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Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日)開かれる

 2010年2月28日、ミッドタウンホールで「Rare Disease Day(RDD)(世界希少・難治性疾患の日)」が開かれました(主催:NPO法人知的財産研究推進機構PRIP Tokyo)。RDDは、2月29日が4年に1度の珍しい日であることから、2月28日とRDDと定め、2008年にスウェーデンで始まりました。2009年には世界30カ国、欧州の600以上の患者団体、米国の約200の患者団体、NIH(国立衛生研究所)、FDA(食品医薬品局)も参加しました。2010年2月28日、日本も初めてRDD世界同時開催に参加したのです。
 会場では、①カセットプラント、②ワールドカフェ、③メッセージスペース、④患者さんの生の声、⑤「希少・難治性疾患」に関するパネル展示の5つコーナーまたはプログラムが行われ、研究者、医療関係者、患者さん、製薬会社の方、そしてその家族が、話し合い、作業をし、和やかな時空間を共有しました。

会場風景1 会場風景2

希少・難治性疾患とは

希少・難治性疾患は6000-8000種類あると言われており、8割が遺伝子が原因だと考えられています。これらの病気を治療する薬の開発も進められていますが、対象患者の数が小さいと研究・開発・製造に関わる製薬企業は経済的に成り立たなくなります。なぜなら、医薬品のなりそうな候補が見つかっても医薬品までたどりつくものが二万分の1で、開発費用が100億円もかかるからです(このように製造元が見つからない医薬品を孤児の薬、オーファンドラッグといいます)。政府は難病・希少性疾患に関する研究事業を進めたり、オーファンドラッグの研究開発を進める事業を行っています。

カセットプラント

アーティスト山口啓介さんの作品であるカセットプラントを、参加者も好きな生花をカセットケースに入れて作って積み上げていきました。いろいろな病気に苦しむ人や関係者が集まったこの日、様々な思いがカセットプラントとして集まって新しい形をつくるイメージが共有されたと思いました


カセットプラントを作る 透明ボードに集められたカセットプラント

Act for Rare Disease Café

ワールドカフェという形式で、患者さんとその家族、お医者さん、製薬企業の方、行政担当者、研究者など25名が4つのテーブルに分かれて話し合い、一般参加者は回りに集まってそれを聞きました。話し合いは次のように第1〜第3ラウンドに進められ、ラウンドの間は座席移動があり、メンバーが交代しました。
第1ラウンド「あなたが普段していることはなんですか?」「普段困っていること、問題に思っていることは何ですか?」
第2ラウンド「なぜそれが問題なのですか?」「または、なぜその問題が起こるのですか?」
第3ラウンド「改善するためにできることは何だと思いますか?」
全ラウンドの後、参加者はみんな感想や印象をカードに記入しボードに張ったり、意見を発表したりしました。
話し合いの中では、「もっと患者と家族の苦しさを聞いてほしい」という声、一方、「その費用を国がすべて負担するには限界があるのではないか」、「医療保険でどこまでカバーすべきか」などの現実の問題、規制、行政、研究の現場からの意見が発表されました。そして、「もっと患者さんに勇気を持って語ってもらいたい」「患者から病気のことを知らせる声を上げるべきではないか」と互いが知り合う必要性が確認され、「これは難治性だけの問題でなく病気すべてに共通するのではないか」「薬は数千例の臨床試験の後に市場に出るので、使った人の声がフィードバックされることが重要」「医薬品を使った患者さんの声を集める仕組みの整備が必要」「やはり教育が大事」という幅広い話し合いに発展しました。
話し合いを周りで聞いていた患者さんからは、「病気で引っ込んでしまうことが多かったが、一人でないことがわかった。参加してよかった」「命にかかわらない痣(あざ)などで苦しんでいる人たちのグループに属しているが、RDDのような活動が広がることが、命にかかわらないけれど苦しんでいる人たちの活動にも日を当ててくれると期待する」「行政、法律が縦割りだという批判が多い。それぞれが既得権益にしがみついているという批判もある。その中で患者団体の既得権益放棄の勇気も必要という意見に感動した」など、いろいろな立場からの発言がありました。
最後に、全体司会者の「人がつながることが大事。つながれば何かができるかもしれない」ということばでワールドカフェは結ばれました。


ワールドカフェ 感想を記入する
全体の話し合い メッセージの海

患者さんの生の声

 5つの患者団体から実体験、日常生活、社会に望むことが語られました。

マルファン症候群の患者さんの発表
5000-10000人に1人の割合で起こる病気で、自覚している人は少ない。私は娘の検診から娘と自分がその疾患であることを知った。細胞間の結合が弱まり、背が高く細い人が多い。水晶体がずれる、大動脈乖離が起こることがある。早期なら安全な手術もあり、早く知っていればという患者の声も多い。周囲に知らせると協力が得られるかもしれないが、遺伝病なので人に言いたくない気持ちもある。遺伝病は特別なものでも、恥ずかしいことでも、かわいそうなことでもない。そのことをみんなで共有できたらいいと思う。前向きな患者もいることを知ってほしい。日本のマルファン症候群の基準ができたので、研究が進むと内科的治療もできるかもしれないし、ひとつの難病の研究が進むと、ほかの難病の人の治療にも役立つかもしれないと思う。

