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筑波大学・農林団地バス見学会開かれる

 2013年8月2日、筑波大学形質転換植物デザイン研究拠点との共同研究の一環として、バス見学会を開きました。ほ場や遺伝子組換え作物の実物を見たいといわれる方、ジャーナリスト、教員、高校生から最高齢は84歳まで、31名、元気にバスの旅を楽しみました。

筑波大学遺伝子実験センター

 鎌田博センター長の案内で、特定網室や野外の遺伝子組換え植物の試験栽培ほ場を見学しました。研究されている遺伝子組換え植物は、実験室のような閉鎖系、空気だけ出入りする特定網室といわれる温室、物や人の出入りが制限されている隔離圃場とだんだんに外の環境に移しながら試験栽培を行います。筑波大学では、「隔離」というと危険なものを封じ込めているイメージがあり誤解されやすいということから、「模擬的環境」という看板を用いています。


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筑波大学遺伝子実験センターに到着! 遺伝子組換え植物が栽培されている温室には
看板をかけなくてはなりません
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温室の前で説明される鎌田博教授 遺伝子組換えユーカリの試験栽培をしている背の高い温室
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野外のほ場で試験栽培される遺伝子組換え
ユーカリ
遺伝子組換えシクラメンの温室
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夏場は休眠してしまう遺伝子組換え八重咲き
シクラメン。商品化されるのが楽しみ
「模擬的環境試験圃場」という看板がかけられていました
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すっぱいものを甘く感じるようにするタンパク質
「ミラクリン」を作っている遺伝子組換えトマト
  温室で栽培されている遺伝子組換えイネ

農研機構 資源作物見本園

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 61種類の穀物や工芸作物が一目で見られるように栽培されており、農研機構中央農業総合研究センター寺内方克業務第1科長にご案内いただきました。40種類のイネの中にはコシヒカリの両親、祖父母、會祖父母にあたるイネも栽培されています。マメ科の植物が美しい花を咲かせていたり、香草やハーブ、イモ類、アワやヒエの類、甘草やステビアのような甘味料の原料になる作物など、名前は知っていても姿形を知らない作物と対面することができました。


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筑波大学からバスで30分。筑波事務所に到着 緑がいっぱい。暑くても木陰は涼しい風が通ります
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寺内方克科長、鈴木功士広報専門官にご案内いただく
(於 食と農の科学館)
  作物見本園で寺内科長の説明をうかがう
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  アラマンサスの花(於 見本園) インゲンの花(於 見本園)
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  ゴマの花(於 見本園) イネの栽培人気ランキング(於 食と農の科学館)


農研機構 雑草園

 作物づくりにおける三大苦は病気、害虫、雑草だといいます。雑草防除には「まず、敵を知るため」に雑草の研究が欠かせません。しかし、実や種子を収穫しやすいように品種改良された作物と異なり、雑草は種子を遠くに飛ばす性質(脱粒性)があります。そこで雑草を決まった区域内で栽培し、種子を集めるのは、普通の作物よりずっと骨が折れるそうです。

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雑草園 ひとつの試験圃場から次の試験圃場に移動する
にも汗が噴き出します
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すきこんで緑肥にする飼料用トウモロコシを
トラクターで破砕します
広い圃場の区画ひとつひとつに、計画的に作物
が栽培されたり、収穫されたりしています


遺伝子組換え作物展示ほ場

 除草剤に耐性を持つダイズと従来のダイズが、慣行除草、何もしないなどの条件をかえて栽培されていました。無除草区ではダイズが見えなくなるくらい雑草が生えていました。遺伝子組換えダイズは、別な種類の農薬をまいた部分には枯れてしまっていました。
 害虫抵抗性のトウモロコシと従来のトウモロコシが栽培されていました。従来のトウモロコシは害虫被害を受けており、幼虫が植物(茎)の中に入ってしまうと、外からの殺虫剤噴霧は効かないということでした。


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展示ほ場の配置図 農業生物資源研究所広報室 笹川由紀氏の説明
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  トウモロコシの雌花 卵からかえった害虫の幼虫は茎の中に入りこみ、
茎には顆粒のような糞が残ります
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除草剤耐性遺伝子組換えダイズ。手前は耐性の
ない別な種類の除草剤によって枯れた遺伝子組換えダイズ
  花粉症治療米の試験栽培ほ場


遺伝子組換え花粉症治療イネ隔離圃場

 花粉症治療イネが隔離圃場で栽培されていました。鳥についばまれないように、防鳥ネットがかけられ、監視カメラが備え付けられて、関係者以外が立ち入れないようになっていました。


遺伝子組換え繭

 蚕の卵に遺伝子を注入して生まれる蚕の次世代から、遺伝子組換え蚕がつくられます。生物資源研究所広報室 笹川由紀氏より、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んでつくられた光る繭や、その糸で織られたジャケットなどが紹介されました。


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鎌田教授のお話 田部井室長のお話
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会場風景 遺伝子組換えカイコの繭とその糸で織られた
ジャケット



