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第6回コンシューマーズカフェレポート「食品表示から考える」

 2012年6月20日、第6回コンシューマーズカフェ「食品表示から考える」というテーマで、くすりの適正使用協議会会議室で開きました。お話はNPO法人くらしとバイオプラザ21理事でもある鬼武一夫さん(日本生活協同組合連合会/品質保証本部/安全政策推進室長)でした。お話の後、出席者は3つのグループに分かれてディスカッションをするなど、充実した3時間でした。

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鬼武さんのお話 会場風景1

お話の主な内容

食品表示とは
表示の目的はいろいろである。日本の行政機関でわかりやすく説明したものはないが、英国/環境食糧地域省(UK DEFRA)が現状および背景として、食品表示の意味するところは、①消費者が食品に関する情報を得る手段であること、②消費者が買う商品に関するインフォームド・チョイス(正しい情報を得た上での合意)を行うことができるように、この情報は正確で混乱させないこと、という説明がわかりやすい。

消費者庁と消費者委員会
2003年、国内牛でBSE発生したこと等の問題から、内閣府に食品安全委員会が創設され、リスクアナリシスの枠組みに沿って食品安全行政は大きな一歩(当時は食品安全委員会の設置に向けて委員会準備室ができ、その準備室事務局は全国行脚して、食品安全基本法の目的、リスクアナリシスの枠組みなど等丁寧な説明がなされた)を踏み出した。特にリスク評価機関とリスク管理機関を機能的に分離する、リスク評価機関は中立かつ科学にもとづく健康影響評価を行なう、リスク管理機関である厚生労働省は食品安全部という組織名に改変し、より食品の安全をマネジメントする、農林水産省も消費者に軸足を向けて消費安全局を設置する等など、リスクマネジメント機関も強化された。しかし、その後も、瞬間湯沸かし器による二酸化炭素中毒、こんにゃくゼリーによる窒息事故、エレベーター事故、冷凍餃子などの消費者への健康・危害などを含め権利を脅かすような事件が発生し、行政機関のすき間事案となるような事件・事故へ政府の対応が求められた。2009年には政権交代の最中に消費者庁および消費者委員会が設置された。これまで厚生労働者や農林水産省で担っていた食品表示に関する業務は消費者庁食品表示課に移管された。
消費者庁は、消費者行政に関わる企画立案・推進を行なう機関である。2009年7月、特定保健用食品の表示許可を受けていたクッキング・オイル製品への、不純物(ヨーロッパにおいて食用植物油中で検出されたグリシドール脂肪酸エステル)が高濃度に存在することが判明したことから、発足当初に消費者庁はトクホの認可制度を含む「健康食品の表示に関する検討会」を開催した。その後は当時、消費者庁の福島大臣が関心の高いテーマとしていた食品中のトランス脂肪酸に対する案件から日本における栄養表示制度全般を議論する「栄養成分表示検討」を設置した。そして、最終的にはこれまでの食品表示制度全般を見直す目的から、現在実施されている「食品表示一元化検討会」が設置されたのである。
一方、消費者委員会は、諮問答申・監視業務を行う機関であるが、政権交代時期に設置されたこともあり、新政権の下では消費者庁の外に位置づけられ、当初想定されていた消費者委員会よりも権限は増大した。消費者委員会事務局は人員体制の割に業務内容が多岐にわたり、例えば、消費者委員会食品表示部会の具体的提案は消費者庁食品表示課から諮問されるといった役割分担から消費者委員会は他省庁との連携が難しいように感じている。さらに消費者庁と消費者委員会は消費者利益擁護の企画立案、建議では重複しているところも多い。消費者庁は取り扱う業務が多様で、自動車リコール、老人ホームの契約問題から食品表示までと非常に範囲が広いと考えられる。その結果として建議、提言、意見書、調査報告書など数多くの有益なアウトプットをしているが、その活動が一般には中々知られていないのが現状である。
食品については、健康被害の可能性のある食品と軽微な食品表示のミスまでがすべて同じように取り扱われことが問題であり、個別の案件毎の重大さや重み付けが今後の検討課題であると考える。その中で今回のようなコチニール色素によるアレルギー注意喚起は、消費者や事業者など等の関係者へもっと丁寧な情報提供が必要だったのではないかと思う。通知そのものを読んでも、食品もしくは化粧品成分としての問題なのか明確ではなく、今回初めてアナフィラキシーを含む案件が発生したかのようにも理解できる(問題点が明確でない)。
消費者委員会事務局には行政機関や企業からの出向者はいるが、消費者庁に比べても圧倒的に人数は少なく、食品分野の専門家があまりいないことなどの理由から人的リソースの充実が課題と思われる。更に消費者委員会、特に親委員会の力量が問われており、食品安全行政の中で消費者の視点から全体を俯瞰した意見・政策を検討することや各省庁への勧告などを行なってほしいものである。これらの点は定期的に開催される消費者委員会の動画配信や議事録を見て頂くと、各種案件毎の消費者委員会委員の考え方などが少し理解できると思う。

