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バイオカフェレポート「水と生きる」

 2011年11月6日(日)、千葉県立現代産業科学館にて、バイオカフェを開きましたこれは水のバイオカフェの3回目でした。お話はサントリービジネスエキスパート冨岡伸一さんによる「水とともに生きる」でした。
 初めに松本宗雄さんと大方寛子さんによるバイオリンとチェロの二重奏がありました。

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冨岡さんのお話 松本さんと大方さんの演奏

お話の内容

はじめに
サントリーは洋酒といわれていたが、今は食品の売り上げが多く、水に関わる食品が多い。他に外食産業や、美術館などの文化活動、緑の壁の緑化事業なども行っている。昔から「利益三分主義」といって、利益はお客さん、社会、社員で分かち合う社風。「やってみなはれ」精神で、投資したが閉じた事業もある。東大で「水の知」という寄附講座も開いた。
私は白州工場を建設し、メキシコで6年間インスタントラーメンをつくった。11年間はブランデーの主席ブレンダーとして、1年のうち4ヶ月はフランスとイタリアでワインの買い付けや蒸留してたるに詰めて持ち帰る仕事をしていた。中国に3年間いて、ウーロン茶分析センターを建設。品質保証の仕事に関わって9年、今日に至る。

私たちと水
トウモロコシ1キロ生産するのに1,800リットルの水を使う。これを仮想水、バーチャルウォーターという。もしも日本で作れたら、これだけの水が必要という計算方法。
カツどん1杯に使う水は2トン(なかなか正解できないクイズ)
仮想水計算機というサイトが環境省にあり、計算してくれる。
バーチャルウォーター(VW)とは、「輸入品を日本で生産するために使うと計算された水」、ウォーターフットプリント(WF)とは、「輸出物質を生産するために現地で使った水」と、少し意味が異なる。トウモロコシをアメリカから輸入するとWFの方が少なくなる。アメリカでは大規模栽培で効率よく水を使っていることがわかる。

水について知りましょう
地球は水で覆われているが、多くは海水。地下水0.76%、淡水(主に湖や川)は2.5%。地球の表層になって使える水は0.019%と少ない。日本は降水量は多いが、使える水が多いとは限らない。
水の需要より水が少ない所をストレス地域というが、世界にはこの地域が多い。例えば、水の被害のあるタイでは、河口から320Km上流で標高は20mしか高くならない。昔は多すぎた水は水田に灌漑していたが、自治体が治水して、集中豪雨の水の行き場がなくなった。サントリーの工場も3つのうち、2つが冠水。中はドライにしているが、原料が来ないので操業できないでいる。治水がうまくできれば、水の被害は減らせる。
また、水は体内で主に次の3つの働き(①水は酸素や栄養を運ぶ、②老廃物を排出、③体温調節)をしている。人は水なしでは5日生きることができない。

水の不思議
水の多様性
沸点100度 融点0度。密度は4度で最大。
縦軸に圧力、横軸に温度をとって、水の状態をみると、高圧だと0度にならなくても凍るし、気圧が低いと100度以下で水蒸気になる。
私は、メキシコの高地にいて92度で沸騰するので、圧力釜でご飯を炊いていた。高地では、赤血球が2割多くなり、空気が薄い環境にいる。アカプルコに行ったときに、「空気を吸った」気がした。
374度を超えると水と水蒸気の区別がなくなり、超臨界水になる。超臨界水は漢方薬の抽出など、水でできなかったことが出来るようになる。
水の特徴は常温で液体として存在すること。宇宙では水が液体で存在できることが、生命存在の決め手になる。
4度で密度が最も高いから、湖は凍らず、海水は巡回する。氷が浮かぶのも、氷が水より軽いから。
蒸発潜熱とは、水を水蒸気に変える熱のこと。水は熱しにくく、さめにくい。だから、体温調節に関与し、地球の気温を守る。
極性があるので、いろいろなものと結合し、よく溶かしこむので、水洗いができる(汚れを溶かして、除去できる)。
使える水は14億立方キロメーター。淡水は地球の水の2.5%で、そのうち1.75%が氷河で、0.73%は地下水、表層にある湖水や河川は0.091%しかない。
中東で日本の技術で海水を淡水化しているがコストがかかる。
日本の河川は昭和45年、高度成長期にはゴミだらけだった。
琵琶湖の水もきれいになった。植物プランクトンの作り出す物質、ジオスミンなどがあると、少し墨汁の匂いがする。しかし、発ガン物質であるトリハロメタンは無臭。あっても微量なので心配はない。