話題提供

見学の終わりに鎌田博教授、農業生物資源研究所遺伝子組換え研究推進室長 田部井豊氏より話題提供をいただきました。


「植物の生存戦略から見た食品の安全性と遺伝子組換え食品」 鎌田博教授

 いろいろなリスクの事例を紹介するので、みなさんに「食の安全性」について考えてもらいたい。
・無農薬の野菜は虫が食べるくらい安全だというが、エイムス博士の実験によると、普通のキャベツには49種類の天然農薬が植物体に含まれており、それらの発ガン性は残留農薬基準値を守って使われる農薬の発ガン性よりもずっと高い。普通の植物には毒素を持つものが多い。
・有機栽培だからよいという証拠はない。虫も食べないものを人が食べていいのかという情報が出回ったが、植物はいつも毒素を持っているのではなく(いつも毒素をつくっているとエネルギーを使う)、虫がかじったときに毒物を植物体内で合成する。虫食い野菜は、植物体が作った天然農薬を持っていることになる。
・豆は生で食べてはいけない。タンパク分解酵素が含まれているので、生で食べるとおなかをこわす。
・ナタネ油にはエルシン酸というバセドー病の原因になるような毒素が含まれていた。カノーラはエルシン酸ができないように品種改良されたナタネ。昔にもどって、従来の品種のナタネを栽培するとバセドー病が増えるかもしれない。
・食品に関連する最も怖い毒素のひとつはカビ毒。天然物の中で最も発ガン性が強く、加熱処理しても毒性が消えない(分解されない)。カビがつくとカビ毒によって作物の4分の1くらいが廃棄されることもある。
・大豆の中のイソフラボンは女性ホルモンの前駆体。環境ホルモンと呼ぶこともできる。大豆は植物性タンパク質で体によいことになっているが、嫌われている環境ホルモンをもっているなら矛盾ではないか。環境ホルモンだから悪者と決めつける考え方がおかしいので、こういう矛盾が生じる。
・天然は安全と思う人が多いが、天然の中には危険なものがいろいろある。アカネ色素は発ガン性があり、使用禁止になった。
・モロヘイヤは花芽をつけた後、植物体内で毒物をつくる。牛に花のついたモロヘイヤを食べさせて死んだことから、毒物が含まれていることがわかった。花芽をつけた後は販売禁止と法律をつくってほしいところ。こういうことが知られていない。
・アレルギーの原因で最も怖いのは、乳、大豆、小麦などの身近な食材であり、食に絶対安全はないことがよくわかる。
まとめ
 天然だから安全などと考えないでほしい。例えば、里山は自然が残っていていいというひとがいるが、実は里山は人の手で守られている。何も手をかけなければ、山は里山のようにならならない。
 環境破壊の最たるものは農業だともいえる。しかし、人の食糧は確保しなくはならないから、全く環境破壊をしないというわけにはいかない。
 最後に、食品の表示は商品選択のための情報提供であるのに、安全性を確保するためと誤解している人が多い。「○○を使っていません」表示の○○が危険だという意味ではない。
ベビーフードに見える黒い小さい粒は白魚の目玉だが、これをゴミだというクレームがあるそうだ。安全を取り違えて、白魚の目玉を取り除く作業を強いている消費者はいかがなものか。賢い消費者とはどういうものか、よく考えていただきたいと思う。



「遺伝子組換え農作物の生物多様性影響評価とコミュニケーション」田部井豊室長

 品種改良は耐病性などの目的を持って行われる。遺伝子組換え技術を用いて品種改良したものでは、日もちをよくしたトマト、除草剤耐性ダイズ、害虫抵抗性トウモロコシ、除草剤耐性ナタネ、害虫抵抗性ワタ、ウイルス抵抗性パパイヤ、除草剤耐性テンサイが実用化されている。
 環境への影響に関しては、生物多様性条約バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を担保する国内法である「カルタヘナ法」に従って審査する。具体的には、影響を受ける可能性のある野生動植物があったときに、影響の内容、影響の生じやすさを評価し、生物多様性影響が生じる恐れがあるかどうかを判断している。
判断するときに植物における評価は以下の3つの観点から行う。
・競合における優位性
・有害物質産生性
・交雑による置き換わり(交雑してもいいが、置き換わってしまうことが問題)
 世界の食糧問題という視点でみてみると、米国のトウモロコシの総生産量は1997年から病虫害などによる増減の幅が小さくなり、全体として増加している。これは遺伝子組換え技術の誕生に負うところが大きいと考えられる。
 そして、私たちは展示栽培の見学を通じて、市民の方たちと除草をしたり、簡単な実験をしたり、コミュニケーション活動も行い、コミュニケーションの改善を図っている。
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遺伝子組換え害虫抵抗性スイートコーンの試食   暑い一日、頑張りました!

本見学会の企画・実施にあたり、鈴木功士広報専門官、農業生物資源研究所 石川達夫氏、田口和代氏はじめ、多くの方にご尽力いただきました。感謝申し上げます。

ことにバス見学会における誘導、点呼、写真撮影などを、佐藤裕之氏、鈴木千廣氏、中村寛氏、並河正人氏の4名の参加者の方にサポーターとしてお願いし、お力添えいただきました。心から御礼申し上げます(ここに掲載した写真は並河・中村両氏と事務局で撮影したものです)。


 本見学会は、黒ラブ教授のプチサイエンスカフェで紹介されています。