2011年10月14日(金)、茅場町サン茶房にてバイオカフェを開きました。
お話は梶睦さん(株式会社明治お客様相談部)による「チョコレートの秘密〜ポリフェノールの科学」でした。始まりは池澤卓郎さんによって、バッハのシャコンヌが演奏されました。
梶睦さんのお話 | 池澤卓郎さんによるバイオリン演奏 |
チョコレートには面白い話が多いが、今日のテーマはポリフェノール。健康によいと話題になっている。赤ワインに換算すると100ccから200ccに相当するポリフェノールがミルクチョコレート1枚に含まれている。ダークチョコ(ミルクを含まず)1枚では1000〜1500mgも含まれるものがあるが、味は苦い。しかし、リキュールには苦いチョコレートがあうという利点もある。
チョコレートの薀蓄
今、演奏されたバッハの時代にはチョコレートがあった。ドレスデン美術館に「チョコレートを運ぶ少女」(18世紀リオタール作(スイス))という名画があるように、チョコレートは長い間、飲み物として存在していた。原産はメキシコ、グァテマラのような高温多湿な地域。マヤ文明展でも紹介されていた。メキシコのオルメカ文明は、巨頭文化、巨石文化(紀元前2000年〜)で有名で、資料に「カカオ」のことばが残っている
アステカは1521年、エルナン・コルテス(スペイン)に征服された。モテクソマが最後の皇帝となった。コルテスがカカオを持ち帰り、ヨーロッパ大陸では最初にスペインに渡り、更にポルトガル、イタリアと広がった。
日本とチョコレートの関わりは古く、江戸時代の初め。支倉常長が伊達藩から正式な使いとしてメキシコ経由でスペインに行った。当時、国賓はカカオでもてなしたことから、支倉常長は初めてチョコレートを飲んだ日本人だろう。鎖国後に帰国した支倉は、息子は打ち首になり、お家断絶の制裁もあったため、海外に行った記録を残さなかったが、岩倉具視が1873年にローマにいって支倉常長の文献をみている。支倉常長は大きな帆船をスペイン人の手を借りて作った。石巻市で同じものを作り記念館が建てられた。大震災にあったが、無事だったそうだ。皆さんも見に行ってください。
江戸時代の1797年の遊女の貰い品目録にチョクラートという記録がある。米津風月堂が日本初の西洋菓子チョコレートを出した。
バンホーテンが1828年、ココア(飲み物)を出した。ダニエルピーターは1873年、ミルクが入った甘い板チョコをつくった。リンツ(スイス)が、1880年、コンチェ(滑らかなチョコ作りの装置)を発明。
日本でチョコレートを工業的に初めて作ったのは森永商店(1909年)、明治製菓は1926年。それ以来、同じレシピでつくっている。戦後1950年カカオが輸入認可され、今に至る。
菓子類の売り上げ規模は、今は、最大がスナックで、チョコは2位。
カカオの産地
カカオポッド(カカオの実)はラグビーボール状(20-30cm)の実の中の豆が原料。豆(白くて柔らかいパルプに包まれている)を乾燥、発酵させる。カカオ豆は苦いアーモンドのイメージ。
カカオ豆の産地は赤道周囲の熱帯地方が中心。二大産地は、ガーナ、コートジボアール。日本人の好みはガーナ産。チョコレートをめぐる児童労働が問題になっているが、それは、コートジボアールで多いようだ。私はガーナに行って見てきたが、政情不安なコートジボアールからガーナに難民が入ってきているそうだ。ガーナにとって、カカオは大事な輸出品。品質管理もいい。日本の7-8割はガーナから。欧米はコートジボアール産を多く使う。
カカオの世界の生産量は年間300-370万トン。(コーヒー豆は世界で700万トン)
チョコレートの作り方
チョコレート工場は装置産業。
カカオ豆は麻袋に入って、横浜もしくは神戸港に届く。異物を除去して、皮をむいて吹き飛ばす。120-140度の低温で焙焼(コーヒーはもっと高温)
ブレンド:シングルビーンよりも複数の豆をブレンドすることが多い。
ココアは砕いたものをココアプレスで圧縮してココアバター(豆の5割は油)を絞って脂を20数%にする。
チョコレートは、砕いてからココアバター、粉乳、砂糖を混ぜ、含水量を1%程度にする。だから、保存食として優れている。25ミクロンの粒まで細かくし、ココアバターの融点は28度だから、口の中ですぐにとける。
コンチェ(精錬 こねる)によって、香りがたち、滑らかさが増す。
調温という温度管理を行う。手作りチョコで難しいのは調温と水蒸気の水が入らないようにすること。
チョコレートの成分
ポリフェノールが多い。ガーナ産とエクアドル産で余り違いはない。
意外と多いのが蛋白質。半分以上が脂質(オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がほぼ等分に入っている)だが、その組成をみると、コレステロールは上がらない。食物繊維が多く、17%。繊維質が多い割りに食感は滑らか。カルシウム、鉄、亜鉛、銅も意外と多い。ミルクチョコレートになると、カルシウムとマグネシウムの割合が2:1でちょうどいい)。鉄分は貧血予防になる。亜鉛と銅は味覚に関係がある。味覚異常に亜鉛不足が関係しているといわれている。「元祖 バランス食品」と呼べる菓子だと思う。
