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「食品の機能性表示のこれから〜グローバルな視点で考える」開かれる

 2014年3月13日、第11回コンシューマーズカフェを開きました。お話はグローバルニュートリショングループ株式会社 顧問 高橋迪雄氏による「食品の機能性表示のこれから〜グローバルな視点で考える」でした。同社の武田猛社長も参加され、参加者にとって仕組みが判りにくい機能性食品の表示について最新の情報が提供され、今後の表示のあり方を考える大きなヒントになりました。

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高橋迪雄氏 武田猛氏

主な内容

正しい食事とは?
 「正しい食事をしていればサプリメントはいらない」は言葉としては正しいが、現実的な問題は「正しい食事とは具体的に何を指すのか?」、「一般の人は正しい食事ができているのか?」である。一つの考え方として、狩猟採集生活時代に摂取していた食物こそが「正しい食事」という提案がある。
 その時代には食物はタンパク質が中心で、日中は動き、働き続けていた。現代、炭水化物の多い食物で必須アミノ酸の要求性を満足するためには、ある程度の過食が必要である。しかし、食物獲得のための身体活動が不要になったために、過食に見合うエネルギーの放散が不十分になっている。現代社会に肥満の広がるルーツである。
 アフリカを出て現代人の祖先になったと考えられる少数の人々は、大きな脳の発達に必要なオメガ-3脂肪酸のDHAを、漁労で得るような生活を始め、海岸沿いに世界に散っていったのだろう。現代の食生活では飽和脂肪酸、あるいはオメガ-6の摂取が圧倒的に多いこともあって、特に胎児〜小児、高齢者の魚油由来のオメガ-3脂肪酸の意図的な摂取が推奨されている。
 ビタミンDの合成には紫外線の照射が必要であるが、これは一方で皮膚ガンのリスクを上げる。北欧には肌の色の白い人、日照が強い地域には有色人種がいたのは、紫外線作用の益と害とをバランスさせた人類の適応である。しかし、現代は様々理由でこの原則が破れているので、例えばビタミンDをサプリメントで意図的に摂取するなどが必要とされている。
 
サプリメントの現状
 明確な定義は無いが、「健康食品」は「サプリメント」と「機能性食品」に大別される。サプリメント市場は世界的に成長分野で、アジア市場は特に大きい。日本の市場は1.5兆円で米国、中国に次いで3位、これに機能性食品を加えた「健康食品市場」は3.5兆円になる。ヨーグルト(明らかな食品)、小瓶の飲料タイプなどは機能性食品、錠剤、カプセルタイプがサプリメントというのが大ざっぱな分類のイメージ。
 販売の形式では、米国は店頭販売が3分の2をしめるのに対し、日本は通信販売やMLM(マルチレベルマーケティング、訪問販売)が半分以上を占める。
 
健康食品の効果・効能表示に関する現状
 海外の多くの国には、消費者が効果を根拠に健康食品を選ぶための「健康強調表示」に関する法律がある。さらに、例えばASEAN加盟国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー)では、一歩進めて域内ハーモナイゼーションを2015年までに完了させて、「ヒトの健康的な身体機能を維持、強化、向上させることを目的とした製品」をヘルスサプリメントと定義し、同一基準で流通させる方向で動いている。
 日本では、以下に述べるように、いわゆる健康食品(サプリメント)の効果・効能の表示は行えない。すなわち、日本では、口から摂取されるものは「医薬品」と「食品」に大別され、さらに食品は「保健機能食品」と「一般食品」とに大別されている。「保健機能食品」には「栄養機能食品(ビタミン、ミネラル類)」と「特定保健用食品(いわゆるトクホ)」だけが含まれ、「いわゆる健康食品(サプリメント)」は、必然的に「一般食品」に含まれることになる。そして、「保健機能食品」で定義されている食品は、一定のルールで健康強調表示ができるが、いわゆる健康食品の健康強調表示については、消費者に医薬品と誤認させる危険があるとして「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年 厚生省薬務局長通知)を根拠に、取締の対象になっている。ちなみに、米国のように「食品を除く医薬品」として「医薬品」を定義すると、このような議論が避けられるが、日本では「医薬品」が独自に定義されているので、「医薬品まがいのものを排除する」という論理が広く成り立つことになる。
 その結果、日本の市場に流通するいわゆる健康食品(サプリメント)の供給者側からの効果説明(広告表示等)の中で、「身体の部分」を語ったり、「健康維持上のメリット」、「疾病の予防・症状の軽減」を語ったりすることは不可能になり、「スッキリ」とか「シカッリ」とかの抽象的な表現によって健康強調表示に代替する供給企業側からの試みが長く続くこととなった。
 
