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「大学生が考える〜遺伝子組換え食品〜」が開かれました

 10月8日(水)、西宮市民会館大会議室において、くらしとバイオプラザ21はNPO法人近畿バイオインダストリー振興会議と共催で標記フォーラムを開きました。会場には大学生の他に、企業関係者、一般市民、生協関係者、大学関係者などさまざまな方々が100余名集まり、会場を交えて活発な議論が繰り広げられました。

 私達がこの企画をした背景には、バイオ情報を提供する側と受ける側相互のコミュニケーションのあり方を求めていろいろなフォーラムを取材したり、開いたりしてきましたが、情報発信を、「誰」を対象にすべきなのだろう、その意味で「一般市民」とは誰なのだろう、また、どんな人が意見を述べると私達は「自分の気持ちを代弁してくれている」と思うのだろう、と考えるようになったことがあります。今回は「普通の市民」の声を聞き取るために大学生のみなさんに協力をいただき、「大学生は考える〜遺伝子組換え食品〜」を開くことになりました。何といっても有識者によらないパネルディスカッションははじめての企画でした。学生パネリストは各自、よく勉強したり、周囲の人たちの生の声を聞いて参加してくれました。今後、さらに工夫を重ね、継続的にこのような試みを行っていきたいと思っています。

 報告書はここからダウンロードしてください。当日配布資料、発言のメモ、アンケートの集計、アンケートの全自由回答の一覧がごらんになれます。(A4版18ページ Microsoft Word文書 1.07MB)

会場風景 会場の飾られた遺伝子組換えカーネーション
会場風景 会場に飾られた遺伝子組換えカーネーション

基調講演 「遺伝子組換え食品を考える」
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授 瀧井 幸男氏

狩猟民族と農耕民族

 狩猟民族と農耕民族では自然との向き合い方が異なっており、私達は農耕民族ですから、当然、バイオテクノロジーに対する考え方も欧米の人々とは異なっているでしょう。

遺伝子組換えと交配

瀧井先生のお話「1ミリは1メートルの1000分の1ですね」
瀧井先生のお話「1ミリは1メートルの1000分の1ですね」

 交配という従来の品種改良は遺伝的に近縁の植物を掛け合わせたもので、結果が分かるには必ずある程度の時間がかる方法ですが、その作業が目に見えることが特徴です。
 一方で遺伝子組換え技術では基本的にどんな生物も対象となり、短時間で結果を予測でき、非常に微細なものを扱う目に見えない技術なので不安を感じる人もいます。
 細胞の大きさの単位はマイクロメーター、DNAはナノメーターです。1,000分の1は1メートルと1ミリの関係。ナノは1,000分の1を3回かけたものにあたります。

DNAからたんぱく質をつくる

 DNAから必要な部分を写し取ったRNAにタンパク質を作る情報が書いてあり、塩基はAとT、GとCの組み合わせで対になり、3つ並んでアミノ酸を示します。

遺伝子組換え農産物 GMO

 米国やカナダなどで換金性作物として大量に作付けされており、収穫を容易にした経済性を重視したものが多く栽培されています。

バイオ食品の安全性

 DNAという化学物質そのものは人が食べても人体に影響はありませんし、環境にも安全です。
 遺伝子組換え生物の安全性は厚生労働省の規制に従って審査されています。このときに用いられている考え方が実質的同等性です。

 厚生労働省遺伝子組換え食品Q&A

GMOの表示方法

 2001年から食品製造業者や農産物輸入業者に表示が義務化されました。表示は、「含む」、「含まない」(非意図的混入5%以下は検出不可能とみなす)、「不分別」の3種類です。

 JAS法に基づく食品の表示について

麹菌宿主・ベクターシステムの特徴(瀧井先生の研究)

 私個人は化学物質を添加されたものの方に不安を感じます。
 現在、抗生物質耐性マーカーの要らない発酵食品由来(コウジかび:安全性確認済み)微生物を用いた研究をしています。Nitrate Reductaseを用い選択するので、抗生物質耐性マーカーは不要です。
 窒素源選択性を示すので、形質転換株は硝酸ナトリウム含有培地で生育します。応用例として、バイオアルコールの原料製造などがあげられます。

パネルディスカッション  「大学生が考える〜遺伝子組換え食品〜」

パネリスト

大学生パネリストのみなさん
大学生パネリストのみなさん
神戸学院大学   鴻 愛さん
神戸女学院大学   岡アみさとさん
神戸女子大学   大谷絢子さん
神戸女子大学   清藤眞奈美さん
武庫川女子大学   猪原梨沙さん
武庫川女子大学   瓦 亜紀子さん

コーディネーター

生活協同組合コープこうべ理事・消費生活アドバイザー
伊藤 潤子氏

専門家パネル

武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授 瀧井 幸男氏

伊藤さんのお話

 遺伝子組換え食品については、1997年ごろまでに、官庁、生協、外郭団体などがアンケート調査をかなり行いました。
 それらの結果を見ると、遺伝子組換え食品に対する基本的な論点は出尽くしたように思います。
 けれど実際の市民の中での遺伝子組換え食品の今の位置づけは、食品に対する不安のベストファイブに入り、アンケートでは「不安を感じる」回答者が8割いるということです。
 私達はバイオ立国を掲げた政府との落差の中で奇妙な安定感の中に漂っています。なぜ不安なのかを率直に話し合わないとこの奇妙な安定感を破れないのではないかと思います。


 以下にコーディネーターの質問(太字)とパネリストとの主なやりとりをまとめました。(会場とのやりとりは一部を除き割愛しましたので、報告書をごらんください。)