消費者委員会の審議事項
(1)食品表示部会 
・個別食品の表示基準改正(チルドハンバーグ、チルドミートボールなど)について
・組換え体技術を応用したパパイヤの認可(消費者庁食品表示部会は食品表示の範囲に限って審議するはずであったが、食品表示部会委員から消費者委員会は表示に限らず遺伝子組換え応用技術の安全性の議論もすべきといった意見がだされ、ラベル表示に行き着くまでに部会ではかなりの時間がかかった)。
・加工食品の原料原産地表示の拡大は黒糖及び昆布巻き食品の2品目は消費者委員会食品表示部会で審議され、さらに食品表示部会の下に原料原産地表示の拡大専門家調査会を設置して同案件について審議されたが結論はでなかったため、消費者庁食品表示一元化検討会で審議中となっている。
・ロングライフ(LL)牛乳は厚生労働省の管轄時には許認可制の法律がカバーしていた。しかし、LL牛乳の表示を含む業務への対応が消費者庁に移管され、消費者庁食品表示課ではLL牛乳に関する食品表示に限って監視することとなり、安全性の問題はLL牛乳の製造者の自主管理となった。

(2)新開発食品調査部会 
・消費者庁は特定保健用食品の個別認可をおこなっている。一方、消費者委員会新開発食品調査部会、新開発食品評価第一・第二調査会ではトクホ成分の有効性にかかわる調査審議を非公開で行なっている。消費者庁が設置される以前は厚生労働省の管轄であったが、消費者庁および消費者委員会が創設されてから、上述した消費者委員会の部会等で有効性の審議をしている。個人的にはトクホ成分の安全性及び有効性は表裏一体の部分も多くあり、同じ専門調査会で審議することが重複作業を除く点や調査審議の迅速性・効率性等の理由からも検討する必要はあると考える(ただし、法律の改正が必要)。例えば、EUではEFSA(欧州食品安全機関)が食品成分毎のヘルスクレームの調査審議をしており、そこでは安全性と有効性は一つの専門家委員会で審議し、レポートとして公表している。