日本における健康強調表示の新たな動き
 平成25年6月14日、「日本再興戦略」が閣議決定された。そこでは、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考に、いわゆる健康食品をはじめとする、保健機能を有する成分を含む加工食品および農水産物に対して科学的根拠に基づく表示ができるような方策について平成25年度中に検討し、平成26年度中に実施することが示された。
 すなわち、「食品表示に関する指導上、無承認無許可医薬品の指導取締りの対象にしない明らかに食品(一般食品)と認識される物の範囲を周知徹底させる」とあり、その具体的な方法としては「米国ダイエタリーサプリメントの表示を参考にする」とあるので、ここで俄かにアメリカの健康強調表示制度とその根拠となる法律の現状に注目が集まった。
 
米国のダイエタリーサプリメンの健康強調表示に関する現状
 米国は1938年 化粧品・食品・ダイエタリーサプリメント・医薬品をすべてカバーできる「連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)」、1990年にはその中のダイエタリーサプリメント・食品を対象とした栄養表示教育法(NLEA)が作られ、さらに1994年にはその中のダイエタリーサプリメントを対象に、ダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA; Dietary Supplement Health and Education Act)が施行された。この間の法制定の社会的背景は様々が語られているが、DSHEAは日本における「いわゆる健康食品(サプリメント)」の概念に近い「ダイエタリーサプリメント」に関して、独自の法的根拠を提供したことになる。ちなみに、行政側の役割としては、FDAは商品の安全性の問題に責任を負い、ラベルとその資料を、米連邦取引委員会(FTC)は広告表現を管理し、一貫性を確保するように連携している。
 1994年のDSHEA制定後、アメリカでは1997年にFFDCAを改正するFDA近代化法(FDAMA)が制定され、(主たる対象は医薬品のオフ・ラベル使用に対する規制であるが)、健康食品についても、権威ある学術団体が示した科学的根拠を自社の表示の根拠にすることが認められた。また、2003年にはNLEAを補完する形で、限定的健康表示の科学的根拠のランク付けと、表示の文言との関係を詳細に述べた「通達(IERSSD)」が出されている。従って、包括的な意味での健康食品の健康強調表示の根拠になる法規等は4種類存在していると考えられる。なお、「科学的根拠のランク付け」に関しては、民間のナチュラル・メディシン・コンプリヘンシブ・データベース(NMCD)、ナチュラル・スタンダード・ハーブ・アンド・サプリメント・リファレンス(NSHSR)などが、各種健康食品素材に対して独自のランク付を公表しておりIERSSDを実質的に補完する機能を担っている。NMCDは日本語訳があり、日本からの掲載申請の途もある。
 別の言い方をすれば、機能性表示には、①いわばFDAのお墨付きで、NLEA、FDAMA、限定的健康強調表示(通達)を根拠に、場合よっては疾病予防、疾病リスクの低減まで踏み込める健康強調表示(ヘルスクレーム)と、②DSHEAを根拠にして、「FDAのお墨付きではない」旨の放棄声明を付記した、「企業責任」で行われる「構造・機能表示; Structure/ Function Claim」表示とが併存していると考えられる。なお、①のヘルスクレーム表示の正当性に対しては、「科学的根拠のランク付け」が活用されているのが現状と理解している。②の構造機能表示は、FDAへの通知だけで行うことができ、条件は次の3つである;1)表示内容が事実である、2)放棄声明文をのせる。3)製品販売後30日以内にFDAに届ける。
 1994年のDSHEA制定後、制定時の議会付帯事項決議にも促されて、連邦政府機関としてダイエタリーサプリメントオフィス(ODS)がアメリカ国立衛生研究所(NIH)の所属機関として設立され、サプリメントに関する研究、あるいはその支援をしている。また、ODSに属するボタニカル・リサーチセンターでは植物由来製品の研究、あるいはビタミンDの研究などを主導している。これは国がダイエタリーサプリメントの潜在的な国民健康増進、医療費削減の役割などに注目しているからであろう。また、NIHでは、サプリメントの全てのラベル表示をデータ化しており、医療従事者、栄養士、消費者に公開している。
 健康食品の学術研究について一言。米国大学の「パブリックヘルス学部」においては、近年ダイエタリーサプリメントの効果・効能に関する疫学研究が極めて盛んに行われている。ちなみに、パブリックヘルスは個人のレベルではなく、疫学的な観点から社会全体の健康を考えるサイエンスと理解しているが、日本ではこれを「公衆衛生学」と訳したことで、“衛生”だけの狭い印象を与えることも手伝って、健康食品の分野への貢献度は米国のように高くない。また、このような背景もあって、医学・生物学の分野で、「人間栄養学」的な視点が著しく欠如していると言わざるを得ない。日本の健康食品の市場は世界第2位なのに、「人間栄養学」の学問研究は世界第9位とはいかがなものか!
 
