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市民フォーラム「バイオを話そう」について(開催報告)

市民フォーラム「バイオを話そう」参加者  NPO法人「くらしとバイオプラザ21」は7月22日、270名の参加者を得て、文京シビックホールにおいて市民フォーラム「バイオを話そう」を開催しました。参加者は主婦やバイオ企業関係者をはじめ、教師、栄養士、研究者、公務員、生産者、大使館関係者など多様で私達の門出にふさわしいものでした。


基調講演
「くらしとバイオとコミュニケーション」
NHK解説委員 小出五郎氏

 バイオのコミュニケーションの目的はインフォームドコンセント(インフォームドチョイス)であり、これは説明を受け、納得、選択ができるように十分な知識が提供されることを意味します。新しい技術というものは科学者、技術者、官僚等が決定するのでなく、消費者、一般の人、tax payerといわれる人達が選択したときに定着します。納得して選択するために考慮されるのはリスクとベネフィットであり、その基礎になるのが知識や人生経験である。またリスクとベネフィットを考えるときには次の3要素が必要です。
(1) 危険とは何か
(2) ひとつの出来事の背景には複雑な因果関係があることを理解する
(3) ビジネスからの視点。ビジネスは大きいばかりがよいのでなく、地元で生産して消費する形態も考えられる。
 情報伝達では、事実 (fact) に基づき、タイミング (timing) を選び、方法 (software) を工夫する必要があります。  「俗談平話」というように、高度な内容をいかにわかりやすく伝えるかが大切です。情報を用いて選択した結果がfeed backされて初めてコミュニケーションが成立したといえます。

パネルディスカッション
座長 市民フォーラム「バイオを話そう」パネルディスカッション
日本経済新聞社
編集局編集委員
中村雅美氏
パネリスト
花王株式会社
研究開発部門部長
井上恵雄氏
日本生活協同組合連合会
くらしと商品研究室長
小沢理恵子氏
東京大学大学院
農学生命研究科教授
正木春彦氏

 はじめに座長よりバイオコミュニケーションとはインフォームドチョイスであるとの位置づけが示されました。新しい技術は科学、技術、経済、社会の4つの壁をクリアーしなくてはなりません。最近は最後の社会の壁が重要視されています。一般の人の関心は安心と安全であり、バイオは医療、環境、食物すべての安全に関わっているものです。

(パネリストの意見)
井上氏: バイオ技術は未だ勃興期にあり、産業としては未熟ですが、ある意味では情報開示もかなりなされています。産業は社会の認知があってこそ成り立ちます。
小沢氏: 消費者は自己責任を問えるほど成長しているでしょうか。安全とは、「リスクが無視できる状況であると科学者が判断すること」。安心とは、「消費者の受けとめ方によるもの」。アンケートによると一般の人たちの不安の対象は1997年にはO157のような食中毒を起こす病原菌でしたが、その後GMO、BSE、食品表示と移り変わっています。不安の程度も「なんとなく」です。
イギリスの組換えジャガイモによってマウスの免疫が低下したという実験結果が後追いで発表されたりすると消費者の不安は大きくなります。
正木氏: サイエンスリテラシーがあってこそ判断能力ができるという意味では、現在の生物学の教育は十分ではありません。たとえばメンデルの法則を生物IBで学ぶ高校生は7割でも、DNAを生物IIで学ぶ高校生は1割にすぎません。

 後半は参加申し込み時と当日会場で集められた80通余の意見や質問をもとにフロアーを交えてディスカッションが行われました。日本は米以外の農作物については皆が消費者になってしまったという意見に対し、北海道のように生産者の多い地域もあり、このようなコミュニケーションに生産者が参加することも大事だという意見が出たり、コミュニケーションの方法を研究すべきではないか、「あの人(有識者など)がいったから大丈夫」というような一般の人達の信頼の構造を理解することも必要ではないか、報道機関はセンセーショナルな記事をとりあげがちではないか、日本の学会がもっと働いた方がいいのではないかなど幅広い議論に発展しました。
 多くの人たちがメリット、デメリットをもとに一生懸命に考える態度を持つこと、議論ができる場をつくること、地球や世界をビジョンに入れて公益の立場で考えること、そして情報のfeed backのある成熟した社会が重要であることを確認し、「今日の市民フォーラムをバイオコミュニケーションの第一歩としましょう」という中村氏のことばで締めくくられました。
 アンケートの集計によると以下のようにフォーラムはわかりやすく、参考になったと回答された方が大多数をしめました。これらの結果も参考にして今後も面白い企画をしていきたいと思います。どうぞご参加ください。(記録冊子作成中です。できましたら本ホームページでご案内をいたします。)

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