ミネラルウォーター
ヨーロッパが起源。3世紀から温泉保養地の傍で、鉱泉の水を飲んで治療した。テルマリズムという。18世紀後半から論文も出てきて、瓶詰めが始まった。
日本のミネラルウォーターは1880年から。山城炭酸水がそれで、三ツ矢サイダーの原点のようなもの。

ミネラルウォーターの種類
・ナチュラルミネラルウォーター:ミネラル分が溶けた地下水。ろ過、沈殿、過熱殺菌以外の処置をしていない。
・ミネラルウォーター;ミネラル分の溶けた地下水にろ過、沈殿、加熱殺菌のほかにオゾン殺菌、紫外線殺菌、ミネラル分調整を行ったもの。
・ナチュラルウォーター:特定の水源からくみ上げた水で、ろ過、沈殿、過熱殺菌以外の処置をしていない。
・ボトルドウォーター:上記以外の飲用可能な水。水道水を瓶につめてもいい。
ミネラルウォーターの硬度の計算式は、 1リットル当たりに水に含まれるカルシウム量を2.5倍した値とマグネシウム量を4.1倍した値の和。
コントレックスは、硬度がとても高くて(1500)、おなかが緩くなる人もいる。
日本の川は滝のように流れる。高いところから急に下るので、日本は清流。山の多い急に下るところが軟水になる。
欧州の川はいつも濁っている。欧州の土壌はミネラルが多く、川は、長く緩やかに流れる。水は硬水になる。
硬度100以下を軟水といい、赤ちゃんのミルクによい。100-300を中硬水という。300以上を硬水という。ペリエ(硬度400)は煮沸してミルクを溶かしても、赤ちゃんは下痢をします。
海の深層水は清涼飲料水に分類される。
日本の水道水は、名古屋、広島、高松が軟水。日本の水道は20-80で軟水。近くでも水源により硬度が異なる。
水の放射性物質は活性炭、イオン交換物質で除去する。販売されているミネラルウォーターは測定してある。

ミネラルの働き
カルシウムは、骨や歯になる。マグネシウムは、骨や歯の成長に関わる。ナトリウムは筋肉機能、カリウムは神経伝達。ミネラルは重要な働きしているので、食品や水からバランスよくとってください。ミネラルウォーターは、日本では需要が少ない。水道水とミネラルウォーターを上手に使い分けて、水を適切に使ってください。

食品と水
水を使う食品 ビール、ウイルキー、ブランデー製品 コーヒー、日本茶。
水を使わない食品 ワイン、蒸留酒、果汁飲料 トマトジュース、ブランデー原酒。
日本は豆腐、しょうゆを軟水でつくる。イギリス東部は軟水だが、紅茶は中硬水を使う。
硬水でご飯をたくと、ばさばさするという人がいるが、おいしくミネラルたっぷりになる。
一般に、和風だしは軟水、洋風だし(肉、骨をつかうブイヨン)は中硬水がむいている。

水と生きる
アメリカでは化石水といって、地形形成で地下に閉じ込められた水を使っている。コーンベルトでは降水量の3分の1しか地下水にしみこまない。地下に閉じ込められた水を使い続けると水は涸れる。
私たちは地下水といっても循環水を使っている。日本は降水量で補給できている。
サントリーの環境方針は「水の持続性を将来に残す(水のサステナビリティ)」。水も3R(reduce使用量削減、reuse再利用、recycle再生)で大切にする。
使用量を半分にし、工場の中で再利用して、きれいにして返す。
山に涵養林を育てる。森があると雨の35%が地下水になるが、森がないと1割しか地下水に蓄えられない。2011年水源涵養森林、7,000ヘクタールを実現。
「森と水の学校」「出前授業」で体験教室を実施している。