ビタミンでは、Bが多い。タンニン(ポリフェノール)が非常に多く、抗酸化作用が強い。テオブロミンというカフェインの仲間が含まれるが、刺激が弱い。ココアは飲んでも眠れなくなることはないという利点がある。
チョコレートの効能
チョコレートにはいろいろな効能がある。
アレルギー予防:過剰活性酸素を抑える。
発ガン抑制:動物実験で発ガンの第1,2段階を抑制することがわかった。
虫歯予防:スウェーデンの研究報告がある。今では倫理的に出来ない実験であるが、子どもに菓子を4年間食べさせたところ、キャンディ、タフィーの子どもは虫歯が増えたが、チョコの子どもは増えなかったという報告がある。チョコレートがミュータント菌を抑える事は10数年前にわかった。
抗ストレス:疲れたときに、よく眠れる
ピロリ菌対策:ピロリ菌は年配者の胃の中に多いが、チョコレートやココアに抑制力がある。除菌効果とまではいえない
抗動脈硬化:LDL(悪玉コレステロール)が酸化すると血管の内皮に障害を起こす。
白血球の中の貪食細胞(マクロファージ)が悪いものを食べるが、処理しきれないとマクロファージの死骸(泡沫細胞)が血管の外側にたまって血管を圧迫するようになり、血管が狭くなる(動脈硬化の成り立ち)。
チョコレートはLDLの酸化を抑える。抗酸化ビタミン、ポリフェノールの抗酸化作用が注目された。
ポリフェノールがなぜ動脈硬化によいかというと、フレンチパラドックスという説がある。フランス人は欧州人の中では動脈硬化がひどくない。他の欧州人と同じように脂質の多い食事をとっていても、赤ワインを飲むので、そのポリフェノールの効果によると考えられる。そこで、私たちはチョコレートのポリフェノールに注目した。我々は、ココアが酸化を遅らせることを突き止めた。
毎朝、1杯のココアを飲むか、チョコレートを2日で1枚食べると、おいしく健康維持ができて、皆さんの健康と明治の繁栄につながるので、よろしくお願いします(笑) 拍手!
チョコレートで心臓疾患発症率が3分の1低下という疫学調査の結果が、最近、話題になった。ポリフェノールはミルクチョコで大丈夫です。心臓病予防には運動もよいのですが、糖分補給も兼ねてチョコを活用してください。
秋冬はチョコのおいしい季節!チョコを食べて健康に!
イギリスのベントン(心理学者)によると、食べずにいられない食品の第一位はチョコレートで次はチーズ。そういう態度が強いのは女性だそうです。フードクレービング(食べずにいられない=渇望感)にはおいしさと罪の意識という両面がある。罪悪感とは、カロリーが多い、チョコばっかり食べていると思われるのではないかという不安をいう。
- カカオポッドから豆を取り出した後はどうするのか→ただのゴミで、活用されていない。
- 飲料として使われていたときは苦くなかったのか→アステカ時代は砂糖がなくて、シナモンなどをいれて苦いまま、薬としてのんでいた。精力剤で、王様、貴族だけの飲み物だった。18世紀には砂糖が入ってのみやすくなった。
- チョコレートが好きで食べすぎそうになるのですが、チョコレートに中毒性はあるのか→中毒性はかなりあるという研究がある。カンナビノイドという成分によって、クレービング(我慢できない)の可能性がある。ポリフェノールのために摂取してもカロリーは過剰になる恐れがある。過剰摂取の報告はないが、肥満につながったという報告はある。
- チョコレートを食べ過ぎたときの研究はあるのか
- チョコレートを食べるとキスしたときと同じ脳波が動くという説は本当か→失恋の特効薬はチョコだという研究がある。アルファ波が高くなったという話はあるが、失恋特効薬といえるかどうかわからない。チョコを食べた陸上の選手のスタートの反応が早いという医学部の先生のデータはある。戦闘機で急降下するときに失神することがあり、日本の軍隊でチョコレートを食べて失神を予防したという話がある。
- カカオ豆といっても、豆でなくて種ですよね→はい、形状のためにカカオ豆といいます。
- シュガーレスのチョコは普通のチョコと違うのか→ストレスに強いというのはある成分を強化したのでなく、成分を強調しただけ。どのチョコも成分は共通。シュガーレスは明治も発売し、ロッテは現在も販売している。味は砂糖を使うのがおいしいと思う。水分を嫌うので使える甘味料が限定されてしまう 明治ではカカオ分が多い「チョコレート効果」を出した。ポリフェノール効果にはいいが、苦い薬以上に苦い。
- 95%の苦いチョコレートはどうやって使えばいいのか→砂糖を入れたコーヒーと飲んだり、カレーに入れたりしてコクを出す。
- 砂糖抜きのココアを1月のんだ人が「悪玉コレステロールが消えた」といっていた→大東カカオの前社長は100歳を超える長寿だった。毎朝ココアを50年のみ続けて、最後まで元気だった。ジャンヌ・カルマンは、世界最長寿者で124歳で亡くなった。毎日チョコを食べていたというが、タバコも吸っていたそうだ。
- お客様相談部ではチョコを食べますか→新商品、売れ筋は食べてみます。他社のものも食べて比較します。