消費者委員会食品表示部会で注目される議案
○乳児用規格適用食品の表示
2012年4月から厚生労働省が食品中の放射性物質にかかわる新基準値を設定したことに連動して、消費者庁では乳児用食品(1歳未満)に厳しい基準を設定することの理由から、消費者委員会食品表示部会では乳児用向けの食品表示が審議され、その結果として乳児用規格適用食品の表示が義務化された。当初消費者庁がパブリックコメントを求めた時期は、厚生労働省で新基準値の審議を行なっている最中でもあり、消費者庁が国民に対して乳児用規格適用食品の必要性に関する意見を求めた際には、まだ具体的内容(例えば、乳児の定義など)が精査されたものではなかった。更に消費者庁は諸外国に対して本件にかかわるWTO通報をしたが、その内容も具体的ではなく、その結果として海外からの意見・コメントはなかった。
本来乳児用規格適用食品とは、栄養価・栄養バランス、物理的リスク、食品添加物の使用、食品原材料の残留農薬基準等、総合的に考察されて出来上がった食品が乳児用食品として流通・販売などされるべきものであるべきだと認識しており、食品中の放射性物質基準にだけに特化した規格の意味合いには疑問を感じる。したがって、乳児用規格適用食品はこれらを総合的に考察したものが規格としてはあるべき姿ではないか。再度、慎重に検討してほしい旨の発言を繰り返しおこなってきた。パブリックコメントを受けての食品表示部会では、ベビーフードや年齢をラベル表示している商品(消費者が食品を購入するうえで既に乳児用食品と認知しているもの)への省略規定も審議され、委員の一声で省略規定は好ましくない旨が結論となり、省略規定は外された。本件についてはパブコメや食品業界へのヒアリングなどをおこない、消費者庁事務局は食品企業と既に調整していただけに、土壇場での大逆転に食品企業は困惑したものと推測される。さらに1年半の余裕期間は設定されているが、消費者庁の通達では努力義務で急いで表示を実施するように勧告している。部会で私は急ぐ必要はないと言い続けている。その理由は厚生労働者が設定した食品中の放射性物質の新基準値のなかで、一般食品で設定されている100Bg/kgでさえ、子どもの安全性を充分に勘案した基準値であるため、仮に一般食品のカボチャを裏ごしにしたり、おかゆを離乳食に与えても充分に安全性は担保されており、乳児用規格適用食品の表示をラベル表示することや食品売り場での乳児用食品と乳児用食品と紛らわしい食品群を区分して販売することは、消費者の食品選択を狭めているとも言える。また、現時点では食品中の放射性物質のレベルについて関心は高いが、毎年食品原材料中の放射性物質のレベルは減少し、食品の安全性確保の点からも問題はないと推測され、消費者の関心も低くなっていくなかで、義務表示30-40年も継続して意味合いがあるのか。定期的に本議案である乳児用規格適用食品の表示レビューの必要性に言及した。

○生食用食肉のリスク表示
2011年4月に発生した腸管出血性大腸菌による集団食中毒の発生から、10月1日から施行される生食用牛肉の規格基準が設定された。一方、消費者庁は食肉の表示を管轄しており、今回日本で始めて食品表示にリスクという表示がされるようになった。まず食品表示部会では、リスクを定義すべきであり、仮に生食にリスクがあると表示するより、米国FDA(食品医薬品局)の無殺菌ジュースの表示例に倣い、病原菌による食中毒の被害が起こるかもしれないとはっきり書くべきだと思うと発言した。一般に消費者に「リスクがある」という表現で本当に一般消費者に伝わるだろうか、この点が表示するうえで重要な論点である。拙速にリスク表示することより、表示以外に消費者への注意喚起が必要であり、また今回の食肉のリスク表示が前例となることへの懸念は拭い去れない。

○味噌の定義にだし入り味噌を加えた
味噌は本来大豆など穀物を発酵させて作られた日本の伝統食品である。昨今は、調理の簡便さなどの理由から“だし入り味噌”がポピュラ-となり、流通・販売量も発酵味噌を上回る勢いとなってきており、食品表示部会で本議案について審議した。消費者の代表とされる部会委員をはじめ、本件について大きな疑問やコメントは出されなかった。しかし、私はこれまでの国際規格における日本政府の対応から大きな疑問を持ったのである。つまり、味噌の定義のなかに調味料などを添加したものをだし入り味噌として含めたことである。味噌は伝統的には発酵した食品であると上位概念で定義し、その下位概念として加工味噌を定義することは、伝統的発酵味噌を守ることになる。しかし、今回の上位概念の味噌の定義にだし入りを含めることで、大豆発酵していない速醸式味噌を認可することになる。コーデックス食品規格部会で、日本政府は当初しょうゆの規格設定に意欲があったが、本来の生酛式しょうゆに、速醸式のしょうゆが加えられ、しょうゆが2つに分類・定義された。この国際規格の設定により、伝統的発酵食品であるしょうゆに比較的安価で品質の異なるしょうゆが流通・販売されることとなり、日本へ海外から価格の安いしょうゆが輸入されたり、海外では速醸式しょうゆがポピュラーになった。このことは日本政府やしょうゆを製造する食品企業の当初の思惑(国際規格設定によって当該商品のステータス・価値を高める)とは異なる結果となった。今回の措置もしょうゆ同様に、アジア諸国から品質の異なる安価な味噌が輸入される可能性も否定できず、本来の伝統的製法の味噌を脅かす存在となることが懸念される。このことを部会でコメントしたが、取り入られなかった。

