2011年9月9日(金)、茅場町サン茶房にて、バイオカフェを開きました。スピーチはNPO法人くらしとバイオプラザ21専務理事真山武志による「水の生理学〜カラダにとっての水の役割」でした。
初めに山形一恵さんによるフルート演奏がありました。水にちなんで、美空ひばりの「川の流れのように」などが演奏されました。
山形一恵さんによるフルート演奏 | 「水は生物にとって大事です」 |
水の性質
水の特殊性をヒトの体は巧みに利用している。水の分子は酸素と水素がへの字曲がった形をしている。凍ったときに、への字の構造が影響して容積が大きくなり、氷は水よりも比重が小さくなる。量が増すので諏訪湖の大神渡りのように氷が湖面から盛り上がる現象が起きる。
水の分子では、酸素の方に水素の電子が引かれて分極している。これで水素結合を起こしやすくなり、いろんな分子と電気的に引き合い何でも溶かすことができる。例えば、原始の海の中に生まれた藻のような生命体が、光合成を行った。水がこの化学反応を起こさせるカギになっている。宇宙では水の有無が、生化学反応を起こさせる鍵となり、生命の有無につながる。
気化熱が大きく、蒸発するときに熱を多く奪う。比熱が大きいので、温まりにくく、冷えにくい。これを利用したのが湯たんぽ。
隙間の水
2枚のガラスを水につけると、間に水が入って、ずらすことはできても引き離せなくなる。
ガラス面には極性基があり、水分子は強くひきつけられて、隙間の水が固定化して、水が「構造となってしまう(構造化)」。
哺乳類はその細胞の中の隙間で、水の構造化を利用している。
硬水と軟水
欧州はマグネシウムやカルシウムが含まれる硬水が多い。幼児や乳児は硬水をとると、マグネシウム、カルシウムの過剰摂取になるので、ミネラルウォーターを利用したりする。これは欧州では平地で、ゆっくり水が滲み込む間にカルシウム、マグネシウムが溶けこむから。」
気化熱の利用
人は汗をかいて、水の気化熱を利用して体温調節する。象は耳をパタパタして放熱する。また、象は水の臭いを見つける臭覚を持っていて、水を掘り当てる
打ち水を20分行ったら、35度が32度に下がったというニュースがあった。これも気化熱を利用した工夫。
湯たんぽも表面が蛇腹になっていてよく放熱する、日本発のヒット商品。私も愛用している。
ヒトの身体の水
食事を通じて取り込まれる水は1リットル、体内で合成されるのが0.3リットル。
呼吸で消費される水は0.5リットル、汗で0.5リットル、排泄物で1.5リットル。
引き算すると、毎日1.2リットルの水分を補給しないと収支があわなくなる。ペットボトル大1本くらいは、毎日飲まないとだめ。
乳幼児の体の水は70〜80%、高齢者は50%。一般的に女性は55%、男性は60%。男性は筋肉質で、筋肉は水を含む。
水は細胞の内外にある。細胞の外の水は幼少期から減り、青年期で一定になる。細胞内の水は生合成に関わる。細胞内の水も30歳をすぎると減り始める。減った細胞内の水は細胞内の隙間で構造化され、固定され、外界の圧力に抵抗力が増す。青年期以降は、外界の刺激に影響されずに静かに暮らせばいい。乳幼児では遊離している水が多い(水が構造化していない)方が化学反応が進みやすく、成長・新陳代謝に好都合。外界の影響にもよく反応できる。これに対して青年期以降は、外界の刺激に抵抗性があり、安定した方がいいので、水分が少なくなる。
薬の投与量をみると、子どもは体が小さいので投与量は少ないが、体重1Kgあたりの投与量を比べると、新生児は成人の2倍。これを分布容積が大きいという。
水和物
水はいろんなものと水素結合する。ヒアルロン酸は鶏のとさかにある。1gのヒアルロン酸は水6リットルを保持することができる
ヒトの体ではへその緒にヒアルロン酸がある。胎児が動いてへその緒がねじれても、胎児に母胎から栄養が届くように、へその緒にはヒアルロン酸があり、つぶれないようになっている。関節痛の膝、ドライアイにヒアルロン酸を補う方法もある。