遺伝子組換え食品に対する考えを教えてください

・食品の安全性を勉強していますが、少し不安を感じている人もまったく気にしていない人もいます。環境の今後を考えると遺伝子組換え食品は必要かな、と思います。
・バイオテクノロジーの目覚しい発展に市民が適応できない場面が出てきているのが今だと思います。20年後にはどうなっているのかを考えると、現在の私たちの考え方が将来に影響をすると思うのでただ怖がって排除していいのだろうか、と思います。
・絶対に嫌な人もいるが、その人の口にも入っているのも事実です。

最近食べたと思う遺伝子組換え食品をあげてみてください

・表示対象外の醤油などの大豆製品、蒸留酒、食用油やジャガイモやコーンのスナック菓子に入っていたと思う。


勉強はしているが、どちらかといえば不安のほうが多いようですね。ご家族や友人などの周囲の人はどうですか

・友人や家族に聞くと非組換えを選んでいますし、勉強している私達から「訳のわからないもの」は食べたくないというのが実感のようです。

何が不安なのだと思いますか

・除草剤抵抗性と殺虫性を持つ農作物だから、除草剤をいっぱいかけて平気なものや虫を殺すような植物は大丈夫か。
・自然に反するものだから嫌。
・科学的に見たら人間に害がないといっても一般の人は嫌だと思うのが普通ではないか。
・はっきりしないから不安を感じるのだと思う。
・遺伝子組換えを否定する本が本屋にあり、否定的なイメージが先行している。
・体内で消化するから大丈夫という人がいても、否定的な人が発言したときに、中立の人がいないのでどっちを信じたらいいのかわからなくなってしまう。
・人は目に見えないものはこわいから、遺伝子組換えは目に見えないから不安を感じる。
・難しくて理解できない。

なぜ遺伝子組換え食品を選択しないのでしょうか

・農林水産省、厚生労働省の安全性審査を知らない人が多い。
・飽食の時代だから他の食べ物があるので組換えを食べずにすむので、困らない。
・医療なら切断する腕が助かるなら遺伝子治療に行く。医療だと受け入れるのは他に助かる道がないから。
・いいところも悪いところも両方の情報を発信していないので、消費者が納得して選べない。


表示が義務化されているものについてはほとんどすべてに「遺伝子組換え原料は使用していません」と表示されていますが、スーパーで組換えの表示を見たことがありますか

・コープこうべでは不分別と表示した油(表示対象になっていない)など2品目があり特別に意識されずに売れているようだ。
・未承認の原料が混入していたときには、実際に入っていたが、表示がなかった事例がある。

遺伝子組換え食品の表示についてどう思いますか

・「遺伝子組換えでない」ことが消費者への安全マークになっている。
・栄養的に機能がある食品が出ると多少抵抗感があっても、それを広告したら売れるのではないか。

口コミの力やテレビの影響についてどう思いますか

・アンケートの結果から情報提供には人気番組や人気司会者の口コミが情報源になっていることがわかった。難しい原理は伝わらなくても「虫を殺す」ということばだけが伝わる。
・情報は口コミに頼らないでほしいと思う。今日は勉強して帰ってくれたら嬉しいし、私も自分の勉強にしたいです。
・テレビの影響が強い。たとえば「あるある大辞典」。口コミのものになっている情報ももとはテレビや新聞だから、メディアがきちんと情報を流せばいいと思う。
・ときにはテレビに疑いの目を持ってみることが大事ではないか。
・「あるある大辞典」はよく見て信じてしまう。クイズから聴衆を引き込むなど上手な構成になっている。みんなで話し合う機会を増やし専門家の意見を聞けるのがいい。


ごく一般の方にどうしたら受け入れてもらえるか。誰がいえばいいと思いますか。

・いい面を含めて情報を出し、安全性の基準を知らせる。
・どういう試験をしていて安全だと判断しているのかを示してもらうのがいい。
・このフォーラムのような機会を増やしていくのがいい。遺伝子組換え食品そのものを知ってもらうといいと思う。
・親子体験学習などを通じてDNAを学ぶ企画もよいと思う。
・見たりさわったりできる体験教室を開くといいと思う。
・主催者側、マスコミも一方的な情報のみの発信はやめたほうがいい。
・専門家の情報もいろいろなのでまとめてほしい。

伊藤さんと瀧井先生のまとめ

・広報技術が大きな要素を占めることを行政にお伝えしないといけないし、人気司会者の発言に対して、専門家には批判的な人もいるが、影響力が大きいことを行政は知るべき。
・いろいろな方の意見を聞くことが大事だという意見があったが、これに賛成。
・今日の質問事項については瀧井先生や会場の専門家の回答を得ることができ、今日のところは理解できたことになった。こういう機会を重ねたい。
・情報整理はかかせないのでこれはマスコミと専門家にお願いしたい。
・DNAについて学んだことは自分の中で情報を消化して家族にお伝えください。

アンケート集計結果

 アンケートに対して52名(男性11名、女性41名)の方が回答してくださいました。

このフォーラムに参加してどんなことがわかりましたか
このフォーラムに参加してどんなことがわかりましたか

遺伝子組換え食品は必要だと思いますか
遺伝子組換え食品は必要だと思いますか

 条件付き賛成と回答された方があげた具体的な条件は大きく分類して、21名が安全性審査に関すること、9名が情報提供や表示に関すること、4名が世界の食糧事情に関すること、残り10名は環境への影響、価格の問題などでした。







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