○黒糖および昆布巻きの原料原産地表示
 当初食品表示部会では当該案件については、慎重なる議論がなされており、義務表示の可能性も、当初の表示目的からして優先順位も高くない等、比較的冷静な議論がなされていた。しかし、農水省副大臣が沖縄を視察した後、急転直下、黒糖および昆布巻きの義務表示に流れが変わった。

○いわゆる健康食品の表示
 消費者庁食品表示課は健康食品に関する検討会を開催し、トクホ制度やいわゆる健康食品の位置づけなどについて審議し、報告書をまとめた。一方、消費者委員会も創設された当初からいわゆる健康食品について高い関心を持ち、消費者委員会自ら検討の場を設置し、当該案件への整理を行っており、消費者庁および消費者委員会で検討され続けている。

消費者にとって、表示はどうあるべきか
弊会の組合員サービスセンター(フリーフォーンによる消費者からの問合せ部門)への23年度の問合せ内容をみると、①仕様・設計に関する、②使用方法、③賞味使用期間、④原料成分安全性という順になっている。
また、「常温保存の常温とは何度か」「賞味期限が過ぎて食べられるか」など、自分自身で判断ができないときに表示を頼る傾向が見られる。
食品表示の目的はわかりやすく情報を伝えること(表示項目、スペース、表示方法の検討が必要)。これまでの食品表示の問題点から防ぐべきは偽装表示も重要であるが、表示一元化検討委員会では、加工食品の原料原産地表示、栄養成分表示(トランス脂肪酸の表示を含む)を課題としており、従前の食品表示の課題は解決できないかもしれない。
事業者にとって食品表示は、マーケティングなどによるプロモーションのための表示による情報提供と安全性確保のための表示の間には葛藤があるのも事実である。
2009年から消費者委員会と消費者庁で、表示を検討している。表示は事業者と消費者をつなぐコミュニケーションツールと言われているが、現実どこまで達成できているかは疑問である。 
英国/環境食糧地域省(UK DEFRA)の「①消費者が商品について情報を知るのが食品表示、②消費者が食品を選ぶときに正確でわかりやすいことが重要」という定義は、表示の意義をよく表している。日本では、表示は「品質規格の意義」や「公衆衛生の視点」について述べる法律でカバーされていて、消費者の視点が欠けていると思われる。

食品表示の国際的動向
(1)Codex栄養表示ガイドライン
表示は消費者の選択、栄養成分に関する情報提供、公衆衛生のための必要な情報などの表示を行う。
健康強調表示をした包装食品は栄養表示をすること。余り重要でない表示項目は対象外とする(その国にとって当該の栄養成分が重要でない場合は省略できる)。

(2)欧州連合(EU)
食品表示制度全体の枠組みについて欧州委員会、欧州議会および欧州理事会で連携しつつうまく進めている。凡そ3年間にも及び慎重な議論がされている。
FOP(包装のフロント面 front of package)はこれまでEU圏内の英国では比較的積極的に取り組んできたが、今回の食品表示法には消費者に重複した情報を提供するなどの理由からFOPによる栄養表示することにはならなかった。消費者の関心の高い事項や重要視している事項を考慮し、消費者の知る権利を尊重し、消費者保護を目指す。誤解を招きやすい表示を排し、わかりやすい表示に力点を置いている。
アレルギー原因物質混入防止、菜食主義者のため、特定の民族のグループの参考のための任意表示に関する法律をつくることを課題としている。

(3)米国の栄養成分表示
米国人はご存知のとおり、肥満や糖尿病などの非感染性疾患の増加が社会的にも大きな問題とされてきており、健康のため、栄養表示による情報提供や商品選択として加工食品にはすべて栄養成分表示が義務化されている。政府が一丸となって健康や栄養政策として一生懸命に取り組んでいく!スタンスを感じる。
米国人のための健康食事ガイドラインには4つの原則がある。
・マイピラミッド(自分にあわせた食事プランの図) http://www.choosemyplate.gov/
・栄養ファクトパネル
・ヘルスクレーム(健康に関わる表示)と栄養素含量クレーム(含む栄養に関する表示)
FOP(Front of Package)で、わかりやすく伝えて、4原則が守られるようにする。1食分(サービングサイズ)で表し、星が多いほど(3つ)健康によいことを伝え、同じ場所にいつも書くことなどが、検討結果として報告書で推奨されている。

