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千葉県立現代産業科学館バイオカフェ「くすりの飲み方・付き合い方」

 2013年11月2日、千葉県立現代産業科学館でバイオカフェを開きました。お話はくすりの適正使用協議会元事務局長松田偉太朗さんによる「くすりの飲み方・付き合い方」でした。はじめに松本宗雄ファミリーによるバイオリンと電子ピアノの演奏がありました。ことに最後のビオラでの白鳥(サンサーンス)の演奏には、参加者一同、うっとりと聞き入りました。

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松本宗雄ファミリーによる演奏 松田偉太朗さんのお話

主なお話の内容

くすりの専門家は薬剤師だが、製薬企業に関わった方々はくすりの伝道師だと思っている。伝道師の仕事は①正しく使わないとくすりの効果が発揮されないことと②くすりの副作用も含めて人がくすりを考えるときの価値観を伝えることである。
 
くすりを飲むときの約束
就学前のこどもに説明するときの約束を使って、その意味を説明する。
・毎日決まった時間に
・くすりの飲む量を守る
・決められた日までくすりを飲み続ける(これが重要)
・くすりをもらったりしてはいけない
・他の人にあげたりしてはいけない
・前の病気のときにもらったくすりは使わない(余ったくすりは処分する)
・くすりの整理をする
 
どうして7つの約束を守るのか
頭痛薬が飲んで30分ぐらいで効いてくるのは、それまでに体中をくすりが駆け巡って、痛みの原因箇所に働くことで痛みが和らぐ。くすりは胃で溶けて腸で吸収される。腸管から吸収され血液にのって、肝臓に行く。心臓から血液にのって全身に廻る。これは食べ物も飲み物も同じ。口から入ったものは同じプロセスを進み、全身をめぐり細胞に届いて効果が出る。
血液の薬剤の濃度を血中濃度といい、適切な範囲の濃度のくすりが血液中にないと効果がでない。
肝腎臓で代謝されたり、腎臓で排泄されて濃度は落ちる。
ポイントは、一定の血中濃度に達し細胞にまでくすりが届くこと。
 
実験1 カプセルと水分
空のカプセルは手に水をつけて触ると、手にはりつくが、シャーレの中の水にカプセルを浸すと今度はつるつるしてつかむことができない。
だから、少ない水で飲むと、くすりは喉や食道にはりついて胃にまで届かない。少しずつ溶けて適切な血中濃度にならない可能性がある。
 
実験2 グレープフルーツジュースと重曹
試験管のグレープフルーツジュースに重曹を振りいれると、泡がでて、吹き出す。
胃薬の主成分は重曹。胃酸が多いと胸やけがするので、重曹で中和し、胸やけを静める。グレープフルーツジュースで胃薬を飲むと、胃に届く前に中和してしまい、胃の中で胃酸と中和できない。
飲み物と薬のあらゆる組み合わせはすべて調べられていないので、くすりは水で飲むのが安全である。


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会場風景 試験管から噴き出したグレープフルーツジュース

実験3 くすりを楽に飲むためのくすり 
ゼリーといっしょに粒状の小さいお菓子をのむ体験をした。錠剤にしにくい薬をカプセルにするのも製薬会社の工夫である(製薬企業は新薬開発だけでなく飲みやすくする工夫もしている)。自宅で、粉末を空のカプセルに入れ飲みやすくすることもできる。
1日3回飲むのは大変なので、水がなくても体にはいっていくようにくすりをカバーしている賦形材剤(有効成分でなくても錠剤などを形作るために加えられている材料)を工夫したりしている。
 
治ったと思っても決められた日までくすりを飲み続ける
ある調査結果では最後まで飲み終える人は3割強ぐらいである。自分で治ったと判断して飲まなくなるが、症状はよくなっても治ったことにはならないことに注意が必要である。
事例として、喘息の患者さんは年間1000人亡くなっているという報告がある。発作を起こしたときは吸入などで炎症を抑える。これだけでは気管支の炎症は治っていない。炎症はひどくなり、気道は狭くなっていく。発作が治まってもくすりは飲んで気管支の炎症の治療をしないといけない。ステロイド剤服用を続けて炎症を最後まで治してほしい。
ステロイド剤の用い方は医師の指示に従って量を減らしていくことである。若い人の喘息死は社会の損失!ちゃんと治しましょう。
 
くすりをもらったりあげたりしてはいけない
くすりは細胞の中まで入って働く。細胞への入り方は人それぞれ異なる。常にくすりの有効率は100%ではない。また、くすりによる副作用はすべての人におこるわけでもはない。
医療用医薬品は18、000種ほどあり、その人にあったくすりが選ばれて処方されている。効果も副作用も他の人にとって同じかどうかはわからない。
 