日本の健康食品・サプリメントのこれから
 米国ダイエタリーサプリメントの市場は1994年の法整備後、89億ドルから2012年までに4倍にふくらんだ。これは、おそらくサプリメント購入の人数が増えたのではなく、効果・効能に関する多くの情報に促されて、一人当たりの購入量が増加したためと考えられる。さらに、サプリメントは自己責任の枠組みで、トータルとして社会全体の医療費削減、健康の維持・向上、栄養状態向上に役立っているとの社会的認知の向上が、この間のビジネスの発展を助けていると思われる。
 2016年度以降、日本の「いわゆる健康食品(サプリメント)」は、アメリカのダイエタリーサプリメント制度に倣った表示が行われることは確かで、米国の例に倣えば、ビジネスの更なる発展が予想されるが、一方では「企業責任で健康強調表示を行う」ことをしない(はばかる)商品も出ると予想され、消費者の見識が改めて問われる状況が訪れるに相違ない。
 ビジネスの具体的な展開を予想すれば、「トクホは錠剤なども認められて用途が拡充する」、「栄養機能食品では食品摂取基準が規定される成分が拡充する」、「機能強調表示、健康強調表示もできるようになるかもしれない」、「『消費者庁が評価したものでない』という放棄声明文の記載が義務付けられる」。などなどが起こり、その結果、企業のR&D、商品開発、市場戦略が大幅に変わるだろうし、企業のリスク管理体制も強化されるだろう。消費者の知識の向上に伴って、市場の一層のグローバリゼーションが期待される。
 
長寿社会を目指したこれからのサプリメント
 1950年以降、日本でも寿命が急速に延長した。このように生殖寿命後も続く長い寿命は、生物では初めての経験。健康寿命と寿命のギャップをうめるためには、老化を遅らせることが大事。
 心身の不調を早期に見つけ、サプリメントで緩和し、死ぬまで元気でいられるように!サプリメントと医薬品とは決して対立するものではなく、両立すべきもの。
 “新規”の健康食品は、①医師・薬剤師などが介在することを前提として設計するべき。②したがって、できるだけ単一素材より得られているメカニズム(体の何処にどのように作用する)をもとに設計し、③発売後の情報収集とフォロー研究の中で適用対象の特定、製品の改善などが継続されるべき。