(4)オーストラリア ニュージーランド
2001年1月FSANZ(Food Standards Australia New Zealand)は表示の論理、食品表示の法律と政策についてのレビューをおこない、前オーストラリア保健大臣Dr Neal Blewett ACらにより専門家パネルから表示の論理にかかわる61項目の勧告として報告書を公表した。表示は市場で高い価値をもつコミュニケーションチャンネル食品表示の階層は、食品安全性、予防的公衆衛生、新規テクノロジーおよび消費者価値問題の4層にわかれ、リスクの高い項目・階層順に政府の介入、言い換えると食品基準法による義務表示が必要とされる。表示における政府の役割は食品安全性と原産地表示、倫理などは消費者の価値というように、よく内容が整理され、表示についてよく考えている。
勧告28として、一般的原則としての新規テクノロジー(即ち、上市前の食品安全性アセスメントを誘発するすべてのテクノロジー)によって加工されたすべての食品もしくは原材料は、ヒトの食品チェーンに導入時から30年間表示されることを要求されるべきである。この原則の適用は、摂取されることになる食品/原材料に及ぼす、もしくはその改変に及ぼす直接的な影響についての科学的証拠をベースとすべきである。その期間満了の時点で義務的表示はレビューされるべきであるとされている。即ち、遺伝子組換え食品などの新規テクノロジーに関する表示は上市されて30年程度で見直すことが特徴的であった。

食品表示の一元化検討会に参加して考えていること
 当初、本検討会では食品表示の各項目について個別レビューする必要性(義務および任意表示)を訴えたが、時間枠などの理由からか検討されることはなかった。但し、検討会を重ねる毎に、食品表示を一元化する法律は、食品衛生法(表示基準)、JAS法(品質表示基準)、健康増進法(栄養表示基準)であることが判明。つまり、消費者庁食品表示課の管轄である上記3法について検討し、これらの法律をカバーするだけがこの検討会でつくる法律の範囲であった。また、EUの食品表示法にける若者のアルコール飲料摂取の課題が指摘されており、日本でも同様の課題があることを指摘したが、法の及ぶ範囲ではないことで議論の対象範囲には含まれなかった。
日本も国際基準であるコーデックス食品規格委員会の規格・基準をベンチマークとして、EUにおける食品表示法の議論や報告書、FSANZ(Food Standards Australia New Zealand)は表示の論理、米国における栄養成分表示の動向など、参照となる、言い換えると手本にするといい事例について、資料を翻訳・作成し、本表示一元化検討会に報告したりしたが、あまり活用されなかった。
中間論点整理は、総論が3つ(食品表示制度の目的、食品表示の考え方、食品表示の適用範囲)と各論2つ(加工食品の原料原産地表示、栄養成分表示)から成る。
最終報告書がこれから出される。私は「この検討会では、食品表示新法を作成する手順、食品表示の枠組み(現状把握、問題点、考え方など)の概要を用意する」という内容の提案をしたが受け入れられなかった。今回の報告書では、いくつもの積み残しが出てしまうと思うが、次の点を述べることとする。
食品表示一元化の議論は困難であったことは理解するものの、報告書の表現は、全体的に回りくどい言い回しになっている。そのために、今回の検討会の委任事項(terms of reference)に照らし、例えば1.進展が図られたこと(決定したこと)、2.進展(決定)はなかったが、方向性は見出せたこと、3.全く進展はなかったこと(全く決定できなかったこと)を報告書結論部分もしくは新たに添付する要約部分に示すべきであること。また、今回の検討会を経て、食品表示制度は、具体的に、どの点で、どのように変わるのかを、消費者、事業者を含む利害関係者に示すべきであることなどをコメントする予定である。

文系学生のアンケートの報告
文系の3年生に5分間で回答できるアンケートを行った。回答者の多くは女子学生で6割が自宅生だった。その答えをまとめると、①毎日、買い物し、②コンビによく行っている。
よくみる表示は、価格 期限 商品名の順で、堅実に買い物をしているようだ。マイナスイメージの表示は、男女共に遺伝子組換え 中国産 食品添加物だった。女子学生はカロリーを気にし、男子学生は分量が多いことを好んでいるとされた回答であった。