顔のしわがなくなるのに、ヒアルロン酸がいいというが、分子の大きさを考えると「経皮吸収されるかどうかは難しい。ヒアルロン酸の分子の大きさが難しいのではないか。
尿からつくられた医薬品
傷をすると血が固まるが、治ると固まりは溶けて再び血が巡るようになる。血栓を溶かすプラスミンという酵素が私たちの体にある。プラスミンが不活性化しているのがプラスミノーゲン。プラスミノーゲンをプラスミンに替えるのがtPA(tissue prasmin activater)。尿から血栓を溶かす薬をつくり、ウロキナーゼという名前がついている。尿からこんなに重要な医薬品を創出した持田製薬は見事だと思う。これは、腎臓で不要物をこすときに糸球体で血が固まらないようにする酵素があるため。心筋梗塞や脳血栓の患者さんには、tPAかウロキナーゼが使われている。
植物と水
光合成では水と二酸化炭素からデンプンが作られ、酸素が放出される。地球では1,000億トンのブドウ糖がつくられている。
植物が作り出す酸素は二酸化炭素からでなく、水からできていることが、ラベルした水を使った実験で証明されており、水に始まり、水に終わることがわかる。
太陽エネルギーの緑色の波長だけが光合成に使われており、これは5%にすぎない(太陽電池は太陽エネルギーの1割を利用)。バイオテクノロジーでこの効率をあげたい。もっと太陽エネルギーをデンプン合成に使い、餓死する子ども減らなせないだろうか。
先端技術は医薬品開発に可能性がある!
会場風景 | ガラスがくっついて、はずれなくなる |
- 水和の意味を教えてください→水の水素を買いして結合(水素結合)しているものが水和物。いろいろなものが結晶になるとき、そのものと水素結合するが、それが結晶水。これも水和物の一種といえる。
- ガラスが離れない理由は→すき間に入っている水の分子の数は少ない。ガラスは+に帯電している。隙間の水が数オンムストロングに入っている。すき間の水の凝固点はマイナス100度くらい。細胞は凍らないようになっている。
- 細胞内の水はずっと同じものが存在しているのか、交換しているのか→ナトリウムやカリウムのように、膜の内外で移動して入れ替わったりしている。
- 肥満は水が増えるので、高齢者の肥満はよくない→夏は水分補給が大事、特に高齢者。
- 私が通っている高齢者のエクササイズでは、喉が渇いたら水を飲もう!ではなく、15分運動したら、1口というように喉が渇く前に水を飲めといわれている。
- 水商売とはお酒を水で薄めて儲けるといわれるが、水分子が集合している「クラスター水」というビジネスもある。「水にまつわる商売」には注意が必要かもしれない。
- おいしい水には何かが含まれているのか。不純物がない水はあるのか→おいしい山の水はミネラルが含まれる。
- 水はタダだとおもっていたが、水がジュースより高くて驚いた→海外では飲み水に苦労します。炭酸の入った水をよく売っているが、ガス抜きエビアン探しで苦労した。
- マグネシウムは下痢を起こすので、便秘の人やダイエットで硬水をつかうことがある。
- 海水は真水にしたらのめるのか→海水を真水にするのはイオン交換樹脂でろ過しているだけ。沸かして大腸菌を殺菌しないとだめ。みなさん!水商売にだまされないように
- 膝が痛くてヒアルロン酸の注射をして、膝の水を抜くのを5回繰り返したら痛みがとれて、アルロン酸はすごいと思った
- サン茶房のコーヒーはどんな水を使っていますか→以前、10万円の浄水器をつけたことがあるが、お客さんにおいしくなくなったといわれた。今は東京都の水を使っている。
- コロンビアのコーヒー豆を5種類ブレンドして、50年、同じ豆を使い続けている。変えるとお客さんはすぐに気がつく。