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会場風景  

話し合い 
  • は参加者、⇒はスピーカーの発言

    • 米国の表示制度は、エビデンスのランク付けに応じてヘルスクレームと構造機能表示に分かれると大雑把なくくりで考えていいか ⇒ NLEAとFDAMAは疾病リスク低減へルスクレームが中心と考えてもよい。2003年限定的健康強調が認められ、そこでは疾病について触れることは可能だが、NLEAと並んで、エビデンスのランクがAからDの4段階になっていて、Aは言い切れるが、BからDではFDAは支持しないなどの否定的な文を添えることが条件になった。一方、DSHEAに基づくサプリメントの構造機能表示では、疾病リスク低減、予防などのヘルスクレームは表示できない。なお、1997年FDA近代化法では権威ある機関発のエビデンスの活用を認めているので、「自社製エビデンスのみ」の縛りは全く考えなくて良い。実際問題として、疾病リスク低減ヘルスクレームの場合はFDAの審査評価に時間が掛かるから、敢えて避けるケースもあり、全体の制度設計は、「企業自身が『構造機能表示』か、あるいは『限定的健康強調表示』を選べる制度」になっている。
    • 「FDAは評価していない」という文章は書かなくてもいいのか ⇒ ヘルスクレームはFDAが評価しているが、FDAが評価していなければ、その旨は書かなければならない。
    • アジアでサプリメントの人気が高く市場が大きいのはなぜ ⇒ 漢方薬の文化があるので、漢方はサプリメントと似た位置づけで、特に中国系の人々の間でサプリが人気なのではないか。ビタミン、漢方、ダイエット茶などが人気。
    • 化粧品についてはどうか ⇒ 今回の表示改定とは別の話だが、例えば、ステロイドホルモンなどの油にとける成分はよく体内に吸収されるので、肌はきれいになるが、一方でホルモンの全身作用には注意が必要。新たな科学的エビデンス、あるいは新たな商品素材の市場投入などに応じて、化粧品の規制を改めていくなどの枠組みが今後は必要になるのではないか。
    • 漢方のように多くの素材で構成されている健康食品は? ⇒ 消費者庁では、成分Aと成分BがあるときにはAとB単独とAとBの相互作用の安全性を追及していく予定。 伝承的な素材については使用歴の中で安全性の経験はあるが、それぞれの素材が人体のどの受容体に機能するのかなども、将来的には研究していくべき。ナチュラル崇拝だけでは問題があると思う。米国のボタニカル・リサーチセンターでは国のレベルで調査が行われていてうらやましい環境だと思う。
    • 米国では薬用植物の研究は盛んにおこなわれているのか ⇒ NIHはハーブの研究をとりあげている。
    • 女性のサプリの使用が多いのは、美容関係か ⇒ 女性は子供を生み育てる役割を担っているので、男性よりも安全への見方も厳しく、サプリへの関心も高いと思う。「ナチュラルだからいい」というだけではなく、健康強調表示を期に、女性含めた消費者が作用機序にも興味をもって、判断してほしい。例えば、サプリメントの機能に関するWEB情報の量も大幅に増えると思われるので、活用してもらいたい。
    • 構造機能表示は企業の責任で行うが、消費者に対してミスリードした例や、誤り表示による争いはあるのか ⇒ 現実には米国でも度々起こっている。DSHEAは業界が提案した議員立法で、当面業界に有利で行政には扱いにくい法律になっているが、試行錯誤的に問題を解決する努力は続いている。FDAは表示を所管していて、不適切な表示に指摘するが罰則なし。また、サプリメントの販売前に製品を評価・認定する権限はなく、製品を排除・規制するためには、FDAが安全でないことを証明しなくてはならない。その代わりというのも何だが、米連邦取引委員会(FTC)は広告表現を管理し、広告には億単位の罰金もあり得る。社会的に影響力の大きいダイエット、スポーツ、ガン関連の虚偽誇大広告において罰金制度は抑止力になるが、実際はマンパワー不足。消費者庁もマンパワー不足だが、適格消費者団体による差し止め請求なども活用すべき。一方、米国の弁護士にとって、不適切な表示に対する、特に集団訴訟はビジネスチャンスでもある。“企業責任”という意味は、それら様々な“抑止力”を背景にした枠組みで、安全性、商品の表示の正当性を担保する新しい知恵でもある。
    • 企業責任の仕組みは、発展していくのだろうか ⇒ 課徴金は抑止力になるのでいいと私は思う。しかし、摘発の根拠がきちんとしていなくてはいけない。