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会場風景1 会場風景2

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • メキシコのインスタントラーメンは今もあるのですか→ないです。ペソ・ショックで国内商売ができなくなった。
    • 日本は降水量は使用量より少ない。これで日本は水不足にならないのか→表立っていないが、日本の水が心配。水源地の土地を買われると利用できない。だから、涵養林をもって地下水を汲みあげる。国立公園は利用できない。サントリーは単独または地元と協力して、涵養林をもっている。工場の水源の下の森を世話している。雨はしみこんで10年経って使うことになる。水齢という。
    • 放射能が心配で、南アルプス天然水を買占め買いだめして、パスタ茹でるのにも使っている→社内教育で、こわがりすぎない!正当にこわがろう!放射線と地球の生物はずっとつきあってきたと情報共有している。「あなたも私も放射線をだしている」私たちは7000ベクレルの放射性物質を体内に持っている。ゼロがいいが、体内のカリウム、炭素に含まれている。
      子どもには少ないほうがいいが、ゼロはない。
      暫定規制値は、規制値をこえると危険なのではない。あくまでも目安。それ以上は売らないようにするための数値。干し昆布は2000ベクレル。ミネラルウォーターには放射性物質はない。
    • カリウムには放射性物質を含むカリウムがある。検出限界とは、不検出(ND)は、分析できる検出限界以下だということ。10ベクレル以下はないとしているが、ゼロではない。
    • 20〜30年前、輸入ウイスキーを飲んでいた→山崎、白州、響は国産。
    • 海洋水深層水とは→サントリーも売っている。塩分を除去してミネラルが十分に含まれている。沖により成分構成は異なる。処理しているのでミネラルウォーターではなく清涼飲料水。
    • 大学生で水の環境教育を扱う予定。仮想水を学ぶ意味は何か→事実を認識してもらうのがいい だったらそれは皆が考えること。
      お肉につくるのに、使う水はこれだけ、農産物を作る水の何十倍かかることを知らせて考えさせたり、限られた水資源のところは不足すると考えられたりするといい。
    • 輸入していて、問題は起きているのか→中国は食料輸入国、中国は水不足になっている。
    • 中国の黄河の途中の水がなくなる現象が起きている。南水北調 黄河が断流(地下水状態になる)ソ連の湖水をみんなが使ってかれて塩害が起きてしまった。淡水資源がなくなる。
    • ナチュラルミネラル、ミネラル、ボトルド、清涼飲料水の違いは→水の種類や処理の方法が異なる。清涼飲料の大きいカテゴリーの中から水を切り出したものが清涼飲料水。
      ナチュラルミネラルは、特定水源の原水の成分そのまま。
      ミネラルウォーターは、調整するので、複数の水源を使える。原水をオゾン殺菌したり、ミネラルを加えたり抜いたりできる。
      ナチュラルウォーターは特定水源。ボトルドウォーターは水を瓶詰めする。
      深層水は塩分を抜き、かなり加工しているので清涼飲料水に入る。
    • 森と水の学校は大学はだめですか→小学3-6年生親子対象。大学生は登録して研修を受けるとボランティアで講師になって参加できる。
    • ウイスキーは割る水で味が変わるが、硬度の違いか→硬度の違いもある。熟成した酒ほど硬度の違いが影響するが、これは好き嫌いの問題。飲み方はトワイスアップと言って、常温の水とウイスキーを1;1にする。アルコールが20度になり、香りが立ち、味もさえる。原酒は40度。ブレンダーは11時〜12時に100〜200本の原酒をみる。活量係数(成分が空気に溶け出る)を見ると、トワイスアップは原酒より香りが立つ。チューリップグラスを使ってふたをするとヘッドスペースに香りがたまる。
      初めの香りがトップノートといい、ブーケ、アロマと変化する。翌日まで置いてみるなど、いろいろな評価をする。水で薄めることで、いろいろな状況が生まれる。