伸びる。
○ホトケノザの花は、筒状で花の中におしべとめしべがあり、蜜は奥にある。ストローのある蜂なら蜜がすえるが、ハエはだめ。
閉鎖花があり、虫が来なかったときの保険として種をつける。
○ツユクサには、かざりのおしべと長いおしべがあるオスの花と、おしべとめしべのあるメスの花がある。種はメスの花でできる。
かざりのおしべのある花の花粉は、ヒラタアブの餌になり、長いおしべの花粉がアブのお尻について運ばれていく。一日しか咲かないので、虫が来ないときにはおしべがくるくると巻かれて、午後には自分の花粉での種作りが始まる。
○センボンヤリはキク科で、春、花をさかせて種をつくるが、11月には閉鎖花をつけて、種をつくる。
○ドクダミは花弁をもたず、自分だけで種をつくる。
 
タンポポ
タンポポはキク科の草花。キク科は集合花(小さい花が集まっている構造)で、管状花と舌状花から成る。ヒマワリは舌状花が外周にあり、中心部が管状花になっている。アザミは管状花だけ。タンポポは舌状花だけ。ツワブキは真ん中が管状花(花粉をつける)で外周は舌状花(花粉を受けるだけ)。
タンポポの花の外側には総苞片がある。ここに突起のあるものとないものがある。
タンポポは春、開花して、綿毛の種が飛ぶ。冬にはロゼット葉という地面に這っている葉で冬超えする。花の構造は花弁一つがひとつの花。花びらの先端には5つのギザギザがある。5枚花びらのなごり。
花の寿命は1日だが、虫を呼ぶために花びらが残っている。英語では、「ダンディライオン」という。これは葉がギザギザしてライオンの歯みたいだから。
タンポポの語源はいろいろあるが、花全体が鼓の形で「タンと打てば、ポポと答える」とか、槍のカバー「たんぽ」に似ているなどがある。 
タンポポが多いのは、アラスカ、アイスランド、スカンジナビア、ヒマラヤ、日本。日本には20種類くらいの名のあるタンポポがある。
 
タンポポの種類
○ミヤマタンポポは、3,000mくらいの高地にある。ミヤマタンポポは、総苞片がつるっとしている。岩場に生えている。限られた地域にしかないので、保護の対象になっている。高地で風が強いため、山小屋周辺の風の弱い所に生える。
クモマタンポポは、北海道の大雪山や白雲岳にしか見られない。貴重な植物。
カントウタンポポ、シナノタンポポ、カンサイタンポポ、オキタンポポと地域によったタンポポがある。カントウタンンポポは総苞片に突起がある。他の花の花粉を受ける。
白い花をつけるタンポポは関東以西にある。世界の5種の白いタンポポのうち3種が日本にある。それは、①シロバナタンポポ(西日本にある。自分の花粉で授粉)、②オクウスギタンポポ(すこしクリーム色をしている。総苞片の突起はあるものとないものがある。自分の花粉で授粉する)。③キビシロタンポポの3種類。
エゾタンポポ:自分の花粉で受粉。総苞片が花の方にくっついている。東北、北海道ではエゾタンポポポが中心。
セイヨウタンポポは1900年に入ってきた。北海道から広がってきた。総苞片がそりかえっている。
遺伝子で調べてみたら、一番多いのはセイヨウタンポポとカントウタンポポの雑種タンポポで、総苞片がそりかえっている。セイヨウタンポポはむしろ少ない。セイヨウタンポポは花粉がたくさんでき、雑種でも花粉がたくさんできる。
日本のタンポポの特徴は、総苞片が花にはりついていて、緑がやさしい。
セイヨウタンポポは、がくの緑がくすんでいる。厳しい環境にはえているのは外来。
 
タンポポのまとめ
自分の花粉で授粉できる雑種タンポポは、仲間のタンポポも昆虫も不要だから、市街地や厳しい環境に広がる。
カントウタンポポは、他の花の花粉が必要なので、仲間のタンポポと昆虫がいないと種ができない。カントウタンポポは里山や野原の土が湿っているところに咲く。
西洋タンポポと雑種タンポポは砂利地にも生える。
花粉の受け渡しの違いが、くらしかたに影響しているようにみえてくる。これからはタンポポを見つけたら、くらしかたも思い出しながら、総苞片をみてください。


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植物園に到着して ツワブキの花
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冬場のタンポポ センボンヤリ

話し合い 
  • は参加者、 → はスピーカーの発言

    • セイヨウタンポポは強さか → セイヨウタンポポは更地などに生えられる。日本のタンポポは人の手が入った開発された土地では生きられない。集団でないと生きられないから。セイヨウタンポポの生命力というよりヒトの手の影響の方が大きいということではないか。
    • 福島で大きなタンポポが出たと聞いたが、原発事故のせいか → 帯化といって、くきが集まって大きくなる現象がある。日本各地でみつかっている。地中の重金属が原因という話もあるが、まだはっきりしていないと思う。巨大なタンポポというのが、その帯化したタンポポのことならば、日本各地でみられるのだから、福島事故とはあまり関係ないと思う。
    • アラスカやアイスランドに多産地があるのは涼しい気候が好きなのか → 日本でも北の方が多い。涼しい所が好き。
    • 日本のタンポポとセイヨウタンポポの見分け方 → 総苞片が反り返っていないのが日本のタンポポ。反り返っているのは雑種かセイヨウ。緑の色が日本のタンポポは優しい。
     
    青いキクについて
    赤い花は赤い色素、黄色い花は黄色い色素があればできる。青い花は青い色素があるだけではだめで、金属元素、補助色素、細胞の環境(酸性か、アルカリ性か)がそろわないと青い花はできない。青いカーネーションはペチュニアから、青いバラはパンジーから遺伝子をとってきた。
    青いキクは、キキョウ科の花カンパニュラから、遺伝子を取ってきて入れて、成功した。
    同じように遺伝子組換え技術で、黄色の朝顔をつくる研究も行われている。クリーム色の朝顔には、キンギョソウの遺伝子を入れて黄色の花ができた。
    ヤツデの花 向かって右は、青いキク
    遺伝子組換え植物保管施設であることを示す看板 青いバラと青いカーネーションの展示


    国立博物館 筑波実験植物園の見学

    11月15日から世界初の青いキクの一般公開がはじまっていました。青いカーネーション、青いバラも展示されていて、どの花の遺伝子が使われたのかが説明されていました。
    庭園では、講演で説明のあった、ホトトギス、タンポポ、ヤツデ、センボンヤリの実物をみました。ウキクサ、熱帯植物、サボテンの温室も保谷先生のお話をうかがいながら回りました。



    宇宙研究開発機構 つくばセンターの見学

    ロケットコースに参加し、センターで説明を聞いてから、ロケット発射地から3Km離れた場所での録音を体験する「ロケット発射音響体験」をしました。丁寧な説明を受けながらスペースドームを見学しました。
    糸川博士のペンシルロケットから、国産ロケットができるまでの移り変わりの様子や、燃料を補給する「こうのり」などが展示されていました。国際宇宙ステーションの中の日本実験棟「きぼう」と同じ大きさの実験船体内に入り、無重力空間でどのように研究が行われているかの説明を受けました。


    実験棟 きぼうへ きぼうの内部
    解説を聞く 日本の歴代のロケットの模型
    JAXAでの集合写真 車内で