    • 日本は行政に矛先を向けるが、米国は企業に向ける。これは文化の違い。例えば景品表示法による摘発には多大のコストを要し一部の心ない企業のために税金が多く使われてしまうことは決して合理的とは言えない。企業側の自制を促すのは、消費者の態度に拠るところが大きい。
    • 健康被害は出ているのか ⇒ 健康被害は余りないが、送りつけ商法などによる経済被害が大きい。健康食品を売って逃げてしまう悪徳商法もある。業界の自覚も足りないようだ。教育法の意味は消費者だけでなく、企業も勉強しなさいという意味がある。
    • 例えば、健康食品として水を売っても健康被害は出ない。水のように、具体的には何にも効かないものをだまして売らないようにさせるのが、構造機能表示の目的の一つである。
    • 何に効くのかわからないものが多いと思う ⇒ マーケティングは商品の利点を伝えるのが王道なのに、効能が書けないためにイメージ商法が始まり、このような状況を招いたとの認識も大切。
    • 社員でない人が、がんに効く健康食品について説明している場面を見かけたことがある ⇒ 米国のマルチレベルマーケティング(MLM)には老舗の大手企業があり、対処のための固有の法律もある。MLMを行う人は社員ではないので就業規則による制約がなく、コンプライアンス順守は求められない。しかし、アムウエイやハーバーライフなどの大手は教育もしっかりやっていて、販売力もあり、経営理念もしっかりしている。
    • 健康にいいダイズなどの農産物はどういう位置づけになるのか ⇒ 消費者庁は、錠剤タイプ、加工食品に加えて、農林水産物を対象にしている。カプセル錠剤タイプだと過剰摂取のリスクがある。加工食品、農水産物による、例えば砂糖の過剰摂取は長期的には出てくるはずだが、今は議論されていない。表示制度の中では、食べすぎは個人の自由という捉え方のようだ。
    • トクホと構造機能表示の関係は ⇒ 機能を持つ「ある成分」の安全性を調べ、食品としての品質規格を議論している。
    • 米国の構造機能表示は日本のトクホほど厳しくないが、用量・適応などに関しては、米国のサプリメントに比べると日本のトクホは甘い気がする ⇒ 医薬開発では物質特許が成立する合成品(生物の体にないもの)を目指すことが多い。他方、食品の成分は基本的に生物が作っているもので、体内で代謝、異化できるという前提が成り立つことが多い。例えば、ビタミンDはステロイドホルモンの前駆体で、体内で活性型が過剰に生成されると、不活性型への変換が促進されるというような生物学的なリスク自己管理システムを伴っている。個々の成分の安全性の検討は十分されなくてはならないが、医薬品の過剰摂取と同一に語れない場合も多い。規制を医薬並みに徒らに厳しくすることは如何かと思う。
    • 消費者団体が構造機能表示に反対する理由の中に、企業自らの評価はおかしいというのがある。企業は国際的なデータをもとに語るという部分が無視され、企業が勝手にクレームを書いていいと誤解している人が多い ⇒ 消費者団体のスタンスは市民を守る立場で、ゼロリスクに向かっているように思う。食や健康に対しては鳥瞰的な視点で見てもらいたい。 今回の構造機能表示は日本が世界に遅れている状態を改善するための企業努力だと理解してもらう必要があると思う。
    • 表示に在り方について、ディベートしていくように行政が中心になって進めてほしい ⇒ 閣議決定では企業が科学的根拠と安全性確保の両方をしなくてはならないとしている。機能性表示ができる代わりに安全性のハードルは上がっている。消費者団体が思うほど甘い制度ではない。米国の表示、届け出制度、有害事象届け出制度などは明らかに日本よりも進んでいる。実際新たな制度を実施すれば、サプリと食品の住み分けなどの矛盾が次々にでてくるだろう。現実的なやり取りの中で業界が健全に発展していくことを期待したい。
    • 健康食品の供給元は、きちんとした企業もあれば、個人輸入、MLM、インターネット販売と様々で、健康被害があるケースもある。どういう規制が機能するのか ⇒ どのような供給者であろうと、供給する商品の安全性情報は広く公開せよといっているので、消費者は選べるようになる。コストが高騰して対応できない会社も出るだろうが、最終的には、安全性と機能情報の開示を義務付けえることで、真面目やってきた会社が評価されるような枠組みになるのでは。安全性情報が収集できないところは、淘汰されていくようになるのではないか。消費者の選択の中でいい企業が残っていくと思うので、今回の構造機能表示をするという動きは現状改善につながると思う。