くすりの管理
前の病気のくすりは使わず、くすりは整理して保管するの中には、毎日決まった時間にくすりの飲む量を守り、決められた日までくすりを飲み続けることも含まれる。
くすりの価値観を共有しよう!
医薬品は薬事法で定められている。薬物と医薬品は異なる。医薬品、医薬部外品(歯磨きなど)、化粧品は厚生労働省が監督している。
くすり(医薬品)には、医療用医薬品(処方箋薬)と一般用医薬品(薬局で販売)がある。
 
医薬品の目的
検査診断
原因療法のためのくすり 例)感染症のための抗生物質(長く飲んでいると耐性菌がでてくる)
対症療法のためのくすり 例).頭痛薬 症状を取り除く
補充療法 例).糖尿病のインスリンのように足りないから補充する
予防療法 例).ワクチン
 
まとめ
ヒポクラテスは、病は医師が治すのでなく、体が治すのだといっている。日頃から自然治癒力を高めておく必要があり、栄養のある食事、十分な睡眠、適度の運動が大切である。すべてのくすりには主作用と副作用がある。副作用が起こる原因は、くすりのもっている性質、くすりの使い方,くすりを使う人の体質、くすりを使った人のその時の体の状態によるものが考えられる。
 
学校での医薬品教育
「医薬品の教育」は、平成24年からは中学校で、25年からは高等学校に導入された。
平成17年の中央教育審議会では、「次世代につながる教育:子どもが親になった時、「医薬品を適正に使用すること」が身についていなければならないと結論された。国際的には医療費抑制の方向で、WHO(世界保健機構)ではセルフメディケーション(健康の自己管理)を勧めている。
厚生労働省は一般用医薬品の安全性を考慮して取扱い方によって、第1類、第2類、第3類に分類した。文部科学省では、中学での学習に医薬品教育を加え、高校ではレベルアップした。このような勉強を行うと、医薬品のかなりの知識がある社会人になると期待している。
保健体育の先生の中には医薬品の恩恵を理解し、正しい利用は認めつつも、くすりにはリスクもあるのでくすりに頼りたくないと考えておられ、医薬品の正しい使い方を教えることに抵抗を感じておられる教員が2割ほどいるとの調査がある。
くすりの効果は統計手法でデータをとっている。従って、母数がどれぐらいあるのかでの減少化など、統計的な見方で事柄を理解する必要がある。きちんと数字でみていただきたい。
医薬品は必要な人が必要なときに使うことが肝要。病気を治すのは自然治癒力であり、くすりはこれを助けることも知っていてほしい。


話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • お酒との関係。 →晩酌したい人は処方した医師に相談してください。アルコールはくすりがよくとけてしまうので、吸収される。
    • 食間とは。 →食事と食事の間 食事のあと2時間
    • 鎮痛剤はがまんして飲まないほうがいいのか。 →痛みをがまんするとストレスになって次に病気の原因になったりすることがある。
    • 複数の医師にかかるときのくすりは。 →薬剤師や医師と相談すること。おくすり手帳では過去に使ったくすりがわかる。複数個所に通院していたときに特に役立つ。
    • 実際に処方されたくすりの3割程度が無駄になっていると推定される。これは1〜2兆円の薬剤費が無駄になっていることになる。少ない薬を飲み切るのが大事。自分の体と家族は自分で守る。
    • くすりの有効期限は患者に知らされているか。 →使わなかったくすりは薬局に返してください。余ったくすりは薬局に持っていく。
    • 調剤部の薬剤師の役割は。 →薬剤師は調剤と医師に疑義照会といって、処方の確認を行う。
    • くすりとして認可するときは何%の副作用のときに認められるのか。 →くすりはリスク・べネフィットでみるので、副作用の%でなく、ベネフィットがリスクを上回ればくすりとして認可されることがある。
    • 副作用の説明を受けて、説明のとおり手が震えた。くすりは効いたので、飲み続けていたが、ふるえも続いていた →医師に相談して代わりの薬をつかう選択肢もあるので、ぜひ、相談してください。それが副作用か別の症状かを見極める必要があるので、医師に相談してください。くすりは飲むと30分ぐらいから体の変化を観察してほしい。いつもと違う時にはお医者さんと薬剤師に相談してください。
    • 新薬承認までに動物実験の後に人に試すのは。 →臨床試験には健常人を募集する(第1相)、比較的軽く病気のある患者さんで高齢者やこども以外(第2相)、第3相はより多くの患者さんを対象に臨床試験が行われる。