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質問

○ナノテクの具体的なものは→吸収しやすい小さい栄養素などがある。すでに海外では栄養成分の吸収や生体活性の向上を目的に、多数のナノテクノロジ ー製品が上市され、一方でその毒性は粒径に依存する恐れがあることが指摘されている。
○高い水準の消費者保護とは→英語、特にEUの法律ではこういう修飾がついていることが多い。例えば、2002年1月に制定した食品法やそれ以前の食品安全に関するホワイトペーパーなどにも同じ記載がある。母国語としていないので真意はよくわからないが、消費者に軸足を向け、消費者第一主義(Putting consumer first)であると強調し、行政としての強い意思が伝わる表現であるという理解をしている。
○食品表示一元化検討会は予定通りに法律をつくるのか→6月28日に10回目の検討会を開き、7月中に決着して、秋までに法案を出したいと事務局は考えているようである。但し、検討会の審議の進捗によっては検討会を1,2回追加することも想定されるので、その結果次第で遅れる可能性もある。

グループディスカッション
3つのグループに分かれて、鬼武さんが参加者に投げかけた「加工食品の原料原産地表示の拡大」「栄養表示」の義務化についてというテーマに沿って、話し合いを行いました。各グループの話し合いの概要は次の通りです。

第一グループ
・罰則を考えずに原料原産地表示を義務化すると、中小企業に徹底する困難さ、負担が大きすぎる。
・原料原産地表示はロジックがないから反対
・グローバルスタンダードがあるので、栄養表示は必要
・表示間違いなどによるリコールやコストの問題を考える必要はある
・一元化では、個々の法律よりトータルの議論が必要なのに、部分的な議論が多い。その状況で一元化の議論をするのはいかがなものか。
・まとめとして原料原産地、栄養成分表示の義務化に反対
・表示制度によって表示の目的がどのくらい達成されたかの評価も必要だと思う。
・誤った表示への罰則をどうするのか、健康被害がないのに表示が間違えたために起こる食品回収は食物を大切にする上でいかがなものか、などの課題もある。

第二グループ
・栄養表示は、グローバルスタンダードからあわせて義務化もいいのではないか
・表示は女性の関心事があるが、事業者にとっては表示実施は難しい。
・原料原産地に消費者は関心がある。輸入状況から考えると、原料原産地表示義務化について、事業者の立場からは総論反対。
・原料原産地表示で安全性が担保できるのかはわからない。表示は科学的で実効性があるものであるべき。好き嫌いで表示をするのはおかしい 
・何のために表示をするのかを考えるべき
・メーカーと消費者の直接議論が大事。行政がはいらないのがいいのではないか 事業者の苦労もわかってもらえるようになるいただける

第三グループ
・一元化にむけて「食品表示法」ができても限られた法律しか対象になっていない、個別事項と全体の考え方がばらばらであるなどの問題がある。ニュージーランドのように、全体の重要度の位置づけをよく考えることが大事。
・原料原産地表示の戦略なしに、表示拡大から議論するのはおかしい。特色を示す任意表示、産業界の自主規制で十分。義務化したときの罰則や科学的分析による担保なしには運用は難しい。
・原産地表示義務化をしないといけないほど、現在の表示は乱れているわけではない。そもそも表示のわかりにくさの解消や全体的な整理が必要だったのではないか
・栄養成分表示は、社会的なメリットもある。実施が難しい中小の事業者もいるので、長期的に義務化するのは賛成。
・栄養表示のための分析コストの負担はだれがするのか。数字をどこまで細かく扱うのか。分析するか計算値で対応するのかなどの課題がある。分析技術の研究開発も必要。
・米国の栄養表示には国策としての肥満対策が絶対だが、日本では栄養表示の目的、背景の政策がみえない。
・表示にゆだねる部分と消費者教育の部分の両方が必要

鬼武さんから、終わりに、「食品表示に関する参加者の生の声を聞けてとてもよかった。次の検討会に出席する時の参考にする。消費者庁表示一元化検討会に提出した資料は公開されているので、是非参考のために利用してください」というまとめの言葉がありました。

本検討会の報告書が8月9日、消費者庁HPで公開されました。
http://www.caa.go.jp/foods/index12.html