    • 米国のサプリメントの法律は「教育法」と名乗っている。Educationの語源のeduceとは、 その人の潜在能力を引っ張り出すことで、日本語訳の教育が上から目線であるのとは少し異なる。新しい表示制度は、消費者の知恵と能力を最大限引き出すように機能して欲しい。
    • サプリメントアドバイザーという資格があったが、くすりと食品の隙間のアドバイザーが必要ではないか ⇒ 認定機関が複数あって、団体ごとのレベルに差があり、当初、失望感があった。日本の栄養学は欠乏した時のリスクが依然中心で、不足した場合の健康上のデメリット、十分存在した時のメリットが必ずしも十分語られていない。サプリメントアドバイザーにはこのような観点からも是非活躍して欲しい。
    • 日本人の食事摂取基準を策定しようにも、日本人のデータが足りない。制度がないから研究者がいないことになる ⇒ 疫学研究において、日本人対象の研究はインパクトがあるはず。しかし、おっしゃるように、機能が語れなければ、その機能を云々する疫学研究は低調にならざるを得ず、3-4世代にわたるコホート研究などは、欧米諸国に比べて低調と言わざるを得ない。医師、薬剤師、歯科医が納得する健康食品は大事だが、健康食品を開発するときには栄養士に働いてほしいと思う。表示制度改定後は、ビジネスのチャネルがシフトして、大店舗での健康食品の販売が増える可能性が高い。栄養士との対面販売も始まるのではないだろうか。
    • どんな表示がいいのか ⇒ 病気がなおる、予防するという表示をすると、患者が適正な治療の機会を逸してしまう問題がある。健康診断にはコストがかかるが、日本人の自分の健康レベルに対する認識向上には役立っていると考えられる。国民の健康に対する認識向上を促すような構造機能表示は、一つの理想と言えるのではないか。
    • トクホのヘルスクレームと比べるとこの構造機能表示はどのようになるのか ⇒ トクホとの住み分けが最大の論点。トクホは個別審査で、消費者庁長官許可で消費者庁のお墨付きがある。億単位でトクホを開発し、多く販売している会社は構造機能表示に反対するだろう。しかし、これは国際的なハーモナイゼーションだから、後戻りできない。一方、企業責任の構造機能表示では、「消費省庁が認めていない」というような意味の文言を書かなくてはならないので、逆にトクホをとりたい会社が増えるかもしれない。
    • トクホ申請できない中小の企業は、企業の責任でも構造機能表示はできないのではないか ⇒ 学術論文が使える。どういう試験ならエビデンスとして認めるかを消費者庁はこれから検討するとしている。サプリの原料会社は科学データと一緒にしっかり売り込まないといけない。信頼できる素材を使って、あとはサプリメント企業による品質管理が重要になる。そこで、原料会社はエビデンスになる科学データを準備して、サプリメント会社に提供する。最終的には経済原理が働くはずで、既知物質の配合原料にもブランド名を入れるなどの業界全体の対応が変化し、中小の生き残る途は必ず開かれるだろう。
    • 用量用法を守れば効果が得られることが実証されていないと効果効能は書けないのか ⇒ ヒト試験で試した量が書かれていなければならない。
    • 根拠になる論文は公開しないといけないのか ⇒ 今後数カ月で検討されるところ。安全性は広く公開しないといけないので、原料名や素材名を出さざるを得ない。しかし出すとすぐに真似される可能性があり、原料のブランド化が必要。米国ではコエンザイムQ10の原料は、今、ほとんど中国産になってしまった。たとえば、ニンニクと卵黄をあわせることは他社にもできるが、ブランドニンニクと卵黄を秘密の配合比で混ぜて用いれば他社は真似ができない。カテキンは抗酸化作用があると書いていいが、カテキンにそのような効能があることが広まれば、トクホをとらなくても人はそこに効能を読み取る。キシリトールが入っているからいいガムというように。ヘルスクレームは医薬品と重なるので、医薬品の既得権と健康食品はある意味闘わざるを得ない。医薬側が侵害されたと感じる場合も多々あるはずで、予め厳しく対応しておかないとだめ。
    • 欧州にも、構造機能表示とヘルスクレームがあるのか ⇒ こういう言い方は米国だけ。CODEXではすべてヘルスクレームという呼び方をしており、その中で「疾病リスク低減」などに分類されている。
    • 「消費者庁は認可していない」などの否定文は義務なのか ⇒ 閣議決定されている。
    • 日本人は、否定文をどう受け取るだろうか ⇒ 消費者庁のお墨付きがどのくらい効力を持つかによるだろう。一朝一夕にとはいかないだろうが、このような表示が多くのサプリメントに記されるようになれば、自ずと受け取り方は変わるのではないか。