10月4日(土)、5日(日)の2日にわたり、茨城大学遺伝子実験施設において「一般向けバイオテクノロジー実験講座」を行いました。今回の参加者は24歳から71歳までの幅広い老若男女。家庭の奥様や現役を退かれた方から、学校の先生や会社員、お医者さんに至るまで、多種多様の19名の方々と共に、澄み渡る秋空の下で"勉学の秋"を満喫いたしました。
最初に、白井誠教授から、丁寧で分かりやすい「バイオテクノロジーの基礎」についての講義を受けました。多少の難しい言葉もなんのその、皆さん熱心に聴き入り、質問も活発に飛び交いました。
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朝一番は講義から。 皆さん、熱心に聴き入ります。 |
続いて、お待ちかねの実験です。白衣をはおり、実験器具の整然と並んだ実験台につくと気持ちも引き締まります。安西弘行助教授に説明をいただいた後、井上先生とお二人の大学院生にサポートしていただきながら実験が始まりました。わたし達「くらしとバイオ」のスタッフも及ばずながらお手伝いです。まずは、オワンクラゲの緑色に光るタンパク質(緑色蛍光タンパク質:GFP)遺伝子を大腸菌の中に入れます。分刻みの細かい作業が続きますが、ひとつひとつの操作の意味を考えながら、慎重に進めます。一通り終わったときは、ホッと一息。結果は翌日までお預けです。
午後からは、制限酵素というDNAの決まったところをちょん切るハサミの役目を持つ酵素を用いた実験です。DNAは肉眼では見ることが出来ないので、電気泳動で分析して、確認しました。
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いよいよ実験開始。 先生の説明は聞きもらさないで。 |
大腸菌をかき取って、緩衝液に溶かします。これ、どうやって使うの? |
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細かい作業だな〜。 |
これから電気泳動でDNAを分析します。 |
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電気泳動の結果… う〜ん、うまくいっているかな? |
実験の合間に、遺伝子実験施設の中の見学もさせていただきました。平成13年に出来たばかりの真新しい建物の中には、最新鋭の実験機器や分析機器がところ狭しと並んでいます。一台で家が一見建つほどの値段の機器もあると聞き、驚きが隠せません。また、遺伝子組換え体を物理的に封じ込めるためのP1, P2, P3実験室も見せていただき、実験の管理がきちんと行き届いていることに胸をなでおろしました。(参考:「組換えDNA実験指針」)
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クリーンベンチと安全キャビネット |
ここでは、植物は試験管の中で育ちます。 |
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遺伝子の塩基配列を調べる機械です。有能な機械ですが、値段も高い。 |
翌日の実験のために大腸菌を試験管培地に植えて、初日は終了。アフターファイブは懇親会です。お酒も入って、皆さん実験室とは違う顔。色々な方がご参加下さったので、話題も豊富です。時間を忘れて、語り明かしました。
2日目は、大腸菌からDNAを取り出します。昨日ちょっぴり植えた大腸菌が一晩で何十億にも増えて、透明だった培地がまっ白です。界面活性剤で大腸菌の細胞を壊し、フェノールという試薬でタンパク質を変性して取り除き、エタノールでDNAを析出させます。半日がかりの大仕事。この実験が上手に出来ないと次の実験がうまくいかないと聞き、ドキドキです。でも、皆さん2日目なので手際も随分良くなりました。白衣姿も堂に入ったものです。こうして取り出したDNAを鋳型にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で特定の遺伝子部分を増幅させます。親子鑑定や犯罪捜査のDNA鑑定の基本となる実験と聞き、興味津々。増幅装置にセットしたら、後は神様に祈るだけです。
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DNAの抽出。タンパク質が混ざる〜。 |
DNAは取れてるのかなあ。 |
午後は、安西先生の講義「組換え植物の未来」。最先端の遺伝子組換え野菜や果物、花についてのお話で、先生の研究に対する情熱も伺えました。
いよいよ、DNA増幅実験の結果です。昨日と同様に電気泳動で確認します。出てきた結果はひとそれぞれ。「失敗は成功の神様」だから、うまくいかなかった方もそんなにがっかりしないで下さいね。
そしてクライマックスは、遺伝子組換え大腸菌の観察です。オワンクラゲの遺伝子がうまく入っていれば、大腸菌は光るはず。班ごとに暗室に行って、紫外線ランプで大腸菌を照らしてもらいます。大腸菌が鮮やかな緑色の光を発したときは、各班とも歓声があがりました。遺伝子組換え実験は全員大成功!
最後に、白井先生から一人ずつ修了証書を手渡していただき、丸2日間の実験講座を終了しました。
なお、この実験講座は科学技術振興機構のご支援をいただいて実施いたしました。
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緑色に光る遺伝子組換え大腸菌。 大成功! |
修了証書授与。お疲れ様でした。 |
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みんなで記念撮影 |