重症筋無力症の患者さんの発表
サラリーマンをやっていた10数年前、うまく話せず噛めないことから歯医者の治療を1年受けた後、大学病院神経内科で重症筋無力症と診断された。
心臓のそばの胸腺に異常があることがわかり胸腺を摘出し、ICUから一般病室に入ったときに初めて、病気への恐れでパニック状態になった。当時は、患者会のこと、インターネット情報もなく不安だった。
個人差が大きく、症状には眼瞼型(瞼が落ちてくる)と全身型がある。
嚥下障害で経管栄養で栄養を摂取したり、ステロイドパルス(大量のステロイドを点滴で入れる治療。呼吸困難になって人口呼吸器を3週間つけた)、ステロイドのために白内障の治療など、重症筋無力症の治療はすべて受けたと感じている。ステロイドには欝の副作用があるが、思ったよりポジティブでいられるので病気相談員をし、発症から2-3年で病気の不安を持っている人に自分の経験を生かしてもらいたいと思っている。必ずよくなると確信を持ってもらいたい。

表皮水疱症の患者さんの発表
先天性表皮水疱症とは、摩擦で水疱ができる遺伝病。表皮にできる人は水泡ができては治りを繰り返すが、真皮の人は重症で、指の間がなくなり切り離す手術をしたり、ひざの裏に水疱から膝が変形して歩けなくなったりする。栄養障害型で、食道が5mmくらいになる人もいる。現状では一生、ステロイドを服用する必要があるが、その場合、ステロイドを長期間服用した際の副作用と考えられる皮膚がんを患うことがある。
治療は、毎日、3時間くらいかけて体をきれいにして、ガーゼを替える。ガーゼ代は毎月数万円から数十万かかる。ニュージーランドの患者さんが来日し、一生の体の清浄とガーゼ代を国が負担してくれると聞いた。
日本ではシリコントレッシング材という傷に張りつかないガーゼも認められず個人輸入にたよる状況。2009年8月、厚生労働省に初めて陳情に行き、①一生のガーゼ代、②介護援助代、③シリコンドレッシング材(傷口に張りつかないガーゼ)の認可の3点をお願いしたところ、3週間前、中央医療審議会から、表皮水疱症患者の在宅治療として、月に5000円のガーゼ代が認められた。
皮膚病、遺伝病の人は表に出たがらない。私よりも重症の方がいらして自分が代表になることには迷いもあった。けれど、自分は表で活動できる状態なので、代表として声をあげようと思う。援助できる人もどんな病気かを知らないと関わり方がわからない。何をしてほしいか、具体的に援助の内容を伝えられるようになることが大事だと思う。RDD開催に感謝している。

アロペシアラボラトリー代表の発言
アロペシアとは脱毛症という意味。私たちのNPOの対象は抗がん剤、円形脱毛症、火傷など様々な原因の脱毛症者すべて。
私は全頭型円形脱毛症(4歳のときに全身の毛を失い、少し生えてきた)。普段はかつらを使って仕事をしている。子どものときは、かつらを使っていることを友達に隠していなくてはならないことが辛かった。
歩き始めたころO脚であることから、くる病の1種だとわかった。O脚の整形手術は子供のときと、3年前に受けた。ビタミンDを服用しているが骨は弱い。りんが腎臓でろ過され排出されてしまうので、リン濃度も低くこれも服用している。
大人になって治ったと思っていたが、出産し子供のくる病から遺伝病だと知った。くる病はX染色体の傷が原因。歯がもろい、頭の形の変形など、自覚せずに子供を出産して知る人も少なくない。
りんの補給では、燐酸ナトリウムをのむので、食事のナトリウムを減らし、昼間に何度も分けて飲んで血中濃度を保つ。すっぱくて飲みにくく、りんの血中濃度維持は大変。今は、
3種類のくる病のひとつに脱毛症が起こることもわかった。

遠位型ミオパチーの患者さんの発言
この病気であると知ったとき、10年くらいは歩ける人もいると聞いたが、私は進行がやや速いようで10年経たずに車いすになった。病気であることも辛いが、病気のことや自分の進行度合いを受け入れるのが辛かった。
登録している患者さんの数は日本で118人(きちんと調べると300〜400人と言われている)なので、薬の開発は難しいと思うが、オーファンドラッグのことを知ってもらい理解が進むように願っている。今は患者会を立ち上げ、基礎研究も始まった。
今日は、子どもに病気を遺伝してしまったというお母さんたちの発言があったが、私は親から遺伝をもらってしまったというふうには考えていない。幸いにして仕事もしていて、日に3回時間を決めてトイレのヘルバーさんにきてもらって生活できるので、そんなに後ろ向きではない。私はこうして過ごしていることをわかってもらいたいと思う。

メッセージスペース

参加者が子どもから大人まで思い思いの感想を、魚の形のカードに記入して張り出しました。子どもたちのイベントを楽しむ声、製薬会社の方や看護師さんの治療のために働きたい、患者さんの笑顔を見たいという願いが書かれていました。



「患者さんの笑顔が見たい」というメッセージ お土産の鉢からは「2月28日」と書かれた種が芽を出しました


日本難病・疾病団体協会(Japan Patient Associatio:JPA)とは

38都道府県と24疾病別全国組織から成り、①病気を正しく知る、②病気に負けないように励まし合う、③本当の福祉社会を作るという3つの目標に向かって活動をしています